電験3種(理論)で出題される三相交流回路の試験対策と過去問題について解説します。
三相交流とは
三相交流(さんそうこうりゅう)とは、位相が互いに120度($2\pi/3$ rad)ずつズレた3系統の単相交流を組み合わせた送電方式のことです。現代の電力インフラにおいて、発電所から変電所、そして工場や一般家庭の近くまで電力を運ぶための主流な方法として採用されています。三相交流の電圧は、下図(左)のように発電機内部に3つのコイルを120度の間隔で配置し、回転子(中心にあるN・Sの磁石)を回転させることで各コイルを磁束が貫き、電磁誘導によって電圧が発生します。

※$V_m=100$[V]、f=0.5[Hz]の場合の三相交流波形
各コイルには同じ周波数と最大電圧を持つ交流電圧が誘起されますが、磁石が回転しながら各コイルを順番に通過するため、発生する電圧のピーク(山)にも時間的なズレが生じます。これが「位相差」です。120度の間隔でコイルが配置されているため、位相も120度($\frac{2}{3}\pi$)ずつズレます。各コイルから伸びる3本の線はU相、V相、W相(あるいはR相、S相、T相)と呼ばれます。各相の瞬時電圧を$v_u, v_v, v_w$、最大電圧を$V_m$、角速度を$\omega$とすると、次のように表されます。
$v_U(t) = V_m \sin(\omega t)$
$v_V(t) = V_m \sin(\omega t – \frac{2}{3}\pi)$
$v_W(t) = V_m \sin(\omega t – \frac{4}{3}\pi)$
これら3つの電圧の和$v_{Total}=v_U+v_V+v_W$は、常に0になるという性質を持っています。以下ページに三相交流発電機のシミレーションがありますので、動かしてみて動作のイメージを掴んでください。
また、3つの電圧の和が常に0になる数学的な証明は以下ページで別途解説しています。

三相交流の利点
単相交流と比較したときの三相交流の主な利点は以下のとおりです。
建設費が低く、送電効率が高い
次節で仕組みは解説しますが、三相交流は中性線を省略できるため、電線の使用量を少なくできます。これは建設コストや送電損失の低減に直結します。バランスが取れている(平衡負荷)場合、3つの線をまとめた帰りの電流も $0$ になるため、理論上は帰りの電線を細くしたり、結線方法(Y結線など)によって効率的に送電できたりします。
回転磁界を容易に作れる
三相交流を電動機(モーター)のコイルに流すと、特別な装置がなくても自然に回転する磁界が発生します。これにより、構造がシンプルで頑丈な誘導電動機を利用できるため、工場の動力源として非常に重宝されています。
電力供給が一定
単相交流では電力がゼロになる瞬間が周期的に訪れますが、三相交流では3つの相が補い合うため、合成された電力は常に一定になります。これにより、大型機器を滑らかに運転することが可能です。
三相三線式
三相交流は、位相が120度ずつずれた3つの単相交流を組み合わせたものです。独立した3つの単相回路として考えると、本来は以下図のように各相に2本ずつ、合計6本の電線が必要となります。
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しかし、三相交流には「各相の電圧の瞬時値の和が常に0になる」という性質があります。そのため、以下図のように3つの回路の帰り道を1本の共通線(中性線)としてまとめて4本線にしても、負荷のバランスの取れた状態であれば中性線に流れる電流の合計は0になります。
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中性線に電流が流れないのであれば、最終的にこの中央の電線を取り除くことが可能です。その結果、3本の電線だけで3系統分の電力を送ることができるようになります。この仕組みを「三相三線式」といいます。
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この方式を採用することで、電線の本数を減らして建設コストを抑えられるだけでなく、送電ロスの削減や、単相交流と比較して効率よく電力を得られるといった利点があります。

Y-Y(スター結線-スター結線)
Y結線(スター結線)とは、三相交流回路において3つの相の片端を1点(中性点)で接続する方式です。電源側と負荷側の双方がこの結線である場合をY-Y結線と呼びます。

ドットあり($\dot{V}$):フェーザ(複素数)。大きさだけでなく位相(向き)の情報を含む。
ドットなし($V$):実効値。複素数の絶対値 $|\dot{V}|$ を表し、電圧の大きさのみを指す。
電源が対称三相交流(各相の電圧の大きさが$E$で等しく、位相が $120^\circ$ ずつずれている状態)であり、かつ負荷が平衡負荷(各相のインピーダンス $Z$ がすべて等しい)である場合、以下の関係が成立します。
