【電験3種・電力】原子力発電所に関する試験対策と過去問題の解説

電験3種(電力)で出題される原子力発電所に関する試験対策と過去問題を詳しく解説します。

原子力発電所の概要

原子力とは、その名のとおり「原子の力」を意味します。原子の力により大きなエネルギーを発生させるものとして「核分裂」と「核融合」があります。

  • 核分裂
    • 原子核が分裂すること
  • 核融合
    • 原子核が合わさって1つになること

原子力発電は、原子燃料の核分裂により発生したる熱エネルギーを活用して発電を行います。

ところで、原子力発電所の原理は汽力発電とよく似ています。汽力発電所のボイラーにあたるものが原子力発電所では原子炉です。原子炉内でウラン燃料が核分裂を起こして熱を発生され、その熱により水を水蒸気に変えてタービンを回し、発電を行います。$U^{235}_{92}$を1g核分裂させたときに発生するエネルギーは、石炭数トンの発熱量に相当し、1度燃料を投入すれば、少なくとも1年間連続運転ができます。汽力発電と原子力発電の比較sると、以下のようになります。

項目 汽力発電 原子力発電
燃焼用空気 必要 不要
蒸気 高温高圧 低温低圧
蒸気量 少ない 多い
復水器の冷却水量 少ない 多い
熱効率 高い 低い

原子炉の種別

現在、日本国内にある商業用の原子力発電所はすべて軽水炉です。軽水炉は、世界的にも主流の原子炉で大別すると沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2種類が存在します。

沸騰水型(BWR)

沸騰水型(BWR: Boiling Water Reactor)は、原子炉の中で直接水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回す方式です。仕組みがシンプルであるという特徴があります。原子炉の中で核分裂の熱により水を沸騰させ、発生した蒸気を直接タービンへ送ります。タービンを回して発電した後、蒸気は復水器で水に戻り、再び原子炉へ送られます。

蒸気発生器が不要なため、システム全体が比較的シンプルでが、タービン建屋まで放射性物質を含む蒸気が循環するため、運転中のタービン付近の遮蔽が必要です。

加圧水型(PWR)

加圧水型(PWR: Pressurized Water Reactor)は、原子炉に高い圧力をかけることで水を沸騰させず、その熱を別の系統(二次系)に伝えて蒸気を作る方式です。一次冷却系では、原子炉に高い圧力をかけ、水を沸騰させずに高温(300℃以上)にします。二次冷却系では、高温の一次冷却水が「蒸気発生器」を通り、別の系統の水を温めて蒸気を作ります。その蒸気でタービンを回し、発電します。

一次系(原子炉側)と二次系(タービン側)が完全に分かれているため、放射性物質を含む水がタービン側へ行かないため、タービン建屋の管理が比較的容易です。

主な違い

項目 沸騰水型(BWR) 加圧水型(PWR)
蒸気発生器 無い(原子炉圧力容器内で直接蒸気を発生) 有り(別置の蒸気発生器で蒸気を発生)
タービンに送られる蒸気 放射性物質を含む 放射線物質を含まない
冷却材の循環方式 再循環ポンプで軽水を循環 加圧器で冷却材の沸騰を防ぐ
出力調整方法 再循環ポンプ制御棒の操作 ほう素濃度の調節と制御棒の操作
原子炉の出力密度 小さい(原子炉が大きい) 大きい(原子炉がコンパクト)
制御棒の設置位置 炉心下部(燃料下部) 燃料の上部
緊急時の制御棒動作 ? 自重で制御棒を挿入して出力低下
放射性物質の扱い タービン系統に放射性物質を持ち込む(タービン等に遮へい対策が必要) タービンに放射線を帯びた物質は持ち込まない
導入している電力会社 東京電力、東北電力、中部電力など 関西電力、九州電力、四国電力など

原子力発電の用語

核物質

核分裂によって原子エネルギーを取り出せる物質。原子量の大きなウラン(U)、トリウム(Th)、プルトニウム(Pu)など。
自然界に存在するのはウランとトリウムのみ(プルトニウムは自然界に存在しない点に注意、過去出題)。

