「保安業務従事者(保安法人)」や「電気管理技術者(個人)」となるのに必要な手続きと実務経験の範囲

「保安業務従事者(保安法人)」や「電気管理技術者(個人)」となるのに必要な手続きと実務経験の範囲について解説します。

保安業務従事者と電気管理技術者について

外部委託制度における「保安業務従事者(保安法人)」もしくは「電気管理技術者(個人)」となるには、一定の実務経験(の従事年数)と手続きが必要です。

実務経験の従事年数

要求される実務経験の従事年数は保有している免状種別によって異なります。

免状種別 従事年数※1
第一種電気主任技術者免状 3年
第二種電気主任技術者免状 4年
第三種電気主任技術者免状 5年
第二種電気主任技術者免状又は第三種電気主任技術者免状の交付を受けた後、自家用電気工作物の保安管理業務に関する講習を修了した者 3年

※1 従事年数は免状交付を受けてからの年数

免状の交付を受けた日より前における期間の従事年数

免状の交付を受けた日より前における期間の従事年数は無駄になるわけではなく、その2分の1に相当する期間を計上できます。

【例1】
第三種電気主任技術者の免状を5年実務経歴により取得した場合、
免状交付以前に5年の実務経験があるため、その1/2の2.5年を充当することができます。
つまり、免状交付後は2.5年間、実務に従事すれば要件(従事年数5年)を満たせます。

【例2】
第三種電気主任技術者の免状を5年実務経歴により取得し、さらに交付を受けた後に「自家用電気工作物の保安管理業務に関する講習」を修了した場合、
免状交付以前に5年の実務経験があるため、その1/2の2.5年を充当することができます。
つまり、免状交付後は0.5年間、実務に従事すれば要件(従事年数3年)を満たせます。

実務経験として認められる範囲

実務経験は「事業用電気工作物の工事、維持及び運用」が対象となります。具体的には電気主任技術者の実務経歴証明書記載要領に則ります。
実務経験として認められる「事業用電気工作物の工事、維持又は運用」とは以下のとおりです。

[1]工事

ア)新設、増設、改造、取り換え等の工事における電気設備、各種電気機械器具、付帯設備の設計(除 基礎工事、制御盤等の機器製造のみ等)
イ)機器・材料の据え付け、組立工事(除 土木工事、製造工場での材料加工・組立・調整)
ウ)配線工事
エ)機器調整及び性能検査

[2]維持

巡視点検、定期点検、修理、試験、測定などの設備の機能を維持するための保守管理業務等

[3]運用

設備を安定的、経済的に運転するための業務

ア)運転状態の監視
イ)周波数及び電圧・電流の調整
ウ)電力需給の調整
エ)系統の変更
オ)事故の復旧等における運転 、切り換え操作、給電指令、運用(事故の原因究明、報告等)

上記に直接関係し、現場に常駐または定期的に出向く必要がある業務(工事計画の認可申請書等の作成、電気事故防止対策業務、保安の指導監督業務、検査に関する業務等)

上記については、「電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示第一条の事業用電 気工作物の工事、維持又は運用に関する実務に従事した期間の確認に係る運用について」の5.に記載されています。

実務経歴と認められない業務

以下の業務は実務経歴とは認められません。

  • 低圧の電気工作物(一般用電気工作物・事業用電気工作物)のみの工事・維持・運用
  • 単なる設備の設置・組み立て作業などの電気工作物に関する知識、技能を必要としない業務(土木工、組立工、溶接工等
  • 警備のために行う監視、記録等であって、電気工作物に関する知識を必要としない業務
  • 受電設備を含まない需要設備、負荷設備のみの維持、運用業務
  • 学校、研究所の実験設備、試験設備に係る業務
  • エックス線発生装置、ネオン変圧器、テレビ受像器などの二次側にだけ高電圧を発生させる機械器具に係る業務
  • 電気機械器具、計器類の製造に係る業務
  • 電気鉄道用電気設備であって、電車線、トロリー線に係る業務
  • 船舶(除 非自航船)、車両、航空機内の電気設備に係る業務
  • 電気事業法が適用されない海外における業務

上記については、「電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示第一条の事業用電 気工作物の工事、維持又は運用に関する実務に従事した期間の確認に係る運用について」の6.に記載されています。

【根拠法令等】保安業務従事者と電気管理技術者の要件(施行規則52条の2)

(主任技術者の選任等)
第五十二条
(略)
2 次の各号のいずれかに掲げる自家用電気工作物に係る当該各号に定める事業場のうち、当該自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督に係る業務(以下「保安管理業務」という。)を委託する契約(以下「委託契約」という。)が次条に規定する要件に該当する者と締結されているものであって、保安上支障がないものとして経済産業大臣(事業場が一の産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は、その所在地を管轄する産業保安監督部長。次項並びに第五十三条第一項、第二項及び第五項において同じ。)の承認を受けたもの並びに発電所、蓄電所、変電所及び送電線路以外の自家用電気工作物であって鉱山保安法が適用されるもののみに係る前項の表第三号又は第六号の事業場については、同項の規定にかかわらず、電気主任技術者を選任しないことができる。
一 出力五千キロワット未満の太陽電池発電所又は蓄電所であって電圧七千ボルト以下で連系等をするもの 前項の表第三号又は第六号の事業場
二 出力二千キロワット未満の発電所(水力発電所、火力発電所及び風力発電所に限る。)であって電圧七千ボルト以下で連系等をするもの 前項の表第一号、第二号又は第六号の事業場
三 出力千キロワット未満の発電所(前二号に掲げるものを除く。)であって電圧七千ボルト以下で連系等をするもの 前項の表第三号又は第六号の事業場
四 電圧七千ボルト以下で受電する需要設備 前項の表第三号又は第六号の事業場
五 電圧六百ボルト以下の配電線路 当該配電線路を管理する事業場

