電験3種(電力)で出題される送電線路に関する試験問題と過去問題を解説します。
送電線路と配電線路の違い

- 送電線路は、発電所〜変電所、変電所〜変電所の間の電線路のこと。
- 配電線路は、変電所〜需要家(会社、工場、住宅)の間の電線路のこと。
ケーブルの種類
CVケーブル

架橋ポリエチレンを絶縁体として使用したケーブル。後述するOFケーブルよりも絶縁体の誘電率、熱抵抗率の小ささ、常時導体最高許容温度の高さに優れ、防災、メンテナンス、送電容量の面で有利であるため主流。
CVTケーブル
とCVTケーブルの断面.jpg)
ビニルシースを施したCVケーブル(単心)を3条より合わせたケーブルです。CVケーブル(3心)と比較してケーブルの熱抵抗が小さいため電流容量を大きくでき、ケーブルの接続作業性が良いのが利点です。
OFケーブル

油浸紙絶縁(絶縁体が「絶縁紙」と「絶縁油」を組み合わせたもの)を用いたケーブルで「油通路が必要」です。
POFケーブル
油浸紙絶縁の線心3条をあらかじめ布設された防食鋼管内に引き入れ、絶縁油を高い油圧で充てんしたケーブルです。地盤沈下や外傷に対する強度に優れ、電磁遮蔽効果が高いです。

ケーブルに発生する損失
電力ケーブルの許容電流は、ケーブル導体温度がケーブル絶縁体の最高許容温度を超えない上限の電流であるため、電力ケーブル内での発生損失による発熱量、ケーブル周囲環境の熱抵抗、温度などによって決まる。
抵抗損
導体の抵抗で発生する損失(導体に流れる電流の2乗に比例。ジュール熱$RI^2$より)。
- 電力ケーブルで発生する損失のうち、最も大きい損失は抵抗損である。
- 直流電流と違って交流電流が流れるケーブル導体中の電流分布は、表皮効果や近接効果によって偏りが生じるため、抵抗損も増大する
- 抵抗損の低減対策は「導体断面積を増やす」「分割導体」「素線絶縁導体の採用」など。
誘電体損

ケーブルの絶縁体に流れる電流のうち、抵抗成分に流れる電流による損失です。ケーブルの絶縁体部に流れる電流のうち,ケーブルは図のように「誘電体」を「導体」と「遮蔽銅テープ」で挟んで巻いたコンデンサの状態となっています。この誘電体部が劣化すると、抵抗成分が大きくなり、損失も増加します。
- 交流電圧を印加した電力ケーブルでは、電圧に対して同位相の電流成分がケーブル絶縁体に流れることにより誘電体損が発生する。
- 電圧に対して位相が異なる電流成分はコンデンサ成分となるので、誘電体損とはならない。
- 誘電体損は、ケーブル絶縁体の誘電率と誘電正接との積に比例して大きくなり、誘電率及び誘電正接の小さい絶縁体の採用が望ましい。
シース損

