【電験3種・法規】頻出問題「対地静電容量と1線地絡電流・零相変流器検出電流の計算」の試験対策

電験$3$種法規科目における「非接地式高圧配電線路の対地静電容量と$1$線地絡電流・零相変流器(ZCT)検出電流の計算」に関する過去問解説です。

非接地式高圧配電線路の対地静電容量と1線地絡電流・零相変流器検出電流の計算

攻略ポイント

日本の$6.6\text{ kV}$配電系統では、地絡事故時の地絡電流を小さく抑えて通信誘導障害を軽減するため、中性点非接地方式が多く採用されています。
電路の一相で完全地絡事故が発生した場合、健全相$2$相の対地電圧は相電圧の$\sqrt{3}$倍(線間電圧と同等)へ上昇します。
健全相の対地静電容量を流れる対地充電電流が地絡点に集中し、接地抵抗がなくても静電容量に応じた地絡電流が流れます。
根拠法令は、「電気設備に関する技術基準を定める省令」第$15$条(地絡に対する保護対策)および「電気設備技術基準の解釈」第$36$条(地絡遮断装置の施設)です。

理論的メカニズムおよび保護協調の技術基準

非接地配電線路の地絡電流計算、零相変流器の検出特性、および継電器の保護協調基準を整理した一覧です。

評価項目 算定式・技術的要件 現象の機構および具体的基準 試験における頻出引っかけ
$1$線完全地絡電流の大きさ $I_g = 2\sqrt{3}\pi f V (C_1 + C_2)$ 健全相$2$相の対地電圧が線間電圧まで上昇し、全系統の並列合成静電容量へ流れる充電電流の合成値となります。 $\sqrt{3}$を乗じ忘れる誤り、周波数や容量を$2$乗する誤り
構外事故時のZCT検出電流 $I_{g2} = 2\sqrt{3}\pi f V C_2$ 構外地絡時、需要設備内の対地静電容量$C_2$に充電される電流が受電点の零相変流器を逆流して通過します。 分流計算で系統側容量$C_1$を分子に用いる誤り
地絡継電器の適用区分 構内電線路の長さに応じた選定 ケーブルが短く$C_2$が小さい場合は無方向性地絡継電器(GR)を使用し、ケーブルが長く$C_2$が大きい場合は地絡方向継電器(DGR)を施設します。 「ケーブルが長い場合でも無方向性GRで保護可能」とする誤り
配電用変電所との保護協調 動作電流・動作時限の協調 構内事故時に配電線全体への波及事故を防止するため、需要家側保護装置を変電所よりも高感度かつ高速に整定します。 「変電所との協調に関し動作時限のみ考慮すればよい」とする誤り
テブナンの定理による等価回路 $V_{ab} = \dot{E}_R$、\(Z_{ab} = \frac{1}{j3\omega C}\) 端子開放電圧は相電圧となり、電源短絡時の内部インピーダンスは$3$相の対地静電容量が並列接続された$3C$となります。 開放電圧を線間電圧とする誤り、合成静電容量を直列とみなす誤り

令和5年下期 問11

問題文

図は,線間電圧$V\text{ [V]}$,周波数$f\text{ [Hz]}$の中性点非接地方式の三相$3$線式高圧配電線路及びある需要設備の高圧地絡保護システムを簡易に示した単線図である。
高圧配電線路一相の全対地静電容量を$C_1\text{ [F]}$,需要設備一相の全対地静電容量を$C_2\text{ [F]}$とするとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし,図示されていない負荷,線路定数及び配電用変電所の制限抵抗は無視するものとする。

(a) 図の配電線路において,遮断器が「入」の状態で地絡事故点に一線完全地絡事故が発生し地絡電流$I_g\text{ [A]}$が流れた。このとき$I_g$の大きさを表す式として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,間欠アークによる影響等は無視するものとし,この地絡事故によって遮断器は遮断しないものとする。

