電験3種(法規分野)で出題される「スマート保安導入で外部委託承認の月次点検が3月に1回に延伸」される条件について解説します。
「主任技術者制度の解釈及び運用」等の改正
令和7年3月31日付で経済産業省より「「電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示の一部を改正する告示」が公布されました。それに合わせて令和7年4月1日付で「主任技術者制度の解釈及び運用」および「主任技術者制度に関するQ&A」についても一部改正されました。
この「スマート保安技術」とは、以下図のように変圧器2次側の負荷電流や低圧の絶縁を遠隔監視できるシステムを導入し、適切に運用することを指しています。
改正後の告示および内規
令和7年3月31日付の改正により「点検頻度告示」第4条第8号ハが追加されました。(スマート保安技術の導入により月次点検を3回に1回以上となる)
(点検頻度)
第4条<略>
七 次のイからニまでの設備条件の全てに適合する信頼性の高い需要設備であって設備容量が100kVA以下のもの又は低圧受電の需要設備にあっては隔月一回以上
イ 柱上に設置した高圧変圧器がないもの
ロ 高圧負荷開閉器(キュービクル内に設置するものを除く。)に可燃性絶縁油を使用していないもの
ハ 保安上の責任分界点又はこれに近い箇所に地絡保護継電器付高圧交流負荷開閉器又は地絡遮断器が設置されているもの
ニ 責任分界点から主遮断装置の間に電力需給用計器用変成器、地絡保護継電器用変成器、受電電圧確認用変成器、主遮断器用開閉状態表示変成器及び主遮断器操作用変成器以外の変成器がないもの八 前号のイからニまでの設備条件の全てに適合する信頼性の高い需要設備であって、次のイからハまでのいずれかに掲げるものにあっては、それぞれ次に掲げるとおりとする。
イ 低圧電路の絶縁状態の適確な監視が可能な装置を有する需要設備又は非常用照明設備、消防設備、昇降機その他の非常時に使用する設備への電路以外の低圧電路に漏電遮断器が設置してある需要設備 隔月一回以上
ロ 低圧電路の絶縁状態の適確な監視が可能な装置を有する需要設備であって、当該需要設備の設置場所と異なる場所から適確に点検を実施できるよう措置(第三者認証を取得した機械器具等を使用する措置をいう。)したもの 毎月一回以上
ハ 低圧電路の絶縁状態及び負荷の適確な監視が可能な装置を有する需要設備であって、主遮断装置並びに保安上の責任分界点から主遮断装置までの間に施設する開閉器、遮断器及び配線が適切に更新されているもの 三月に一回以上九 第七号に適合する需要設備であって、次のイ及びロの設備条件に適合するものにあっては三月に一回以上
イ 受電設備がキュービクル式であるもの(屋内に設置するものに限る。)
ロ 蓄電池設備又は非常用予備発電装置がないもの
また、改正後の主任技術者制度の解釈及び運用(内規)4. では、3月に1回以上の月次点検について新たな説明が追加されています。
4.規則第52条第2項の承認は、次の基準により行うものとする。
<略>
(委託契約書に明記された者による保安管理業務の実施等)
(7)規則第53条第2項第5号の「電気工作物の工事、維持及び運用の保安に関し、設置者及び委託契約の相手方の相互の義務及び責任その他必要事項が委託契約に定められていること」は、次に掲げる全ての事項を委託契約書等から確認できることとする。<略>
② 月次点検を、次に掲げる要件の全てに従って行うこと。 なお、告示第4条第4号に規定する太陽電池発電所(告示第4条第4号の2及び第4号の3に規定する受変電設備を除く。以下②において同じ。)又は告示第4条第8号ロに規定する需要設備に係る月次点検については、電気管理技術者等が当該設備の設置場所(以下「現地」という。)と異なる場所(以下「遠隔地」という。)から適確に行える場合にあっては、現地又は遠隔地のいずれかで行うことができるものとする。このうち、告示第4条第8号ロに規定する需要設備にあっては、遠隔地から適確に点検を実施できるよう措置した需要設備として別紙に定める要件を満たすものであることとし、3月に1回以上を現地で行わなければならない。また、遠隔地で点検を実施する場合にあっては、その旨を保安規程に規定すること。
イ 外観点検を、(イ)に掲げる項目について、(ロ)に掲げる設備等を対象として行う。<略>
ロ (イ)及び(ロ)に掲げる項目の確認のため、当該(イ)及び(ロ)に定める測定を行う。
<略>
ハ イ及びロの点検のほか、設置者及びその従事者に、電気工作物の異常等がなかったか否かの問診を行い、異常があった場合には、電気管理技術者等としての観点から点検を行う。その際、告示第4条第8号ロに規定する需要設備に係る問診を遠隔地で行う場合にあっては、設置者又はその従事者は、原則として現地にて問診を受けるものとする。