ケーブルの「ケーブルシース」に流れる循環電流や渦電流による損失です。シース損の種類として、ケーブルの長手方向にケーブルシースを流れる電流によって発生する「シース回路損」、ケーブルシース内の渦電流によって発生する「渦電流損」があります。
- 渦電流損の対策・・・「導電率の低い金属シース材の採用」など。
- シース回路損の対策・・・「クロスボンド接地方式の採用」など。
表皮効果
- 導体内を流れる交流電流により発生した磁界により渦電流が発生し、導体内の電流分布が外側に集中する現象。
- 電線の断面積が大きいほど、渦電流も大きくなり対策が必要となる。
コロナ損
送電線に高電圧が印加され、「電線表面の電界強度」がある程度以上になると、電線からコロナ放電が発生する。コロナ放電が発生するとコロナ損と呼ばれる電力損失が生じる。
- コロナ放電の発生を抑えるために、電線の実効的な直径を大きくするために「多導体化する」「線間距離を大きくする」などの対策がある。
- コロナ放電は、気圧が低いほど生じやすい。つまり、都市部より山間部の送電線ほど発生しやすい。
導体の素材(硬銅より線、鋼心アルミより線)
- 導体の素材は、導電率は高い、引張強さが大きい、質量及び線熱膨張率が小さい、加工性及び耐食性に優れていることなどが求められます。
- 一般的に銅やアルミニウム又はそれらの合金が導体の素材として用いられ、それらの導体の導電率は、温度や不純物成分、加工条件、熱処理条件などによって異なり、標準軟銅の導電率を100%として比較した百分率で表されます。
送電線に用いられる「硬銅より線」「鋼心アルミより線」の比較は以下表のとおり。
| 項目 | 硬銅より線 | 鋼心アルミより線 |
|---|---|---|
| 導電率 | ◎(90%台) | △(60%台) |
| 引張強さ | △ | ◎ |
| 重量 | △(重い) | ◎(軽量) |
| 外径(風圧荷重) | ◎ | △ |
| コロナ放電 | △ | ◎ |
| コスト | △ | ◎ |
鋼心アルミより線
中心に亜鉛めっき鋼より線、その周囲に硬アルミ線(※軟アルミ線でない)をより合わせた電線であり、アルミの軽量かつ高い導電性と、鋼の強い引張強さとをもつ代表的な架空送電線である。
純アルミニウムは、純銅と比較して導電率が2/3程度と低いですが、比重が1/3程度と軽いため、電気抵抗と長さが同じ電線の場合、アルミニウム線の質量は銅線のおよそ半分になります。
硬銅より線
地中ケーブルの銅導体には一般に軟銅が用いられ、硬銅と比べて引張強さは小さいですが、伸びや可とう性に優れ、導電率が高いです。
多導体と単導体の違い
多導体方式
3相3線式送電線で、1相あたり電線2本以上で送電する。
- 送電容量を増やすことができ、コロナ放電が発生しにくいが、サブスパン振動が発生したり、建設コストが増加する。
- 1相に複数の電線を「スペーサ」を用いて適度な間隔に配置したものを多導体と呼ぶ。
- 主に超高圧以上の送電線に用いられる。
- 多導体を用いることで、電線表面の「電位の傾きが小さく」 なるので、「コロナ開始電圧が高く」 なり、送電線のコロナ損失、雑音障害を抑制できる。
- 多導体は合計断面積が等しい単導体と比較すると、「表皮効果が小さい」。
- 送電線の「静電容量が減少」するため、送電容量が増加し系統安定度が向上する。
単導体方式
3相3線式送電線で、1相あたり電線1本で送電する。
送電鉄塔

ねん架

送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために、ジャンパ線を用いて電線の位置を入れ替えることで、各相の離隔距離が異なることにより生じる、三相不均衡を防ぐ方法。
鉄塔
一般的に66kV以上の架空送電線の支持物に用いられる。
碍子
電線と支持物を絶縁するための絶縁体。絶縁性が高く耐久性にも優れた陶磁器や樹脂で作られたものがある。がいし表面に塩分等の導電性物質が付着した場合,漏れ電流の発生により,可聴雑音や電波障害が発生する場合がある。
耐塩碍子

ひだが深い(表面距離が長い)、漏れ電流がより流れにくい碍子。撥水性物質を塗布したり、定期的な洗浄による塩分の除去なども塩害対策として行われる。
懸垂碍子

懸垂碍子(けんすいがいし)は、送電鉄塔や高圧送電線において、重い電線を吊り下げて支え、同時に鉄塔と電線の間を強力に絶縁する磁器(セラミックス)製の部品です。皿のような形状の磁器を複数連ねて使用し、電圧が高いほど連結数を増やして絶縁性能を高めます。
長幹碍子(ちょうかんがいし)
棒状の絶縁物の両側に連結用金具を接着したもの。
埋設地線

鉄塔の塔脚の地下に放射状に埋設された接地線、もしくはいくつかの鉄塔を地下で連結する接地線。鉄塔の接地抵抗を下げることで、落雷時の雷電流が大地へ流れ、逆フラッシオーバを防止する。
スペーサ
強風などによる電線相互の接近及び衝突を防止するため、電線相互の間隔を保持する器具。超高圧の架空送電線でコロナ放電の抑制に用いられている。スペーサはギャロッピングの防止にも効果的。
アークホーン