(1) $\frac{2}{\sqrt{3}}\pi^2 f^2 V (C_1+C_2)^2$

(2) $2\sqrt{3}\pi^2 f^2 V (C_1+C_2)^2$

(3) $\frac{2}{\sqrt{3}}\pi f V (C_1+C_2)$

(4) $2\sqrt{3}\pi f V (C_1+C_2)$

(5) $2\sqrt{3}\pi f V C_1 C_2$

(b) 小問(a)の地絡電流$I_g$は高圧配電線路側と需要設備側に分流し,需要設備側に分流した電流は零相変流器を通過して検出される。上記のような需要設備構外の事故に対しても,零相変流器が検出する電流の大きさによっては地絡継電器が不必要に動作する場合があるので注意しなければならない。地絡電流$I_g$が高圧配電線路側と需要設備側に分流する割合は$C_1$と$C_2$の比によって決まるものとしたとき,$I_g$のうち需要設備の零相変流器で検出される電流の値$\text{[mA]}$として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,$V = 6\text{ }600\text{ V}$,$f = 60\text{ Hz}$,$C_1 = 2.3\text{ }\mu\text{F}$,$C_2 = 0.02\text{ }\mu\text{F}$とする。

(1) 54
(2) 86
(3) 124
(4) 152
(5) 256

解説

小問(a)の解答:(4)

三相$3$線式非接地電路の一相(例えばa相)が大地へ完全地絡したとき、健全相であるb相およびc相の対地電圧は相電圧$\frac{V}{\sqrt{3}}$から線間電圧$V$へと上昇します。
大地の電位を基準とすると、地絡点に流れ込む全地絡電流$\dot{I}_g$は、健全相の対地静電容量を通じて大地から系統へ環流する電流の総和となります。
系統全体の一相あたりの全対地静電容量を$C_0$と置くと、配電線路側と需要設備側が並列となるため、$C_0 = C_1 + C_2$です。
健全相の対地電圧は互いに位相が$60^\circ$ずれた線間電圧となります。
角周波数を$\omega = 2\pi f$とすると、地絡電流の大きさ$I_g$は健全相$2$相分の充電電流をベクトル合成して求まります。

$$I_g = \sqrt{3}\omega C_0 V = \sqrt{3} \times 2\pi f V (C_1 + C_2) = 2\sqrt{3}\pi f V (C_1 + C_2)$$

テブナンの定理によって求めることも可能です。
事故前の地絡点の対地電圧(相電圧)を端子電圧$E = \frac{V}{\sqrt{3}}$とします。
端子から電源側を見た内部インピーダンス$Z_0$は、電源短絡により$3$相の対地静電容量が並列となるため、合成容量$3(C_1 + C_2)$となります。

$$Z_0 = \frac{1}{j\omega \times 3(C_1 + C_2)}$$

地絡電流の大きさ$I_g$は次式のように一致します。

$$I_g = \frac{E}{|Z_0|} = 3\omega \frac{V}{\sqrt{3}}(C_1 + C_2) = \sqrt{3}\omega V (C_1 + C_2) = 2\sqrt{3}\pi f V (C_1 + C_2)$$

したがって、正解は(4)です。

(1) 周波数および合成静電容量が$2$乗されており、インピーダンス次元と合致しないため誤りです。

(2) 係数や周波数が$2$乗の形をとっており、オームの法則による電流次元を満たさないため誤りです。

(3) 係数が$\frac{2}{\sqrt{3}}$となっており、対地電圧の上昇比率$\sqrt{3}$の乗除関係が逆であるため誤りです。

(4) 理論計算によって導出された地絡電流の大きさを表す関係式と完全に一致しており、正解です。

(5) 静電容量が並列和ではなく積$C_1 C_2$となっており、全系統容量の定義に反するため誤りです。

小問(b)の解答:(2)

構外で地絡事故が発生した場合、全地絡電流$I_g$は高圧配電線路側と需要設備側へそれぞれの対地静電容量比に応じて分流します。
需要設備側の零相変流器(ZCT)を通過する電流$I_{g2}$は、需要設備構内の一相对地静電容量$C_2$が負担する充電電流そのものです。
全地絡電流$I_g$に分流比を乗じて計算式を整理します。

$$I_{g2} = I_g \times \frac{C_2}{C_1 + C_2} = 2\sqrt{3}\pi f V (C_1 + C_2) \times \frac{C_2}{C_1 + C_2} = 2\sqrt{3}\pi f V C_2$$

与えられた諸定数を代入します。
$V = 6\text{ }600\text{ V}$
$f = 60\text{ Hz}$
$C_2 = 0.02\text{ }\mu\text{F} = 0.02 \times 10^{-6}\text{ F} = 2 \times 10^{-8}\text{ F}$

$$I_{g2} = 2\sqrt{3}\pi \times 60 \times 6\text{ }600 \times (2 \times 10^{-8})\text{ A}$$