| 項目 | 関係式 | 特徴・説明 |
|---|---|---|
| 電圧 | $V = \sqrt{3} E = \sqrt{3} ZI$ | 線間電圧 $V$ は「電源側の相電圧 $E$」と「負荷側の相電圧降下$ZI$」 の $\sqrt{3}$ 倍になります。位相は相電圧より $30^\circ$ 進みます。 |
| 電流 | 線電流=相電流 | 線電流 と相電流 は常に$I$となって等しくなります。(直列回路のため) |
| 三相電力 | $P = 3EI \cos \theta = \sqrt{3}VI \cos \theta $ | 3つの負荷で消費される全電力 $P$ は、1相分の消費電力の3倍となります。 |
$\cos \theta$:力率
平衡負荷の場合、各相の電流のベクトル和が $0$ となり、中性点間に電位差が生じません。そのため、負荷には電源の相電圧がそのまま加わります。
電源側と負荷側それぞれの中心点(中性点)を電線で結ぶことも可能で(4線式)、これにより電圧のバランスを安定させることができます。一般的な配電や、家庭用の単相負荷をバランスよく接続する場合などに適しています。

ΔーΔ結線(デルタ・デルタ)

Δ結線(デルタ結線)とは、三相交流回路において3つの相を環状(三角形)に接続する方式です。電源側と負荷側の双方がこの結線である場合をΔ-Δ結線と呼びます。
ドットあり($\dot{V}$):フェーザ(複素数)。大きさだけでなく位相(向き)の情報を含む。
ドットなし($V$):実効値。複素数の絶対値 $|\dot{V}|$ を表し、電圧の大きさのみを指す。
電源が対称三相交流(各相の電圧の大きさが$E$で等しく、位相が $120^\circ$ ずつずれている状態)であり、かつ負荷が平衡負荷(各相のインピーダンス $Z$ がすべて等しい)である場合、以下の関係が成立します。
ポイント
Δ-Δ結線のポイントを整理すると以下表のとおりです。
| 項目 | 関係式(実効値) | 位相の関係 |
|---|---|---|
| 電圧 | $V = E = ZI$ | 線間電圧$V$、電源の相電圧$E$、負荷の電圧降下$ZI$は等しい(同位相) |
| 電流 | 線電流 = 相電流$I$ × $\sqrt{3}$ | 線電流は、相電流$I$の $\sqrt{3}$ 倍(位相は$30^\circ$ 遅れる) |
| 三相電力 | $P = 3EI \cos \theta = \sqrt{3}VI \cos \theta $ | 3つの負荷で消費される全電力 $P$は1相分の消費電力の3倍 |
主な特徴
Δ-Δ結線の主な特徴は以下のとおりです。
② V結線への移行・・・3台の単相変圧器で運用している場合、1台が故障しても残りの2台で**V結線**として送電を継続できる(出力は $1/\sqrt{3}$ に低下)利点があります。
③ 中性点がない・・・Y結線と異なり物理的な中性点を持たないため、中性点接地が必要な高電圧系統には不向きな側面もあります。

不平衡三相回路
不平衡三相回路とは、接続された3つの負荷のインピーダンスが互いに異なる状態を指します。各相の負荷が異なると、流れる電流の大きさや位相のバランスが崩れます。この場合、各相の電流を合計しても0にならないため、スター結線で中性線が存在する場合は、その不平衡分が中性線に電流として流れます。中性線がない三相三線式で不平衡が生じると、中性点の電位が変動し、各負荷にかかる電圧が不均等になる「中性点電位の移動」という現象が発生します。
Δ-Y変換
Δ-Y変換は、Δ結線(デルタ結線)された電源もしくはインピーダンスをY結線(スター結線)に変換します。三相交流回路において、電源がΔ結線で負荷がY結線である場合などに、どちらか一方の形式に統一することで、単相分の等価回路として計算を簡略化することができます。
インピーダンスの場合
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Δ結線のインピーダンスからY結線の各インピーダンスを求める計算式は以下のとおりです。
$$Z_a = \frac{Z_{ab} Z_{ca}}{Z_{ab} + Z_{bc} + Z_{ca}}$$
$$Z_b = \frac{Z_{ab} Z_{bc}}{Z_{ab} + Z_{bc} + Z_{ca}}$$
$$Z_c = \frac{Z_{bc} Z_{ca}}{Z_{ab} + Z_{bc} + Z_{ca}}$$
計算式の分母はΔ結線の3つのインピーダンスの和となり、分子は求めたい端子に隣接する2つのインピーダンスの積となります。以下のように計算式を覚えると、試験時に素早く解けるのでおすすめです。
