重ね合わせの定理の使い方とは?試験対策と計算問題について解説します。
重ね合わせの定理とは

「重ね合わせの定理」とは、複数の電源がある回路の場合、「回路内の任意の場所における電流及び電圧は、回路内の各電源が単独で存在した場合の値の和に等しい」というものです。
この時、「電圧源は短絡」「電流源は開放」します。
- 例えば、上図のように、電源がE1,E2の2つある回路を電源1つずつに分解したとき、以下の式が成立します。
I1=Ix1+(−Iy1)
I2=Ix2+(−Iy2)
I3=Ix3+Iy3
Rx=R1+R2+R3R2R3
Ry=R2+R1+R3R1R3
Ix1=Ix2+Ix3
Iy2=Iy1+Iy3
VR1=VxR1+(−VyR1)
VR2=VxR2+(−VyR2)
VR3=VxR3+VyR3
Ix=RxE1
Iy=RyE2
【計算例】
- 上図のR1=10Ω、R2=30Ω、R3=15Ω、E1=16V、E2=4Vのとき、R3の両端電圧を重ね合わせの理で求めます。
-
2つの回路x, yに分解したときの、全体抵抗Rx,Ryを計算します。
Rx=R1+R2+R3R2R3=10+30+1530⋅15=10+10=20
Ry=R2+R1+R3R1R3=30+10+1510⋅15=30+6=36
- 2つの回路x, yに分解したときの、R3に加わる両端電圧VxR3,VyR3をそれぞれ計算します。
VxR3=E1R1+RxRx=162010=8
VyR3=E2R2+RyRy=4366=0.67
- よって、元の回路でR3に加わる両端電圧VR3は以下のとおり。
VR3=VxR3+VyR3=8.67
【例題1】直流電源と交流電源の組合せ回路
【電験3種 理論 令和元年度 問題8 一部改変】

図の回路において,正弦波交流電源と直流電源を流れる電流Iの実効値 [A] を求めよ。
ただし,Eaは交流電圧の実効値[V] ,Edは直流電圧の大きさ [V]、XCは正弦波交流電源に対するコンデンサの容量性リアクタンスの値[Ω]、Rは抵抗値 [Ω] とする。
【解答】
I1=REd=10100=10[A]
- 交流電源において、合成インピーダンスZ˙は以下のとおり。
Z˙=R+jXcR⋅jXc=10+j1010⋅j10=10+j10100j
Z=102+102100=52
- 交流電源により回路を流れる電流I2は以下のとおり。
I2=ZE1=52100=102[A]
- 直流と交流の直交性により、それぞれを重ね合わせた電流Iは、以下のとおり。
I=I12+I22=103
【例題1】直流電源と交流電源の組合せ回路
【電験3種 理論 平成30年度 問題7 一部改変】

図のように,直流電圧 =10 V の定電圧源,直流電流I=2A の定電流源,スイッチS, R=1[Ω]の抵抗からなる直流回路がある。この回路において,スイッチSを閉じたとき, 1[Ω]の抵抗に流れる電流Rの値[A]がSを閉じる前に比べて2倍に増加した。Rの値[Ω]を求めよ。
【解答】
- スイッチSが開いているとき、電流源の出力電流はすべて抵抗Rに流れるので、IR=2[A]となります。
なる。
- スイッチSが閉じた後は、題意より電流が2倍に増加してIR=4[A]となります。
- スイッチを閉じた後、「重ね合わせの理」を用いて回路を電圧源と電流源に分解したとき、それぞれで抵抗に流れる電流IR1,IR2が以下のように求まります。
(電流源を開放除去した回路)
IR1=r+RE=1+R10
(電圧源を短絡除去した回路)
IR2=r+RrI=1+R2
- よって,抵抗Rに流れる電流IRは以下のとおり。
IR=IR1+IR2=4
1+R10+1+R2=4
R=2[Ω]
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