数値を整理して算出します。

$$I_{g2} = \sqrt{3}\pi \times 1\text{ }584\text{ }000 \times 10^{-8} = \sqrt{3}\pi \times 0.015\text{ }84\text{ A}$$

$\sqrt{3} \approx 1.7321$、$\pi \approx 3.1416$を代入します。

$$I_{g2} \approx 1.7321 \times 3.1416 \times 0.015\text{ }84 \approx 5.4414 \times 0.015\text{ }84 \approx 0.086\text{ }19\text{ A}$$

ミリアンペア単位に変換すると、約$86.2\text{ mA}$が得られます。
したがって、最も近い選択肢は(2)です。

(1) $54\text{ mA}$は線間電圧の係数$\sqrt{3}$を反映させずに計算した値であり、不適正です。

(2) 計算結果の約$86.2\text{ mA}$に最も近く、正解です。

(3) $124\text{ mA}$は周波数の適用手順や定数の換算を誤った過大値であり、不適正です。

(4) $152\text{ mA}$は分流比の計算過程において配電線路側容量を混同した値であり、不適正です。

(5) $256\text{ mA}$は相電圧と線間電圧の変換関係を二重に適用した不適正な数値です。

令和4年下期 問13

問題文

図に示すような,相電圧$E_R\text{ [V]}$,$E_S\text{ [V]}$,$E_T\text{ [V]}$,角周波数$\omega\text{ [rad/s]}$の対称三相$3$線式高圧電路があり,変圧器の中性点は非接地方式とする。電路の一相当たりの対地静電容量を$C\text{ [F]}$とする。
この電路のR相のみが絶縁抵抗値$R_G\text{ [}\Omega\text{]}$に低下した。このとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし,上記以外のインピーダンスは無視するものとする。

(a) 次の文章は,絶縁抵抗$R_G\text{ [}\Omega\text{]}$を流れる電流$I_G\text{ [A]}$を求める記述である。
$R_G$を取り除いた場合
a-b間の電圧$V_{ab} =$ (ア)
a-b間より見たインピーダンス$Z_{ab}$は,変圧器の内部インピーダンスを無視すれば,
$Z_{ab} =$ (イ) となる。
ゆえに,$R_G$を接続したとき,$R_G$に流れる電流$I_G$は,次式となる。
$I_G = \frac{V_{ab}}{Z_{ab} + R_G} =$ (ウ)

上記の記述中の空白箇所(ア)~(ウ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

選択肢 (ア) (イ) (ウ)
(1) $E_R$ $\frac{1}{j3\omega C}$ $\frac{j3\omega C E_R}{1+j3\omega C R_G}$
(2) $\sqrt{3}E_R$ $-j3\omega C$ $\frac{-j3\omega C E_R}{1-j3\omega C R_G}$
(3) $E_R$ $\frac{3}{j\omega C}$ $\frac{j\omega C E_R}{3+j\omega C R_G}$
(4) $\sqrt{3}E_R$ $\frac{1}{j3\omega C}$ $\frac{E_R}{1-j3\omega C R_G}$
(5) $E_R$ $-j3\omega C$ $\frac{E_R}{1+j3\omega C R_G}$
(b) 次の文章は,変圧器の中性点O点に現れる電圧$V_O\text{ [V]}$を求める記述である。
$V_O =$ (エ) $+ R_G I_G$
ゆえに
$V_O =$ (オ)

上記の記述中の空白箇所(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

選択肢 (エ) (オ)
(1) $-E_R$ $\frac{-E_R}{1+j3\omega C R_G}$
(2) $E_R$ $\frac{E_R}{1-j3\omega C R_G}$
(3) $-E_R$ $\frac{-E_R}{1-j3\omega C R_G}$
(4) $E_R$ $\frac{E_R}{1+j3\omega C R_G}$
(5) $E_R$ $\frac{-E_R}{1-j3\omega C R_G}$

解説

小問(a)の解答:(1)