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② $\dot{Z}_b$ を求める時は、分子に $\dot{Z}_b$ の両側 $\dot{Z}_{ab} \times \dot{Z}_{bc}$ をかけ、分母に $\dot{Z}_{ab} + \dot{Z}_{bc} + \dot{Z}_{ca}$ を入れる
③ $\dot{Z}_c$ を求める時は、分子に $\dot{Z}_c$ の両側 $\dot{Z}_{bc} \times \dot{Z}_{ca}$ をかけ、分母に $\dot{Z}_{ab} + \dot{Z}_{bc} + \dot{Z}_{ca}$ を入れる
電源の場合
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Δ結線の電源(相電圧=線間電圧)をY結線の電源(相電圧)に変換する場合、外部から見た線間電圧の特性を維持するように変換します。平衡三相電源において、Δ結線の各相の起電力を $\dot{E_{ab}}, \dot{E_{bc}}, \dot{E_{ca}}$、変換後のY結線の各相の起電力を $\dot{E_a}, \dot{E_b}, \dot{E_c}$ とすると、以下の関係になります。
$$\dot{E_a} = \frac{\dot{E_{ab}}}{\sqrt{3}} \angle -30^\circ$$
$$\dot{E_b} = \frac{\dot{E_{bc}}}{\sqrt{3}} \angle -30^\circ$$
$$\dot{E_c} = \frac{\dot{E_{ca}}}{\sqrt{3}} \angle -30^\circ$$
実効値の大きさは $1/\sqrt{3}$ 倍になり、位相は元の線間電圧よりも $30^\circ$ 遅れます。
Y-Δ変換
インピーダンスの場合
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Y結線のインピーダンスからΔ結線の各インピーダンスを求める計算式は以下のとおりです。
$$Z_{ab} = \frac{Z_a Z_b + Z_b Z_c + Z_c Z_a}{Z_c}$$
$$Z_{bc} = \frac{Z_a Z_b + Z_b Z_c + Z_c Z_a}{Z_a}$$
$$Z_{ca} = \frac{Z_a Z_b + Z_b Z_c + Z_c Z_a}{Z_b}$$
分子はY線のインピーダンスを2つずつ掛け合わせて足した総和となり、分母は求めたい辺の向かい側(対面)にある端子のインピーダンスとなります。以下のように計算式を覚えると、試験時に素早く解けるのでおすすめです。
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② $\dot{Z}_{bc}$ を求める時は、分子に $\dot{Z}_a\dot{Z}_b + \dot{Z}_b\dot{Z}_c + \dot{Z}_c\dot{Z}_a$、分母に $\dot{Z}_a$
③ $\dot{Z}_{ca}$ を求める時は、分子に $\dot{Z}_a\dot{Z}_b + \dot{Z}_b\dot{Z}_c + \dot{Z}_c\dot{Z}_a$、分母に $\dot{Z}_b$
インピーダンスの場合(平衡状態)
すべてのインピーダンスが同じ値である平衡状態では、計算はより単純になります。デルタ結線のインピーダンスを $Z_{\Delta}$、ワイ結線のインピーダンスを $Z_Y$ とすると、以下の関係が成立します。
$$Z_Y = \frac{1}{3} Z_{\Delta}$$
$$Z_{\Delta} = 3 Z_Y$$
Δ結線からY結線に変換するとインピーダンスは3分の1になり、逆にワイ結線からデルタ結線に変換すると3倍になります。
電源の場合
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Y結線の電源(相電圧)をΔ結線の電源(相電圧=線間電圧)に変換する場合、以下の関係になります。
$$\dot{E_{ab}} = \sqrt{3} \dot{E_a} \angle 30^\circ$$
$$\dot{E_{bc}} = \sqrt{3} \dot{E_b} \angle 30^\circ$$
$$\dot{E_{ca}} = \sqrt{3} \dot{E_c} \angle 30^\circ$$
平衡負荷のΔ-Y変換、Y-Δ変換
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平衡負荷(3つのインピーダンスがすべて同じ値)の場合、 「Y結線の1相のインピーダンス$\dot{Z_Y}$は、Δ結線の1相のインピーダンス($\dot{Z_{\Delta}}$)の3分の1」になります。よって、以下の計算式で簡単に求まります。