がいしの両端に設けられた金属電極。雷サージによるフラッシオーバの際生じるアークを電極間に生じさせ、碍子の破壊を防止する。アークホーンを碍子と併設し、雷撃等をきっかけに発生するアーク放電から壊しないよう保護できる。
架空地線

鉄塔の最上部に張られる接地線。直撃雷、誘導雷の防止、電磁誘導障害を軽減する役割がある。
- 遮へい角が小さいほど雷撃防止の効果が大きい。
- 鉄塔又は架空地線に直撃雷があると,鉄塔から送電線へ逆フラッシオーバが起こることがある。
- 埋設地線等により鉄塔の接地抵抗を小さくすることで、逆フラッシオーバの抑制が図られている。
- 架空地線を多条化すると、架空地線と電力線間の結合率が増加し、鉄塔雷撃時に発生するアークホーン間電圧が抑制できるので、逆フラッシオーバの発生が抑制できる。
トーショナルダンパ
トーショナルダンパ(単に「ダンパ」ともいう)は、微風振動やギャロッピングを抑制するために、電線に取り付ける。風による振動エネルギーで着雪を防止し、ギャロッピングによる電線間の短絡事故などを防止する。
アーマロッド

電線の振振動疲労防止振やアークスポットによる振電線溶断防止振のため、クランプ付近の電線に同一材質の金属を巻き付けるもの。
送電用避雷装置

送電線用の避雷器。送電鉄塔のジャンパを支持している碍子に並んで取り付けられている。送電線への雷撃時、アークホーンの間に発生する電圧を抑制する。雷撃の威力によっては、アークホーン単体では碍子の損傷や線路停止(地絡事故)が避けられないため、アークホーンに加えて送電用避雷装置を設ける事によって放電電流を抑制すると共に、速やかに続流を絶ち、長時間の線路停電を回避することを目的とする。
フラッシオーバと逆フラッシオーバ

フラッシオーバは、送電線に異常電圧が発生したり、碍子の絶縁劣化で送電線から鉄塔へ放電し、①送電線 → ②碍子 → ③鉄塔 → ④大地へと電流が流れる現象です。
一方、逆フラッシオーバは、架空地線又は鉄塔への落雷時に碍子が絶縁破壊し、鉄塔から送電線へ放電することで、雷電流が①鉄塔 → ②碍子 → ③送電線 へ流れる現象。フラッシオーバとは電流の流れる方向が逆。
外径(風圧荷重)
外径が大きいほど、風を受ける面積も大きくなるため、風圧荷重が大きくなってしまう。
コロナ放電

架空送電線は裸電線なので、絶縁体は空気のみである。気温等により空気の絶縁性能が低下すると、裸電線の表面からがいしや金具等に対して放電が生じ、これを「コロナ放電」という。
- 電線表面電界がある値を超えると,コロナ放電が発生する。
- 多導体方式の方が、単導体方式に比べてコロナ放電を抑制できる。
- コロナ放電が発生すると,電線や取り付け金具で腐食が生じることがある。
- 硬銅より線は、コロナ放電が発生しやすい。
- コロナ放電が発生すると,電気エネルギーの一部が音,光,熱などに変換され,コロナ損という電力損失が生じる。
- コロナ放電が発生すると,架空送電線近傍で誘導障害や受信障害が生じることがある。
ギャロッピング

電線に非対称な氷雪が付着し肥大化すると、微風振動と同様に電線の風下側にカルマン渦が生じ振動する現象。
微風振動

電線と直角方向に毎秒数メートル程度の微風が吹くと、電線の背後に空気の渦(カルマン渦)が生じて電線が上下に振動するが発生する。振動エネルギーを吸収するダンパを電線に取り付けて、この振動による電線の断線防止が図られている。軽い電線、長い径間、張力が大きいほど発生しやすい。
サブスパン振動