テブナンの定理を適用して、絶縁低下が発生した端子a-b間の開放電圧および内部合成インピーダンスを算出します。
絶縁抵抗$R_G$を切り離した健全時の状態では、回路は完全に対称な平衡三相電路です。
各相の対地静電容量は等しく$C$であるため、中性点Oの対地電位は$0\text{ V}$に保たれます。
端子aはR相電線、端子bは大地に接続されているため、開放時のa-b間電圧$V_{ab}$はR相の相電圧$\dot{E}_R$と一致します。

$$V_{ab} = \dot{E}_R$$

したがって、(ア)には$E_R$が入ります。
次に、a-b間から見た内部インピーダンス$Z_{ab}$を求めるため、すべての電源(相電圧源)を短絡します。
電源を短絡すると、変圧器の中性点Oと各相電線は短絡点を介してすべて同電位に接続されます。
R相、S相、T相の各相に接続された対地静電容量$C$は、大地bと端子aの間で並列に接続された状態となります。
したがって、端子a-b間の合成対地静電容量は$C + C + C = 3C$です。
端子a-b間から見た内部インピーダンス$Z_{ab}$は、次式で求まります。

$$Z_{ab} = \frac{1}{j\omega (3C)} = \frac{1}{j3\omega C}$$

したがって、(イ)には$\frac{1}{j3\omega C}$が入ります。
端子a-b間に絶縁抵抗$R_G$を接続したとき、流れる電流$\dot{I}_G$はテブナンの定理によって計算されます。

$$\dot{I}_G = \frac{V_{ab}}{Z_{ab} + R_G} = \frac{\dot{E}_R}{\frac{1}{j3\omega C} + R_G}$$

分母および分子に$j3\omega C$を乗じて整理します。

$$\dot{I}_G = \frac{j3\omega C \dot{E}_R}{1 + j3\omega C R_G}$$

したがって、(ウ)には$\frac{j3\omega C E_R}{1+j3\omega C R_G}$が入ります。
以上より、正しい組合せは(1)です。

(1) 開放電圧、並列合成インピーダンス、および端子電流の式がすべて理論展開と一致しており、正解です。

(2) 開放電圧を線間電圧$\sqrt{3}E_R$としており、またインピーダンスの次元にアドミタンスが混入しているため誤りです。

(3) インピーダンスの合成において直列接続の関係式を適用しており、静電容量の並列配置に反するため誤りです。

(4) 開放電圧を線間電圧と誤認し、電流式の分子から虚数角周波数が欠落しているため誤りです。

(5) インピーダンスにアドミタンス表記が用いられており、オーム単位の次元を満たさないため誤りです。

小問(b)の解答:(1)

大地の電位を基準電位($0\text{ V}$)として電位関係を立式します。
中性点Oの対地電圧を$\dot{V}_O$と置くと、R相電線(a点)の対地電圧$\dot{V}_a$は中性点電位に相電圧$\dot{E}_R$を加算した値です。

$$\dot{V}_a = \dot{V}_O + \dot{E}_R$$

一方、大地bの電位は$0\text{ V}$であるため、絶縁抵抗$R_G$の両端電圧降下はそのままa点の対地電位$\dot{V}_a$に等しくなります。

$$\dot{V}_a = R_G \dot{I}_G$$

両式を連立させて中性点電位$\dot{V}_O$について整理します。

$$\dot{V}_O + \dot{E}_R = R_G \dot{I}_G$$ $$\dot{V}_O = -\dot{E}_R + R_G \dot{I}_G$$

問題文の記述式と比較すると、(エ)には$-E_R$が入ります。
小問(a)で導出した$\dot{I}_G = \frac{j3\omega C \dot{E}_R}{1 + j3\omega C R_G}$を代入して整理します。

$$\dot{V}_O = -\dot{E}_R + R_G \frac{j3\omega C \dot{E}_R}{1 + j3\omega C R_G} = \dot{E}_R \left( -1 + \frac{j3\omega C R_G}{1 + j3\omega C R_G} \right)$$

括弧内を通分して計算します。

$$\dot{V}_O = \dot{E}_R \left( \frac{-(1 + j3\omega C R_G) + j3\omega C R_G}{1 + j3\omega C R_G} \right) = \dot{E}_R \left( \frac{-1 - j3\omega C R_G + j3\omega C R_G}{1 + j3\omega C R_G} \right) = \frac{-\dot{E}_R}{1 + j3\omega C R_G}$$

したがって、(オ)には$\frac{-E_R}{1+j3\omega C R_G}$が入ります。
完全地絡状態($R_G = 0\text{ }\Omega$)では$\dot{V}_O = -\dot{E}_R$となり、健全相の対地電圧が$\sqrt{3}$倍に跳ね上がる理論現象とも整合します。
以上より、正しい組合せは(1)です。

