電気主任技術者の外部委託承認申請制度とは?必要な手続きと根拠法令等

外部委託承認申請に必要な手続きと根拠法令等について解説します。

保安管理業務外部委託承認制度とは

自家用電気工作物の設置者は、公共の安全や環境の保全を図るため、電気の保安を確保する義務があり、電気設備を自主的に保安することが求められています。
設置者は、原則として自社の従業員の中から電気主任技術者免状を有する者から電気主任技術者を選任する必要があります。
しかし、保安管理業務外部委託承認制度(以下、「外部委託制度」という)により、一定の要件を満たし、所轄産業保安監督部長の承認を受けた場合は主任技術者の選任をしないことができます。

外部委託制度ができる事業場の条件

外部委託制度ができる事業場は、電気事業法施行規則第52条第2項に定められており、以下のとおりです。

  • 出力5,000キロワット未満の蓄電所であって電圧7,000ボルト以下で連系等をするもの(設置の工事のための事業場)
  • 出力5,000キロワット未満の太陽電池発電所又は蓄電所であって電圧7,000ボルト以下で連系等をするもの
  • 出力2,000キロワット未満の発電所(水力発電所、火力発電所及び風力発電所に限る。)であって電圧7,000ボルト以下で連系等をするもの(設置の工事のための事業場)
  • 出力2,000キロワット未満の発電所(水力発電所、火力発電所及び風力発電所に限る。)であって電圧7,000ボルト以下で連系等をするもの
  • 出力1,000キロワット未満の発電所(太陽電池発電所、水力発電所、火力発電所及び風力発電所を除く。)であって電圧7,000ボルト以下で連系等をするもの(設置の工事のための事業場)
  • 出力1,000キロワット未満の発電所(太陽電池発電所、水力発電所、火力発電所及び風力発電所を除く。)であって電圧7,000ボルト以下で連系等をするもの
  • 電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備(設置の工事のための事業場も含む)
  • 電圧600ボルト以下の配電線路を管理する事業場

雑多に言うと、受電電圧が高圧(特高ではない)であれば外部委託制度が利用できます。
なお、監督部に問合せたところ、需要設備(6600V受電)に非常用発電機(出力2000kW以上)が接続されている場合、非常用発電機は発電所に該当しないため、外部委託可能とのことでした。

【根拠法令等①】電気事業法施行規則 第52条第2項

根拠条文は、電気事業法施行規則第52条第2項にあります。

(主任技術者の選任等)
第五十二条 法第四十三条第一項の規定による主任技術者の選任は、次の表の上欄に掲げる事業場又は設備ごとに、それぞれ同表の下欄に掲げる者のうちから行うものとする。
(略)
2 次の各号のいずれかに掲げる自家用電気工作物に係る当該各号に定める事業場のうち、当該自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督に係る業務(以下「保安管理業務」という。)を委託する契約(以下「委託契約」という。)が次条に規定する要件に該当する者と締結されているものであって、保安上支障がないものとして経済産業大臣(事業場が一の産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は、その所在地を管轄する産業保安監督部長。次項並びに第五十三条第一項、第二項及び第五項において同じ。)の承認を受けたもの並びに発電所、蓄電所、変電所及び送電線路以外の自家用電気工作物であって鉱山保安法が適用されるもののみに係る前項の表第三号又は第六号の事業場については、同項の規定にかかわらず、電気主任技術者を選任しないことができる。
一 出力五千キロワット未満の太陽電池発電所又は蓄電所であって電圧七千ボルト以下で連系等をするもの 前項の表第三号又は第六号の事業場
二 出力二千キロワット未満の発電所(水力発電所、火力発電所及び風力発電所に限る。)であって電圧七千ボルト以下で連系等をするもの 前項の表第一号、第二号又は第六号の事業場
三 出力千キロワット未満の発電所(前二号に掲げるものを除く。)であって電圧七千ボルト以下で連系等をするもの 前項の表第三号又は第六号の事業場
四 電圧七千ボルト以下で受電する需要設備 前項の表第三号又は第六号の事業場
五 電圧六百ボルト以下の配電線路 当該配電線路を管理する事業場

