電験3種(法規)の計算問題における頻出テーマである「高圧配電線路の電圧降下および力率改善用進相コンデンサ容量の計算」について解説します。
高圧配電線路の電圧降下および進相コンデンサによる力率改善の攻略ポイント
電験3種の法規科目における計算問題(B問題)では、高圧配電線路における線路インピーダンスに起因する電圧降下の算定や、変電所・受電端の力率改善に伴う進相コンデンサおよび直列リアクトルの諸元算定に関する問題が極めて高い頻度で出題されます。
これらの問題は、「電気設備に関する技術基準を定める省令」第$2$条(電圧の種別等)や第$5$条(電路の絶縁)、第$24$条(変圧器等の過電流保護)などの保安基準を前提としつつ、電気理論・送配電工学の実務的な計算手法が問われます。
具体的には、三相3線式配電線路の簡略電圧降下式を用いた受電端電圧や線路長の逆算、変圧器バンクの容量管理($\text{V}-\text{V}$ 結線時の過負荷計算)、力率改善による電圧降下軽減率の計算、直列リアクトル設置に伴うコンデンサ端子電圧の上昇および総合無効電力の算定などが問われます。過去問の演習に先立ち、以下の3つの整理表で基礎理論および計算式体系を網羅的に確認してください。
配電線路の電圧降下・線路損失および力率改善
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項目・用語 |
定義および技術的意義 | 実務上の効果および関連基準 |
|---|---|---|
| 電圧降下($\varepsilon$) | 送電端電圧(または変電所引出口電圧)と受電端電圧の線間電圧差。電線の抵抗およびリアクタンスを電流が通過することで生じる。 | 需要場所における機器の定格動作を確保するため、適正範囲内に維持することが求められる。 |
| 電圧降下率($\varepsilon_{\text{rate}}$) | 受電端電圧に対する電圧降下の比率。$\dfrac{V_s - V_r}{V_r} \times 100\text{ [\%]}$ で定義される。 | 配電線路の長距離化や負荷増大に伴う線路末端での電圧低下の評価指標となる。 |
| 線路損失($P_{\text{loss}}$) | 線路導体の抵抗によって消費されるジュール熱損失。三相3線式では線電流を $I$、1線当たり抵抗を $R$ として $3 I^2 R$ で表される。 | 力率を改善して線電流を減少させることにより、力率の2乗に反比例して大幅に低減可能となる。 |
| 力率改善 | 遅れ負荷に並列に進相コンデンサを接続し、負荷側で無効電力を相殺して線路に流れる遅れ無効電流を低減させること。 | 電圧降下の低減、線路損失の低減、配電設備(変圧器・電線)の送電容量の余裕創出、電気料金の割引適用。 |
| 直列リアクトル(SR) | 進相コンデンサに直列に挿入される誘導性リアクトル。第$5$高調波電流の抑制や突入電流防止を目的とする。 | コンデンサ回路全体を第$5$高調波周波数において誘導性とし、高調波共振による過電圧・過電流を防止する。 |
高圧配電線路における電圧降下・電力の計算式体系
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計算項目 |
厳密式または関係式 | 簡略近似式(実務・試験用) | 記号の定義および計算上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 線間電圧降下($\varepsilon$) | $\dot{V}_s - \dot{V}_r = \sqrt{3} \dot{I} (R + jX)$ | $\varepsilon \approx \sqrt{3} I (R \cos\theta + X \sin\theta)$ | $I$:線電流 [$\text{A}$]、$R$:電線1条当たり抵抗 [$\Omega$]、$X$:電線1条当たり誘導リアクタンス [$\Omega$]、$\cos\theta$:遅れ力率。 |
| 送受電端電力による電圧降下 | $\varepsilon \approx \dfrac{P R + Q X}{V_r}$ | $\varepsilon \approx \dfrac{P R + Q X}{V_r}$ | $P$:三相有効電力 [$\text{kW}$]、$Q$:三相遅れ無効電力 [$\text{kvar}$]、$V_r$:受電端線間電圧 [$\text{kV}$]。分子が [$\text{kW}\cdot\Omega$]、分母が [$\text{kV}$] のとき $\varepsilon$ は [$\text{V}$] となる。 |
| 三相有効電力($P$) | $P = \sqrt{3} V_r I \cos\theta$ | $P = S \cos\theta$ | $S$:三相皮相電力 [$\text{kV}\cdot\text{A}$]。コンデンサを接続しても負荷設備の有効電力消費量は変化しない。 |
| 三相無効電力($Q$) | $Q = \sqrt{3} V_r I \sin\theta$ | $Q = P \tan\theta$ | $\tan\theta = \dfrac{\sin\theta}{\cos\theta} = \dfrac{\sqrt{1 - \cos^2\theta}}{\cos\theta}$。遅れ無効電力は誘導性負荷により生じる。 |
| 三相線路電力損失($P_{\text{loss}}$) | $P_{\text{loss}} = 3 I^2 R$ | $P_{\text{loss}} = \dfrac{P^2 + Q^2}{V_r^2} R$ | 力率 $\cos\theta$ が向上して $Q$ が減少すると、同一有効電力 $P$ 送電時の線路損失は大幅に減少する。 |
力率改善用進相コンデンサおよび直列リアクトルの計算式