$$\dot{Z_Y} = \frac{1}{3}\dot{Z_{\Delta}} $$
$$\dot{Z_{\Delta}} = 3\dot{Z_Y} $$
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【練習問題】三相電力の計算

図のような三相3線式回路の全消費電力[kW]はいくらか。
解説
一相分のインピーダンスZp[Ω]は以下のとおり。
$Z_p= \sqrt{R^2 + (X_L-X_c)^2} = 10$
相電流Ip[A]は以下のとおり20[A]と求まります。
$I_p=\frac{V_p}{Z_p}=\frac{200}{10}=20$
一相分の力率cosθは以下のとおり0.6と求まります。
$cos \theta = \frac{R}{Z}=\frac{6}{10}=0.6$
三相分の消費電力$P_{3L}$は以下のとおり7200[W]と求まります。
$P_{3L}=\sqrt{3}V_LI_Lcos\theta =\sqrt{3}V_L\sqrt{3}I_pcos\theta = 3V_LI_pcos\theta = 3\cdot 200 \cdot 20 \cdot 0.6 = 7200$
【令和4年度下期・問1・一部改変】三相交流回路の抵抗値と消費電力

図のように,抵抗6[Ω]と誘導性リアクタンス8[Ω]をY結線し、抵抗$r$[Ω]をΔ結線した平衡三相負荷に、200Vの対称三相交流電源を接続した回路がある。抵抗6[Ω]と誘導性リアクタンス8[Ω]に流れる電流の大きさを$I_1$[A]、抵抗$r$[Ω]に流れる電流の大きさを$I_2$[A] とする。電流$I_1$[A]と$I_2$[A]の大きさが等しいとき抵抗$r$[Ω]、図中の回路が消費する電力P[kW]を求めよ。
解説
「対称三相交流電源」と「抵抗と誘導性リアクタンスのY結線」は以下図のY-Y結線となります。

Y結線の一相あたりのインピーダンス抵抗$Z_1$[Ω] の大きさは、以下のとおり10[Ω]と求まります。
$Z_1=\sqrt{6^2+8^2}=10$[Ω]
Y結線の一相あたりのインピーダ$Z_1$ [Ω] に加わる電圧降下$V_1$ [V] は、
$V_1=\frac{200}{\sqrt{3}}$[V]
となります。よって、Y結線の一相あたりに流れる電流$I_1$[A]は以下のとおり11.55[A]となります。
$I_1=\frac{V_1}{Z_1}=\frac{\frac{200}{\sqrt{3}}}{10}=11.55$[A]
題意より$I_1=I_2$です。ここで、Δ結線の各相の抵抗r[Ω]に加わる電圧は線間電圧に等しい(200V)ため、以下のとおり抵抗r[Ω]は17.32[Ω]と求まります。
$r=\frac{200}{I_2}=\frac{200}{11.55}=17.32$[Ω]
よって、回路全体が消費する電力P[kW]は、Y結線とΔ結線それぞれ求めたものを加算して9.3[kW]と求まります。
$P=3(6I_1^2) + 3(rI_2^2) = 9330[W]=9.3[kW]$
【令和元年度上期・問16・一部改変】三相交流回路の線電流と有効電力

図のように線間電圧 200 V ,周波数 50 Hz の対称三相交流電源に RLC 負荷が接続されている。 $R=10$ Ω ,電源角周波数を$\omega$ [rad/s] として, $\omega L=10$ Ω , $\frac{1}{\omega C}=20$ Ω である。このときの電源電流$I$[A]と三相負荷の有効電力P[kW]を求めよ。
解説
1相あたりの抵抗$R$、リアクタンス$L$、コンデンサ$C$に流れるそれぞれの電流$\dot{I_R}, \dot{I_L}, \dot{I_C}$は以下のとおり。
$\dot{I_R}=\frac{200\sqrt{3}}{10}=\frac{20}{\sqrt{3}}$[A]
$\dot{I_L}=\frac{200\sqrt{3}}{j10}=\frac{-j20}{\sqrt{3}}$[A]
$\dot{I_C}=\frac{200\sqrt{3}}{-j20}=\frac{j10}{\sqrt{3}}$[A]
電源を流れる電流$\dot{I}$は以下のとおり計算できます。
$\dot{I}=\dot{I_R}+\dot{I_L}+\dot{I_C}=\frac{20}{\sqrt{3}}-\frac{j10}{\sqrt{3}}$
電源を流れる電流の大きさは、以下のとおり$I=13$[A]と計算できます。。
$I=\sqrt{(\frac{20}{\sqrt{3}})^2+(\frac{10}{\sqrt{3}})^2}=13$[A]
次に、1相あたりの有効電力$P_1$は以下のとおり計算できます。