天然ウラン

天然ウラン中には、核分裂しやすいウラン235が約0.7%、残りは核分裂を起こしにくいウラン238がある。

濃縮ウラン

ウラン235の濃度が天然ウランの濃度を超えるもの。
低濃縮ウラン(濃縮度3〜5%程度)をペレット状にしたものが、原子炉の核燃料として使用される。

核分裂性物質

ウラン235のように核分裂を起こし、連鎖反応を持続できる物質。

親物質

ウラン238のように中性子を吸収して核分裂性物質になる物質。

MOX燃料

ウランとプルトニウムを混合した燃料。

プルサーマル

MOX燃料を軽水炉の燃料として用いること。

結合エネルギー

原子核を陽子と中性子に分解させるために外部から加えるエネルギー。

核反応

原子核に何らかの外力が加えられて、他の原子核に変換される現象。

核分裂

様々な原子核で起こる。

連鎖反応

ウランに熱中性子を衝突させると核分裂を起こす。そのときに放出する高速中性子の一部が減速して熱中性子になり、この熱中性子が他の原子核に分裂を起こさせ、これを繰り返すことで連続的な分裂が行われる現象。

ボイド効果

原子炉内の温度が上昇すると、気泡が増える。気泡は中性子を減速させにくくするため、核分裂が抑えられて出力が低下する。この効果を利用して、原子力発電所では出力の制御を行っている。再循環ポンプで軽水を多く循環させるほど気泡(ボイド)が減って出力が上昇する。

ドップラー効果

軽水炉では、何らかの原因により原子炉の核分裂反応による熱出力が増加して、炉内温度が上昇した場合でも、燃料の温度上昇にともなってウラン238による中性子の吸収が増加し、出力が抑制される。このような働きを原子炉の固有の安全性という。

軽水炉

減速材と冷却材に軽水を使用する原子炉。天然ウラン中のウラン235の濃度を3~5%程度に濃縮した低濃縮ウランを原子燃料として用いる。

熱中性子炉

核分裂反応を起こさせるために熱中性子を用いる原子炉。軽水炉も熱中性子炉の1つ

湿分分離器

原子炉又は蒸気発生器によって発生した蒸気が高圧タービンに送られる。高圧タービンにて所定の仕事を行った排気は、湿分分離器に送られて、排気に含まれる湿分を除去した後に低圧タービンに送られる。

タービンの回転速度

$1500min^{−1}$又は$1800min^{−1}$」としている。理由は、低圧タービンの最終段翼が35~54インチ(約 89 cm ~ 137 cm)の長大な翼を使用し、湿分による翼の浸食を防ぐため翼先端周速度を減らさなければならないため。

使用済燃料の再利用

原子力発電所から取り出された使用済燃料からは、再処理によってウランとプルトニウムが分離抽出され、再び燃料として使用できる。プルトニウムはウラン238から派生する核分裂性物質であり、ウランとプルトニウムとを混合したMOX燃料を軽水炉の燃料として用いることをプルサーマルという。軽水炉の転換比は 0.6 程度で、高速中性子によるウラン238のプルトニウムへの変換を利用した高速増殖炉では、消費される核分裂性物質よりも多くの量の新たな核分裂性物質を得ることができる。

減速材(軽水炉だと軽水)

原子炉内で核分裂によって生じた高速中性子は、減速材(軽水など)を通過することでして熱中性子となる。日本の原子炉はすべて軽水炉。

冷却材(軽水炉だと軽水)

原子炉内で核分裂によって生じた熱エネルギーを原子炉の外に取り出す材料。

反射材(軽水炉だと軽水)

中性子を反射させ、原子炉の外へ逃げないようにするための材料。

遮蔽材(鉛、鉄、コンクリート)

放射線が外部に漏れるのを防ぐために、原子炉を囲っている。

制御棒(ホウ素、カドミウム等)

熱中性子を吸収する。制御棒を挿入すると、熱中性子を吸収するため、核分裂を抑えて発電出力が低下する。制御棒を引き抜くと、熱中性子を吸収しないため、核分裂が増えて発電出力が増加する。

【例題1】ウランが核分裂して質量欠損が生じたときに発生するエネルギー

【問題1】

ウラン235(1g)が核分裂し、0.09 %の質量欠損が生じたときに発生するエネルギーE[kJ]を計算せよ。

※光速は$3.0 \times 10^8 m/s$とする。

↑電験3種の問題では、問題文に記載与されないこともあるので、要暗記

【解答1】
– ウラン 235 の質量欠損Δm[kg]は以下のとおり。

$\Delta m = \frac{1}{1000}\frac{0.09}{100}=9 \times 10^{-7} $[kg]

よって、発生するエネルギーE[kJ]は以下のとおり。

$E= \Delta mc^2 = 9 \times 10^{-7}\times(3\times 10^8)^2=8.1\times 10^{10}[J]=8.1\times 10^7[kJ]$

