電験3種(理論)で出題される磁界・磁力線・磁束・磁束鎖交数・自己インダクタンス・相互インダクタンスの意味や計算問題について解説します。
磁力線

磁力線とは、上図のように磁極の働きを理解するのに考えた仮想的な線です。以下の特徴があります。
- 磁石のN極から出てS極に入る。
- 磁極m[Wb]からは、磁力線(本数は$N=\frac{m}{\mu}$ 本)が出入りする。ここで、磁極周囲の物質の透磁率はμ[H/m]とする。
- 磁力線の接線の向きは、その点の磁界の向きを表す。
- 磁力線の密度は、その点の磁界の強さを表す(磁束密度と間違えないように注意)。
- 磁力線同士は、互いに反発し合い、交わらない。
磁束

垂直断面を貫く磁束線の総本数を磁束$\varphi$[Wb]といいます。
$\varphi =BS$
垂直断面の面積:$S$ [ $m^2$ ]
磁束密度:$B$ [ $T$ ] or [ $Wb/m^2$ ]
磁束密度は、磁気の強さと向きを表す物理量で、「単位面積あたりに、どれだけの磁力線(磁束)が通っているか」を示すものです。
磁束鎖交数と自己インダクタンス

N巻のコイル全体を貫く磁力線の本数[Wb]を磁束鎖交数といいます。コイルに電流を流した時、コイルに発生する磁束鎖交数 $\Phi$ [Wb]は、電流 $I$ [A]に比例します。この比例定数を自己インダクタンス $L$ [H]といいます。自己インダクタンス $L$ の $N$ 巻コイルに電流 $I$ を流すとき、磁束 $\varphi$ [Wb]と磁束鎖交数 $\Phi$ [Wb]は次式で計算できます。
$\Phi = N \varphi = LI$[Wb]
$\varphi=\frac{LI}{N}$
点磁荷のクーロン法則

点磁荷のクーロン法則ですが、考え方は点電荷と同じようなものです。
点電荷$Q$が点磁荷$m$,電界の強さ$E$が磁界の強さ$H$、真空の誘電率$ \epsilon_0 $が真空の透磁率$ \mu_0 $となります。
真空中で距離$r$離れた二つの磁荷$m_A, m_B$に加わる$F$は、真空の透磁率を$\mu_0$とすると以下の式で計算できます。
$F=\frac{m_Am_B}{4\pi \mu_0 r^2}$
磁荷$m$から$$離れた点における磁界の強さ$H$は以下の式で計算できます。
$H=\frac{m}{4\pi \mu_0 r^2}$
磁界中の電子運動
【電験3種 理論 平成30年 問12】で下線箇所が穴埋め問題として出題されました。

図のように、平等磁界の存在する真空かつ無重力の空間に,電子を$x$方向に初速度v[m/s] で放出する。
平等磁界は$z$方向であり磁束密度の大きさ$B[T]$をもつとし、電子の質量を$m[kg]$、素電荷の大きさを$e[C]$とする。
ただし、紙面の裏側から表側への向きを$z$方向の正とし、$v$は光速に比べて十分小さいとする。
このとき、電子の運動は等速円運動となり、時間$T=\frac{2\pi m}{eB}[s]$後に元の位置に戻ってくる。
電子の放出直後の軌跡は破線矢印の$a$のようになる。
一方、電子を磁界と平行な$z$方向に放出すると、電子の運動は等速直線運動となる。
補足
$T=\frac{2\pi m}{eB}[s]$となる理由を解説します。
電子に加わる電磁力$F=evB$と向心力$F=\frac{mv^2}{r}$は等しいので、
$evB=\frac{mv^2}{r}$
$r=\frac{mv}{eB}$
の等速円運動となります。よって、電子が元の位置に戻るまでの時間Tは、以下のとおり。
$T=\frac{2\pi r}{v}=\frac{2\pi}{v}\frac{mv}{eB}=\frac{2\pi m}{eB}[s]$
【平成30年・問3】点磁荷のクーロン法則
長さ$2m$の直線状の棒磁石があり、その両端の磁極は点磁荷とみなすことができ、その強さは、N極が$1\times 10^{−4}[Wb]$、S極が$−1\times 10^{−4}[Wb]$である。
図のように、この棒磁石を点BC間に置いた。このとき、点Aの磁界の大きさ[A/m]を求めよ。
ただし、点A、B、Cは、一辺を2mとする正三角形の各頂点に位置し、真空中にあるものとする。
真空の透磁率は$\mu_0=4\pi \times 10^{-7}[H/m]$とする。また、N極、S極の各点磁荷以外の部分から点Aへの影響はないものとする。