外部委託制度を利用した場合の月次点検頻度

外部委託制度を利用した場合、経済産業省によって定められた月次点検頻度を守る必要がありますす。

需要設備の月次点検頻度

主任技術者の外部委託承認制度を使用する場合、原則として毎月1回以上、使用中の電気工作物の点検および測定を実施する必要があります。
ただし、設備の規模や構成などの条件によっては、月次点検の点検頻度を減らすことも可能です。

設備容量が100kVA以下のもの又は低圧受電の需要設備の場合、【点検頻度告示】第4条第7号より、以下の要件を全て満たせば、月次点検を隔月一回以上とすることができます。

  • 柱上に設置した高圧変圧器がないもの
  • 高圧負荷開閉器(キュービクル内に設置するものを除く。)に可燃性絶縁油を使用していないもの
  • 保安上の責任分界点又はこれに近い箇所に地絡保護継電器付高圧交流負荷開閉器又は地絡遮断器が設置されているもの
  • 責任分界点から主遮断装置の間に電力需給用計器用変成器、地絡保護継電器用変成器、受電電圧確認用変成器、主遮断器用開閉状態表示変成器及び主遮断器操作用変成器以外の変成器がないもの

設備容量が100kVA以下のもの又は低圧受電の需要設備の場合、【点検頻度告示】第4条第9号より、以下の要件を全て満たせば、月次点検を3月に一回以上とすることができます。

  • 柱上に設置した高圧変圧器がないもの
  • 高圧負荷開閉器(キュービクル内に設置するものを除く。)に可燃性絶縁油を使用していないもの
  • 保安上の責任分界点又はこれに近い箇所に地絡保護継電器付高圧交流負荷開閉器又は地絡遮断器が設置されているもの
  • 責任分界点から主遮断装置の間に電力需給用計器用変成器、地絡保護継電器用変成器、受電電圧確認用変成器、主遮断器用開閉状態表示変成器及び主遮断器操作用変成器以外の変成器がないもの
  • 受電設備がキュービクル式であるもの屋内に設置するものに限る。)
  • 蓄電池設備又は非常用予備発電装置がないもの

設備容量が100kVAを超える場合は、【点検頻度告示】第4条第8号より、以下の要件を全て満たせば、月次点検を隔月一回以上となります。

  • 柱上に設置した高圧変圧器がないもの
  • 高圧負荷開閉器(キュービクル内に設置するものを除く。)に可燃性絶縁油を使用していないもの
  • 保安上の責任分界点又はこれに近い箇所に地絡保護継電器付高圧交流負荷開閉器又は地絡遮断器が設置されているもの
  • 責任分界点から主遮断装置の間に電力需給用計器用変成器、地絡保護継電器用変成器、受電電圧確認用変成器、主遮断器用開閉状態表示変成器及び主遮断器操作用変成器以外の変成器がないもの
  • 低圧電路の絶縁状態の適確な監視が可能な装置を有する需要設備 or 非常用照明設備、消防設備、昇降機その他の非常時に使用する設備への電路以外の低圧電路に漏電遮断器が設置してある需要設備

小規模高圧需要設備(50kW未満で高圧受電している需要設備)は、【点検頻度告示】第4条第6号より、月次点検を3月に一回以上とすることができます。また、登録点検業務受託法人が点検業務を受託している場合は6月に1回以上とできます。

低圧絶縁監視装置

主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」で低圧電路の絶縁状態の適確な監視が可能な装置(低圧絶縁監視装置)について以下のように規定されています。

(委託契約書に明記された者による保安管理業務の実施等)
(7)
<略>
低圧電路の絶縁状況の適確な監視が可能な装置を有する需要設備については、警報発生時(警報動作電流(設定の上限値は50mAとする。)以上の漏えい電流が発生している旨の警報(以下「漏えい警報」という。)を連続して5分以上受信した場合又は5分未満の漏えい警報を繰り返し受信した場合をいう。以下同じ。)に、次のイ及びロに掲げる処置を行うこと。
イ 電気管理技術者等が、警報発生の原因を調査し、適切な措置を行う。
ロ 電気管理技術者等が、警報発生時の受信の記録を3年間保存する。

つまり、設備容量が100kVAを超える場合、低圧絶縁監視装置の設定値を50mAとし、漏えい電流が発生し続けたら対応する必要があります。

隔月点検の場合に低圧絶縁監視装置の設定値を50mAとする理由
隔月点検の場合に低圧絶縁監視装置の設定値を50mAとする理由について解説します。

根拠法令等①主任技術者制度の解釈及び運用(内規)