多導体の架空送電線において、風速が数~20 m/s(10m/sを超えると激しく揺れる)で発生する振動。架空電線が電線と直角方向に穏やかで一様な空気の流れを受けると、電線の背後に空気の渦が生じ,電線が上下に振動を起こすことがある。この振動を防止するためにダンパを取り付けて振動エネルギーを吸収させたり、振動によって電線が断線しないようにアーマロッドが用いられている。
スリートジャンプ
電線に付着した氷雪が落下したときに発生する振動。相間短絡の危険性がある。相間短絡防止策としては,電線配置にオフセットを設けることなどがある。
碍子の塩害
がいし表面に塩分が付着すると、漏れ電流が発生し、可聴雑音、電波障害、フラッシオーバの原因となる。碍子の塩害対策は、塩害の少ない送電ルートの選定、碍子の絶縁性能を強化、碍子の洗浄、碍子表面への撥水性物質の塗布などがある。懸垂碍子の絶縁強化を図るには,がいしを直列に連結する個数を増やしたり、がいしの表面漏れ距離を長くする方法などがある。- 長幹がいし(棒状磁器の両端に連結用金具を取り付けた形状)は、懸垂がいしに比べて雨洗効果が高く、塩害に対し絶縁性が高い。
不平衡絶縁方式
二回線送電線路で,両回線の絶縁に格差を設け,二回線にまたがる事故を抑制する。
架空送電線路の線路定数
抵抗,作用インダクタンス,作用静電容量,漏れコンダクタンスがある。
- 抵抗値は,表皮効果により交流のほうが増加する(周波数の増加に伴い電線導体内の電流分布が表面に偏る現象のため)。線間距離Dと電線半径rの比D/rが大きいほど、作用インダクタンスは大きくなり、作用静電容量は小さくなる。
- 作用静電容量を無視できない中距離送電線路では,作用静電容量によるアドミタンスを 1 か所又は 2 か所にまとめる集中定数回路が近似計算に用いられる。
- 送電端側と受電端側の 2 か所にアドミタンスをまとめる回路をπ形回路という。
フェランチ効果
- 負荷が軽い深夜帯などに、受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象。
- 短距離送電線路よりも,長距離送電線路の方が発生しやすい。
- 線路電流が著しく小さい場合に生じることが多い。
- 架空送電線路の負荷側に地中送配電線路が接続されている場合に生じる可能性が高くなる。
- フェランチ効果発生時の線路電流の位相は、電圧に対して進んでいる。
- 分路リアクトルの運転により防止している。
送電線路の損失
送電線路での有効電力の損失は電圧の2乗に反比例する(過去出題)。電圧調整により、電圧を高めに運用することが損失を減らすために有効。
送電線路の力率調整
送電線路において送電端電圧と受電端電圧が一定であるとすると、負荷の力率が変化すれば受電端電力が変化する。
- 負荷が変動しても力率を調整することによって受電端電圧を一定に保つことができる。
- 線路リアクタンスが大きい送電線路では,受電端において進相コンデンサを負荷に並列することで,受電端での進み無効電流を増加させ,受電端電圧を上げることができる。
クロスボンド接地方式
亘長の長い単心ケーブルで使用される接地方式。ケーブルのシース部を絶縁接続し、各相のリアクタンスのバランスを取り、各相に流れるシース電流のベクトル和をほぼ0にする。シース損を低減させる方法として効果的。
直流送電
直流送電の利点
- 送電線が2本で済むため、建設コストが下がる。
- 長距離・大容量送電に有利(無効電流による損失がない、送電線リアクタンスなどによる発電機間の安定度の問題がないため)
- 同容量のケーブルで,交流に比べ$\sqrt{2}$倍までの電圧を送電可能。
- 誘電損が発生しない(静電容量による充電電流が流れないため)。
- 大地帰路電流による地中埋設物の電食や直流磁界に伴う地磁気測定への影響に注意に払う必要がある。
- 地絡事故時の電流は交流送電系統より小さく、碍子の耐アーク性能が十分な場合、がいし装置からアークホーンを省略可能。
直流送電の欠点
- 変圧器で電圧の変成ができない。
- 交直変換装置が必要。
- 事故電流の遮断が難しい(交流のように零点がないため)。
- 交直変換装置から高調波が発生するため、フィルタや調相設備の設置が必要
- 変圧器で電圧の変成ができない
- 大地帰路方式において、電食が発生しやすい。
誘導障害
誘導障害とは、架空送電線と通信線路とが長距離にわたって接近交差していると、通信線路に対して電圧が誘導され、通信設備やその取扱者に危害を及ぼすなどの障害が生じることです。誘導障害には「静電誘導障害」と「電磁誘導障害」の2種類があります。。
静電誘導障害

