電験3種(理論)で出題される交流回路の基礎(最大値、瞬時値、実効値、平均値、インピーダンス、進み異相、遅れ異相など) について解説します。
交流とは
電気回路における交流(AC: Alternating Current)は、時間の経過とともにその大きさ(電圧・電流)と向き(プラス・マイナス)が周期的に変化する電気の流れ方です。家庭のコンセントに届いている電気はすべてこの交流です。以下図のように、一般的な交流は正弦波(せいげんは)の形をしています。

電気が常に一定方向に、同じ強さで流れる。
■交流(AC)
電気が行ったり来たりしながら、波のように流れる。
交流は常に値が変化しているため、単純な数値で表す際に「最大値」「瞬時値」「平均値」「実効値」などのいくつかの定義があります。
最大値
最大値($V_{max}$)は、交流電圧の瞬時値の最大値です。
瞬時値
瞬時値とは、任意の時間(瞬間)における値です。最大値($V_{max}$)は、交流電圧の瞬時値の最大値です。
平均値

平均値$V_{avg}$は、交流電圧の瞬時値$v$の「絶対値」を1周期$T$で平均した値です。以下のとおり最大値$V_{max}$の約0.637倍となります。主に交流を直流に変換(整流)して利用する場面や、電気の移動量を測定する画面で「平均値」使われます。
$$V_{avg} = \frac{2}{\pi} V_{max} \approx 0.637 V_{max}$$
スマホの充電器やパソコンの電源ユニット内部には、交流をダイオードなどで整流して直流を作るAC-DCコンバーターがあります。ここで出力される直流電圧の「平均的な高さ」を見積もるために平均値が使われます。
■バッテリーの充電
電気自動車やスマホなどのバッテリー(蓄電池)の充電は、どれだけの「電気量(クーロン)」が流れ込んだかによって決まります。充電中のバッテリー内部では化学反応が生じるため、電流の2乗(熱)ではなく、電流の単純な時間積分(電気量)に比例するためです。この測定にも「平均値」が使用されます。
導出方法は以下ページで別途解説しています。

実効値

交流電圧の実効値(RMS: Root Mean Square)は、変化し続ける交流電圧が、直流電圧の何V分に相当する仕事(熱量)をするかを表す値です。交流電圧の大きさはこの「実効値」で表すのが基本です。最大値$V_max$のとき、実効値$V$は以下の式で求まります。
$$V_{rms}=\frac{V_{max}}{\sqrt{2}}$$
。つまり、「100Vの直流」と「実効値100Vの交流」で同じドライヤーを動かしたとすると、ドライヤーから出てくる熱(仕事量)は同じになります。また、家庭の100Vの最大値は約141Vに達していることになります($v_{max}=\sqrt{2}V_{rms}$より)。電子レンジ、ドライヤー、エアコンなどの消費電力計算は「実効値」をもとに計算されています。また、配線器具は、流れる電流による「発熱」で焼き切れないように設計されています。この発熱量は実効値の2乗に比例するため、遮断器(ブレーカー)の作動基準には実効値が用いられます。
導出方法は以下ページで別途解説しています。