解説
点Bの磁荷$1\times 10^{−4}$[Wb]による磁界の大きさ$H_B$は以下のとおり。
$H_B=\frac{m}{4\pi \mu_0 r^2}=\frac{m}{4\pi \mu_0 r^2}\frac{1\times 10^{-4}}{4\pi \times 4\pi \times 10^{-7}\times 2^2}=1.58 $[A/m]
となる。また,点Cの磁荷$1\times 10^{−4}$[Wb]による磁界の大きさ$H_C$も$H_B$と同じ大きさとなる。
$H_B, H_C$が正三角形の辺となっていることから、その合成磁界Hの大きさもH_Bと同じ1.58 [A/m]となる。
【平成28年・問4】中空鉄心中の磁束

図のように,磁極 N,S の間に中空球体鉄心を置くと, N から S に向かう磁束は,鉄心中を通るようになる。
このとき,球体鉄心の中空部分(内部の空間)の点 A では,磁束密度は極めて小さくなる。これを磁気遮へいという。ただし,磁極 N,S の間を通る磁束は,中空球体鉄心を置く前と置いた後とで変化しないものとする。
【平成23年・問14】単位記号
電気及び磁気に関係する量とその単位記号(他の単位による表し方を含む)との組合せとして,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)導電率 S/m
→正しい。
(2)電力量 W⋅s
→正しい。
(3)インダクタンス Wb/V
→誤り。$L=\fracN{\phi}{I}$より、[Wb/A]が正しい。
(4)磁束密度 T
→正しい。$B=\frac{\phi}{S}$より単位が$[Wb/m^2]$で表されることもある。
(5)誘電率 F/m
→正しい($\epsilon=\frac{Cd}{S}$)。
【令和7年度上期・問14】電気及び磁気の量と単位
電気及び磁気に関する量とその単位記号(これと同じ内容を表す単位記号を含む。)の組み合わせとして、誤っているのは次のうちどれか。
| – | (1) | (2) | (3) | (4) | (5) |
|---|---|---|---|---|---|
| 量 | 電流 | 磁気抵抗 | 電力量 | 磁束 | 電界の強さ |
| 単位記号 | C/s | $H^{-1}$ | W・s | T | V/m |
解説
正解は(4)です。
各選択肢を検討します。
(1) 電流 $I = Q/t$ なので $\text{[C/s]}$ です。正しい。
(2) 磁気抵抗 $R_m = NI / \Phi$ であり、自己インダクタンス $L = N^2 / R_m$ より $R_m = N^2 / L$ であるため、単位は $\text{[H}^{-1}\text{]}$ です。正しい。
(3) 電力量 $W = P \cdot t$ なので $\text{[W・s]}$ ($= \text{J}$)です。正しい。
(4) 磁束の単位はウェーバ $\text{[Wb]}$ です。テスラ $\text{[T]}$ は磁束密度の単位 $\text{[Wb/m}^2\text{]}$ なので誤りです。
(5) 電界の強さは $\text{[V/m]}$ です。正しい。
【令和6年度下期・問14】SI組立単位の表し方
固有の名称をもつSI組立単位の記号と、これと同じ内容を表す他の表し方の組合せとして、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
| – | (1) | (2) | (3) | (4) | (5) |
|---|---|---|---|---|---|
| SI組立単位の記号 | F | Wb | S | T | W |
| SI基本単位及びSI組立単位による他の表し方 | C/V | V/s | A/V | Wb/m² | J/s |
解説
正解は(2)です。