静電誘導障害は、架空送電線路の電圧により、架空送電線路と通信線路間の静電容量(キャパシタンス)を介して通信線路に誘導電圧を発生させます。
送電線各相の対地電圧は、$\dot{E}_a, \dot{E}_b, \dot{E}_c$、通信線の電位(求める誘導電圧は** $\dot{E}_0$、各相と通信線間の相互静電容量は $C_a, C_b, C_c$、通信線と大地間の対地静電容量は$C_0$とします。
送電線(各相)から通信線へ流れる電流(各コンデンサを流れる電流)を考えます。各相と通信線の間の電位差に、各アドミッタンス ($j\omega C$) を掛けます。
$\dot{I}_a = j\omega C_a (\dot{E}_a – \dot{E}_0)$
$\dot{I}_b = j\omega C_b (\dot{E}_b – \dot{E}_0)$
$\dot{I}_c = j\omega C_c (\dot{E}_c – \dot{E}_0)$
通信線と大地の電位差は $\dot{E}_0 – 0$ なので、通信線から大地へ流れる電流は以下のようになります。
$\dot{I}_0 = j\omega C_0 \dot{E}_0$
通信線に流れ込む電流の合計は、通信線から大地へ逃げる電流と等しくなります。
$$\dot{I}_a + \dot{I}_b + \dot{I}_c = \dot{I}_0$$
これを上記の電流の式に置き換えると、以下のようになります。
$$j\omega C_a (\dot{E}_a – \dot{E}_0) + j\omega C_b (\dot{E}_b – \dot{E}_0) + j\omega C_c (\dot{E}_c – \dot{E}_0) = j\omega C_0 \dot{E}_0$$
両辺を $j\omega$ で割り、括弧を展開して整理していきます。
$$C_a \dot{E}_a – C_a \dot{E}_0 + C_b \dot{E}_b – C_b \dot{E}_0 + C_c \dot{E}_c – C_c \dot{E}_0 = C_0 \dot{E}_0$$
$\dot{E}_0$ を含む項を右辺にまとめます。
$$C_a \dot{E}_a + C_b \dot{E}_b + C_c \dot{E}_c = C_0 \dot{E}_0 + C_a \dot{E}_0 + C_b \dot{E}_0 + C_c \dot{E}_0$$
$\dot{E}_0$ で括ります。
$$C_a \dot{E}_a + C_b \dot{E}_b + C_c \dot{E}_c = (C_a + C_b + C_c + C_0) \dot{E}_0$$
$\dot{E}_0$ について解きます。
$$\dot{E}_0 = \frac{C_a \dot{E}_a + C_b \dot{E}_b + C_c \dot{E}_c}{C_a + C_b + C_c + C_0}$$
送電線が完全に「ねん架」されている理想的な状態では、$C_a = C_b = C_c = C$ となります。
このとき、分子は次のようになります。
$$C(\dot{E}_a + \dot{E}_b + \dot{E}_c)$$
三相交流の各電圧のベクトル和は 0 ($\dot{E}_a + \dot{E}_b + \dot{E}_c = 0$)であるため、$\dot{E}_0 = 0$ となり、誘導障害は発生しません。
電磁誘導障害