波形率
波形率とは,実効値の平均に対する比です。
波形率 = 実効値 / 平均値
波形率の値は波形によって異なり,正弦波と比較して,三角波のようにとがっていれば,波形率の値は大きくなり,方形波のように平らであれば,波形率の値は小さくなります。
波高率
波高率とは、最大の実効値に対する比 です。
波高率 = 最大値 / 実効値
波高率の値は波形によって異なり,正弦波と比較して,三角波のようにとがっていれば,波高率の値は大きくなり,方形波のように平らであれば,波高率の値は小さくなります。
単相2線 100V
単相2線100V(一般的な家庭用コンセント)の交流電圧は、実効値(公称電圧)が $100\text{V}$ となります。
最大電圧 ($V_{max}$)は、
$$V_{max} = \sqrt{2} \times 100 \approx 141.4\text{V}$$
平均値 ($V_{avg}$)は、
$$V_{avg} = \frac{2\sqrt{2}}{\pi} \times 100 \approx 90\text{V}$$
※実効値から計算する場合は、$100 \times \frac{2\sqrt{2}}{\pi} \approx 90\text{V}$
三相3線 200V
三相3線200Vの線間交流電圧は、実効値(公称電圧)が $200\text{V}$ となります。
最大電圧 ($V_{max}$)は、
$$V_{max} = \sqrt{2} \times 200 \approx 282.8\text{V}$$
相電圧(対地電圧 $V_p$)は、フェーザ図(Phasor diagram)を用いると、線間電圧 $V_L$ に対して以下の関係になります。
$$V_p = \frac{V_L}{\sqrt{3}} = \frac{200}{\sqrt{3}} \approx 115.5\text{V}$$