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計算項目 |
計算基本式 | 展開式・実務算定式 | 技術的要点および引っかけパターン |
|---|---|---|---|
| 所要進相コンデンサ容量($Q_C$) | $Q_C = Q_1 - Q_2$ | $Q_C = P (\tan\theta_1 - \tan\theta_2)$ | $\theta_1$:改善前力率角、$\theta_2$:改善後力率角。有効電力 $P$ を基準として算定する。皮相電力の差($S_1 - S_2$)とする誤りに注意。 |
| 直列リアクトル付きコンデンサの端子電圧 | $\dot{V} = \dot{V}_L + \dot{V}_C$ | $V_C = \dfrac{V}{1 - lpha}$ | $lpha$:直列リアクトルのリアクタンス比率($lpha = \dfrac{X_L}{X_C}$、通常 $0.06$)。コンデンサ端子電圧は線間電圧 $V$ より高くなる。 |
| コンデンサ設備の合成進相容量($Q_{\text{total}}$) | $Q_{\text{total}} = Q_C - Q_L$ | $Q_{\text{total}} = (1 - lpha) Q_C$ | 電流が共通であるため、$Q_L = lpha Q_C$ となる。設備全体の発揮する無効電力はコンデンサ単体容量より小さくなる。 |
| 直列リアクトルの選定比率($lpha$) | $lpha > \dfrac{1}{n^2}$(第$n$高調波) | 第$5$高調波($n=5$):$lpha > \dfrac{1}{25} = 4\%$ | 実務上、周波数変動や裕度を考慮して理論値 $4\%$ に対し定格容量比 $6\%$(または第$3$高調波対策として $13\%$)が採用される。 |
| $\text{V}-\text{V}$ 結線バンクの定格容量($S_V$) | $S_V = \sqrt{3} S_1$ | 利用率:$\dfrac{\sqrt{3}}{2} \approx 86.6\%$ | $S_1$:単相変圧器1台の定格容量。$\Delta-\Delta$ 結線($3 S_1$)の1台故障時に過負荷となる限界を評価する。 |
【令和6年上期 問11】進相コンデンサ設備の計算
変電所から三相3線式1回線の専用配電線で受電している需要家がある。この配電線路の電線1条当たりの抵抗及びリアクタンスの値は,それぞれ $3\ \Omega$ 及び $5\ \Omega$ である。この需要家の使用電力が $8\,000\text{ kW}$,負荷の力率が $0.8$(遅れ)であるとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 需要家の受電電圧が $20\text{ kV}$ のとき,変電所引出口の電圧 [$\text{kV}$] の値として,最も近いのは次のうちどれか。
(1) 21.6
(2) 22.2
(3) 22.7
(4) 22.9
(5) 23.1
(b) 需要家にコンデンサを設置して,負荷の力率を $0.95$(遅れ)に改善するとき,この配電線の電圧降下の値 [$\text{V}$] の,コンデンサ設置前の電圧降下の値 [$\text{V}$] に対する比率 [$\%$] の値として,最も近いのは次のうちどれか。
ただし,この需要家の受電電圧 [$\text{kV}$] は,コンデンサ設置前と同一の $20\text{ kV}$ とする。
(1) 66.6
(2) 68.8
(3) 75.5
(4) 81.7
(5) 97.0
正解
(a) (3)
(b) (2)
解説
(a)の解説
変電所引出口の送電端電圧 $V_s\text{ [kV]}$ を求める手順は以下のとおりです。
与えられた諸条件を整理します。
電線1条当たりの抵抗:$R = 3\ \Omega$
電線1条当たりのリアクタンス:$X = 5\ \Omega$
需要家の有効電力:$P = 8\,000\text{ kW}$
負荷の力率:$\cos\theta = 0.8$(遅れ)
受電端線間電圧:$V_r = 20\text{ kV} = 20\,000\text{ V}$
負荷の無効電力 $Q\text{ [kvar]}$ を算定します。
$\cos\theta = 0.8$ のとき、$\sin\theta = \sqrt{1 - \cos^2\theta} = \sqrt{1 - 0.8^2} = 0.6$ です。
無効電力 $Q$ は次式で求まります。
$$Q = P \tan\theta = P \times \dfrac{\sin\theta}{\cos\theta} = 8\,000 \times \dfrac{0.6}{0.8} = 6\,000\text{ kvar}$$
三相配電線路の電圧降下 $\Delta V\text{ [V]}$ を算定します。
電力を用いた電圧降下の簡略計算式を適用します。有効電力を $P\text{ [kW]}$、無効電力を $Q\text{ [kvar]}$、受電端電圧を $V_r\text{ [kV]}$、線路インピーダンスを $R, X\text{ [}\Omega\text{]}$ とすると、電圧降下 $\Delta V\text{ [V]}$ は次式で直接計算できます。
$$\Delta V = \dfrac{P R + Q X}{V_r} = \dfrac{8\,000 \times 3 + 6\,000 \times 5}{20} = \dfrac{24\,000 + 30\,000}{20} = \dfrac{54\,000}{20} = 2\,700\text{ V} = 2.7\text{ kV}$$
電流 $I$ を用いて計算する場合も確認します。
線電流 $I$ の大きさは次式で求まります。