③ 年次点検を、月次点検に係る②の要件に加え、次のイ及びロに掲げる要件に従って行うこと。
イ 1年に1回以上行う。(ただし、信頼性が高く、かつ、ロと同等と認められる点検が1年に1回以上行われている機器については、停電により設備を停止状態にして行う点検を3年に1回以上とすることができる。)
ロ 次に掲げる全ての項目の確認その他必要に応じた測定又は試験を行う。<略>
(ト)主遮断装置並びに保安上の責任分界点から主遮断装置までの間に施設する開閉器、遮断器及び配線(以下「主遮断装置等」という。)が⑧の計画に従って更新されていること(告示第4条第8号ハに規定する需要設備の年次点検を行う場合に限る。)。
<略>
⑦ 電気管理技術者等が負荷の記録を1年間保存するとともに、過負荷が四時間以上継続している旨の警報を繰り返し受信した場合において、その原因を調査し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること(告示第4条第8号ハに規定する需要設備に係る規則第52条第2項の承認をする場合に限る。)。
<略>
⑧ 設置者が保安規程に定められた主遮断装置等の更新の計画に基づき、電気管理技術者等の指示に従って主遮断装置等を更新すること(告示第4条第8号ハに規定する需要設備に係る規則第52条第2項の承認をする場合に限る。)。
月次点検が3月に1回に延伸できる条件(100kVA以上)
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
該当箇所:告示第4条第8号ハ、内規4.(7)⑦⑧
Q.告示第4条第8号ハに掲げる需要設備に該当するための要件は何ですか。
A.告示第4条第8号ハに掲げる需要設備とは、以下の4つの要件を満たす需要設備です。
① 告示第4条第7号イからニまでの設備条件の全てに適合する信頼性の高い需要設備であること。
② 低圧電路の絶縁状態の適確な監視が可能な装置が取り付けられており、かつ内規4.(7)⑤に適合していること。
③ 負荷の適確な監視が可能な装置が取り付けられており、かつ内規4.(7)⑦に適合していること。
④ 主遮断装置並びに保安上の責任分界点から主遮断装置までの間に施設する開閉器、遮断器及び配線(以下「主遮断装置等」という。)が保安規程に定められた主遮断装置等の更新の計画(以下「設備更新計画」という。)に従って更新されていること。
負荷監視装置の要件
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
Q.「負荷の的確な監視が可能な装置」とはどのような装置でしょうか。
A.需要設備の各フィーダー電流値(各変圧器の2次側電流値)を連続的に計測し、遠隔地で電流値の監視及び警報発報を行う機能を有する装置をいいます。
また、工場等における電気使用は、営業時間の午前及び午後のそれぞれ4時間に集中するケースが多いと想定されるため、内規4.(7)⑦では「変圧器の定格電流値を超えた状態(=過負荷)が4時間以上継続している旨の警報を繰り返し受信した場合」にその是正を求めるとともに、負荷の記録を1年間保存することを求めています。 このため、こうした運用を可能とする「負荷の的確な監視が可能な装置」としては、次の要件を全て満たすものが考えられます。① 変圧器の負荷電流の計測が連続的に行えること
② 30分毎の電流値を計測し電子記録媒体等に1年以上のデータが記録・保存できること
③ 電子記録媒体等に記録・保存したデータ履歴を表示できること
④ 30分毎の変圧器の負荷電流値及び履歴を電気管理技術者等が遠隔地で表示・確認できること
⑤ 変圧器の負荷電流値が4時間以上連続して定格電流値を超過した場合、警報発報するとともに、電気管理技術者等が遠隔地で直ちにその事実を覚知できること
⑥ 負荷の的確な監視が可能な装置が正常に動作せず過負荷の監視が行えない場合に、通知を発するなどにより、電気管理技術者等が遠隔地でその事実を覚知できること
⑦ 年次点検等で負荷の的確な監視が可能な装置が正常に動作していることを確認できること
⑧ 負荷の監視を行う装置が、その設置の目的を鑑みて著しく不適当な精度でないこと
「過負荷」とは?
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
Q.内規4.(7)⑦の「過負荷」とはどういった状態でしょうか。
A.需要設備の各フィーダー電流値(各変圧器の2次側電流値)が、当該各変圧器の定格電流値を超えた状態を言います。
「原因を調査し、及びその結果に基づいて必要な措置を講ずる」とは?