インピーダンス
インピーダンス(Impedance)とは、交流回路における「電流の流れにくさ」を表す指標です。直流回路での「抵抗」を、交流回路全体に拡張した概念だと考えると分かりやすくなります。交流は直流と異なり、電流の流れる方向と強さが時間とともに変化(周期変動)します。そのため、単純な抵抗器(R)だけでなく、コイル(L)やコンデンサ(C)が「抵抗」のような働きをします。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 抵抗 ($R$) | 電流の流れを妨げ、エネルギーを熱として消費する(直流・交流ともに作用)。 |
| リアクタンス ($X$) | コイルやコンデンサ特有の、交流の流れを妨げる要素。コイルやコンデンサにおける交流電圧と交流電流の比を表したもで、単位としてはオームを持ちますが、エネルギーは消費しない。 |
| インピーダンス ($Z$) | 抵抗とリアクタンスを合わせた、回路全体の「流れにくさ」の総称。 |
コイル(インダクタ)
コイルは「電流の変化を嫌う」性質があります。直流電流は一定の電流が流れるため、理想的なコイルの抵抗は 0Ω です。一方、交流電流は電流が常に変化するため、逆向きの電圧(自己誘導)が発生し、抵抗として働きます。周波数$f$とインダクタンス$L$が高いほど、変化が激しいため抵抗(リアクタンス)は大きくなります。誘導性リアクタンスを $X_L$ とすると、
$$X_L = 2\pi f L$$
で計算できます。
コンデンサ(キャパシタ)
コンデンサは「電気を蓄える(電荷を溜める)」性質があります。直流電流の場合、電荷が溜まると電流が止まるため、抵抗は無限大(電流は流れない)です。交流電流の場合、充放電を繰り返すことで、見かけ上、電流が流れます。周波数$f$と容量$C$が高いほど、充放電のサイクルが速くなり、電流が流れやすくなるため、抵抗(リアクタンス)は小さくなります。
容量性リアクタンスを $X_C$ とすると、
$$X_C = \frac{1}{2\pi f C}$$
で計算できます。
位相変化
交流回路にコイルやコンデンサが入ると、電圧と電流が最大値をとるタイミングに「時間差」が生じます。このズレを位相と呼びます。
① 同位相:電圧と電流が同時に最大・最小になる。(抵抗のみの交流回路)
② 遅れ位相:電圧に対して、電流のピークが 90°遅れて やってくる。(抵抗とコイルのみの交流回路)
③ 進み位相:電圧に対して、電流のピークが 90°早く やってくる。(抵抗とコンデンサのみの交流回路)
コンデンサ(C)の場合、 I(電流)はE(電圧)よりも先にくる(進む)。これの逆がコイル(L)と暗記しましょう。
有効電力・無効電力・皮相電力・力率
交流回路における電力には、役割や性質によって「有効電力」「無効電力」「皮相電力」の3種類があります。これらは互いに密接に関係しており、その効率を示す指標が「力率」です。
| 項目 | 皮相電力 ($S$) | 有効電力 ($P$) | 無効電力 ($Q$) |
|---|---|---|---|
| 意味 | 全体の電力 | 実際に使われる電力 | 消費されない電力 |
| 単位 | VA (ボルトアンペア) | W (ワット) | var (バール) |
| 役割 | 設備の容量を決める | 仕事をする | 電圧の維持・磁界形成 |
| 数式 | $V \cdot I$ | $S \cdot \cos \phi$ | $S \cdot \sin \phi$ |
皮相電力
皮相電力(ひそうでんりょく)は、電源から送り出される全体の電力のことです。電圧と電流を単純に掛け合わせたもので、実際に消費されるかどうかは問いません。
$$S = V \cdot I$$ [VA]
単位: VA(ボルトアンペア)
記号: $S$
有効電力
有効電力(ゆうこうでんりょく)は、皮相電力のうち、実際に熱や光、動力(回転)として消費される電力のことです。私たちが「電気を使った」と実感するのはこの部分です。
$$P = V \cdot I \cdot \cos \phi$$ [W]
単位: W(ワット)
記号: $P$
無効電力
無効電力(むこうでんりょく)は、負荷(モーターのコイルやコンデンサなど)と電源の間を行ったり来たりするだけで、消費されない電力のことです。磁界を作るために必要ですが、エネルギーとしては仕事に寄与しません。
$$Q = V \cdot I \cdot \sin \phi$$ [Var]
単位: Var(バール)
記号: $Q$
力率
力率(りきりつ)とは、送り出された電力(皮相電力)のうち、どれだけ有効に仕事に使われたかを示す割合のことです。
$$\text{力率} = \frac{\text{有効電力}}{\text{皮相電力}} = \cos \phi$$
力率が $1$(100%)に近いほど、無駄なく電気が使われていることを意味します。逆に力率が低いと、同じ仕事をするのにより多くの電流を流す必要があり、送電線でのロス(熱など)が増えてしまいます。「消費されないなら、無効電力はゼロの方がいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、モーターやトランス(変圧器)を動かすためには、磁界を発生させる必要があり、そのために無効電力が不可欠です。重要なのは、「必要な分の無効電力だけ確保しつつ、力率を改善して送電の効率を高めること」です。工場などで大きなコンデンサ(進相コンデンサ)を設置するのは、この力率を改善して無駄な電流を減らすためです。
泡:無効電力(ジョッキの中にはあるが、飲むことはできない部分)
ジョッキ全体の容積:皮相電力(液体と泡を合わせた全体量)
泡が多すぎると、大きなジョッキ(大きな設備)を用意しても実際に飲める量は少なくなってしまいます。これが「効率が悪い」状態です。ただし、泡が全くない液体だけのビールだと、それもまた美味しくありません。この液体と泡の最適なバランスを求めるのが力率の改善になります。
【令和7年度上期・問5】RLC直列回路の放電エネルギー
図に示すRLC回路において、静電容量 $C \text{ [F]}$ のコンデンサが電圧 $V \text{ [V]}$ に充電されている。この状態でスイッチSを閉じて、それから時間が十分に経過してコンデンサの端子電圧が最終的に零となった。この間に抵抗 $R \text{ [ }\Omega\text{ ]}$ で消費された電気エネルギー $W \text{ [J]}$ を表す式として、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