$$I = \dfrac{P}{\sqrt{3} V_r \cos\theta} = \dfrac{8\,000 \times 10^3}{\sqrt{3} \times 20 \times 10^3 \times 0.8} = \dfrac{500}{\sqrt{3}}\text{ A} \approx 288.68\text{ A}$$
電圧降下の基本式に代入すると一致します。
$$\Delta V = \sqrt{3} I (R \cos\theta + X \sin\theta) = \sqrt{3} \times \dfrac{500}{\sqrt{3}} \times (3 \times 0.8 + 5 \times 0.6) = 500 \times (2.4 + 3.0) = 500 \times 5.4 = 2\,700\text{ V} = 2.7\text{ kV}$$
変電所引出口電圧 $V_s$ を算出します。
$$V_s = V_r + \Delta V = 20 + 2.7 = 22.7\text{ kV}$$
選択肢の判定:
(1) 21.6:無効電力成分を無視して有効電力降下のみ($1.2\text{ kV}$)を考慮した場合の誤りです。
(2) 22.2:リアクタンス降下のみ($1.5\text{ kV}$)を加算した誤りです。
(3) 22.7:正しい計算値です。
(4) 22.9:相電圧と線間電圧の換算ミスによる誤りです。
(5) 23.1:受電端電圧に全インピーダンスの単純スカラー積を加算した誤りです。
(b)の解説
進相コンデンサを設置して力率を $0.95$(遅れ)に改善したときの電圧降下比率を求める手順は以下のとおりです。
改善後の無効電力 $Q'\text{ [kvar]}$ を算定します。
改善後の力率を $\cos\theta' = 0.95$ とすると、無効力率 $\sin\theta'$ は次式となります。
$$\sin\theta' = \sqrt{1 - 0.95^2} = \sqrt{1 - 0.9025} = \sqrt{0.0975} \approx 0.31225$$
改善後の無効電力 $Q'$ は次式で求まります。
$$Q' = P \tan\theta' = 8\,000 \times \dfrac{0.31225}{0.95} \approx 2\,629.47\text{ kvar}$$
改善後の電圧降下 $\Delta V'\text{ [V]}$ を算定します。
受電端電圧は同一の $V_r = 20\text{ kV}$、使用電力は $P = 8\,000\text{ kW}$ のまま維持されるため、次式となります。
$$\Delta V' = \dfrac{P R + Q' X}{V_r} = \dfrac{8\,000 \times 3 + 2\,629.47 \times 5}{20} = \dfrac{24\,000 + 13\,147.35}{20} = \dfrac{37\,147.35}{20} \approx 1\,857.37\text{ V}$$
コンデンサ設置前の電圧降下 $\Delta V = 2\,700\text{ V}$ に対する比率 [$\%$] を算出します。
$$\text{比率} = \dfrac{\Delta V'}{\Delta V} \times 100 = \dfrac{1\,857.37}{2\,700} \times 100 \approx 68.79\% \approx 68.8\%$$
線電流の比率から計算する場合も確認します。
改善前:$I (R \cos\theta + X \sin\theta) \propto \dfrac{R \cos\theta + X \sin\theta}{\cos\theta} = R + X \tan\theta = 3 + 5 \times 0.75 = 6.75$
改善後:$I' (R \cos\theta' + X \sin\theta') \propto \dfrac{R \cos\theta' + X \sin\theta'}{\cos\theta'} = R + X \tan\theta' = 3 + 5 \times 0.32868 \approx 4.6434$
比率は $\dfrac{4.6434}{6.75} \times 100 \approx 68.79\%$ となり、同一の結果が得られます。
選択肢の判定:
(1) 66.6:力率改善比率の逆数を用いた誤算です。
(2) 68.8:正しい計算値です。
(3) 75.5:抵抗降下成分の低減を過小評価した誤りです。
(4) 81.7:無効電力の低減率の取り違えによる誤りです。
(5) 97.0:電流値の減少比率のみを単純計算した誤りです。
【令和6年上期 問12・令和5年下期 問12・令和元年 問12】進相コンデンサ設備の計算
三相3線式の高圧電路に $300\text{ kW}$,遅れ力率 $0.6$ の三相負荷が接続されている。この負荷と並列に進相コンデンサ設備を接続して力率改善を行うものとする。進相コンデンサ設備は図に示すように直列リアクトル付三相コンデンサとし,直列リアクトルSRのリアクタンス $X_L\text{ [}\Omega\text{]}$ は,三相コンデンサSCのリアクタンス $X_C\text{ [}\Omega\text{]}$ の $6\%$ とするとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし,高圧電路の線間電圧は $6\,600\text{ V}$ とし,無効電力によって電圧は変動しないものとする。

(a) 進相コンデンサ設備を高圧電路に接続したときに三相コンデンサSCの端子電圧の値 [$\text{V}$] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 6 410
(2) 6 795
(3) 6 807
(4) 6 995
(5) 7 021
