電験$3$種法規科目における「低圧・高圧屋内配線と弱電流電線・水管・ガス管等との接近・交差および高圧屋内配線の施設基準」に関する過去問解説です。
低圧・高圧屋内配線と他工作物の接近交差および高圧配線の施設基準
電気使用場所に施設する配線は、他の配線や水道管、ガス管等の金属管路と近接して設置される事例が多くあります。
配線相互の接触や放電による感電、火災、ガス爆発等の複合災害を防止するため、法令で離隔距離や防護措置が厳格に定められています。
出題の根拠法令は、「電気設備に関する技術基準を定める省令」第$57$条、および「電気設備技術基準の解釈」第$167$条、第$168$条です。
配線と他設備接近交差における危害防止規定(省令第$57$条)
配線が他の配線や工作物と接近・交差する際の基本保安原則です。
対象工作物の種類に応じて想定される事故現象と防止すべき危害が規定されています。
| 対象工作物 | 防止すべき現象 | 防止すべき危害・影響 | 技術的背景と引っかけパターン |
|---|---|---|---|
| 他の配線、弱電流電線等 | 混触 | 感電または火災のおそれの防止 | 電路間の接触による高電位移行を防止します。「放電」や「誘導」とする誤りが出題されます。 |
| 水道管、ガス管等 | 放電、漏電 | 工作物の損傷防止、工作物を介した感電または火災の防止 | 電気火花による管壁損傷(溶損)や、漏洩電流による建物内への電位波及を防ぎます。損傷原因を「混触」、媒介危害を「短絡」とする誤りが出題されます。 |
| 燃料ガス等の可燃性ガス工作物 | 火花(電気火花) | 爆発のおそれの防止 | 可燃性ガスへの着火源排除を定めています。「過熱」や「静電気」とする誤りが出題されます。 |
低圧屋内配線と弱電流電線・水管等との接近交差基準(解釈第$167$条)
低圧屋内配線と弱電流電線等または水管等との離隔基準です。
施工工法の防護性能に応じて要求される離隔距離が異なります。
| 配線の工事種別 | 弱電流電線等または水管等との離隔基準 | 防護措置による緩和要件 | 試験における頻出引っかけ |
|---|---|---|---|
| ケーブル工事、各種電線管工事等 | 接触しないように施設すること | 外装被覆や金属管等による機械的防護があるため離隔距離の数値規定はありません。 | ケーブル工事に対しても「$10 ext{ cm}$ 以上の離隔距離」を必須とする誤りが出題されます。 |
| がいし引き工事(被覆絶縁電線) | $10 ext{ cm}$ 以上の離隔距離を保持すること | 電線相互間に絶縁性の隔壁を設けるか、低圧電線を絶縁管に収める場合は接触防止のみで足ります。 | 防護措置なしで「接触しないように施設すれば足りる」とする誤りが出題されます。 |
| がいし引き工事(裸電線) | $30 ext{ cm}$ 以上の離隔距離を保持すること | 絶縁被覆がないため厳格な離隔距離が必要です。 | 裸電線の離隔距離を「$10 ext{ cm}$」や「$15 ext{ cm}$」とする誤りが出題されます。 |
高圧屋内配線の施設基準および接近交差要件(解釈第$168$条)
高圧屋内配線に認められる工事種別と施工基準、および他の電線等との接近交差要件です。
| 項目 | 規定内容 | 技術的要件および緩和措置 | 試験における頻出引っかけ |
|---|---|---|---|
| 認められる工事種別 | がいし引き工事、ケーブル工事 | がいし引き工事は「乾燥した場所であって展開した場所」に厳格に限定されます。 | 工法に「金属管工事」や「合成樹脂管工事」を認める誤り、隠ぺい場所でのがいし引きを可とする誤りが出題されます。 |
| ケーブル防護金属管の接地 | A種接地工事(原則) | 接触防護措置を施す場合はD種接地工事に緩和されます。 | 金属管の接地工事を「C種接地工事」とする誤りが出題されます。 |
| 他の電線等との離隔距離 | $15 ext{ cm}$ 以上(原則) | がいし引き工事による低圧屋内裸電線との離隔距離は $30 ext{ cm}$ 以上となります。 | 原則の離隔距離を「$10 ext{ cm}$」や「$25 ext{ cm}$」とする誤りが出題されます。 |