$P_1=\frac{V^2}{R}=\frac{(200\sqrt{3})^2}{10}=\frac{4000}{3}$ [W]
三相負荷の有効電力Pは3相分なので、$P_1$の3倍の$4[kW]$となる。
【平成30年度・問15・一部改変】三相交流回路の消費電力
図のように、$\dot{E}_a, \dot{E}_b, \dot{E}_c$[V]をもつ3つの定電圧源に、スイッチ$S_1, S_2$、抵抗$R_1=10, R_2=20$[Ω]を接続した交流回路がある。次の①②の値を求めよ。ただし、$ \dot{E}_a, \dot{E}_b, \dot{E}_c $[V]の正の向きはそれぞれ図の矢印のようにとり、これらの実効値は100V、位相は$\dot{E}_a, \dot{E}_b, \dot{E}_c$[V]の順に$\frac{2}{3}pi $[rad]ずつ遅れているものとする。
①スイッチ$S_2$を開いた状態でスイッチ$S_1$を閉じたとき、抵抗$R_1$[Ω]に流れる電流$dot{I}_1$の実効値[A]。
②スイッチ$S_1$を開いた状態でスイッチスイッチ$S_2$を閉じたとき、抵抗$R_2$[Ω]で消費される電力[W]。
解説①
抵抗$R_1$ にかかる電圧は$\dot{E}_b-\dot{E}_c$。キルヒホッフの法則より、抵抗抵抗$R_1$に流れる電流$\dot{I}_1$の大きさは以下のとおり。
$|\dot{I}_1|=|\frac{\dot{E}_b-\dot{E}_c}{R_1}|=\frac{100\sqrt{3}}{10}=17.3$[A]
解説②
抵抗$R_2$ にかかる電圧は $\dot{E}_a + \dot{E}_b – \dot{E}_c$ です。キルヒホッフの法則より、抵抗 $R_2$ に流れる電流 $\dot{I}_2$ の大きさは以下の通りとなります。
$$|\dot{I}_2| = \left| \frac{\dot{E}_a + \dot{E}_b – \dot{E}_c}{R_2} \right| = \left| \frac{-2\dot{E}_c}{R_2} \right| = \frac{200}{20} = 10 \text{ [A]}$$
- 抵抗 $R_2$ で消費される電力 $P_2$ は以下の通りです。
$$P_2 = R_2 |\dot{I}_2|^2 = 20 \times 10^2 = 2000 \text{ [W]}$$
【令和7年度上期・問15】平衡三相負荷の電流計算
図のように、相電圧 $200\text{V}$ の対称三相交流電源に、複素インピーダンス $\dot{Z} = 5\sqrt{3} + j5 \text{ [}\Omega\text{ ]}$ の負荷が Y 結線された平衡三相負荷を接続した回路がある。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 電流 $\dot{I}_1$ の値 $\text{[A]}$ として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) $20.00 \angle -\frac{\pi}{3}$
(2) $11.55 \angle -\frac{\pi}{3}$
(3) $16.51 \angle -\frac{\pi}{6}$
(4) $20.00 \angle -\frac{\pi}{6}$
(5) $11.55 \angle -\frac{\pi}{6}$
(b) 電流 $\dot{I}_{ab}$ の値 $\text{[A]}$ として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) $20.00 \angle -\frac{\pi}{6}$
(2) $6.67 \angle -\frac{\pi}{6}$
(3) $11.55 \angle -\frac{\pi}{6}$
(4) $6.67 \angle -\frac{\pi}{3}$
(5) $11.55 \angle -\frac{\pi}{3}$
解説
正解は (a)が(2)、(b)が(2)です。
(a) 線電流 $\dot{I}_1$ の計算を行います。負荷のインピーダンスを $\dot{Z} = R + jX \text{ [}\Omega\text{ ]}$ とすると、その絶対値 $|\dot{Z}|$ と位相角 $\theta$ は以下の公式で求められます。
$$|\dot{Z}| = \sqrt{R^2 + X^2}$$
$$\theta = \tan^{-1} \frac{X}{R}$$
数値を代入します。
$$|\dot{Z}| = \sqrt{(5\sqrt{3})^2 + 5^2} = \sqrt{75 + 25} = 10 \text{ [}\Omega\text{ ]}$$
