電験3種(電力)で出題される地中電線路に関する試験対策と過去問題について解説します。
地中送電線とは
地中送電線の利点
- 都市景観が保たれる。
- 気象要因の事故が少なく、近傍の通信線に与える静電誘導,電磁誘導の影響も少ない。
- 露出充電部が少ないので,感電や火災の危険性が低い。
地中送電線の欠点
- 建設費が高い。
–絶縁破壊等の事故箇所の特定が難しく、復旧に時間がかかる(架空の場合、雷などによる一時的な絶縁破壊が多く自然回復することが多い)。
-放熱性が低く、同じ太さの導体でも送電容量が小さくなる。
-ケーブルの場合、静電容量が数10倍あるため、充電電流が大きい。
地中送電線で使用される主なケーブル
CVケーブル
架橋ポリエチレンを絶縁体として使用したケーブル。>OFケーブルより、絶縁体の誘電率、熱抵抗率の小ささ、常時導体最高許容温度の高さに優れ、防災、メンテナンス、送電容量の面で有利であるため主流。
CVTケーブル
ビニルシースを施した単心CVケーブル3条をより合わせたトリプレックス形CVケーブル。3心共通シース形CVケーブルと比較してケーブルの熱抵抗が小さいため電流容量を大きくでき、ケーブルの接続作業性が良い。
OFケーブル
油浸紙絶縁(絶縁体が「絶縁紙」と「絶縁油」を組み合わせたもの)を用いたケーブルで「油通路が必要」。
POFケーブル
油浸紙絶縁の線心3条をあらかじめ布設された防食鋼管内に引き入れ、絶縁油を高い油圧で充てんしたケーブル。地盤沈下や外傷に対する強度に優れ、電磁遮蔽効果が高い。
地中送電線の埋設方式
直接埋設式
掘削した地面の溝に、コンクリート製トラフなどの防護物を敷き並べて防護物内に電力ケーブルを引き入れてから埋設する。
(利点)工事が容易で安い。放熱性(許容電流)に優れる。
(欠点)保守点検や改修・更新・復旧に時間がかかる(作業を行うために、再度掘り返す必要がある)。
管路式
管路式には,あらかじめ管路及びマンホールを埋設しておき,電力ケーブルをマンホールから管路に引き入れ,マンホール内で電力ケーブルを接続して布設する。
(利点)工事は比較的容易。
暗きょ式
地中に洞道を構築し,床上や棚上あるいはトラフ内に電力ケーブルを引き入れて布設する方式がある。
(利点)ガス水道や通信線の管等も共同で敷設できる。
管路式と暗きょ式は、直接埋設式と比較して、電力ケーブル条数が多い場合に適している。
管路式では、電力ケーブルを多条数布設すると送電容量が著しく低下する場合があり、その場合には電力ケーブルの熱放散が良好な暗きょ式が採用される。
故障点の位置標定
地中送電線の故障点の位置を標定する方法はいくつかあります。
最も多い事故は一線地絡事故である、主にマーレーループ法が使われるが、健全相がないと測定できないため、パルスレーダ法など他の手法が使われることもあります。マーレーループ法は地絡事故に、静電容量測定法は断線事故に、パルスレーダ法は地絡事故と断線事故の双方に用いられます。
マーレーループ法
並行する健全相と故障相(地絡相)の2本のケーブルにおける一方の導体端部間にマーレーループ装置を接続し、他方の導体端部間を短絡してブリッジ回路を構成し、ブリッジ回路の平衡条件から故障点を標定します。なお、故障点の位置標定には、測定値と「ケーブルのこう長」が必要です。地絡事故点でのループ回路を測定に利用しているため、健全相がない場合や断線事故の場合には利用できない(過去出題)。

静電容量測定法
ケーブルの静電容量と長さが比例することを利用し、健全相と故障相(断線相)のケーブルの静電容量をそれぞれ測定することで故障点を標定します。なお、故障点の位置標定には、測定値と「ケーブルのこう長」が必要です。(断線事故)
パルスレーダ法
故障相(地絡相、断線相)のケーブルにおける健全部と故障点のサージインピーダンスの違いを利用し、故障相のケーブルの一端からパルス電圧を入力し、同位置で故障点から反射パルスが返ってくる時間を測定することで故障点を標定します。なお、故障点の位置標定には、測定値と「ケーブル中のパルス電圧の伝搬速度」が必要です。(地絡事故、断線事故)
【令和7年度上期・問10】地中送電線路に使用される各種電力ケーブル