| 離隔距離の緩和要件 | 耐火性のある堅ろうな隔壁の設置、または耐火性のある堅ろうな管への収容 | 他の高圧屋内配線の電線がケーブルである場合も離隔距離の制限を受けません。 | 隔壁や保護管の性能要件を「難燃性」やすり替える誤りが出題されます。 |
【令和8年上期・問8】電気使用場所の配線による他の配線等又は工作物への危険の防止
「電気設備技術基準」では,電気使用場所の配線による他の配線等又は工作物への危険の防止について,次のように規定している。
$1$.配線は,他の配線,弱電流電線等と接近し,又は交さする場合は,(ア)による感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
$2$.配線は,水道管,ガス管又はこれらに類するものと接近し,又は交さする場合は,(イ)によりこれらの工作物を損傷するおそれがなく,かつ,(ウ)又は(イ)によりこれらの工作物を介して感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(ウ)に記入する語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(1) (ア) 混触 (イ) 誘導 (ウ) 短絡
(2) (ア) 混触 (イ) 放電 (ウ) 漏電
(3) (ア) 放電 (イ) 混触 (ウ) 短絡
(4) (ア) 誘導 (イ) 放電 (ウ) 漏電
(5) (ア) 誘導 (イ) 混触 (ウ) 地絡
解説
正解は (2) です。
電気使用場所に施設する配線は、他の電線や金属配管と近接することがあります。
この場合の安全確保について、「電気設備に関する技術基準を定める省令」第$57$条に規定されています。
「電気設備に関する技術基準を定める省令」第$57$条(配線による他の配線等又は工作物への危険の防止)
「第$57$条 配線は、他の配線、弱電流電線等と接近し、又は交さする場合は、混触による感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
$2$ 配線は、水道管、ガス管又はこれらに類するものと接近し、又は交さする場合は、放電によりこれらの工作物を損傷するおそれがなく、かつ、漏電又は放電によりこれらの工作物を介して感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
$3$ 配線は、燃料ガス等の可燃性ガスを取り扱う工作物と接近し、又は交さする場合は、火花による爆発のおそれがないように施設しなければならない。」
空欄(ア)には「混触」が入ります。
配線同士や弱電流電線等と物理的または電気的に接触する現象です。
強電配線から弱電流配線へ高電位が移行すると、火災や機器焼損を招きます。
したがって、混触を防止する施設方法が義務付けられています。
空欄(イ)には「放電」が入ります。
配線と導電性配管との間で火花放電やアークが生じる現象です。
放電の高熱は水道管やガス管の管壁を局所的に溶損させます。
ガス管に孔が開いた場合はガス漏れによる引火爆発へ直結します。
空欄(ウ)には「漏電」が入ります。
絶縁不良等によって電流が金属管路へ漏れ出す現象です。
金属管路を通じて建物全体へ電位が伝播します。
その結果、管に触れた人体の感電や過熱火災を引き起こします。
【令和7年上期・問8、令和元年・問5】低圧配線及び高圧配線の施設基準
次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく低圧配線及び高圧配線の施設に関する記述である。
$ ext{a)}$ ケーブル工事により施設する低圧配線が,弱電流電線又は水管,ガス管若しくはこれらに類するもの(以下,「水管等」という。)と接近し又は交差する場合は,低圧配線が弱電流電線又は水管等と(ア)施設すること。