磁束の単位であるウェーバ $\text{Wb}$ は、ファラデーの電磁誘導の法則 $e = -\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}$ より、$\text{V} \cdot \text{s}$(ボルト秒)と表されます。したがって、$\text{V/s}$ ではなく $\text{V} \cdot \text{s}$ が正しい表し方です。その他の組合せはすべて正しいです。
【令和6年度上期・問3】磁気に関する量と単位
磁気に関する量とその単位記号 (SI 基本単位及び組立単位による表し方)の組合せとして、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
| – | (1) | (2) | (3) | (4) | (5) |
|---|---|---|---|---|---|
| 量 | インダクタンス | 磁束 | 磁界の強さ | 磁気抵抗 | 透磁率 |
| 単位記号 | Wb/A | $V/s$ | $A/m$ | $H^{-1}$ | $H/m$ |
解説
正解は(2)です。
磁束の単位はウェーバ $\text{[Wb]}$ です。ファラデーの電磁誘導の法則 $e = -\frac{d\Phi}{dt}$ より、電圧は磁束の時間変化率に等しいため、単位は次式の関係となります。
$$\text{[V]} = \frac{\text{[Wb]}}{\text{[s]}}$$
すなわち、 $\text{[Wb]=[Vs]}$ となります。したがって、(2)の $\text{V/s}$ は誤りです。
(2)インダクタンス:$\text{Wb/A}$は正しいです。
自己インダクタンス $L$ の定義式 $\Phi = Li$(磁束 = インダクタンス × 電流)から導けます。
この式を $L$ について解くと、
$$L = \frac{\Phi}{i} \quad \rightarrow \quad \text{[H]} = \frac{\text{[Wb]}}{\text{[A]}}$$
(3) 磁界の強さ:$\text{A/m}$は正しいです。
アンペールの右ねじの法則(周回積分の法則) $Hl = NI$ から導けます。
磁界の強さ $H$ は、単位長さあたりの起電力(電流)となるため、
$$H = \frac{NI}{l} \quad \rightarrow \quad \text{[A/m]}$$
($N$ は巻数で無次元量のため、単位としては電流の $\text{A}$ と長さの $\text{m}$ が残ります)
(4) 磁気抵抗:$\text{H}^{-1}$は正しいです。
磁気抵抗 $R_m$ とインダクタンス $L$ の関係式 $L = \frac{N^2}{R_m}$ から導けます。
この式を $R_m$ について解くと、
$$R_m = \frac{N^2}{L} \quad \rightarrow \quad \frac{1}{\text{[H]}} = \text{[H}^{-1}\text{]}$$
また、磁気回路のオームの法則 $\Phi = \frac{F}{R_m}$ (起磁力 $\div$ 磁気抵抗)から $\text{A/Wb}$ と表すこともありますが、$\text{H}^{-1}$ も一般的によく使われる正しい表記です。
(5) 透磁率:$\text{H/m}$は正しいです。
磁束密度 $B$ と磁界の強さ $H$ の関係式 $B = \mu H$ から導けます。
透磁率 $\mu$ について解くと、
$$\mu = \frac{B}{H} = \frac{\text{[T]}}{\text{[A/m]}} = \frac{\text{[Wb/m}^2\text{]}}{\text{[A/m]}} = \frac{\text{[Wb]}}{\text{[A]}} \cdot \frac{1}{\text{[m]}}$$
ここで、(1)で確認した通り $\text{Wb/A} = \text{H}$ なので、
$$\mu \rightarrow \text{[H/m]}$$
したがって、透磁率の単位として $\text{H/m}$ は正しいです。
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