$$\theta = \tan^{-1} \frac{5}{5\sqrt{3}} = \tan^{-1} \frac{1}{\sqrt{3}} = \frac{\pi}{6} \text{ [rad]}$$
$$\dot{Z} = 10 \angle \frac{\pi}{6} \text{ [}\Omega\text{ ]}$$
線間電圧を $V_l$、相電圧を $E_a$ とすると、Y 結線における大きさの関係と、線間電圧 $\dot{V}_{ab}$ を基準とした場合の各インピーダンスに加わる相電圧 $\dot{E}_p$ は以下の通りです。
$$E_p = \frac{V_l}{\sqrt{3}}$$
$$\dot{E}_p = E_a \angle -\frac{\pi}{6}$$
$V_l = 200\text{V}$ の線間電圧が、Y 結線された負荷に加わります。Y 結線において、各インピーダンス $\dot{Z}$ に加わる電圧(相電圧 $\dot{E}_p$)は、線間電圧の $\frac{1}{\sqrt{3}}$ 倍になります。数値を代入します。
$$E_p = \frac{200}{\sqrt{3}} \approx 115.5 \text{ [V]}$$
$$\dot{E}_p = 115.5 \angle -\frac{\pi}{6} \text{ [V]}$$
Y 結線では線電流 $\dot{I}_l$ と相電流 $\dot{I}_p$ は等しく、オームの法則より以下の公式で求められます。
$$\dot{I_1} = \frac{\dot{E}_p}{\dot{Z}}$$
数値を代入します。
$$\dot{I_1} = \frac{115.5 \angle -\frac{\pi}{6}}{10 \angle \frac{\pi}{6}} = 11.55 \angle \left( -\frac{\pi}{6} – \frac{\pi}{6} \right) = 11.55 \angle -\frac{\pi}{3} \text{ [A]}$$
したがって、(a)の正解は(2)です。
(b) 端子 a, b 間を流れる電流 $\dot{I_{ab}}$ は、負荷を $\Delta$ 結線に変換することで、線間電圧 $\dot{V_{ab}}$ を直接使って求めることができます。平衡負荷において、Y 結線のインピーダンス $\dot{Z_Y}$ を $\Delta$ 結線のインピーダンス $\dot{Z_\Delta}$ に変換します。
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$$\dot{Z_\Delta} = 3 \dot{Z}_Y$$
$$\dot{Z_\Delta} = 3 \times 10 \angle \frac{\pi}{6} = 30 \angle \frac{\pi}{6} \text{ [}\Omega\text{ ]}$$
$\Delta$ 結線の相には線間電圧 $\dot{V}_{ab}$ が直接加わるため、以下のオームの法則で電流が求まります。
$$\dot{I_{ab}} = \frac{\dot{V_{ab}}}{\dot{Z_\Delta}}$$
線間電圧を基準($\dot{V_{ab}} = 200 \angle 0$)とします。
$$\dot{I_{ab}} = \frac{200 \angle 0}{30 \angle \frac{\pi}{6}} = \frac{200}{30} \angle \left( 0 – \frac{\pi}{6} \right) \approx 6.67 \angle -\frac{\pi}{6} \text{ [A]}$$
したがって、(b)の正解は(2)となります。
【令和6年度下期・問15】三相交流回路の電流と力率改善

図1のように、相電圧 $200 \text{ V}$、周波数 $50 \text{ Hz}$ の対称三相交流電源に、抵抗とインダクタンスからなる三相平衡負荷を接続した交流回路がある。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 図1の回路において、負荷電流 $I$ の値 $\text{[A]}$ として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
| – | (1) | (2) | (3) | (4) | (5) |
|---|---|---|---|---|---|
| 負荷電流 $I \text{ [A]}$ | 22.2 | 23.1 | 40 | 66.6 | 69.2 |