$ ext{b)}$ 高圧屋内配線工事は,がいし引き工事(乾燥した場所であって(イ)した場所に限る。)又は(ウ)により施設すること。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(ウ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) (ア) 接触しないように (イ) 隠ぺい (ウ) ケーブル工事
(2) (ア) の離隔距離を $10 ext{ cm}$ 以上となるように (イ) 展開 (ウ) 金属管工事
(3) (ア) の離隔距離を $10 ext{ cm}$ 以上となるように (イ) 隠ぺい (ウ) ケーブル工事
(4) (ア) 接触しないように (イ) 展開 (ウ) ケーブル工事
(5) (ア) 接触しないように (イ) 隠ぺい (ウ) 金属管工事
解説
正解は (4) です。
低圧配線と水管等の接近交差、および高圧屋内配線の工事種別に関する問題です。
根拠条文は「電気設備技術基準の解釈」第$167$条および第$168$条です。
「電気設備技術基準の解釈」第$167$条(低圧屋内配線と弱電流電線等又は水管等との接近又は交差)
「第$167$条 低圧屋内配線が、弱電流電線等又は水管、ガス管若しくはこれらに類するもの(以下この条において「水管等」という。)と接近し、又は交差する場合は、次の各号のいずれかによること。
一 低圧屋内配線が、弱電流電線等又は水管等と接触しないように施設すること。
二 低圧屋内配線が、弱電流電線又は水管等と接触しないように施設し、かつ、次のいずれかによること。
イ 低圧屋内配線を、合成樹脂管工事、金属管工事、可とう電線管工事、金属線ぴ工事、金属ダクト工事、バスダクト工事、フロアダクト工事、セルラダクト工事又はケーブル工事により施設すること。
ロ 低圧屋内配線と弱電流電線等又は水管等との離隔距離を、$10 ext{ cm}$ 以上(電線が裸電線である場合は、$30 ext{ cm}$ 以上)とすること。ただし、低圧屋内配線と弱電流電線等との間に絶縁性の隔壁を設ける場合、又は低圧屋内配線を絶縁管に収めて施設する場合は、この限りでない。」
「電気設備技術基準の解釈」第$168$条(高圧屋内配線等の施設)
「第$168$条 高圧屋内配線は、次の各号に掲げる工事のいずれかにより施設すること。
一 がいし引き工事(乾燥した場所であって展開した場所に限る。)
二 ケーブル工事」
空欄(ア)には「接触しないように」が入ります。
ケーブル工事では絶縁電線が堅牢な外装被覆で覆われています。
弱電流電線や水管等との間で直接接触しなければ安全が保たれます。
したがって、数値としての離隔距離を保つ必要はありません。
離隔距離 $10 ext{ cm}$ 以上が要求されるのは、がいし引き工事等による絶縁電線の場合です。
空欄(イ)には「展開」が入ります。
がいし引き工事は電線が露出する施工方法です。
点検が困難な隠ぺい場所では異常の早期発見が困難となります。
そのため、点検が容易な「乾燥した場所であって展開した場所」に厳格に限定されています。
空欄(ウ)には「ケーブル工事」が入ります。
高圧屋内配線として認められている工法は、がいし引き工事とケーブル工事の$2$種類のみです。
金属管工事や合成樹脂管工事を単独の工法として高圧屋内配線に用いることはできません。
【令和4年下期・問6】高圧屋内配線の施設基準および他の屋内電線等との接近・交差
次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく高圧屋内配線に関する記述である。
高圧屋内配線は,(ア)工事(乾燥した場所であって展開した場所に限る。)又はケーブル工事により施設すること。
ケーブル工事による高圧屋内配線で,防護装置としての金属管にケーブルを収めて施設する場合には,その管に(イ)接地工事を施すこと。ただし,接触防護措置(金属製のものであって,防護措置を施す設備と電気的に接続するおそれがあるもので防護する方法を除く。)を施す場合は,D種接地工事によることができる。
高圧屋内配線が,他の高圧屋内配線,低圧屋内配線,管灯回路の配線,弱電流電線等又は水管,ガス管若しくはこれらに類するもの(以下この問において「他の屋内電線等」という。)と接近又は交差する場合は,次の$ ext{a)}$,$ ext{b)}$のいずれかによること。