(b) 進相コンデンサ設備を負荷と並列に接続し,力率を遅れ $0.6$ から遅れ $0.8$ に改善した。このとき,この設備の三相コンデンサSCの容量の値 [$\text{kvar}$] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 170
(2) 180
(3) 186
(4) 192
(5) 208
正解
(a) (5)
(b) (3)
詳細解説
(a)の解説
進相コンデンサSCの端子電圧 $V_C\text{ [V]}$ を求める手順は以下のとおりです。
①1相あたりの等価回路を考えます。
電路の線間電圧を $V = 6\,600\text{ V}$ とすると、1相あたりの相電圧 $V_p$ は次式となります。
$$V_p = \dfrac{V}{\sqrt{3}}$$
直列リアクトルの誘導性リアクタンスを $X_L\text{ [}\Omega\text{]}$、コンデンサの容量性リアクタンスを $X_C\text{ [}\Omega\text{]}$ とします。問題文より $X_L = 0.06 X_C$ です。
②回路全体の合成リアクタンス $X_{\text{total}}$ を求めます。
直列回路における誘導性リアクタンスのインピーダンスは $+j X_L$、容量性リアクタンスのインピーダンスは $-j X_C$ であるため、合成インピーダンス $\dot{Z}$ は容量性となり、その大きさは次式となります。
$$X_{\text{total}} = X_C - X_L = X_C - 0.06 X_C = 0.94 X_C$$
③回路に流れる電流 $I_C$ を求めます。
$$I_C = \dfrac{V_p}{X_{\text{total}}} = \dfrac{\dfrac{V}{\sqrt{3}}}{0.94 X_C} = \dfrac{V}{\sqrt{3} \times 0.94 X_C}$$
④三相コンデンサSCの端子間電圧(線間電圧換算値)$V_C\text{ [V]}$ を算出します。
コンデンサSCの1相あたりの端子電圧は $V_{Cp} = I_C X_C$ です。線間電圧としての端子電圧 $V_C$ は次式となります。
$$V_C = \sqrt{3} V_{Cp} = \sqrt{3} I_C X_C = \sqrt{3} \times \dfrac{V}{\sqrt{3} \times 0.94 X_C} \times X_C = \dfrac{V}{0.94}$$
数値を代入します。
$$V_C = \dfrac{6\,600}{0.94} \approx 7\,021.28\text{ V} \approx 7\,021\text{ V}$$
直列リアクトルの存在によって分母が $1 - 0.06 = 0.94$ となり、端子電圧は電路電圧 $6\,600\text{ V}$ よりも約 $6.4\%$ 上昇します。
選択肢の判定:
(1) 6 410:直列リアクトルで電圧降下が生じると誤認して $6\,600 \times (1 - 0.06) \approx 6\,204\text{ V}$ などの減算処理を行った場合の誤りです。
(2) 6 795:リアクトルの分圧比の取り違えによる誤りです。
(3) 6 807:相電圧と線間電圧の混同による誤算です。
(4) 6 995:単純に $6\,600 \times 1.06 = 6\,996\text{ V}$ として近似乗算した場合の数値です。
(5) 7 021:正しい計算値です。
(b)の解説
改善後の力率を達成するために必要なコンデンサ単体の容量 $Q_C\text{ [kvar]}$ を求める手順は以下のとおりです。
①負荷の有効電力および改善前後の力率角を整理します。
三相負荷の有効電力:$P = 300\text{ kW}$
改善前の遅れ力率:$\cos\theta_1 = 0.6 \implies \tan\theta_1 = \dfrac{\sin\theta_1}{\cos\theta_1} = \dfrac{0.8}{0.6} = \dfrac{4}{3}$
改善後の遅れ力率:$\cos\theta_2 = 0.8 \implies \tan\theta_2 = \dfrac{\sin\theta_2}{\cos\theta_2} = \dfrac{0.6}{0.8} = \dfrac{3}{4}$
②力率改善に必要な進相コンデンサ設備全体の総合無効電力 $Q_{\text{total}}\text{ [kvar]}$ を求めます。
$$Q_{\text{total}} = P (\tan\theta_1 - \tan\theta_2) = 300 \times \left(\dfrac{4}{3} - \dfrac{3}{4}
ight) = 300 \times \left(\dfrac{16 - 9}{12}
ight) = 300 \times \dfrac{7}{12} = 175\text{ kvar}$$
③コンデンサ設備全体とコンデンサSC単体の無効電力の関係を立式します。
進相コンデンサ設備全体は、三相コンデンサSCと直列リアクトルSRの直列回路です。
電流を $I_C$ とすると、コンデンサが発生する進相無効電力 $Q_{SC}$、直列リアクトルが消費する遅れ無効電力 $Q_{SR}$ はそれぞれ次式で表されます。
$$Q_{SC} = 3 I_C^2 X_C$$
$$Q_{SR} = 3 I_C^2 X_L = 3 I_C^2 (0.06 X_C) = 0.06 Q_{SC}$$
設備全体として系統に供給される総合進相無効電力 $Q_{\text{total}}$ は、コンデンサの進相分からリアクトルの遅れ分を差し引いたものとなります。
$$Q_{\text{total}} = Q_{SC} - Q_{SR} = Q_{SC} - 0.06 Q_{SC} = 0.94 Q_{SC}$$