主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」の第4条で月次点検について以下のように記載されています。

4.規則第52条第2項の承認は、次の基準により行うものとする。
(委託契約書に明記された者による保安管理業務の実施等)

(略)

② 月次点検を、次に掲げる要件の全てに従って行うこと。
なお、告示第4条第4号に規定する太陽電池発電所(告示第4条第4号の2及び第4号の3に規定する受変電設備を除く。以下②において同じ。)又は告示第4条第8号ロに規定する需要設備に係る月次点検については、電気管理技術者等が当該設備の設置場所(以下「現地」という。)と異なる場所(以下「遠隔地」という。)から適確に行える場合にあっては、現地又は遠隔地のいずれかで行うことができるものとする。
このうち、告示第4条第8号ロに規定する需要設備にあっては、遠隔地から適確に点検を実施できるよう措置した需要設備として別紙に定める要件を満たすものであることとし、3月に1回以上を現地で行わなければならない。また、遠隔地で点検を実施する場合にあっては、その旨を保安規程に規定すること。

イ 外観点検を、(イ)に掲げる項目について、(ロ)に掲げる設備等を対象として行う。
(イ)点検項目
(a)電気工作物の異音、異臭、損傷、汚損等の有無
(b)電線とそれ以外の物との離隔距離の適否
(c)機械器具、配線の取付け状態及び過熱の有無
(d)接地線等の保安装置の取付け状態
(e)その他必要に応じて、保安規程に定める項目

(ロ)対象設備等
(a)引込設備(区分開閉器、引込線、支持物、ケーブル等)
(b)受電設備(断路器、電力用ヒューズ、遮断器、高圧負荷開閉器、変圧器、電力用コンデンサー及びリアクトル、避雷器、計器用変成器、母線等)
(c)受電盤・配電盤
(d)接地工事の施設状況(接地線、保護管等)
(e)構造物(受電室建物、キュービクル式受電設備・変電設備の金属製外箱等)・配電設備
(f)発電設備(原動機、発電機、始動装置等)
(g)蓄電池設備
(h)負荷設備(配線、配線器具、低圧機器等)
(i)その他必要に応じて、保安規程に定める設備

ロ (イ)及び(ロ)に掲げる項目の確認のため、当該(イ)及び(ロ)に定める測定を行う。
(イ)電圧値の適否及び過負荷等
電圧、負荷電流測定

(ロ)低圧回路の絶縁状態
B種接地工事の接地線に流れる漏えい電流測定

ハ イ及びロの点検のほか、設置者及びその従事者に、電気工作物の異常等がなかったか否かの問診を行い、異常があった場合には、電気管理技術者等としての観点から点検を行う。その際、告示第4条第8号ロに規定する需要設備に係る問診を遠隔地で行う場合にあっては、設置者又はその従事者は、原則として現地にて問診を受けるものとする。

根拠法令等②点検頻度告示

点検頻度告示」の第4条で月次点検の頻度について以下のように記載されています。

(点検頻度)
第四条 規則第五十三条第二項第五号の頻度は次の各号に掲げるとおりとする。

一 発電所(小規模発電設備並びに発電設備に接続されているものであって液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和四十二年法律第百四十九号)第二条第四項に規定する供給設備及び供給設備と末端ガス栓の間の配管その他の設備を除く。以下同じ。)のうち次号から第五号までに掲げるもの以外にあっては毎月二回以上。ただし、設置、改造等の工事期間中にあっては毎週一回以上

二 内燃力又はガスタービンを原動力とする火力発電所(次号に掲げるものを除く。)にあっては毎月一回以上

二の二 内燃力又はガスタービンを原動力とする火力発電所のうち、内燃機関又はガスタービン、発電機及び制御装置が一の筐体に収められている設備であって、当該設備を製造した者その他の当該設備の構造及び性能に精通する者との契約により保守が実施されるものにあっては三月に一回以上。ただし、ガスタービンを原動力とする火力発電所であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものにあっては、六月に一回以上タービンの軸受の潤滑剤として空気を使用するもの

三 燃料電池発電所にあっては毎月一回以上。ただし、設置、改造等の工事期間中にあっては毎週
イ 当該火力発電所を構成する火力設備の全てが平成二十七年経済産業省告示第九十九号第四条各号に掲げる要件のいずれにも該当するもの
ロ ガス一回以上

