交流電圧の正弦波の「実効値」「平均値」の計算式・導出方法について詳しく解説します。
交流とは
電気回路における交流(AC: Alternating Current)は、時間の経過とともにその大きさ(電圧・電流)と向き(プラス・マイナス)が周期的に変化する電気の流れ方です。家庭のコンセントに届いている電気はすべてこの交流です。以下図のように、一般的な交流は正弦波(せいげんは)の形をしています。
最大値
最大値($V_{max}$)は、交流電圧の瞬時値の最大値です。
瞬時値
瞬時値とは、任意の時間(瞬間)における値です。最大値($V_{max}$)は、交流電圧の瞬時値の最大値です。
平均値
平均値$V{avg}$は、交流電圧の瞬時値$v$の「絶対値」を1周期$T$で平均した値です。以下のとおり最大値$V{max}$の約0.637倍となります。主に交流を直流に変換(整流)して利用する場面や、電気の移動量を測定する画面で「平均値」使われます。
$$V{avg} = \frac{2}{\pi} V{max} \approx 0.637 V_{max}$$
実効値
交流電圧の実効値(RMS: Root Mean Square)は、変化し続ける交流電圧が、直流電圧の何V分に相当する仕事(熱量)をするかを表す値です。交流電圧の大きさはこの「実効値」で表すのが基本です。最大値$Vmax$のとき、実効値$V$は以下の式で求まります。
$$V{rms}=\frac{V{max}}{\sqrt{2}}$$
波形率
波形率とは,実効値の平均に対する比です。 波形率 = 実効値 / 平均値 波形率の値は波形によって異なり,正弦波と比較して,三角波のようにとがっていれば,波形率の値は大きくなり,方形波のように平らであれば,波形率の値は小さくなります。
波高率
波高率とは、最大の実効値に対する比 です。 波高率 = 最大値 / 実効値 波高率の値は波形によって異なり,正弦波と比較して,三角波のようにとがっていれば,波高率の値は大きくなり,方形波のように平らであれば,波高率の値は小さくなります。
単相2線 100V
単相2線100V(一般的な家庭用コンセント)の交流電圧は、実効値(公称電圧)が $100\text{V}$ となります。 最大電圧 ($V{max}$)は、 $$V{max} = \sqrt{2} \times 100 \approx 141.4\text{V}$$ 平均値 ($V{avg}$)は、 $$V{avg} = \frac{2\sqrt{2}}{\pi} \times 100 \approx 90\text{V}$$ ※実効値から計算する場合は、$100 \times \frac{2\sqrt{2}}{\pi} \approx 90\text{V}$
三相3線 200V
三相3線200Vの線間交流電圧は、実効値(公称電圧)が $200\text{V}$ となります。 最大電圧 ($V{max}$)は、 $$V{max} = \sqrt{2} \times 200 \approx 282.8\text{V}$$ 相電圧(対地電圧 $V_p$)は、フェーザ図(Phasor diagram)を用いると、線間電圧 $V_L$ に対して以下の関係になります。 $$V_p = \frac{V_L}{\sqrt{3}} = \frac{200}{\sqrt{3}} \approx 115.5\text{V}$$
平均値を求める式の導出
正弦波 $\sin(\omega t)$ は、$0 \sim \pi$ では正、$ \pi \sim 2\pi$ では負の値をとるため、交流の「正」と「負」の平均をとると「0」になってしまいます。絶対値をとると負の領域が反転するため、積分を $2$ つの区間に分けます。 $$V{avg} = \frac{1}{2\pi} \left( \int{0}^{\pi} |V{max}| \sin(\omega t) d(\omega t) + \int{\pi}^{2\pi} |-V{max}| \sin(\omega t) d(\omega t) \right)$$ ここで、正弦波の山は前半と後半で形が同じ(面積が等しい)ため、計算を簡略化して「$0 \sim \pi$ の面積を $2$ 倍する」形に書き換えます。 $$V{avg} = \frac{1}{2\pi} \times 2 \int{0}^{\pi} V{max} \sin(\omega t) d(\omega t)$$ $$V{avg} = \frac{1}{\pi} \int{0}^{\pi} V{max} \sin(\omega t) d(\omega t)$$ 最大値 $V{max}$ は定数なので積分の外に出し、$\sin$ を積分します($\sin \theta$ の積分は $-\cos \theta$ です)。 $$V{avg} = \frac{V{max}}{\pi} \Big[ -\cos(\omega t) \Big]{0}^{\pi}$$ 括弧の中に、上端($\pi$)と下端($0$)の値を代入します。 $$V{avg} = \frac{V{max}}{\pi} \Big( (-\cos \pi) – (-\cos 0) \Big)$$ ここで、$\cos \pi = -1$、$\cos 0 = 1$ なので、 $$V{avg} = \frac{V{max}}{\pi} \Big( (-(-1)) – (-1) \Big)$$ $$V{avg} = \frac{V{max}}{\pi} ( 1 + 1 )$$ $$V{avg} = \frac{2V{max}}{\pi}$$ 円周率 $\pi \approx 3.14$ を代入すると、以下のようになります。 $$V{avg} = \frac{2}{\pi} V_m \approx 0.637 Vm$$ よって、平均値$V{avg}$は最大値 $V_{max}$ の約 $63.7\%$となります。 https://denken.joho.info/riron/koryu-denatsu-heikinchi-saidaichi-0637/
実効値を求める式の導出
電力は電圧(または電流)の2乗に比例します。直流(DC)の場合、電圧 $V$ が常に一定なので、抵抗 $R$ に電圧を加えたときに発生する電力 $P{dc}$ の計算は単純です。 $$P{dc} = \frac{V^2}{R}$$ 交流(AC)の場合、交流の電圧 $v(t)$ は常に変化しているため、一瞬ごとの電力(瞬時電力) $p(t)$ も常に変化します。 $$p(t) = \frac{v(t)^2}{R}$$ この交流が1周期($T$)の間にする平均的な仕事を知るには、1周期分の瞬時電力を足し合わせて平均を求める必要があります。それにより、変化し続ける値の1周期あたりの平均的な仕事量を知ることができます。つまり、交流電圧の実効値 $V{rms}$ の定義は、「直流電圧 $V$ をかけたときと同じ平均電力を発生させる交流電圧の値」のことです。つまり、以下の等式が成り立つような $V{rms}$ を探すことになります。 (直流の電力)=(交流の平均電力) $$\frac{V{rms}^2}{R} = \text{Average}\left( \frac{v(t)^2}{R} \right)$$ この式から抵抗 $R$ を消去して整理します。右辺の交流の電力の平均を、積分の形で書き直します。 $$V{rms}^2 = \frac{1}{T} \int{0}^{T} v(t)^2 dt$$ 左辺を $V{rms}$ だけにするために、全体の平方根(Root)をとります。 $$V{rms} = \sqrt{\frac{1}{T} \int{0}^{T} v(t)^2 dt}$$ 二乗された単位を元の「電圧(V)」の単位に戻すことができました。
正弦波以外の実効値と平均値
正弦波以外の実効値と平均値の計算式をまとめると以下表のようになります。
| 波形の種類 | 実効値$V_{rms}$ | 平均値$V_{mean}$ |
|---|---|---|
| 直流 | $V_m$ | $V_m$ |
| 正弦波 | $\frac{V_m}{\sqrt{2}}=0.707V_m$ | $\frac{2V_m}{\pi}=0.637V_m$ |
| 全波整流波 | $\frac{V_m}{\sqrt{2}}=0.707V_m$ | $\frac{2V_m}{\pi}=0.637V_m$ |
| 半波整流波 | $\frac{V_m}{2}$ | $\frac{V_m}{\pi}$ |
| 三角波 | $\frac{V_m}{\sqrt{3}}$ | $\frac{V_m}{2}$ |
| 方形波 | $V_m$ | $V_m$ |
| 矩形波 | $\sqrt{\frac{\tau}{2\pi}}V_m$ | $\frac{\tau}{2\pi}V_m$ |
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