(b) 図2のように、静電容量 $C \text{ [F]}$ のコンデンサを $\Delta$ 結線して、その端子 a’、b’ 及び c’ をそれぞれ図1の端子 a、b 及び c に接続した。その結果、三相交流電源から見た負荷の力率は $1$ になったという。静電容量 $C$ の値 $\text{[F]}$ として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
| – | (1) | (2) | (3) | (4) | (5) |
|---|---|---|---|---|---|
| 静電容量 $C \text{ [F]}$ | $1.9 \times 10^{-6}$ | $1.7 \times 10^{-4}$ | $2.1 \times 10^{-4}$ | $7.4 \times 10^{-4}$ | $5.9 \times 10^{-2}$ |
解説
正解は(a)-(3)、(b)-(2)です。
(a) 図1の回路はY結線の対称三相交流電源に、Y結線の三相平衡負荷が接続されています。
電源の相電圧は $V_p = 200 \text{ [V]}$ です。
1相分の負荷のインピーダンス $Z \text{ [}\Omega\text{]}$ を求めます。
抵抗 $R = 3 \text{ [}\Omega\text{]}$ であり、インダクタンス $L = 12.75 \text{ [mH]}$ の誘導性リアクタンス $X_L \text{ [}\Omega\text{]}$ は、周波数 $f = 50 \text{ [Hz]}$ より、
$$X_L = 2\pi fL = 2 \times \pi \times 50 \times 12.75 \times 10^{-3} \approx 4.0 \text{ [}\Omega\text{]}$$
したがって、1相分のインピーダンスの大きさ $Z$ は、
$$Z = \sqrt{R^2 + X_L^2} = \sqrt{3^2 + 4^2} = \sqrt{9 + 16} = \sqrt{25} = 5 \text{ [}\Omega\text{]}$$
負荷電流 $I$ は相電流であり、相電圧 $V_p$ をインピーダンス $Z$ で割ることで求められます。
$$I = \frac{V_p}{Z} = \frac{200}{5} = 40 \text{ [A]}$$
よって、最も近い値は 40 となります。
(b) 力率が 1 になるということは、負荷の遅れ無効電力と、コンデンサの進み無効電力が等しくなることを意味します。
まず、図1の回路(負荷)の三相全体の遅れ無効電力 $Q_L \text{ [var]}$ を求めます。1相分の遅れ無効電力は $I^2 X_L$ です。
$$Q_L = 3 \times I^2 X_L = 3 \times 40^2 \times 4.0 = 3 \times 1600 \times 4.0 = 19200 \text{ [var]}$$
次に、図2のように静電容量 $C \text{ [F]}$ を $\Delta$ 結線したコンデンサを接続した場合の、三相全体の進み無効電力 $Q_C \text{ [var]}$ を求めます。
$\Delta$ 結線されたコンデンサに加わる電圧は線間電圧 $V_l$ です。相電圧 $V_p = 200 \text{ [V]}$ より、線間電圧 $V_l$ は、
$$V_l = \sqrt{3} V_p = 200\sqrt{3} \text{ [V]}$$
1相分のコンデンサの容量性リアクタンスは $X_C = \frac{1}{2\pi fC} \text{ [}\Omega\text{]}$ なので、三相全体の進み無効電力 $Q_C$ は、
$$Q_C = 3 \times \frac{V_l^2}{X_C} = 3 \times 2\pi fC \times V_l^2$$
数値を代入します。
$$Q_C = 3 \times 2 \times \pi \times 50 \times C \times (200\sqrt{3})^2$$
$$Q_C = 300\pi \times C \times 120000 = 36000000\pi C \text{ [var]}$$
力率が 1 になるための条件は $Q_L = Q_C$ なので、
$$19200 = 36000000\pi C$$
$$C = \frac{19200}{36000000\pi} = \frac{192}{360000\pi} \approx \frac{192}{1130973} \approx 1.697 \times 10^{-4} \text{ [F]}$$
最も近い値は $1.7 \times 10^{-4}$ となります。
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