(1) キルヒホッフの電位則に基づく符号定義、および通分展開式が完全に一致しており、正解です。

(2) (エ)の符号が正となっており、電位の加減関係が反転しているため誤りです。

(3) (オ)の分母の虚数項が負符号となっており、アドミタンスの展開符号と矛盾するため誤りです。

(4) 電位関係の符号、および中性点電位の物理的極性が逆転しているため誤りです。

(5) 相電圧の加算符号と分母展開の符号の両方に誤りを含んでいるため不適正です。

平成28年 問13

問題文

図は、線間電圧$V\text{ [V]}$、周波数$f\text{ [Hz]}$の中性点非接地方式の三相$3$線式高圧配電線路及びある需要設備の高圧地絡保護システムを簡易に示した単線図である。
高圧配電線路一相の全対地静電容量を$C_1\text{ [F]}$、需要設備一相の全対地静電容量を$C_2\text{ [F]}$とするとき、次の(a)及び(b)に答えよ。
ただし、図示されていない負荷、線路定数及び配電用変電所の制限抵抗は無視するものとする。

(a) 図の配電線路において、遮断器が「入」の状態で地絡事故点に一線完全地絡事故が発生し地絡電流$I_g\text{ [A]}$が流れた。このとき$I_g$の大きさを表す式として正しいものは次のうちどれか。
ただし、間欠アークによる影響等は無視するものとし、この地絡事故によって遮断器は遮断しないものとする。

(1) $\frac{2}{\sqrt{3}}\pi^2 f^2 V (C_1+C_2)^2$

(2) $2\sqrt{3}\pi^2 f^2 V (C_1+C_2)^2$

(3) $\frac{2}{\sqrt{3}}\pi f V (C_1+C_2)$

(4) $2\sqrt{3}\pi f V (C_1+C_2)$

(5) $2\sqrt{3}\pi f V C_1 C_2$

(b) 上記(a)の地絡電流$I_g$は高圧配電線路側と需要設備側に分流し、需要設備側に分流した電流は零相変流器を通過して検出される。上記のような需要設備構外の事故に対しても、零相変流器が検出する電流の大きさによっては地絡継電器が不必要に動作する場合があるので注意しなければならない。地絡電流$I_g$が高圧配電線路側と需要設備側に分流する割合は$C_1$と$C_2$の比によって決まるものとしたとき,$I_g$のうち需要設備の零相変流器で検出される電流の値$\text{[mA]}$として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、$V = 6\text{ }600\text{ V}$、$f = 60\text{ Hz}$、$C_1 = 2.3\text{ }\mu\text{F}$、$C_2 = 0.02\text{ }\mu\text{F}$とする。

(1) 54
(2) 86
(3) 124
(4) 152
(5) 256

解説

小問(a)の解答:(4)

三相$3$線式非接地配電線路で一線完全地絡事故が発生すると、地絡相の対地電圧は零となります。
健全相$2$相の対地電圧は事故前の相電圧$\frac{V}{\sqrt{3}}$から$\sqrt{3}$倍され、線間電圧$V$と同電位へ上昇します。
系統全体の全静電容量は配電線路側$C_1$と需要設備側$C_2$の並列和$C_1 + C_2$です。
健全相$2$相の対地静電容量を通じて大地から流入する充電電流は、角周波数を$\omega = 2\pi f$として、大きさがそれぞれ$\omega (C_1 + C_2) V$となります。
$2$相の充電電流は位相差が$60^\circ$であるため、地絡点に流れ込む全地絡電流$I_g$はベクトル合成により$\sqrt{3}$倍されます。

$$I_g = \sqrt{3}\omega V (C_1 + C_2) = \sqrt{3} \times 2\pi f V (C_1 + C_2) = 2\sqrt{3}\pi f V (C_1 + C_2)$$

したがって、地絡電流の大きさを表す式は(4)です。

(1) 周波数や容量が$2$乗となっており、電流次元の基本式を満たさないため誤りです。

(2) 係数に$2$乗が含まれており、物理単位の次元整合性が成立しないため誤りです。

(3) 係数が$\frac{2}{\sqrt{3}}$となっており、ベクトル合成による$\sqrt{3}$倍の反映が不適正であるため誤りです。

(4) 健全相の充電電流を合成した理論式と厳密に一致しており、正解です。

(5) 静電容量の計算が積の形となっており、並列回路の合成容量定義に反するため誤りです。

小問(b)の解答:(2)

