重ね合わせの定理の使い方とは?試験対策と計算問題【電験3種・理論】

重ね合わせの定理の使い方とは?試験対策と計算問題について解説します。

重ね合わせの定理とは

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重ね合わせの定理」とは、複数の電源がある回路の場合、「回路内の任意の場所における電流及び電圧は、回路内の各電源が単独で存在した場合の値の和に等しい」というものです。
この時、「電圧源は短絡」「電流源は開放」します。

  • 例えば、上図のように、電源がE1,E2E_1, E_2の2つある回路を電源1つずつに分解したとき、以下の式が成立します。

I1=Ix1+(Iy1)I_1=I_{x1}+(-I_{y1})

I2=Ix2+(Iy2)I_2=I_{x2}+(-I_{y2})

I3=Ix3+Iy3I_3=I_{x3}+I_{y3}

Rx=R1+R2R3R2+R3R_{x}=R_1+\frac{R_2R_3}{R_2+R_3}

Ry=R2+R1R3R1+R3R_{y}=R_2+\frac{R_1R_3}{R_1+R_3}

Ix1=Ix2+Ix3I_{x1}=I_{x2}+I_{x3}

Iy2=Iy1+Iy3I_{y2}=I_{y1}+I_{y3}

VR1=VxR1+(VyR1)V_{R1}=V_{xR1}+(-V_{yR1})

VR2=VxR2+(VyR2)V_{R2}=V_{xR2}+(-V_{yR2})

VR3=VxR3+VyR3V_{R3}=V_{xR3}+V_{yR3}

Ix=E1RxI_x=\frac{E_1}{R_x}

Iy=E2RyI_y=\frac{E_2}{R_y}

【計算例】

  • 上図のR1=10R_1=10Ω、R2=30R_2=30Ω、R3=15R_3=15Ω、E1=16VE_1=16VE2=4VE_2=4Vのとき、R3R_3の両端電圧を重ね合わせの理で求めます。

  • 2つの回路x, yに分解したときの、全体抵抗Rx,RyR_x, R_yを計算します。

Rx=R1+R2R3R2+R3=10+301530+15=10+10=20R_{x}=R_1+\frac{R_2R_3}{R_2+R_3}=10+\frac{30 \cdot 15}{30+15}=10+10=20

Ry=R2+R1R3R1+R3=30+101510+15=30+6=36R_{y}=R_2+\frac{R_1R_3}{R_1+R_3}=30+\frac{10 \cdot 15}{10+15}=30+6=36

  • 2つの回路x, yに分解したときの、R3に加わる両端電圧VxR3,VyR3V_{xR3}, V_{yR3}をそれぞれ計算します。

VxR3=E1RxR1+Rx=161020=8V_{xR3}=E_1\frac{R_{x}}{R1+R_{x}}=16\frac{10}{20}=8

VyR3=E2RyR2+Ry=4636=0.67V_{yR3}=E_2\frac{R_{y}}{R2+R_{y}}=4\frac{6}{36}=0.67

  • よって、元の回路でR3に加わる両端電圧VR3V_{R3}は以下のとおり。

VR3=VxR3+VyR3=8.67V_{R3}=V_{xR3}+V_{yR3}=8.67

【例題1】直流電源と交流電源の組合せ回路

【電験3種 理論 令和元年度 問題8 一部改変】

図

図の回路において,正弦波交流電源と直流電源を流れる電流IIの実効値 [A] を求めよ。
ただし,EaE_aは交流電圧の実効値[V] ,EdE_dは直流電圧の大きさ [V]、XCX_Cは正弦波交流電源に対するコンデンサの容量性リアクタンスの値[Ω]、RRは抵抗値 [Ω] とする。

【解答】

  • 「重ね合わせの理」より、図の回路を直流電源と交流電源に分ける。

  • 直流電源において、定常状態においてコンデンサに流れる電流は0となる。よって、電流I1I_1は抵抗分のみ考えて計算すれば良い。

I1=EdR=10010=10I_1=\frac{E_d}{R}=\frac{100}{10}=10[A]

  • 交流電源において、合成インピーダンスZ˙\dot{Z}は以下のとおり。

Z˙=RjXcR+jXc=10j1010+j10=100j10+j10\dot{Z}=\frac{R\cdot jX_c}{R+jX_c}=\frac{10\cdot j10}{10+j10}=\frac{100j}{10+j10}

  • 合成インピーダンスの大きさZZは以下のとおり。

Z=100102+102=52Z=\frac{100}{\sqrt{10^2+10^2}}=5\sqrt{2}

  • 交流電源により回路を流れる電流I2I_2は以下のとおり。

I2=E1Z=10052=102I_2=\frac{E_1}{Z}=\frac{100}{5\sqrt{2}}=10\sqrt{2}[A]

  • 直流と交流の直交性により、それぞれを重ね合わせた電流IIは、以下のとおり。

I=I12+I22=103I=\sqrt{I_1^2+I_2^2}=10\sqrt{3}

【例題1】直流電源と交流電源の組合せ回路

【電験3種 理論 平成30年度 問題7 一部改変】

図

図のように,直流電圧 =10 V の定電圧源,直流電流I=2A の定電流源,スイッチS, R=1[Ω]の抵抗からなる直流回路がある。この回路において,スイッチSを閉じたとき, 1[Ω]の抵抗に流れる電流Rの値[A]がSを閉じる前に比べて2倍に増加した。Rの値[Ω]を求めよ。

【解答】

  • スイッチSが開いているとき、電流源の出力電流はすべて抵抗RRに流れるので、IR=2[A]I_R=2[A]となります。
    なる。
  • スイッチSが閉じた後は、題意より電流が2倍に増加してIR=4[A]I_R=4[A]となります。
  • スイッチを閉じた後、「重ね合わせの理」を用いて回路を電圧源と電流源に分解したとき、それぞれで抵抗に流れる電流IR1,IR2I_{R1}, I_{R2}が以下のように求まります。

(電流源を開放除去した回路)

IR1=Er+R=101+RI_{R1}=\frac{E}{r+R}=\frac{10}{1+R}

(電圧源を短絡除去した回路)

IR2=rr+RI=21+RI_{R2}=\frac{r}{r+R}I=\frac{2}{1+R}

  • よって,抵抗RRに流れる電流IRI_Rは以下のとおり。

IR=IR1+IR2=4I_R=I_{R1}+I_{R2}=4

101+R+21+R=4\frac{10}{1+R}+\frac{2}{1+R}=4

R=2R=2[Ω]

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