【例題2】ウランが核分裂して質量欠損が生じたときに発生するエネルギー

【問題2】

ウラン 235を3[%]含む原子燃料が 1 [kg] ある。
この原子燃料に含まれるウラン 235 がすべて核分裂したとき,ウラン 235 の核分裂により発生するエネルギー [J] の値を求めよ。

【解答2】
– ウラン 235 を 3 [%] 含む原子燃料が 1 [kg] が核分裂したときの質量欠損 Δ [kg] は,質量欠損が 0.09 [%] であるから,

$ \Delta m = \frac{3}{100}\frac{0.09}{100}=2.7 \times 10^{-5} $ [kg]

よって、発生するエネルギーE[J]は以下のとおり。

$ E= \Delta mc^2 = 2.7 \times 10^{-5}\times(3\times 10^8)^2=2.3\times 10^{12}$ [J]

【令和7年度上期・問4】原子燃料と核燃料サイクル

次の文章は、原子燃料に関する記述である。

原子力発電所では、天然ウラン中に約0.7 \%含まれている核分裂性物質のウラン235の濃度を (ア) \%程度まで高めた濃縮ウランが燃料として一般に用いられている。

発電所で使い終わった燃料には、燃え残ったウラン235のほか、ウラン238が中性子を吸収して変わったプルトニウム239などの核燃料物質が含まれており、これらを (イ) によって取り出すことができる。

(イ) によって取り出されたプルトニウムをウランと混ぜた燃料は (ウ) と呼ばれ、これを軽水炉で使用することをプルサーマルと呼んでいる。

また、軽水炉の転換比は0.6程度であるが、高速中性子によるウラン 238 のプルトニウムへの変換を利用した (エ) では、消費される核分裂性物質よりも多くの量の新たな核燃料物質を得ることができる。

上記の記述中の空白箇所(ア)から(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)から(5)のうちから一つ選べ。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) 3~5 再処理 MOX 燃料 高速増殖炉
(2) 3~5 再処理 イエローケーキ 高速増殖炉
(3) 3~5 再加工 イエローケーキ 新型転換炉
(4) 10~20 再処理 イエローケーキ 高速増殖炉
(5) 10~20 再加工 MOX 燃料 新型転換炉

解説

正解は(1)です。

原子力発電の燃料とリサイクルに関する基本的な事項です。

(ア) 軽水炉で用いられる濃縮ウランのウラン235の濃度(濃縮度)は、通常「3~5 \%」程度です。

(イ) 使用済み燃料から燃え残りのウランや新しく生成されたプルトニウムを化学的に分離して取り出す工程を「再処理」といいます。

(ウ) 再処理で取り出されたプルトニウムとウランを混ぜて酸化物にした燃料を「MOX燃料」といいます。

(エ) 消費した燃料よりも多くの燃料(プルトニウム)を生成できる原子炉は「高速増殖炉」です。

【令和6年度下期・問4】原子力発電の基礎

原子力発電に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 原子力発電所では,ウラン 235 を 2~4 %まで濃縮した高濃縮ウランを使い,エネルギーを取り出している。

(2) 放射線には α 線, β 線, γ 線などがあり,放射線を出す能力を放射能といい,放射能を有する物質を放射性物質と呼ぶ。

(3) 原子燃料の原子核に,エネルギー値が低く速度の遅い中性子を衝突させると,核分裂を起こす。

(4) 原子燃料の核分裂により発生した 1 個以上の熱中性子が,別の原子核を分裂させる反応が連続的に持続する現象を連鎖反応という。

(5) 減速材は,核分裂によって新たに生じたエネルギー値が高い高速中性子のエネルギーの一部を吸収させて,低速の熱中性子を得るために用いる。

解説

正解は(1)です。

(1) 誤り。原子力発電所で燃料として使用されるのは、天然ウランに含まれるウラン 235 の割合を 2~4 % 程度に高めた「低濃縮ウラン」です。高濃縮ウランは通常、ウラン 235 の割合を 20 % 以上に高めたものを指します。

(2) 正しい。放射線、放射能、放射性物質の定義として適切です。

(3) 正しい。ウラン 235 などの核分裂性物質は、エネルギーが低く速度の遅い「熱中性子」を吸収することで核分裂を起こします。

(4) 正しい。核分裂によって放出された中性子が次々と他の原子核を分裂させ、反応が持続することを連鎖反応と呼びます。

(5) 正しい。核分裂で発生した直後の高速中性子は次の核分裂を起こしにくいため、水(軽水)などの減速材を用いて速度を落とし、熱中性子にします。

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