電験3種(理論分野)で出題される「交流回路のフェーザ図」とは?使い方を詳しく解説します。
フェーザ図とは
フェーザ図とは、交流回路における電圧や電流などの正弦波交流を、複素平面上のベクトル(フェーザ)として表現した図のことです。交流回路の解析では、時間の経過とともに値が変化する正弦波をそのまま扱うと計算が非常に複雑になります。フェーザ図を用いることで、時間成分を切り離し、振幅と位相の関係を幾何学的なベクトル演算として視覚的に捉えることが可能になります。
基本原理
交流電圧の瞬時値$v(t)$は
$v(t) = V_{max} \sin(\omega t + \theta) = V_{max} \sin(2\pi f t + \theta)$
と表されます。ここで $V_{max}$ は最大値、$\omega$ は角周波数、$\theta$ は初期位相です。この正弦波を、複素数
$V = V_{max} e^{j\theta}$
または実効値を用いた
$V = V_{rms} e^{j\theta}$
として表現したものがフェーザです。以下の図は、交流電圧波形($V_{max}=100$ 、$f=1$ 、$\theta = 0$)のフェーザ図(左)と時間軸上の波形グラフ(右)です。

フェーザ図上では、ベクトルの長さが振幅(または実効値)を表し、基準軸(通常は実軸)とのなす角が位相を表します。すべてのフェーザは同じ角周波数 $\omega$ で反時計回りに回転していると仮定されるため、相対的な角度差(位相差)のみに注目して静止画として描くことができます。
以下ページで、フェーザ図のアニメーションを動かすことができますので、パラメーターを調整して理解を深めて見てください。
基本素子におけるフェーザの関係
回路を構成する各素子によって、電圧と電流の位相関係は異なります。
抵抗(R)
抵抗に流れる電流と、その両端の電圧は同位相です。フェーザ図では、電圧ベクトルと電流ベクトルが同じ方向を向いて重なります。
インダクタ(L)
コイルなどのインダクタでは、電圧の位相が電流よりも90度($\pi/2$ ラジアン)進みます。フェーザ図では、電流ベクトルに対して電圧ベクトルが反時計回りに90度回転した位置に描かれます。
キャパシタ(C)
コンデンサなどのキャパシタでは、電圧の位相が電流よりも90度遅れます。フェーザ図では、電流ベクトルに対して電圧ベクトルが時計回りに90度回転した位置に描かれます。
回路解析への応用
フェーザ図は、複数の素子が組み合わさった回路の合成電圧や合成電流を求める際に威力を発揮します。
直列回路
RLC直列回路では、共通して流れる電流を基準(実軸方向)にとります。各素子の電圧($V_R, V_L, V_C$)をベクトルとして足し合わせることで、回路全体の電圧 $V$ を求めます。
$V = V_R + V_L + V_C$
このとき、$V_L$ と $V_C$ は互いに逆向きになるため、それらの差が全体のリアクタンス成分となります。
並列回路
並列回路では、各素子に共通して加わる電圧を基準にとります。各枝路を流れる電流($I_R, I_L, I_C$)をベクトル合成することで、全電流 $I$ を求めます。
インピーダンスとフェーザ図
電圧フェーザと電流フェーザの比をとることで、インピーダンスを複素数として定義できます。
$Z = V / I = R + jX$
ここで $R$ は抵抗成分、$X$ はリアクタンス成分です。インピーダンスを複素平面上に描いたものはインピーダンス軌跡やインピーダンス図と呼ばれ、フェーザ図と密接な関係にあります。
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