【電験3種・理論】過渡現象(過渡応答)の試験対策と過去問題を解説

電験3種(理論)で出題される過渡現象(過渡応答)の試験対策と計算問題について解説します。

直流回路の過渡現象

交流回路のRLC回路の特性とは全く別物ですので注意してください。
直流回路のRLC回路においては、過渡現象によりリアクトルとコンデンサは逆の特性を示します。

  1. 過渡状態(電圧が印加された瞬間)
    • リアクトル$L$に流れる電流値を維持しようとするため、リアクトルに電圧が印加された瞬間はほとんど電流は流れないため、「リアクトル$L$は開放」と考えます。
    • コンデンサ$C$には電荷がなく、電流が流れやすい状態となり、「コンデンサ$C$は短絡」と考えます。
  2. 定常状態(電圧が印加されて十分時間が経過後)
    • 電圧が印加されて十分時間が経過した後、リアクトル$L$の抵抗はほぼ0[Ω]になるため、「短絡」と考えます。
    • コンデンサに電荷が十分溜まっているため、電流が流れなくなり、「開放」と考えます。

【RC直列回路】時定数τ=RC

時定数$\tau$(緩和時間とも呼ばれる)とは、回路の応答の速さを表す数値です。
時定数$\tau$と回路の応答の速さは「反比例」の関係にあります。つまり時定数の値が小さいほど、回路の応答速度(立ち上がり速度)が速いことになります。
RC直列回路に流れる電流$I$、抵抗にかかる電圧$V_R$、コンデンサにかかる電圧$V_C$と時定数$\tau$の関係は次式で表せます。

$i(t)=\frac{V_i}{R} e^{-\frac{t}{RC}}$

$V_R(t)= V_ie^{-\frac{t}{RC}}$

$V_C(t)= V_i ( 1 – e^{-\frac{1}{RC}t} )$

$\tau =RC$

パラメータ 説明
$V_i$ 入力電圧
$R$ 抵抗値
$C$ コンデンサの静電容量
$V_R$ 抵抗Rにかかる電圧
$V_c$ コンデンサCにかかる電圧
$\tau$ 時定数(別名:緩和時間, 立ち上がりに比例)

抵抗R、コンデンサの静電容量Cが大きくなると時定数τも増大するため、応答時間(立ち上がり・立ち下がりの時間)は遅くなります。
この関係は物理的に以下の意味をもちます.

  • 抵抗が大きい
    • 電流があまり流れず、コンデンサになかなか電荷がたまらないため, 電圧変化に時間がかかる(時定数は抵抗に比例)
  • 静電容量が大きい
    • 電荷がたまっていてもなかなか電圧が変化せず、時間がかかる(時定数は静電容量にも比例)

【RL直列回路】時定数τ=L/R

時定数$\tau$とは、緩和時間とも呼ばれ、回路の応答の速さを表す数値です。

時定数$\tau$と回路の応答の速さは「反比例」の関係にあります。

  • RL直列回路に流れる電流$I$、抵抗にかかる電圧$V_R$、コイルにかかる電圧$V_L$と時定数$\tau$の関係は次式で表せます。

$i(t)= \frac{V_i}{R} (1-V_i^{-\frac{R}{L}t})$

$V_R(t)= V_i (1-V_i^{-\frac{R}{L}t})$

$V_L(t)= V_i^{-\frac{R}{L}t}$

$\tau = \frac{L}{R}$

パラメータ 説明
$V_i$ 入力電圧
$R$ 抵抗値
$L$ コイルのインダクタンス
$V_R$ 抵抗Rにかかる電圧
$V_L$ コイルLにかかる電圧
$\tau$ 時定数(別名:緩和時間, 立ち上がり時間に比例)。定常状態の約63.2%まで到達する時間。

抵抗$R$が大きくなると立ち上がり・下がり時間(定常状態に達するまでの時間)は短くなります。
逆にコイルのインダクタンス$L$が大きくなると立ち上がり・下がり時間(定常状態に達するまでの時間)は長くなります。

この関係は物理的に以下の意味をもちます.

