原子力発電所に関する試験問題対策についてまとめました。
原子力発電所の概要
- 原子力発電は、原子燃料(ウラン、U)の核分裂により発生する熱エネルギーで水を蒸気に変え、その蒸気で蒸気タービンを回し、タービンに連結された発電機で発電。
- $U^{235}_{92}$を1g核分裂させたときに発生するエネルギーは、石炭数トンの発熱量に相当。
- 汽力発電と原子力発電の比較は以下のとおり。
項目 | 汽力発電 | 原子力発電 |
---|---|---|
燃焼用空気 | 必要 | 不要 |
蒸気 | 高温高圧 | 低温低圧 |
蒸気量 | 少ない | 多い |
復水器の冷却水量 | 少ない | 多い |
熱効率 | 高い | 低い |
原子力発電の用語
- 核物質
- 核分裂によって原子エネルギーを取り出せる物質は、原子量の大きなウラン(U)、トリウム(Th)、プルトニウム(Pu)。
- 自然界に存在するのはウランとトリウムのみ(プルトニウムは自然界に存在しない点に注意、過去出題)。
- 天然ウラン中に含まれるウラン235は約0.7%で、残りは核分裂を起こしにくいウラン238である。
- ウラン235 の濃度が天然ウランの濃度を超えるものは、濃縮ウランと呼ばれており、低濃縮ウラン(濃縮度3〜5%程度)は原子炉の核燃料として使用される。
- 核分裂性物質
- ウラン235のように核分裂を起こし、連鎖反応を持続できる物質。
- 親物質
- ウラン238のように中性子を吸収して核分裂性物質になる物質。
- MOX燃料
- ウランとプルトニウムを混合した燃料。
- プルサーマル
- MOX燃料を軽水炉の燃料として用いること。
- 結合エネルギー
- 原子核を陽子と中性子に分解させるために外部から加えるエネルギー。
- 核反応
- 原子核に何らかの外力が加えられて、他の原子核に変換される現象。
- 核分裂
- 様々な原子核で起こる。
- 連鎖反応
- ウランに熱中性子を衝突させると核分裂を起こす。そのときに放出する高速中性子の一部が減速して熱中性子になり、この熱中性子が他の原子核に分裂を起こさせ、これを繰り返すことで連続的な分裂が行われる現象。
- ボイド効果
- 原子炉内の温度が上昇すると、気泡が増える。気泡は中性子を減速させにくくするため、核分裂が抑えられて出力が低下する。
- ドップラー効果
- 軽水炉では、何らかの原因により原子炉の核分裂反応による熱出力が増加して、炉内温度が上昇した場合でも、燃料の温度上昇にともなってウラン238による中性子の吸収が増加し、出力が抑制される。
- このような働きを原子炉の固有の安全性という。
- 軽水炉
- 減速材と冷却材に軽水を使用する原子炉。
- 天然ウラン中のウラン235の濃度を3~5%程度に濃縮した低濃縮ウランを原子燃料として用いる。
- 熱中性子炉
- 核分裂反応を起こさせるために熱中性子を用いる原子炉。
- 軽水炉も熱中性子炉の1つ。
- 湿分分離器
- 原子炉又は蒸気発生器によって発生した蒸気が高圧タービンに送られる。
- 高圧タービンにて所定の仕事を行った排気は、湿分分離器に送られて、排気に含まれる湿分を除去した後に低圧タービンに送られる。
- タービンの回転速度
- 「$1500min^{−1}$又は$1800min^{−1}$」としている。理由は、低圧タービンの最終段翼が35~54インチ(約 89 cm ~ 137 cm)の長大な翼を使用し、湿分による翼の浸食を防ぐため翼先端周速度を減らさなければならないため。
- 使用済燃料の再利用
- 原子力発電所から取り出された使用済燃料からは、再処理によってウランとプルトニウムが分離抽出され、再び燃料として使用できる。
- プルトニウムはウラン238から派生する核分裂性物質であり、ウランとプルトニウムとを混合したMOX燃料を軽水炉の燃料として用いることをプルサーマルという。
- 軽水炉の転換比は 0.6 程度で、高速中性子によるウラン238のプルトニウムへの変換を利用した高速増殖炉では、消費される核分裂性物質よりも多くの量の新たな核分裂性物質を得ることができる。
- 減速材(軽水炉だと軽水)
- 原子炉内で核分裂によって生じた高速中性子は、減速材(軽水など)を通過することでして熱中性子となる。
