電験3種(法規)で出題される「近畿(関西)エリアの出迎え方式(構内にPASが無い)は法令等の違反になるのか?」について解説します。
出迎え方式とは?
出迎え方式とは、需要家側の高圧引込ケーブルを、電気事業者が所有する電柱(配電線)まで直接延ばして接続し、受電する方式のことです。関西電力送配電の供給管内で見られる受電方式です。出迎え方式の場合、「責任分界点(保安上の責任の分かれ目)」に、需要家側の保護装置(PAS:柱上気中開閉器など)が設置されないのが最大の特徴です。
出迎え方式による波及事故のリスク
出迎え方式では、「高圧引込ケーブル」に経年劣化や野生動物の接触などで地絡(漏電)や短絡(ショート)が発生した場合、それを需要家側で遮断することができません。その結果、異常電流がそのまま関西電力送配電の変電所まで流れ込み、変電所側の遮断器をトリップ(作動)させてしまいます。これにより、同じ配電線につながっている近隣の住宅、工場、病院、信号機などがすべて停電する「波及事故」に直結してしまいます。波及事故によって近隣の工場が操業停止になったり、店舗の営業に支障が出たりした場合、原因が「自社設備の引込ケーブルの経年劣化」等であれば、発生元の企業に対して多額の損害賠償が請求されるリスクがあります。実際、近畿圏においても出迎え方式の引込みケーブルの絶縁不良による波及事故は多発しています。また、キュービクルの法定点検(停電年次点検)などで設備を停電させる際、関西電力送配電に連絡して送配電側の開閉器を操作してもらう依頼が必要になります。これには事前のスケジュール調整の手間や、開閉作業に伴う費用が発生する場合があります。
電技解釈
高圧受変電設備規程
1110-1 保安上の責任分界点の設定
高圧受変電設備規程の1110-1では、「責任分界点の位置は原則的に構内」とされています。出迎え方式は責任分界点が構外にあるため、これを満たしていません。しかし、「特別の理由があれば構外(電柱等)に設定できる」とする例外規定(ただし書き)があるため、出迎え方式は違反とはなりません。
第1110節 1110-1(保安上の責任分界点の設定)
保安上の責任分界点は、自家用電気工作物(以下「自家用」という。)設置者の構内に設定すること。ただし、電気事業者が自家用引込線専用の分岐開閉器を施設する場合又は特別の理由により自家用の構内に設定することが困難な場合は、保安上の責任分界点を自家用の構外に設定することができる。
1110-2 区分開閉器の施設
続いて、高圧受変電設備規程の1110-2では、「責任分界点に区分開閉器を施設すること」が規定されています。出迎え方式は責任分界点にPAS等の区分開閉器を設けないため、これを満たしていません。しかし、「特別の理由があれば、責任分界点の近くに区分開閉器を施設することができる。」とする例外規定(ただし書き)があるため、出迎え方式は違反とはなりません。
保安上の責任分界点には、区分開閉器を施設すること。ただし、電気事業者が自家用引込線専用の分岐開閉器を施設する場合は、保安上の責任分界点に近接する箇所に区分開閉器を施設することができる。
分界点において地絡事故を切り離す保護装置(GR付PASなど)の設置を義務付ける条文です。出迎え方式の最大の弱点(ケーブル地絡時の波及事故リスク)は、この規定を満たしていないために生じます。
1110-2 地絡遮断装置の施設
第1110節 1110-4(地絡遮断装置の施設)
保安上の責任分界点には、地絡遮断装置を施設すること。ただし、保安上の責任分界点に近い箇所に地絡遮断装置が施設されており、地絡による波及事故のおそれがない場合は、この限りでない。
(付録)の関連条文
高圧受変電設備規程の付録(関西電力送配電株式会社供給区域内)に、出迎え方式を導入する需要家側の扱いが記載されています。
付録 I-4-1. 電力会社の標準装柱**
お客さまの地中又は架空ケーブル引込線における財産分界点および保安責任分界点は、原則として電力会社の開閉器の負荷側接続点とします。
付録 I-4-2. 設備と接続工事の区分 (1) 設備の区分
* 【電力会社設備】 (1)高圧開閉器とその腕金、(2)ケーブル端末支持用高圧ピンがいし …等
* 【お客さま設備】 (1)ケーブル、(2)ケーブル支持金物とそのバンド …等
責任分界点(電力会社の開閉器の直下)から先の「高圧引込ケーブル」は需要家の財産であると明記しつつも、お客さま側の設備区分に「区分開閉器」を含めておらず、責任分界点に需要家の保護装置を設けない構成(出迎え方式)を前提とした区分になっています。
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