  • 抵抗が大きい
    • 電流があまり流れず、コイルで電流に比例して発生する磁束も少しになるため, 電流変化も小さく定常状態にすぐに落ち着く(時定数は抵抗に反比例)
  • インダクタンスが大きい
    • コイルでインダクタンスに比例して磁束も多く発生するため, 電流変化も大きくなり定常状態に落ち着くのに時間がかかる(時定数はインダクタンスに比例)

【CR直列回路】微分回路

入力信号(電圧)の時間微分(傾き)を出力する回路を微分回路といいます。
微分回路は、「パルスの検出」「ベースラインの除去」「ハイパスフィルター」「ビデオ信号の同期検出」などに用いられています。
この記事では、微分回路の1つである抵抗(R)とコンデンサ(C) を直列接続したCR回路の仕組みについて紹介します。

抵抗(R)とコンデンサ(C) を直列接続したCR回路は下図のようになります。

【電圧/電流】

  • 入力電圧を$V_i$とするとき、時刻$t$における出力電圧$V_o$と電流$i$は次式で計算できます。

$V_o=V_ie^{-\frac{t}{\tau}}$

$i=\frac{V}{R}e^{-\frac{t}{\tau}}$

$\tau =RC$

ここで、 $\tau$ は時定数と呼ばれ、回路の応答の速さを示しています。
時定数が大きいほど回路の応答が遅く、小さいほど応答が速いことを表します。

例えばパルス波(入力電圧)を加えた時の出力電圧の波形は下図のようになります

出力電圧の波形が入力電圧の波形を微分したような形になっていることがわかります。
時定数 $\tau$ が小さいほど応答が速くなるので、出力波形の傾きもより急勾配になります。

【LR直列回路】積分回路

入力(電圧)の時間積分を出力する回路を積分回路といいます。
この積分回路は「検波回路」「ディレイ回路」「ローパスフィルタ」「ノイズ除去」などに用いられています。
この記事では、積分回路の1つである抵抗(R)とコイル(L) を直列接続したLR回路の仕組みについて紹介します。

  • 抵抗(R)とコイル(L) を直列接続したLR回路は下図のようになります。

【電圧/電流】

  • 入力電圧を $V_o$とするとき、時刻$t$における出力電圧を $V_o$とLR回路中を流れる電流を $i$ は以下のとおり。

$V_o=V_i(1-e^{-\frac{t}{\tau}})$

$i=\frac{V_i}{R}(1-e^{-\frac{t}{ \tau}})$

$\tau=\frac{L}{R}$

ここで、 $\tau$ は時定数と呼ばれ、回路の応答の速さを示しています。時定数が大きいほど回路の応答が遅く、小さいほど応答が速いことを表します。
例えばパルス波(入力電圧)を加えた時の出力電圧の波形は下図のようになります。

出力電圧の波形が入力電圧の波形を積分したような形になっていることがわかります。
時定数 $\tau$ が小さいほど応答が早くなるので、出力波形の傾きもより急勾配になります。

【令和元年度・問7・一部改変】RLC回路の過渡現象

図

図のように,三つの抵抗 R1 [Ω], R2 [Ω] , R3 [Ω] とインダクタンス L [H] のコイルと静電容量 C [F] のコンデンサが接続されている回路に V [V] の直流電源が接続されている。定常状態において直流電源を流れる電流の大きさを求めよ。

解説

過渡現象の「定常状態」では、コンデンサは$C$は開放、リアクトル$L$は「短絡」と考える。
よって、図は定常状態において、電源V[V]に抵抗$R_2, R_3$が並列接続された回路と同じになるので、電流は以下のようになる。

$I=\frac{V}{\frac{1}{R_2}\frac{1}{R_3}}$[A]

【令和元年度・問10・一部改変】時定数と消費エネルギー

図

図のように,電圧 1 kV で充電された静電容量 100 F のコンデンサ,抵抗 1 kΩ ,スイッチからなる回路がある。スイッチを閉じた直後に過渡的に流れる電流の時定数 の値 [s] と,スイッチを閉じてから十分に時間が経過するまでに抵抗で消費されるエネルギー の値 [J]を求めよ。

解説

RC直列回路の時定数$\tau$は、以下のとおり。

$\tau = CR=(100\times10^{-6})(1\times10^{3})=0.1$[s]