線地絡事故が発生すると、大きな地絡電流(零相電流)が大地を帰路として流れるため、送電線と通信線との間の相互インダクタンス $M$ を通じて非常に高い電圧が通信線路に発生します。これを「電磁誘導電圧」といいます。通信線に発生する電磁誘導電圧を $\dot{V}_0$ とすると、以下の式になります。
$$\dot{V}_0 = j\omega ML (\dot{I}_a + \dot{I}_b + \dot{I}_c) = = 2\pi f M L (\dot{I}_a + \dot{I}_b + \dot{I}_c)$$
$f$:電源周波数($\omega = 2\pi f$)
$M$:送電線と通信線間の単位長さあたりの相互インダクタンス
$L$:送電線と通信線の並行区間長
静電誘導障害及び電磁誘導障害の防止対策
- 送電線をねん架する。
- 送電線と通信線の離隔距離を大きくする。
- 送電線と通信線の間に遮へい線(導電率の大きい地線)を布設する。
- 通信線に遮へい層のあるケーブルを採用する。
- 通信線に光ファイバケーブルを採用する。
電磁誘導障害の防止対策
- 電力系統の中性点接地抵抗を高くする。
- 送電系統の保護継電方式に高速遮断方式を採用する。(故障電流を迅速に遮断)。
- 中性点接地方式に消弧リアクトル接地方式を採用する。