構外事故時に流れる全地絡電流$I_g$は、系統側の容量$C_1$と構内の容量$C_2$へ容量比で分流します。
需要設備の零相変流器を通過する電流$I_{g2}$は、需要設備構内の一相对地静電容量$C_2$に分流する成分です。

$$I_{g2} = I_g \times \frac{C_2}{C_1 + C_2} = 2\sqrt{3}\pi f V (C_1 + C_2) \times \frac{C_2}{C_1 + C_2} = 2\sqrt{3}\pi f V C_2$$

与えられた数値を代入します。
$V = 6\text{ }600\text{ V}$
$f = 60\text{ Hz}$
$C_2 = 0.02\text{ }\mu\text{F} = 2 \times 10^{-8}\text{ F}$

$$I_{g2} = 2\sqrt{3}\pi \times 60 \times 6\text{ }600 \times (2 \times 10^{-8})\text{ A}$$

計算を実行します。

$$I_{g2} = \sqrt{3}\pi \times 1\text{ }584\text{ }000 \times 10^{-8} = \sqrt{3}\pi \times 0.015\text{ }84\text{ A}$$

$\sqrt{3} \approx 1.7321$、$\pi \approx 3.1416$を用いて近似値を求めます。

$$I_{g2} \approx 1.7321 \times 3.1416 \times 0.015\text{ }84 \approx 0.086\text{ }19\text{ A} = 86.19\text{ mA}$$

算出された値は約$86\text{ mA}$となります。
したがって、最も近い選択肢は(2)です。

(1) $54\text{ mA}$は対地電圧の$\sqrt{3}$倍を乗算し忘れた算出値であり、不適正です。

(2) 正しい計算結果である約$86.2\text{ mA}$に最も近く、正解です。

(3) $124\text{ mA}$は周波数の代入を誤った過大値であり、不適正です。

(4) $152\text{ mA}$は分流比の比率計算において誤った容量を適用した値であり、不適正です。

(5) $256\text{ mA}$は線間電圧と相電圧の関係式を混同した不適正な計算値です。

平成23年 問13

問題文

図は、電圧$6\text{ }600\text{ [V]}$、周波数$50\text{ [Hz]}$、中性点非接地方式の三相$3$線式配電線路及び需要家Aの高圧地絡保護システムを簡易に表した単線図である。
次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、図で使用している主要な文字記号は付表のとおりとし、$C_1 = 3.0\text{ [}\mu\text{F]}$、$C_2 = 0.015\text{ [}\mu\text{F]}$とする。なお、図示されていない線路定数及び配電用変電所の制限抵抗は無視するものとする。
文字・記号 名称・内容
$C_1$ 配電線路側一相の全対地静電容量
$C_2$ 需要家側一相の全対地静電容量
ZCT 零相変流器
GR 地絡継電器
CB 遮断器

(a) 図の配電線路において、遮断器CBが「入」の状態で地絡事故点に一線完全地絡事故が発生した場合の地絡電流$I_g\text{ [A]}$の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、間欠アークによる高調波の影響は無視できるものとする。

(1) 4
(2) 7
(3) 11
(4) 19
(5) 33

(b) 図のような高圧配電線路に接続される需要家が、需要家構内の保護のために設置する継電器の保護協調に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
なお、記述中「不必要動作」とは、需要家の構外事故において継電器が動作することをいう。

(1) 需要家が設置する地絡継電器の動作電流及び動作時限整定値は、配電用変電所の整定値より小さくする必要がある。

(2) 需要家の構内高圧ケーブルが極めて短い場合,需要家が設置する継電器が無方向性地絡継電器でも、不必要動作の発生は少ない。

(3) 需要家が地絡方向継電器を設置すれば、構内高圧ケーブルが長い場合でも不必要動作は防げる。

(4) 需要家が地絡方向継電器を設置した場合,その整定値は配電用変電所との保護協調に関し動作時限のみ考慮すればよい。

(5) 地絡事故電流の大きさを考える場合,地絡事故が間欠アーク現象を伴うことを想定し、波形ひずみによる高調波の影響を考慮する必要がある。

解説

小問(a)の解答:(3)

非接地三相$3$線式配電線路で一線完全地絡が発生したとき、全系統の一相あたりの対地静電容量は配電線路側と需要家側の並列和となります。

$$C_0 = C_1 + C_2 = 3.0 \times 10^{-6} + 0.015 \times 10^{-6} = 3.015 \times 10^{-6}\text{ F}$$