④三相コンデンサSCの容量 $Q_{SC}\text{ [kvar]}$ を算出します。
$$Q_{SC} = \dfrac{Q_{\text{total}}}{0.94} = \dfrac{175}{0.94} \approx 186.17\text{ kvar} \approx 186\text{ kvar}$$
選択肢の判定:
(1) 170:$Q_{\text{total}}$ から誤って減算した場合の誤りです。
(2) 180:皮相電力の差を用いた誤算です。
(3) 186:正しい計算値です。
(4) 192:直列リアクトルの影響を逆方向に二重計上した場合の誤りです。
(5) 208:改善前後の皮相電力の直接差分等による誤りです。
【平成30年 問12】
図のように電源側S点から負荷点Aを経由して負荷点Bに至る線路長 $L\text{ [km]}$ の三相3線式配電線路があり,A点,B点で図に示す負荷電流が流れているとする。S点の線間電圧を $6\,600\text{ V}$,配電線路の1線当たりの抵抗を $0.32\ \Omega/\text{km}$,リアクタンスを $0.2\ \Omega/\text{km}$ とするとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし,計算においてはS点,A点及びB点における電圧の位相差が十分小さいとの仮定に基づき適切な近似式を用いるものとする。

(a) A-B間の線間電圧降下をS点線間電圧の $1\%$ としたい。このときのA-B間の線路長の値 [$\text{km}$] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 0.39
(2) 0.67
(3) 0.75
(4) 1.17
(5) 1.30
(b) A-B間の線間電圧降下をS点線間電圧の $1\%$ とし,B点線間電圧をS点線間電圧の $96\%$ としたときの線路長 $L$ の値 [$\text{km}$] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 2.19
(2) 2.44
(3) 2.67
(4) 3.79
(5) 4.22
正解
(a) (2)
(b) (1)
解説
(a)の解説
A-B間の線路長 $L_{AB}\text{ [km]}$ を求める手順は以下のとおりです。
①A-B間を流れる電流および力率を確認します。
A点からB点へ流れる電流 $I_{AB}$ は、B点の負荷電流そのものです。
$$I_{AB} = 150\text{ A}$$
力率は $\cos\theta = 0.85$(遅れ)です。
無効力率 $\sin\theta$ は次式となります。
$$\sin\theta = \sqrt{1 - \cos^2\theta} = \sqrt{1 - 0.85^2} = \sqrt{1 - 0.7225} = \sqrt{0.2775} \approx 0.52678$$
②単位線路長($1\text{ km}$)当たりの等価インピーダンス電圧係数 $k$ を算定します。
電線1線当たりの抵抗 $r = 0.32\ \Omega/\text{km}$、リアクタンス $x = 0.2\ \Omega/\text{km}$ より、次式となります。
$$k = r \cos\theta + x \sin\theta = 0.32 \times 0.85 + 0.2 \times 0.52678 = 0.272 + 0.10536 = 0.37736\ \Omega/\text{km}$$
③A-B間の許容線間電圧降下 $\Delta V_{AB}$ を算定します。
S点の線間電圧 $V_S = 6\,600\text{ V}$ の $1\%$ であるため、次式となります。
$$\Delta V_{AB} = 6\,600 \times 0.01 = 66\text{ V}$$
④A-B間の線路長 $L_{AB}\text{ [km]}$ を算出します。
三相3線式の電圧降下近似式は次式で表されます。
$$\Delta V_{AB} = \sqrt{3} I_{AB} L_{AB} (r \cos\theta + x \sin\theta) = \sqrt{3} \times 150 \times L_{AB} \times 0.37736$$
数値を整理します。
$$\sqrt{3} \times 150 \times 0.37736 \approx 259.808 \times 0.37736 \approx 98.04\text{ V/km}$$
したがって、
$$66 = 98.04 \times L_{AB} \implies L_{AB} = \dfrac{66}{98.04} \approx 0.6732\text{ km} \approx 0.67\text{ km}$$
選択肢の判定:
(1) 0.39:リアクタンスを過大評価した誤算です。
(2) 0.67:正しい計算値です。
(3) 0.75:単相2線式の式(係数 $2$)を誤用した場合の数値です。
(4) 1.17:$\sqrt{3}$ を掛け忘れた場合の誤算です。
(5) 1.30:相電圧基準での計算ミスによる誤りです。
(b)の解説
全線路長 $L = L_{SA} + L_{AB}\text{ [km]}$ を求める手順は以下のとおりです。
①全体の電圧降下およびS-A間の電圧降下を求めます。
B点線間電圧 $V_B$ がS点線間電圧 $V_S$ の $96\%$ であるため、S点からB点までの全線間電圧降下 $\Delta V_{\text{total}}$ は次式となります。
$$\Delta V_{\text{total}} = V_S - V_B = V_S \times (1 - 0.96) = 6\,600 \times 0.04 = 264\text{ V}$$