【令和7年度上期・問8】架空送電線路の構成部品
架空送電線路の構成部品に関する記述として、誤っているものを次の(1)から(5)のうちから一つ選べ。
(1) 鋼心アルミより線は,アルミ線を使用することで質量を小さくし,これによる強度の不足を,鋼心を用いることで補ったものである。
(2) がいしは,電線と鉄塔などの支持物との間を絶縁するために使用する。雷撃などの異常電圧による絶縁破壊は,がいし内部で起こるように設計されている。
(3) 架空送電線におけるねん架とは,送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために行われるもので,ジャンパ線を用いて電線の配置を入れ替えることができる。
(4) 電線の微風振動やギャロッピングを抑制するために,電線にダンパを取り付け,振動エネルギーを吸収する方法がとられる。
(5) 送電線やがいしを雷撃などの異常電圧から保護するための設備に架空地線がある。架空地線には,光ファイバを内蔵し電力用通信線として使用されるものもある。
解説
正解は(2)です。雷撃などの異常電圧による碍子(がいし)の絶縁破壊を防ぐため、碍子の横にアークホーンが設置され、絶縁破壊はアークホーンで起こるように設計されています。
【令和7年度上期・問9】架空送電線路の誘導障害
架空送電線路が通信線路に接近していると、通信線路に電圧が誘導されて設備やその取扱者に危害を及ぼす等の障害が生じるおそれがある。この障害を誘導障害といい、次の2種類がある。
① 架空送電線路の電圧により通信線路に誘導電圧を発生させる (ア) 障害。
② 架空送電線路の電流が、架空送電線路と通信線路間の (イ) を介して通信線路に誘導電圧を発生させる (ウ) 障害。
三相架空送電線路が十分にねん架されていれば、平常時は、電圧や電流によって通信線路に現れる誘導電圧は (エ) となるので0Vとなる。三相架空送電線路に (オ) 事故が生じると、電圧や電流は不平衡になり、通信線路に誘導電圧が現れ、誘導障害が生じる。
上記の記述中の空白箇所(ア)から(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)から(5)のうちから一つ選べ。
| – | (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) |
|---|---|---|---|---|---|
| (1) | 磁気誘導 | 誘導リアクタンス | ファラデー | 大きさの差 | 三相短絡 |
| (2) | 静電誘導 | 自己インダクタンス | 電磁誘導 | 大きさの和 | 1線地絡 |
| (3) | 静電誘導 | 相互インダクタンス | 電磁誘導 | ベクトルの和 | 1線地絡 |
| (4) | 磁気誘導 | 相互インダクタンス | 電荷誘導 | ベクトルの和 | 三相短絡 |
| (5) | 磁気誘導 | 誘導リアクタンス | ファラデー | ベクトルの差 | 2線地絡 |
解説
正解は(3)です。
架空送電線路から通信線路への誘導障害に関する問題です。
(ア) 送電線の電圧によって、送電線と通信線路との間の相互静電容量を介して誘導電圧が生じる現象を「静電誘導」障害といいます。
(イ)(ウ) 送電線の電流によって、送電線と通信線路との間の「相互インダクタンス」を介して誘導電圧が生じる現象を「電磁誘導」障害といいます。
(エ) 三相交流が平衡している場合、各相の電圧や電流の「ベクトルの和」は零となるため、通信線路に現れる誘導電圧も零となります。
(オ) 系統に「1線地絡」事故などが発生すると、大きな故障電流(残留電流)が流れて不平衡状態となり、通信線路に大きな誘導電圧が発生します。
【令和7年度上期・問10】地中送電線路に使用される各種電力ケーブル
地中送電線路に使用される各種電力ケーブルに関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) OF ケーブルは,絶縁体として絶縁紙と絶縁油を組み合わせた油浸紙絶縁ケーブルである。OF ケーブルには油通路が設けられており,絶縁油の加圧によりボイドの発生を抑制して絶縁強度を確保するための給油設備が必要である。
(2) CV ケーブルは,絶縁体として架橋ポリエチレンを使用したケーブルである。架橋ポリエチレンは,ポリエチレンの分子構造を架橋反応により立体網目状分子構造とすることで,熱可塑性を大幅に向上させた絶縁材料である。
(3) CV ケーブルは,OF ケーブルと比較して給油設備が不要であり,保守性に優れている。一方で,水トリーの発生による絶縁劣化があるため,CV ケーブルには金属シースや遮水層を設ける場合がある。
(4) CVT ケーブルは,単心CV ケーブル3 条をより合わせたトリプレックス形CV ケーブルであり,3 心共通シース形CV ケーブルと比較してケーブルの熱抵抗が小さいため電流容量を大きくできるとともに,ケーブルの接続作業性がよい。
(5) OF ケーブルは,油圧の常時監視によって金属シースや鋼管の欠陥,外傷などに起因する漏油を検知することで,油圧の異常低下による絶縁破壊事故の未然防止を図ることができる。
解説
正解は(2)です。
地中電力ケーブルの種類と特徴に関する問題です。
(2) CVケーブルの絶縁体である架橋ポリエチレンは、ポリエチレンの分子を架橋反応によって網目状に結合したものです。これにより、熱で溶けやすい性質である「熱可塑性」が抑制され、熱に強い「耐熱性」や「耐熱変形性」が大幅に向上します。記述の「熱可塑性を大幅に向上させた」という部分は誤りです。
その他の記述は正しい内容です。
(1) OFケーブルは油浸紙を絶縁体とし、ボイド(気泡)発生を抑えるための給油設備を必要とします。
(3) CVケーブルは油設備が不要で保守性が高いですが、水分による水トリー現象で絶縁劣化を起こすため、遮水層などが設けられます。
(4) CVTケーブルは単心3条をより合わせた構造で、3心共通シース形に比べて熱放散が良く(熱抵抗が小さく)、許容電流を大きくでき、曲げやすいため作業性にも優れます。
(5) OFケーブルは絶縁油の圧力を監視することで、漏油やそれによる絶縁破壊事故を未然に防ぐことが可能です。
【令和6年度下期・問8】がいしの塩害
送配電線路や変電所におけるがいしの塩害とその対策に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) がいしの塩害に対する基本的な対策は、がいしの沿面距離を伸ばすことや、がいしの連結個数を増やすことである。
(2) がいしの表面に付着した塩分は、霧、小雨、雪などの湿潤状態において、がいしの表面の絶縁を低下させ、漏れ電流を増大させる。
(3) がいしにシリコン化合物を塗布して撥水性を高めることは、塩害対策として有効である。
(4) ギャロッピング現象の発生を抑えることは、塩害対策として有効である。
(5) 長幹がいしを採用してがいしの表面を洗浄しやすくすることは、塩害対策として有効である。
解説
正解は(4)です。
がいしの塩害およびその対策に関する問題です。
(1) 正しい。がいしの沿面距離を長くすることや、個数を増やして絶縁距離を確保することは、基本的な塩害対策です。
(2) 正しい。塩分が湿気を帯びると導電性が増し、絶縁が低下して漏れ電流が増大します。
(3) 正しい。撥水性のあるシリコン化合物を塗布することで、塩分を含む水分を弾き、漏れ電流の発生を抑えることができます。
(4) 誤り。ギャロッピング現象とは、電線に氷雪が付着した状態で強風が吹いたときに発生する電線の振動現象であり、塩害とは直接の関係はありません。
(5) 正しい。長幹がいしはひだの間隔が広く、雨水による自浄作用や人工的な洗浄が容易であるため、塩害対策に有効です。
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