健全相$2$相の対地電圧は相電圧から線間電圧$V$へ上昇します。
完全地絡電流の大きさ$I_g$は、角周波数を$\omega = 2\pi f$として次式で求まります。

$$I_g = \sqrt{3}\omega V (C_1 + C_2) = 2\sqrt{3}\pi f V (C_1 + C_2)$$

与えられた数値を代入します。
$V = 6\text{ }600\text{ V}$
$f = 50\text{ Hz}$
$C_0 = 3.015 \times 10^{-6}\text{ F}$

$$I_g = 2\sqrt{3}\pi \times 50 \times 6\text{ }600 \times (3.015 \times 10^{-6})\text{ A}$$

数値を整理します。
$2 \times 50 \times 6\text{ }600 = 660\text{ }000$

$$I_g = 660\text{ }000 \times 10^{-6} \times \sqrt{3}\pi \times 3.015 = 0.66 \times \sqrt{3}\pi \times 3.015\text{ A}$$

$\sqrt{3} \approx 1.7321$、$\pi \approx 3.1416$を代入して計算します。

$$\sqrt{3}\pi \approx 5.4414$$ $$I_g \approx 0.66 \times 5.4414 \times 3.015 \approx 3.5913 \times 3.015 \approx 10.83\text{ A}$$

得られた地絡電流は約$10.83\text{ A}$であり、最も近い整数値は$11\text{ A}$です。
したがって、正解は(3)です。

(1) $4\text{ A}$は計算定数の換算手順に大幅な計算違いがある数値であり、不適正です。

(2) $7\text{ A}$は対地電圧の$\sqrt{3}$倍を乗算しなかった場合の計算値(約$6.25\text{ A}$)等に近く、不適正です。

(3) 計算値の約$10.83\text{ A}$に最も近く、正解です。

(4) $19\text{ A}$は線間電圧と相電圧の変換を重複して算定した値であり、不適正です。

(5) $33\text{ A}$は静電容量の合成関係を過大に見積もった不適正な数値です。

小問(b)の解答:(4)

高圧需要設備における地絡保護装置と配電用変電所との保護協調に関する技術的判定です。
構内事故が発生した場合、配電用変電所の遮断器が動作して配電線全体が停電する波及事故を防止しなければなりません。
そのため、需要家が設置する地絡継電器の動作電流(感度電流)および動作時限は、変電所の整定値よりも小さく設定します。
したがって、記述(1)は適正です。
構外で地絡事故が発生した際、需要家構内の対地静電容量を通じて零相電流が需要家の零相変流器(ZCT)を通過します。
構内ケーブルが極めて短い需要設備では、構内の対地静電容量がわずかであるため通過電流も小さく、無方向性地絡継電器(GR)でも不必要動作に至る可能性は低くなります。
したがって、記述(2)は適正です。
一方、構内ケーブルが長い需要設備では構内静電容量が大きくなり、構外事故であってもGRの動作整定値を超える零相電流が流れます。
地絡方向継電器(DGR)は零相電圧と零相電流の位相差から事故方向を判別するため、構外事故電流による不要動作を確実に阻止できます。
したがって、記述(3)は適正です。
DGRを設置した場合であっても、構内事故時に変電所より先に事故区間を遮断する必要があります。
そのため、動作時限だけでなく動作電流(感度電流)についても変電所と協調を図らなければなりません。
動作時限のみを考慮するだけでは保護協調として不十分です。
したがって、「動作時限のみ考慮すればよい」とする記述(4)は誤りであり、正解となります。
また、実際の一線地絡事故では間欠アークを伴うことが多く、高調波成分による歪み波形が発生するため、保護協調の検討において考慮が必要です。
したがって、記述(5)は適正です。

(1) 需要家側を変電所より高感度かつ高速にして波及事故を防ぐ原則に合致しており、記述は適正です。

(2) ケーブルが短い場合は構内静電容量が小さく充電電流がわずかであるため、記述は適正です。

(3) 地絡方向継電器は位相差から事故方向を判定して不要動作を防止できるため、記述は適正です。

(4) 変電所との保護協調では動作時限だけでなく動作電流の協調も必須であり、「動作時限のみ考慮すればよい」とする記述は誤り(正解)です。

(5) 間欠アーク地絡による高調波サージの発生を想定して保護協調を考慮する技術基準に合致しており、記述は適正です。

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