全電圧降下はS-A間の降下 $\Delta V_{SA}$ とA-B間の降下 $\Delta V_{AB}$ の和です。
$$\Delta V_{\text{total}} = \Delta V_{SA} + \Delta V_{AB}$$
(a)より $\Delta V_{AB} = 66\text{ V}$ であるため、S-A間の電圧降下 $\Delta V_{SA}$ は次式となります。
$$\Delta V_{SA} = 264 - 66 = 198\text{ V}$$
(これはS点電圧の $3\%$ に相当します)
②S-A間を流れる電流 $I_{SA}$ を求めます。
A点負荷電流($50\text{ A}$、力率 $0.85$ 遅れ)とB点負荷電流($150\text{ A}$、力率 $0.85$ 遅れ)は力率が等しく位相差が $0$ であるため、スカラー加算できます。
$$I_{SA} = I_A + I_B = 50 + 150 = 200\text{ A}$$
③S-A間の線路長 $L_{SA}\text{ [km]}$ を算出します。
電圧降下式より次式が成り立ちます。
$$\Delta V_{SA} = \sqrt{3} I_{SA} L_{SA} (r \cos\theta + x \sin\theta) = \sqrt{3} \times 200 \times L_{SA} \times 0.37736 \approx 130.72 \times L_{SA}$$
数値を代入します。
$$198 = 130.72 \times L_{SA} \implies L_{SA} = \dfrac{198}{130.72} \approx 1.5147\text{ km}$$
④全線路長 $L$ を算出します。
$$L = L_{SA} + L_{AB} = 1.5147 + 0.6732 = 2.1879\text{ km} \approx 2.19\text{ km}$$
選択肢の判定:
(1) 2.19:正しい計算値です。
(2) 2.44:電流加算を行わずに平均電流で計算した場合の誤りです。
(3) 2.67:全区間の電流を $150\text{ A}$ と誤認した場合の数値です。
(4) 3.79:$\sqrt{3}$ の係数抜けによる誤りです。
(5) 4.22:単相計算による誤算です。
【平成27年 問13】
定格容量が $50\text{ kV}\cdot\text{A}$ の単相変圧器3台を $\Delta-\Delta$ 結線にし,一つのバンクとして,三相平衡負荷(遅れ力率 $0.90$)に電力を供給する場合について,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 図1のように消費電力 $90\text{ kW}$(遅れ力率 $0.90$)の三相平衡負荷を接続し使用していたところ,3台の単相変圧器のうちの1台が故障した。負荷はそのままで,残りの2台の単相変圧器を $\text{V}-\text{V}$ 結線として使用するとき,このバンクはその定格容量より何 [$\text{kV}\cdot\text{A}$] 過負荷となっているか。最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 0
(2) 3.4
(3) 10.0
(4) 13.4
(5) 18.4
(b) 上記(a)において,故障した変圧器を同等のものと交換して $50\text{ kV}\cdot\text{A}$ の単相変圧器3台を $\Delta-\Delta$ 結線で復旧した後,力率改善のために,進相コンデンサを接続し,バンクの定格容量を超えない範囲で最大限まで三相平衡負荷(遅れ力率 $0.90$)を増加し使用したところ,力率が $0.96$(遅れ)となった。このときに接続されている三相平衡負荷の消費電力の値 [$\text{kW}$] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 135
(2) 144
(3) 150
(4) 156
(5) 167
正解
(a) (4)
(b) (2)
解説
(a)の解説
$\text{V}-\text{V}$ 結線時の過負荷容量 [$\text{kV}\cdot\text{A}$] を求める手順は以下のとおりです。
① 接続されている三相平衡負荷の皮相電力 $S_{\text{load}}\text{ [kV}\cdot\text{A]}$ を算定します。
消費電力 $P = 90\text{ kW}$、力率 $\cos\theta = 0.90$(遅れ)より、次式となります。
$$S_{\text{load}} = \dfrac{P}{\cos\theta} = \dfrac{90}{0.90} = 100\text{ kV}\cdot\text{A}$$
② 単相変圧器2台による $\text{V}-\text{V}$ 結線バンクの定格容量 $S_V\text{ [kV}\cdot\text{A]}$ を算定します。
単相変圧器1台の定格容量は $S_1 = 50\text{ kV}\cdot\text{A}$ です。$\text{V}-\text{V}$ 結線の定格出力容量は変圧器1台分の容量の $\sqrt{3}$ 倍となります。
$$S_V = \sqrt{3} S_1 = \sqrt{3} \times 50 \approx 1.73205 \times 50 \approx 86.60\text{ kV}\cdot\text{A}$$
③ 過負荷量 $\Delta S\text{ [kV}\cdot\text{A]}$ を算出します。
バンクの定格容量 $S_V$ を超えている皮相電力は次式で求まります。
$$\Delta S = S_{\text{load}} - S_V = 100 - 86.60 = 13.40\text{ kV}\cdot\text{A} \approx 13.4\text{ kV}\cdot\text{A}$$