十分に時間が経過すれば、コンデンサに蓄えられる静電エネルギーがすべて抵抗で消費される。よって、抵抗で消費されるエネルギーを求めるには、コンデンサに蓄えられる静電エネルギーを求めれば良い。

$W=\frac{1}{2}CV^2=\frac{1}{2}(100\times 10^{-6})(1\times10^{3})^2=50$[J]

【令和4年度・問10・一部改変】コンデンサに蓄えられる静電エネルギーの変化

図

図の回路において,スイッチ S が開いているとき,静電容量 1=4 mF のコンデンサには電荷 1=0.3 C が蓄積されており,静電容量 2=2 mF のコンデンサの電荷は 2=0 C である。この状態でスイッチ S を閉じて,それから時間が十分に経過して過渡現象が終了した。この間に抵抗 [Ω] で消費された電気エネルギー [J] を求めよ。

解説

スイッチSが開くと、コンデンサ$C_1$に蓄えられる静電エネルギー$W_1$は以下のとおり。

$W_1=\frac{Q_1^2}{2C_1}=\frac{0.3^2}{2\times 4.0 times 10^{-3}}=11.25$ [J]

スイッチSを閉じると、電荷が移動してコンデンサ$C_1, C_2$の電圧$V$が等しくなり、その大きさは以下のとおり。

$Q_1=C_1V+C_2V=(C_1+C_2)V$

$V=\frac{Q_1}{C_1+C_2}=\frac{0.3}{(4.0\times10^{-3})+(4.0\times10^{-3})}=50$[V]

コンデンサ$C_1, C_2$の静電エネルギーの合計$W_2$は以下のとおり。

$W_2=\frac{1}{2}C_1V^2+\frac{1}{2}C_2V^2=7.5$[J]

抵抗で消費された電気エネルギー$W_R$は以下のとおり。

$W_R=W_1-W_2=3.75$[J]

【令和7年度上期・問10】RLC回路の過渡応答波形

図の回路のスイッチSを $t = 0 \text{ [s]}$ で閉じる。電流 $i_s \text{ [A]}$ の波形として最も適切に表すものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、スイッチSを閉じる直前に、回路は定常状態にあったとする。

解説

正解は(3)です。

スイッチを閉じる直前の定常状態では、コンデンサ $2\text{F}$ は $1\text{V}$ に充電されており、電流は流れていません。
スイッチSを閉じると、この $1\text{V}$ の電圧が $RL$ 直列回路に印加されます。

$RL$ 回路の電流 $i_s(t)$ の一般式は次の通りです。
$$i_s(t) = \frac{V}{R} (1 – e^{-\frac{R}{L}t})$$

各値を代入すると($V=1\text{V}, R=1\Omega, L=1\text{H}$)、
$$i_s(t) = 1 – e^{-t}$$
となり、最終的に $1\text{A}$ に向かって増加する波形となります。これに該当する波形は(3)です。

【令和6年度下期・問10】RC回路の過渡現象

図に示す回路において、スイッチSを閉じた瞬間(時刻 $t=0$)に点Aを流れる電流を $I_0 \text{ [A]}$ とし、十分に時間が経ち、定常状態に達したのちに点Aを流れる電流を $I \text{ [A]}$ とする。電流比 $\frac{I_0}{I}$ の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、コンデンサの初期電荷は零とする。

(1) (2) (3) (4) (5)
電流比 $\frac{I_0}{I}$ 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

解説

正解は(4)です。

過渡現象において、コンデンサ $C$ は、スイッチを閉じた瞬間($t=0$)は電荷がゼロであるため短絡状態(短絡線)とみなせ、十分時間が経過した定常状態($t=\infty$)では満充電となり開放状態とみなせます。

(1) $t=0$ のとき(コンデンサを短絡とみなす)
並列に接続されている抵抗は、コンデンサによって短絡されるため電流が流れず、全体の合成抵抗は直列に接続されている抵抗のみの分となります。したがって、回路全体の合成抵抗 $R_0$ は、直列部分の抵抗 $1$ つ分となります。