$ ext{a)}$ 高圧屋内配線と他の屋内電線等との離隔距離は,(ウ)( (ア)工事により施設する低圧屋内電線が裸電線である場合は,$30 ext{ cm}$)以上であること。
$ ext{b)}$ 高圧屋内配線をケーブル工事により施設する場合においては,次のいずれかによること。
① ケーブルと他の屋内電線等との間に(エ)のある堅ろうな隔壁を設けること。
② ケーブルを(エ)のある堅ろうな管に収めること。
③ 他の高圧屋内配線の電線がケーブルであること。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) (ア) がいし引き (イ) A種 (ウ) $15 ext{ cm}$ (エ) 耐火性
(2) (ア) 合成樹脂管 (イ) C種 (ウ) $25 ext{ cm}$ (エ) 耐火性
(3) (ア) がいし引き (イ) C種 (ウ) $15 ext{ cm}$ (エ) 難燃性
(4) (ア) 合成樹脂管 (イ) A種 (ウ) $25 ext{ cm}$ (エ) 難燃性
(5) (ア) がいし引き (イ) A種 (ウ) $15 ext{ cm}$ (エ) 難燃性
解説
正解は (1) です。
高圧屋内配線の施工工法、防護金属管の接地、および他の屋内電線等との接近交差に関する規定です。
根拠条文は「電気設備技術基準の解釈」第$168$条です。
「電気設備技術基準の解釈」第$168$条(高圧屋内配線等の施設)
「第$168$条 高圧屋内配線は、次の各号に掲げる工事のいずれかにより施設すること。
一 がいし引き工事(乾燥した場所であって展開した場所に限る。)
二 ケーブル工事
(中略)
$3$ 第$1$項第二号のケーブル工事による高圧屋内配線は、次によること。
一 電線は、ケーブルであること。
二 ケーブルを防護するため、金属管に収める場合は、金属管にA種接地工事を施すこと。ただし、接触防護措置(金属製のものであって、防護措置を施す設備と電気的に接続するおそれがあるもので防護する方法を除く。)を施す場合は、D種接地工事によることができる。
$4$ 高圧屋内配線が、他の高圧屋内配線、低圧屋内配線、管灯回路の配線、弱電流電線等又は水管、ガス管若しくはこれらに類するもの(以下この条において「他の屋内電線等」という。)と接近し、又は交差する場合は、次の各号のいずれかによること。
一 高圧屋内配線と他の屋内電線等との離隔距離は、$15 ext{ cm}$(がいし引き工事により施設する低圧屋内電線が裸電線である場合は、$30 ext{ cm}$)以上であること。
二 高圧屋内配線をケーブル工事により施設する場合にあっては、次のいずれかによること。
イ ケーブルと他の屋内電線等との間に耐火性のある堅ろうな隔壁を設けること。
ロ ケーブルを耐火性のある堅ろうな管に収めること。
ハ 他の高圧屋内配線の電線がケーブルであること。」
空欄(ア)には「がいし引き」が入ります。
高圧屋内配線に認められる工法は、がいし引き工事とケーブル工事のみです。
合成樹脂管工事や金属管工事は高圧屋内配線として認められていません。
空欄(イ)には「A種」が入ります。
高圧配線を防護する金属管であるため、感電防止として原則A種接地工事が義務付けられています。
接触防護措置を施す場合に限り、D種接地工事へ緩和されます。
空欄(ウ)には「$15 ext{ cm}$」が入ります。
高圧配線と他の屋内電線等との離隔距離は、原則として $15 ext{ cm}$ 以上です。
低圧側ががいし引きの裸電線である場合は、感電危険性が高まるため $30 ext{ cm}$ 以上を要します。
空欄(エ)には「耐火性」が入ります。
離隔距離を短縮する際の防護部材には、堅牢さに加えて耐火性能が求められます。
火災発生時に他の電線や配管へ火炎や熱が波及するのを防ぐためです。
難燃性では熱遮断性能が不足するため、耐火性のある隔壁または管に収める必要があります。
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