磁界、磁力線、磁束、磁束鎖交数、自己インダクタンス、相互インダクタンスとは?試験対策と計算問題について解説します。
磁力線、磁束、磁束鎖交数、自己インダクタンス、相互インダクタンス
- 磁力線
- 磁極の働きを理解するのに考えた仮想的な線。
- 磁力線の特徴
- 磁石のN極から出てS極に入る。
- 磁極m[Wb]からは、磁力線(本数は$N=\frac{m}{\mu}$ 本)が出入りする。ここで、磁極周囲の物質の透磁率はμ[H/m]とする。
- 磁力線の接線の向きは、その点の磁界の向きを表す。
- 磁力線の密度は、その点の磁界の強さを表す(磁束密度と間違えないように注意)。
- 磁力線同士は、互いに反発し合い、交わらない。
- 磁束$\varphi =BS$[Wb]
- 垂直断面を貫く磁束線の総本数[Wb]。
- 垂直断面の面積:S、磁束密度:B
- 磁束鎖交数$\Phi = N \varphi = LI$[Wb]
- N巻のコイル全体を貫く磁力線の本数[Wb]
- 自己インダクタンスL[H]
- コイルに電流を流した時、コイルに発生する磁束鎖交数 $\Phi$ [Wb]は、電流 $I$ [A]に比例します。この比例定数を自己インダクタンスL[H]といいます。
- 自己インダクタンス $L$ の $N$ 巻コイルに電流 $I$ を流すとき、磁束 $\varphi$ [Wb]と磁束鎖交数 $\Phi$ [Wb]は次式で計算できます。
$\Phi=N\varphi=LI$
$\varphi=\frac{LI}{N}$
コイルに電流を流した時、コイルに発生する磁束鎖交数 $\Phi$ [Wb]は、電流 $I$ [A]に比例します。
この比例定数を自己インダクタンスL[H]といいます。
点磁荷のクーロン法則
点磁荷のクーロン法則ですが、考え方は点電荷と同じようなものです。
点電荷$Q$が点磁荷$m$,電界の強さ$E$が磁界の強さ$H$、真空の誘電率$epsilon_0$が真空の透磁率$\mu_0$となります。
真空中で距離$r$離れた二つの磁荷$m_A, m_B$に加わる$F$は、真空の透磁率を$\mu_0$とすると以下の式で計算できます。
$F=\frac{m_Am_B}{4\pi \mu_0 r^2}$
磁荷$m$から$$離れた点における磁界の強さ$H$は以下の式で計算できます。
$H=\frac{m}{4\pi \mu_0 r^2}$
磁界中の電子運動
【電験3種 理論 平成30年 問12】で赤字箇所が穴埋め問題として出題されました。
- 図のように、平等磁界の存在する真空かつ無重力の空間に,電子を$x$方向に初速度v[m/s] で放出する。
- 平等磁界は$z$方向であり磁束密度の大きさ$B[T]$をもつとし、電子の質量を$m[kg]$、素電荷の大きさを$e[C]$とする。
- ただし、紙面の裏側から表側への向きを$z$方向の正とし、$v$は光速に比べて十分小さいとする。
- このとき、電子の運動は等速円運動となり、時間$T=\frac{2\pi m}{eB}[s]$後に元の位置に戻ってくる。
- (理由)フレミングの左手の法則より、電子に対しては、回転円の中心に向かう力が加わるため。
- 電子の放出直後の軌跡は破線矢印の$a$のようになる。
- (理由)フレミングの左手の法則より、電流の向きが$-x$方向、磁界の向きが$z$方向、力の向きは$y$方向なので、電子は$a$方向に動く。
- 一方、電子を磁界と平行な$z$方向に放出すると、電子の運動は等速直線運動となる。
- (理由)電子を$z$方向に放出すると、電子には一切力が加わらず、等速直線運動になる。
【補足】$T=\frac{2\pi m}{eB}[s]$となる理由
- 電子に加わる電磁力$F=evB$と向心力$F=\frac{mv^2}{r}$は等しいので、
$evB=\frac{mv^2}{r}$
$r=\frac{mv}{eB}$
の等速円運動となる。よって、電子が元の位置に戻るまでの時間Tは、以下のとおり。
$T=\frac{2\pi r}{v}=\frac{2\pi}{v}\frac{mv}{eB}=\frac{2\pi m}{eB}[s]$
【例題1】点磁荷のクーロン法則
【電験3種 理論 平成30年 問3】
長さ$2m$の直線状の棒磁石があり、その両端の磁極は点磁荷とみなすことができ、その強さは、N極が$1\times 10^{−4}[Wb]$、S極が$−1\times 10^{−4}[Wb]$である。
図のように、この棒磁石を点BC間に置いた。このとき、点Aの磁界の大きさ[A/m]を求めよ。
ただし、点A、B、Cは、一辺を2mとする正三角形の各頂点に位置し、真空中にあるものとする。
真空の透磁率は$\mu_0=4\pi \times 10^{-7}[H/m]$とする。また、N極、S極の各点磁荷以外の部分から点Aへの影響はないものとする。
【解答】
点Bの磁荷$1\times 10^{−4}$[Wb]による磁界の大きさ$H_B$は以下のとおり。
$H_B=\frac{m}{4\pi \mu_0 r^2}=\frac{m}{4\pi \mu_0 r^2}\frac{1\times 10^{-4}}{4\pi \times 4\pi \times 10^{-7}\times 2^2}=1.58 $[A/m]
となる。また,点Cの磁荷$1\times 10^{−4}$[Wb]による磁界の大きさ$H_C$も$H_B$と同じ大きさとなる。
$H_B, H_C$が正三角形の辺となっていることから、その合成磁界Hの大きさもH_Bと同じ1.58 [A/m]となる。
【例題2】中空鉄心中の磁束
【電験3種 理論 平成28年 問4】
図のように,磁極 N,S の間に中空球体鉄心を置くと, N から S に向かう磁束は,鉄心中を通るようになる。
このとき,球体鉄心の中空部分(内部の空間)の点 A では,磁束密度は極めて小さくなる。これを磁気遮へいという。
ただし,磁極 N,S の間を通る磁束は,中空球体鉄心を置く前と置いた後とで変化しないものとする。
【例題3】単位記号
【電験3種 理論 平成23年 問14】
電気及び磁気に関係する量とその単位記号(他の単位による表し方を含む)との組合せとして,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)導電率 S/m
→正しい。
(2)電力量 W⋅s
→正しい。
(3)インダクタンス Wb/V
→誤り。$L=\fracN{\phi}{I}$より、[Wb/A]が正しい。
(4)磁束密度 T
→正しい。$B=\frac{\phi}{S}$より単位が$[Wb/m^2]$で表されることもある。
(5)誘電率 F/m
→正しい($\epsilon=\frac{Cd}{S}$)。
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