$R_0 = R$

このとき、点Aを流れる電流 $I_0$ はオームの法則より以下の通りです。

$$I_0 = \frac{V}{R}$$

(2) 定常状態(コンデンサを開放とみなす)
コンデンサが開放状態となるため、電流はすべての抵抗を通って流れます。

回路は「抵抗 $R$」と「抵抗 $R$」の直列接続となるため、全体の合成抵抗 $R_\infty$ は以下の通りです。

$R_\infty = R + R = 2R$

このとき、点Aを流れる電流 $I$ は以下の通りとなります。

$$I = \frac{V}{2R}$$

(3)求めた $I_0$ と $I$ の式を代入して、比率を求めます。

$$\frac{I_0}{I} = \frac{\frac{V}{R}}{\frac{V}{2R}}$$

分母・分子を整理すると、

$$\frac{I_0}{I} = \frac{V}{R} \times \frac{2R}{V} = 2.0$$

よって、正解は(4)**となります。

【令和6年度上期・問10】過渡現象の波形

図の回路のスイッチSを $t=0 \text{ s}$ で閉じる。電流 $i_S \text{ [A]}$ の波形として最も適切に表すものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、スイッチSを閉じる直前に、回路は定常状態にあったとする。

解説

正解は(3)です。

① スイッチSが開いた状態で回路が定常状態にあるとき($t < 0$)、直流回路においてコイルは短絡(抵抗0)、コンデンサは開放(断線)とみなせます。

コイルの電流 $i_L(0_-)$: 抵抗 $R_1$ とコイルが直列に接続されているため、$i_L(0_-) = \frac{E}{R_1} \text{ [A]}$ となります。
コンデンサの電圧 $v_C(0_-)$: コンデンサは $R_2$ を介して電源 $E$ と並列になっていますが、電流が流れないため $v_C(0_-) = E \text{ [V]}$ となります。

② $t=0$ でスイッチを閉じると、コイルの電流とコンデンサの電圧は連続性を保とうとします。($t = 0_+$)

コイル: 直前の電流 $\frac{E}{R_1}$ を維持するため、電流源のように振る舞います。
コンデンサ: 直前の電圧 $E$ を維持するため、電圧源のように振る舞います。

このとき、スイッチを流れる電流 $i_S$ は、キルヒホッフの電流則により各枝路に流れる電流の合計となります。

左側の抵抗 $R_1$ 枝路:スイッチによって電源が短絡されるため、この枝路の電流は $i_S$ に影響しません(電源 $E$ からスイッチへ直接流れます)。
中央のコイル枝路:$i_L(0_+) = \frac{E}{R_1}$ が下向きに流れます。
右側のコンデンサ・抵抗 $R_2$ 枝路:コンデンサの電圧 $E$ によって、抵抗 $R_2$ に $i_C(0_+) = \frac{E}{R_2}$ の電流が下向きに流れます。

したがって、スイッチを閉じた直後の電流 $i_S(0_+)$ は以下のようになります。
$i_S(0_+) = \frac{E}{R_1} + \frac{E}{R_2}$

③ スイッチを閉じて十分時間が経過した新しい定常状態($t \to \infty$)では、コイルは再び短絡、コンデンサは開放となります。

コイル枝路:スイッチとコイルが並列になります。電源 $E$ からの電流は抵抗 $R_1$ を通ってスイッチへ流れますが、コイル側には電源から切り離された閉回路(スイッチとコイルのループ)が形成されます。このループには抵抗成分がない(理想的な場合)ため、エネルギーが散逸し、最終的にコイルの電流は $0$ になります。
コンデンサ枝路:コンデンサは抵抗 $R_2$ とスイッチを介して放電しきり、最終的な電圧は $0$、電流も $0$ となります。

よって、十分時間が経過したときのスイッチの電流 $i_S(\infty)$ は、電源 $E$ から抵抗 $R_1$ を通って流れてくる分だけになります。
$i_S(\infty) = \frac{E}{R_1}$

④ 以上の解析から、電流 $i_S$ は以下の特徴を持ちます。

  • $t=0$ で最大値 $\frac{E}{R_1} + \frac{E}{R_2}$ をとる。
  • 時間の経過とともに減少する。
  • $t \to \infty$ で一定値 $\frac{E}{R_1}$ に収束する。

この条件を満たす波形は(3)となります。

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