- 日本の原子炉はすべて軽水炉。
- 冷却材(軽水炉だと軽水)
- 原子炉内で核分裂によって生じた熱エネルギーを原子炉の外に取り出す材料。
- 反射材(軽水炉だと軽水)
- 中性子を反射させ、原子炉の外へ逃げないようにするための材料。
- 遮蔽材(鉛、鉄、コンクリート)
- 放射線が外部に漏れるのを防ぐために、原子炉を囲っている。
- 制御棒(ホウ素、カドミウム等)
- 熱中性子を吸収する。
- 制御棒を挿入すると、熱中性子を吸収するため、核分裂を抑えて発電出力が低下する。
- 制御棒を引き抜くと、熱中性子を吸収しないため、核分裂が増えて発電出力が増加する。
原子炉の種別
- 沸騰水型(BWR)
- 原子炉圧力容器の中で直接蒸気を発生させる。
- 原子炉内で冷却材を加熱し、発生した蒸気を直接タービンに送る(蒸気発生器が無い、系統が単純。過去出題)。
- 原子炉内の温度が上昇すると、気泡が増える。気泡は中性子を減速させにくくするため、核分裂が抑えられて出力が低下する。これを「ボイド効果」という。
- ボイド効果を制御するために、再循環ポンプを用いる。再循環ポンプで軽水を多く循環させるほど気泡が減って出力が上昇する。
- 出力調整は、再循環ポンプによる冷却材再循環流量の調節と制御棒の挿入及び引き抜き操作により行われる
- 加圧水型(PWR)よりも原子炉が大きい(出力密度が小さい)。
- 制御棒は炉心下部(燃料下部)に設置されている(炉心上部ではない点に注意、過去出題)。
- 燃料の上部には汽水分離器が設置されているため。
- タービン系統に放射性物質が持ち込まれるため、タービン等に遮へい対策が必要。
- 加圧水型(PWR)
- 別置の蒸気発生器があり、そこで蒸気を発生させる
- 蒸気タービンに放射線を帯びた蒸気が行かない。
- 原子炉内で加熱された冷却材の沸騰を加圧器で防ぐ。
- 出力調整は、一次冷却材中のほう素濃度の調節と制御棒の挿入及び引き抜き操作により行われる。
- 沸騰水型(BWR)よりも出力密度が大きい(原子炉がコンパクト)
- 制御棒は燃料の上部に設置されている。
- 緊急時に自重で制御棒を挿入して出力を低下させることができるため(安全上の理由)。
【例題1】ウランが核分裂して質量欠損が生じたときに発生するエネルギー
【問題1】
ウラン235(1g)が核分裂し、0.09 %の質量欠損が生じたときに発生するエネルギーE[kJ]を計算せよ。
※光速は$3.0 \times 10^8 m/s$とする。
↑電験3種の問題では、問題文に記載与されないこともあるので、要暗記
【解答1】
– ウラン 235 の質量欠損Δm[kg]は以下のとおり。
$\Delta m = \frac{1}{1000}\frac{0.09}{100}=9 \times 10^{-7} $[kg]
- よって、発生するエネルギーE[kJ]は以下のとおり。
$E= \Delta mc^2 = 9 \times 10^{-7}\times(3\times 10^8)^2=8.1\times 10^10[J]=8.1\times 10^7[kJ]$
【例題2】ウランが核分裂して質量欠損が生じたときに発生するエネルギー
【問題2】
ウラン 235を3[%]含む原子燃料が 1 [kg] ある。
この原子燃料に含まれるウラン 235 がすべて核分裂したとき,ウラン 235 の核分裂により発生するエネルギー [J] の値を求めよ。
【解答2】
– ウラン 235 を 3 [%] 含む原子燃料が 1 [kg] が核分裂したときの質量欠損 Δ [kg] は,質量欠損が 0.09 [%] であるから,
$ \Delta m = \frac{3}{100}\frac{0.09}{100}=2.7 \times 10^{-5} $ [kg]
- よって、発生するエネルギーE[J]は以下のとおり。
$ E= \Delta mc^2 = 2.7 \times 10^{-5}\times(3\times 10^8)^2=2.3\times 10^{12}$ [J]
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