地中送電線路に使用される各種電力ケーブルに関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) OF ケーブルは,絶縁体として絶縁紙と絶縁油を組み合わせた油浸紙絶縁ケーブルである。OF ケーブルには油通路が設けられており,絶縁油の加圧によりボイドの発生を抑制して絶縁強度を確保するための給油設備が必要である。
(2) CV ケーブルは,絶縁体として架橋ポリエチレンを使用したケーブルである。架橋ポリエチレンは,ポリエチレンの分子構造を架橋反応により立体網目状分子構造とすることで,熱可塑性を大幅に向上させた絶縁材料である。
(3) CV ケーブルは,OF ケーブルと比較して給油設備が不要であり,保守性に優れている。一方で,水トリーの発生による絶縁劣化があるため,CV ケーブルには金属シースや遮水層を設ける場合がある。
(4) CVT ケーブルは,単心CV ケーブル3 条をより合わせたトリプレックス形CV ケーブルであり,3 心共通シース形CV ケーブルと比較してケーブルの熱抵抗が小さいため電流容量を大きくできるとともに,ケーブルの接続作業性がよい。
(5) OF ケーブルは,油圧の常時監視によって金属シースや鋼管の欠陥,外傷などに起因する漏油を検知することで,油圧の異常低下による絶縁破壊事故の未然防止を図ることができる。
解説
正解は(2)です。
地中電力ケーブルの種類と特徴に関する問題です。
(2) CVケーブルの絶縁体である架橋ポリエチレンは、ポリエチレンの分子を架橋反応によって網目状に結合したものです。これにより、熱で溶けやすい性質である「熱可塑性(ねつかそせい)」が抑制され、熱に強い「耐熱性」や「耐熱変形性」が大幅に向上します。記述の「熱可塑性を大幅に向上させた」という部分は誤りです。
その他の記述は正しい内容です。
(1) OFケーブルは油浸紙を絶縁体とし、ボイド(気泡)発生を抑えるための給油設備を必要とします。
(3) CVケーブルは油設備が不要で保守性が高いですが、水分による水トリー現象で絶縁劣化を起こすため、遮水層などが設けられます。
(4) CVTケーブルは単心3条をより合わせた構造で、3心共通シース形に比べて熱放散が良く(熱抵抗が小さく)、許容電流を大きくでき、曲げやすいため作業性にも優れます。
(5) OFケーブルは絶縁油の圧力を監視することで、漏油やそれによる絶縁破壊事故を未然に防ぐことが可能です。
【令和6年度下期・問10】地中電線路の充電容量
電圧 6.6 kV 、周波数 60 Hz 、こう長 2 km の交流三相 3 線式地中電線路がある。ケーブルの心線 1 線当たりの静電容量を 0.5 μF/km とするとき、このケーブルの心線 3 線を充電するために必要な三相無負荷充電容量の値 [kV・A] として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 5.5
(2) 8.2
(3) 16.4
(4) 28.4
(5) 49.3
解説
正解は(3)です。
三相無負荷充電容量 $Q$ [VA] を求める問題です。
まず、電線路全体の 1 線当たりの静電容量 $C$ [F] を求めます。
$C = 0.5 \times 10^{-6} \times 2 = 1.0 \times 10^{-6} \text{ [F]}$
三相無負荷充電容量 $Q$ は、以下の式で計算できます。
$Q = 2 \pi f C V^2$
ここで、$f = 60 \text{ Hz}$ 、$V = 6.6 \text{ kV} = 6600 \text{ V}$(線間電圧)を代入します。
$Q = 2 \pi \times 60 \times 1.0 \times 10^{-6} \times 6600^2 \approx 16422 \text{ [VA]} \approx 16.4 \text{ [kV・A]}$
よって、最も近い値は (3) となります。
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