四 太陽電池発電所又は蓄電所にあっては六月に一回以上

四の二 太陽電池発電所又は蓄電所が次に掲げる設備を有する場合(次号に規定する場合を除く。)の当該設備にあっては、前号の規定にかかわらず、それぞれ次に掲げるとおりとする。
イ 保安上の責任分界点から逆変換装置の系統側接続箇所までの設備(以下「受変電設備」という。)であって、第六号本文又は第九号の需要設備に準ずるもの 四月に一回以上
ロ 受変電設備であって、第六号ただし書の需要設備に準ずるもの 六月に一回以上
ハ 受変電設備であって、第七号イからニまでの設備条件の全てに適合する信頼性の高いもの又は低圧受電のもの 三月に一回以上
ニ 受変電設備(イからハまでに掲げ

四の三 太陽電池発電所又は蓄電所が次に掲げる設備を有する場合(当該太陽電池発電所又は蓄電所に異常が生じた場合に安全かつ確実に停止させるための十分な監視体制が確保されていると認められるときに限る。)の当該設備にあっては、前二号の規定にかかわらず、それぞれ次に掲げるとおりとする。
イ 受変電設備であって、第六号本文又は第九号の需要設備に準ずるもの 五月に一回以上
ロ 受変電設備であって、第六号ただし書の需要設備に準ずるもの 六月に一回以上
ハ 受変電設備であって、第七号イからニまでの設備条件の全てに適合する信頼性の高いもの又は低圧受電のもの 四月に一回以上
ニ 受変電設備(イからハまでに掲げるものを除く。) 三月に一回以上

五 風力発電所にあっては毎月一回以上

小規模高圧需要設備にあっては三月に一回以上。ただし、規則第九十六条第二項第一号ロに規定する登録点検業務受託法人が点検業務を受託している小規模高圧需要設備にあっては六月に一回以上

七 次のイからニまでの設備条件の全てに適合する信頼性の高い需要設備であって設備容量が100kVA以下のもの又は低圧受電の需要設備にあっては隔月一回以上
イ 柱上に設置した高圧変圧器がないもの
ロ 高圧負荷開閉器(キュービクル内に設置するものを除く。)に可燃性絶縁油を使用していないもの
ハ 保安上の責任分界点又はこれに近い箇所に地絡保護継電器付高圧交流負荷開閉器又は地絡遮断器が設置されているもの
ニ 責任分界点から主遮断装置の間に電力需給用計器用変成器、地絡保護継電器用変成器、受電電圧確認用変成器、主遮断器用開閉状態表示変成器及び主遮断器操作用変成器以外の変成器がないもの

八 前号のイからニまでの設備条件の全てに適合する信頼性の高い需要設備であって、次のイ又はロに掲げるものにあっては、それぞれ次に掲げるとおりとする。
イ 低圧電路の絶縁状態の適確な監視が可能な装置を有する需要設備又は非常用照明設備、消防設備、昇降機その他の非常時に使用する設備への電路以外の低圧電路に漏電遮断器が設置してある需要設備 隔月一回以上
ロ 低圧電路の絶縁状態の適確な監視が可能な装置を有する需要設備であって、当該需要設備の設置場所と異なる場所から適確に点検を実施できるよう措置(第三者認証を取得した機械器具等を使用する措置をいう。)した需要設備 毎月一回以上

九 第七号に適合する需要設備であって、次のイ及びロの設備条件に適合するものにあっては三月に一回以上
イ 受電設備がキュービクル式であるもの(屋内に設置するものに限る。)
ロ 蓄電池設備又は非常用予備発電装置がないもの

十 第六号から前号までに該当する需要設備以外の需要設備にあっては毎月一回以上

十一 設置、改造等の工事期間中の需要設備にあっては第六号から前号までの規定にかかわらず毎週一回以上

十二 配電線路を管理する事業場にあっては六月に一回以上

十三 水力発電所の水力設備については毎月一回以上

関連ページ

電気保安の実務入門
電気保安の実務をまとめました。
【電験3種】法規分野でよく出る項目の攻略ポイントと練習問題
電験3種(法規)でよく出る項目の攻略ポイントと練習問題について解説します。

コメント