選択肢の判定:
(1) 0:過負荷となっていないとする誤りです。
(2) 3.4:変圧器2台の合計容量($100\text{ kV}\cdot\text{A}$)から何らかの誤算を引いた数値です。
(3) 10.0:変圧器2台の単純スカラー和 $2 \times 50 = 100\text{ kV}\cdot\text{A}$ と負荷消費電力 $90\text{ kW}$ を単純比較した誤りです($\text{V}$結線の利用率 $\sqrt{3}/2$ を忘れた典型的な誤答)。
(4) 13.4:正しい計算値です。
(5) 18.4:計算ミスによる誤りです。
(b)の解説
力率改善後に接続できる三相平衡負荷の最大消費電力 $P\text{ [kW]}$ を求める手順は以下のとおりです。
① $\Delta-\Delta$ 結線復旧後のバンク定格容量 $S_{\text{bank}}\text{ [kV}\cdot\text{A]}$ を確認します。
$50\text{ kV}\cdot\text{A}$ の単相変圧器3台による $\Delta-\Delta$ 結線であるため、次式となります。
$$S_{\text{bank}} = 3 \times S_1 = 3 \times 50 = 150\text{ kV}\cdot\text{A}$$
② バンクから送り出される総合有効電力の最大値 $P_{\text{total}}\text{ [kW]}$ を算定します。
進相コンデンサを接続した結果、変圧器バンク側から見た総合力率は $\cos\theta_{\text{total}} = 0.96$(遅れ)となっています。
バンクの定格容量 $S_{\text{bank}} = 150\text{ kV}\cdot\text{A}$ を超えない範囲で最大限供給できる有効電力は次式となります。
$$P_{\text{total}} = S_{\text{bank}} \times \cos\theta_{\text{total}} = 150 \times 0.96 = 144\text{ kW}$$
③ 負荷の消費電力 $P_{\text{load}}\text{ [kW]}$ を特定します。
進相コンデンサは理想的な進相無効電力供給源であり、有効電力を一切消費しません($P_{\text{cap}} = 0$)。
したがって、変圧器バンクが供給する有効電力 $P_{\text{total}}$ は、すべて並列に接続されている三相平衡負荷の消費電力 $P_{\text{load}}$ と一致します。
$$P_{\text{load}} = P_{\text{total}} = 144\text{ kW}$$
選択肢の判定:
(1) 135:改善前の負荷力率 $0.90$ をそのまま掛けて計算した誤りです($150 \times 0.90 = 135\text{ kW}$)。
(2) 144:正しい計算値です。
(3) 150:力率 $1.0$ とみなして皮相電力をそのまま有効電力とした誤りです。
(4) 156:力率改善比率の掛け算ミスによる誤りです。
(5) 167:皮相電力を力率 $0.90$ で除算した誤りです($150 / 0.90 \approx 166.7\text{ kW}$)。
【平成24年 問12】
電気事業者から供給を受ける,ある需要家の自家用変電所を送電端とし,高圧三相3線式1回線の専用配電線路で受電している第2工場がある。第2工場の負荷は $2\,000\text{ kW}$,受電電圧は $6\,000\text{ V}$ であるとき,第2工場の力率改善及び受電端電圧の調整を図るため,第2工場に電力用コンデンサを設置する場合,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし,第2工場の負荷の消費電力及び負荷力率(遅れ)は,受電端電圧によらないものとする。
(a) 第2工場の力率改善のために電力用コンデンサを設置したときの受電端のベクトル図として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,ベクトル図の文字記号と用語との関係は次のとおりである。
$P$:有効電力 [$\text{kW}$]
$Q$:電力用コンデンサ設置前の無効電力 [$\text{kvar}$]
$Q_C$:電力用コンデンサの容量 [$\text{kvar}$]
$\theta$:電力用コンデンサ設置前の力率角 [$^\circ$]
$\theta'$:電力用コンデンサ設置後の力率角 [$^\circ$]

(b) 第2工場の受電端電圧を $6\,300\text{ V}$ にするために設置する電力用コンデンサ容量 [$\text{kvar}$] の値として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,自家用変電所の送電端電圧は $6\,600\text{ V}$,専用配電線路の電線1線当たりの抵抗は $0.5\ \Omega$ 及びリアクタンスは $1\ \Omega$ とする。
また,電力用コンデンサ設置前の負荷力率は $0.6$(遅れ)とする。
なお,配電線の電圧降下式は,簡略式を用いて計算するものとする。
(1) 700
(2) 900
(3) 1500
(4) 1800
(5) 2000
正解
(a) (2)
(b) (4)
解説
(a)の解説
受電端の電力ベクトル図の選定手順は以下のとおりです。
① 各電力成分のベクトルの向きを整理します。
受電端電圧を基準ベクトルとすると、負荷の有効電力 $P\text{ [kW]}$ は電圧と同位相であるため、水平右向きのベクトルとして描かれます。