| – | (1) | (2) | (3) | (4) | (5) |
|---|---|---|---|---|---|
| $W \text{ [J]}$ | $\frac{1}{2} C^2 V$ | $\frac{1}{2} L V^2$ | $\frac{1}{2} L I^2$ | $\frac{1}{2} \frac{V^2}{R}$ | $\frac{1}{2} C V^2$ |
解説
正解は(5)です。
スイッチSを閉じる前にコンデンサ $C$ に蓄えられていた静電エネルギー $W_C \text{ [J]}$ は、次式で表されます。
$$W_C = \frac{1}{2} CV^2$$
スイッチを閉じた後、十分な時間が経過してコンデンサの電圧が零になったということは、最初に蓄えられていたエネルギーのすべてが回路内で消費されたことを意味します。理想的なコイル $L$ はエネルギーを消費しないため、このエネルギーはすべて抵抗 $R$ でジュール熱として消費されます。
したがって、消費された電気エネルギー $W$ は、
$$W = \frac{1}{2} CV^2$$
【令和7年度上期・問8】交流電流の瞬時値が特定の値になる時刻
ある回路に、 $i = 4\sqrt{2} \sin 120 \pi t \text{ [A]}$ の電流が流れている。この電流の瞬時値が、時刻 $t = 0 \text{ [s]}$ 以降に初めて $4 \text{ [A]}$ となるのは、時刻 $t = t_1 \text{ [s]}$ である。$t_1 \text{ [s]}$ の値として、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
| – | (1) | (2) | (3) | (4) | (5) |
|---|---|---|---|---|---|
| $t_1 \text{ [s]}$ | $\frac{1}{120}$ | $\frac{1}{160}$ | $\frac{1}{240}$ | $\frac{1}{360}$ | $\frac{1}{480}$ |
解説
正解は(5)です。
瞬時値が $4 \text{ [A]}$ になる条件を式で表します。
$$4 = 4\sqrt{2} \sin 120 \pi t_1$$
$$\sin 120 \pi t_1 = \frac{1}{\sqrt{2}}$$
$\sin \theta = 1/\sqrt{2}$ となる最小の正の角度は $\theta = \pi/4 \text{ [rad]}$ です。
$$120 \pi t_1 = \frac{\pi}{4}$$
$$t_1 = \frac{1}{4 \times 120} = \frac{1}{480} \text{ [s]}$$
【令和6年度下期・問9】RC直列回路の電流
$4 \text{ }\Omega$ の抵抗と静電容量が $C \text{ [F]}$ のコンデンサを直列に接続したRC回路がある。このRC回路に、周波数 $50 \text{ Hz}$ の交流電圧 $100 \text{ V}$ の電源を接続したところ、$20 \text{ A}$ の電流が流れた。では、このRC回路に、周波数 $60 \text{ Hz}$ の交流電圧 $100 \text{ V}$ の電源を接続したとき、RC回路に流れる電流の値 $\text{[A]}$ として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
| – | (1) | (2) | (3) | (4) | (5) |
|---|---|---|---|---|---|
| 電流 $\text{[A]}$ | 16.7 | 18.6 | 21.2 | 24.0 | 25.6 |
解説
正解は(3)です。
周波数 $f_1 = 50 \text{ Hz}$ のときのインピーダンス $Z_1$ は、
$$Z_1 = \frac{V}{I_1} = \frac{100}{20} = 5 \text{ [}\Omega\text{]}$$
$Z_1$ は抵抗 $R$ と容量性リアクタンス $X_{C1}$ からなるため、
$$Z_1 = \sqrt{R^2 + X_{C1}^2}$$
$$5 = \sqrt{4^2 + X_{C1}^2} \quad \implies \quad 25 = 16 + X_{C1}^2 \quad \implies \quad X_{C1}^2 = 9 \quad \implies \quad X_{C1} = 3 \text{ [}\Omega\text{]}$$
次に、周波数が $f_2 = 60 \text{ Hz}$ となったときの容量性リアクタンス $X_{C2}$ は、周波数に反比例します。
$$X_{C2} = X_{C1} \times \frac{f_1}{f_2} = 3 \times \frac{50}{60} = 2.5 \text{ [}\Omega\text{]}$$
このときのインピーダンス $Z_2$ は、
$$Z_2 = \sqrt{R^2 + X_{C2}^2} = \sqrt{4^2 + 2.5^2} = \sqrt{16 + 6.25} = \sqrt{22.25} \approx 4.717 \text{ [}\Omega\text{]}$$
流れる電流 $I_2$ は、
$$I_2 = \frac{V}{Z_2} = \frac{100}{4.717} \approx 21.2 \text{ [A]}$$
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