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
Q.内規4.(7)⑦の「その原因を調査し、及びその結果に基づいて必要な措置を講ずる」とは具体的に何をすればよいのでしょうか。
A.負荷の的確な監視が可能な装置が、過負荷が4時間以上継続している旨の警報を繰り返し発報している場合に、過負荷の原因を点検等により調査・分析し、その結果に基づいて稼働調整など過負荷を回避する措置を講じるとともに、その調査・分析及び措置の記録を保存していただきます。
主遮断装置等の具体的な対象設備
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
Q.告示第4条第8号ハの「主遮断装置並びに保安上の責任分界点から主遮断装置までの間に施設する開閉器、遮断器及び配線」とは、具体的に何を指すのか。
A.一般送配電事業者との保安上の責任分界点から主遮断装置(遮断器、高圧負荷開閉器等)までの間に設置する開閉器(PAS、PGS等)、遮断器(CB、LBS、ACB、VCB等)及び引込ケーブル(CVケーブル等)を指します。 なお、責任分界点から複数のキュービクルに並列的に接続される引込ケーブル(渡りケーブル)がある場合においては、その全てのケーブル及び主遮断装置までが対象範囲となります。
主遮断装置等の更新計画の作成方法
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
Q.主遮断装置等の更新の計画はどのように作成するのでしょうか。
A.当該製品についてメーカーが定める更新時期や耐用年数を基礎として、主任技術者と相談の上で作成してください。 その他、作成に当たって判断に迷う場合には、事前に事業場を管轄する地域の産業保安監督部宛てに御相談下さい。
Q.主遮断装置等の更新の計画はどこに定めればよいでしょうか。
A.保安規程に定めていただく必要があります。保安規程に定める際には、保安規程の本文に「平成15年経済産業省告示第249号第4条第8号ハに掲げる点検頻度で点検を実施する場合にあっては、同号に掲げる主遮断装置等について、別表第●に定めるとおり更新する。」旨を記載し、以下の作成例を参考に、①対象設備、②更新周期、③(参考)次回更新期限、について記載をした別表を作成して、保安規程に添付ください。 なお、別表のうち、①対象設備、②更新周期について変更が生じた場合には、保安規程の変更の届出が必要です(③については、変更が生じた場合に、保安規程の変更の届出は不要です。)。
(作成例) 別表第● 平成15年経済産業省告示第249号第4条第8号ハの主遮断装置等の更新の計画
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「主遮断装置等を期限内に更新しなかった場合」は再申請が必要
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
Q.設備更新計画に記載している主遮断装置等について、保安規程に記載した更新期限が到来しましたが、更新しないこととした場合はどのような手続きが必要ですか。
A.更新しない場合には、告示第4条第8号ハの要件に適合せず、点検頻度を3月に1回とすることが認められないため、適法な点検頻度を設定し、改めて外部委託承認申請等を行っていただく必要があります。 仮に、こうした手続きを行わず、設備の更新を行わないまま点検頻度を3月に1回とし続けた場合には、法律に基づく処分を受ける場合があります。 なお、長期間設備の使用を停止していた等の特段の事情がある場合であって、更新周期の変更(延長)を希望する場合には、個別に事業場を管轄する地域の産業保安監督部宛てに個別に御相談下さい。
「主遮断装置等の更新」について契約書に記載が必要
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
Q.主遮断装置等の更新について、外部委託に係る契約書には何らか記載は必要ですか。
A.必要です。外部委託に係る契約書において、設置者が保安規程に定めた主遮断装置等の更新の計画に基づき更新を行う旨を記載して下さい。
(記載例)
第●条 甲(設置者)は乙(受託者)の監督の下で、保安規程に定める更新の計画に従って主遮断装置等を更新する。
外部委託承認申請時の注意点(契約書と保安規程の記載事項)
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
Q.告示第4条第8号ハに掲げる需要設備(点検頻度3月に1回以上)として、外部委託承認申請を行う場合には、手続上どういった点に注意が必要でしょうか。
A.外部委託承認申請に関する手続の際に、以下の点を注意いただくとともに、外部委託承認申請の他に保安規程の(変更)届出が必要です。
<外部委託承認申請について>
・外部委託に係る委託契約書において、「Q.主遮断装置等の更新について、外部委託に係る契約書には何らか記載は必要ですか。」を参考に、設置者が保安規程に定めた主遮断装置等の更新の計画に基づき更新を行う旨を記載して下さい。<保安規程(変更)届出について>
・保安規程に設備更新計画について定めていただく必要があります。「Q.主遮断装置等の更新の計画はどこに定めればよいでしょうか。」を参考に、保安規程を作成し、保安規程(変更)届出を、上記の外部委託承認申請と併せて提出ください。
設置者の注意点
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
Q.告示第4条第8号ハに掲げる需要設備(点検頻度3月に1回以上)として、設備の維持・運用を行う場合に、設置者はどういったことに気を付けなければならないのでしょうか。
A.設備更新計画に従って電気管理技術者等の監督の下で適切に設備を更新するとともに、引き続き電気管理技術者等とよく連携を図り、安全の確保に十分に注意を払って設備の維持・運用を行ってください。
年次点検時の主遮断装置等の更新状況の確認
「電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように説明されています。
該当箇所:内規4.(7)③ロ(ト)
Q.告示第4条第8号ハに掲げる需要設備について年次点検を行う際に、電気管理技術者等は、主遮断装置等の更新状況について、何を確認しなければならないのでしょうか。
A.設備更新計画に従って設備が更新されているかを確認するとともに、計画的に更新が行われるよう、設置者に対して必要な指導を行っていただくようお願いします。 なお、仮に年次点検において設備が更新されていないことが確認された場合には、 ① 設置者に対して設備の更新を指導し、設置者が速やかに更新を行う、 又は ② 更新を行わない場合には、告示第4条第8号ハの要件に適合せず、点検頻度を3月に1回とすることが認められないため、適法な点検頻度を設定し、改めて外部委託承認申請等を行う の、いずれかを行う必要があります。
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