改善前の負荷は遅れ力率(誘導性)であるため、無効電力 $Q\text{ [kvar]}$ は電圧に対して位相が $90^\circ$ 遅れます。直交座標系では、有効電力 $P$ の先端から下向き(時計回り方向)に垂直なベクトルとして描かれます。
コンデンサ設置前の皮相電力ベクトルは原点から $(P, -Q)$ の先端を結ぶ斜め下向きのベクトルとなり、その位相角が $\theta$(遅れ力率角)です。
② 電力用コンデンサの無効電力ベクトル $Q_C$ の影響を検討します。
電力用コンデンサは進相電流を流し、容量性無効電力(進み無効電力)を系統に供給します。これは遅れ無効電力を打ち消す方向に作用するため、ベクトル図上では下向きの遅れ無効電力 $Q$ の先端から反対の上向き(垂直上方向)に向かうベクトル $+Q_C$ として表されます。
その結果、力率改善後の総合無効電力は $Q' = Q - Q_C$ となり、下向きの長さが短縮されます。
③ 改善後の皮相電力および力率角 $\theta'$ を確認します。
力率改善後の皮相電力ベクトルは、原点から $(P, -(Q - Q_C))$ の先端を結ぶベクトルとなります。合成無効電力が減少したことにより、力率角 $\theta'$ は改善前 $\theta$ よりも小さくなり($\theta' < \theta$)、力率 $\cos\theta' = \dfrac{P}{\sqrt{P^2 + (Q - Q_C)^2}}$ が向上します。
この物理的関係を正確に示しているのは図(2)です。
選択肢の判定:
(1):$Q_C$ が下向きに加算されており、遅れ無効電力が増大して力率角 $\theta'$ が $\theta$ より大きくなっているため誤りです(リアクトルを増設した状態)。
(2):正しいベクトル図です。
(3):$Q_C$ が過大で進相領域に突入していますが、ベクトルの配置および角度関係が不適切です。
(4):遅れ無効電力を上向きに取り、$Q_C$ を斜めベクトルとして加算しているため物理的に誤りです。
(5):無効電力が上向きで $Q_C$ も上向きに加算されており、遅れ力率の改善を表していないため誤りです。
(b)の解説
受電端電圧を $6\,300\text{ V}$ に調整するために必要なコンデンサ容量 $Q_C\text{ [kvar]}$ を求める手順は以下のとおりです。
① 配電線路の条件および目標電圧降下を整理します。
送電端電圧:$V_S = 6\,600\text{ V}$
受電端目標電圧:$V_R = 6\,300\text{ V}$
許容電圧降下:$\Delta V = V_S - V_R = 6\,600 - 6\,300 = 300\text{ V}$
電線1線当たり抵抗:$R = 0.5\ \Omega$
電線1線当たりリアクタンス:$X = 1\ \Omega$
負荷有効電力:$P = 2\,000\text{ kW}$
設置前負荷力率:$\cos\theta = 0.6$(遅れ)
② 設置前の負荷無効電力 $Q\text{ [kvar]}$ を算定します。
$\cos\theta = 0.6$ のとき、$\sin\theta = 0.8$ です。
$$Q = P \tan\theta = 2\,000 \times \dfrac{0.8}{0.6} = 2\,000 \times \dfrac{4}{3} = \dfrac{8\,000}{3} \approx 2\,666.67\text{ kvar}$$
③ 受電端電圧を $6\,300\text{ V}$($= 6.3\text{ kV}$)とするための改善後受電端無効電力 $Q'\text{ [kvar]}$ を算定します。
三相3線式配電線路の簡略電圧降下式を適用します。
$$\Delta V = \dfrac{P R + Q' X}{V_R}$$
ここで $\Delta V = 300\text{ V}$、$P = 2\,000\text{ kW}$、$V_R = 6.3\text{ kV}$、$R = 0.5\ \Omega$、$X = 1\ \Omega$ を代入します。
$$300 = \dfrac{2\,000 \times 0.5 + Q' \times 1}{6.3}$$
分母を払います。
$$300 \times 6.3 = 1\,890$$
$$1\,890 = 1\,000 + Q' \implies Q' = 1\,890 - 1\,000 = 890\text{ kvar}$$
(参考:分母の受電端電圧に公称電圧 $6.0\text{ kV}$ を用いた場合、$300 \times 6.0 = 1\,800 = 1\,000 + Q' \implies Q' = 800\text{ kvar}$ となります)
④ 必要な電力用コンデンサ容量 $Q_C\text{ [kvar]}$ を算出します。
コンデンサが補償すべき無効電力は、改善前無効電力 $Q$ と改善後無効電力 $Q'$ の差です。
$$Q_C = Q - Q' = 2\,666.67 - 890 = 1\,776.67\text{ kvar} \approx 1\,800\text{ kvar}$$
(公称電圧 $6.0\text{ kV}$ を用いた場合は $Q_C = 2\,666.67 - 800 = 1\,866.67\text{ kvar} \approx 1\,800\text{ kvar}$ となり、いずれの計算においても最も近い選択肢は $1\,800\text{ kvar}$ となります)
選択肢の判定:
(1) 700:抵抗降下とリアクタンス降下の引き算誤りによる数値です。
(2) 900:改善後無効電力 $Q'$ そのものの概略値です。
(3) 1500:力率 $0.8$ を目標とした場合の誤算です。
(4) 1800:最も近い正しい計算値です。
(5) 2000:有効電力 $P$ と同等の容量を選定した誤りです。
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