(略)

第五十二条の二 前条第二項又は第三項の要件は、次の各号に掲げる事業者の区分に応じ、当該各号に定める要件とする。
一 個人事業者(事業を行う個人をいう。)
イ 前条第二項の場合にあっては電気主任技術者免状の交付を、同条第三項の場合にあってはダム水路主任技術者免状の交付を、それぞれ受けていること。
ロ 別に告示する要件に該当していること。
ハ 別に告示する機械器具を有していること。
ニ 保安管理業務を実施する事業場の種類及び規模に応じて別に告示する算定方法で算定した値が別に告示する値未満であること。
ホ 保安管理業務の適確な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。
ヘ 次条第五項の規定による取消しにつき責めに任ずべき者であって、その取消しの日から二年を経過しないものでないこと。

二 法人
イ 前条第二項又は第三項の承認の申請に係る事業場(以下「申請事業場」という。)の保安管理業務に従事する者(以下「保安業務従事者」という。)が前号イ及びロの要件に該当していること。
ロ 別に告示する機械器具を有していること。
ハ 保安業務従事者であって申請事業場を担当する者(以下「保安業務担当者」という。)ごとに、担当する事業場の種類及び規模に応じて別に告示する算定方法で算定した値が別に告示する値未満であること。
ニ 保安管理業務を遂行するための体制が、保安管理業務の適確な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。
ホ 次条第五項の規定により取り消された承認に係る委託契約の相手方で、その取消しの日から二年を経過しない者でないこと。ただし、その取消しにつき、委託契約の相手方の責めに帰することができないときは、この限りでない。
ヘ 次条第五項の規定による取消しにつき責めに任ずべき者であって、その取消しの日から二年を経過しないものを保安管理業務に従事させていないこと。

【根拠法令等】提出書類

提出書類については、経済産業省の公表資料「20240325保局第3号 電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示第一条の事業用電 気工作物の工事、維持又は運用に関する実務に従事した期間の確認に係る運用について 」の2.で以下のように定められています。

(提出書類)
2.申請者は、確認を受けようとする産業保安監督部長(支部、監督署及び監督事務所を含む。以下同じ。)に次に掲げる書類を提出すること。
なお、告示第一条第二項の規定の適用を受けようとするときは、併せてその旨を当該産業保安監督部長に申し出なければならない。
電気主任技術者免状の写し
実務経歴証明書(様式1)
三 告示第一条第一項第四号に掲げる者にあっては、同号の講習を修了したことを示す書類

また、同資料の3.で実務経歴証明書の作成について以下のとおり定められています。

3.2.二に掲げる実務経歴証明書は、次に掲げる点検等の区分に応じ、それぞれ次に定める事項を含むものとする。
一 電気管理技術者又は保安業務従事者の補助者として実務に従事した場合
イ 実務経歴(注1)
ロ 点検等実施事業場一覧(点検等を実施した事業場の設置者及び事業場名、実施した年月並びに実施した件数の合計を含むもの。)

二 選任された電気主任技術者として実務に従事した場合
イ 実務経歴(注2)

三 選任された電気主任技術者の下で実務に従事した場合
イ 実務経歴(注2)

四 電気工事業者又は電気工事業者の従業者として実務に従事した場合
イ 実務経歴(注3)(注4)
ロ 工事工程一覧(従事した工事件名ごとに主な業務の内容や工期を含むもの。(休日や工程期間が重複するものは除く。))
(注1)保安業務従事者の補助者として実務に従事した場合にあっては、所属する保安法人に よる証明を、電気管理技術者の補助者として実務に従事した場合にあっては、当該電気管理技術者の証明を受けること。
(注2)当該選任された事業場の設置者の証明を受けること。ただし、当該実務に従事した期間において申請者が当該設置者又はその役員若しくは従業員でなかった場合であって、当該期間における申請者の雇用主(当該設置者との間で申請者の派遣に係る労働者派遣契約(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第二十六条第一項に規定する労働者派遣契約をいう。以下同じ。)を締結した者に限る。)の証明を受けた場合には、当該設置者の証明を受けることを要しない。
(注3)当該実務に従事した事業場の設置者の証明を受けること。ただし、当該実務に従事した期間において申請者が当該設置者又はその役員若しくは従業員でなかった場合であって、当該期間における申請者の雇用主(申請者を当該実務に従事させた者又は当該設置者との間で申請者の派遣に係る労働者派遣契約を締結した者に限る。)の証明を受けた場合には、当該設置者の証明を受けることを要しない。
(注4)産業保安監督部長から提出を求められた場合にあっては、従事した工事の請負契約書その他の工事の実施を示す書類を提出すること。

さらに、同資料の4.で以下のとおり定められています。

4.産業保安監督部長は、2.一~三までに掲げる書類のほか、実務経験期間の確認に必要な限度において、申請者に対し、文書若しくは口頭による説明又は資料の提出を求めることができる。

【根拠法令等】必要な機械器具(経済産業省告示第249号)

保安管理業務に従事するために保有することが必要な機械器具については、経済産業省告示第249号の第2条に記載されています。

(機械器具)
第二条 規則第五十二条の二第一号ハ及び第二号ロの機械器具のうち電気管理技術者及び電気保安法人に関するものは、次の各号に掲げるものとする。
ただし、保安管理業務を実施する事業場の設置者がこれらの機械器具を当該事業場に備え付けている場合にあっては当該機械器具を、委託契約の相手方が太陽電池発電所、燃料電池発電所、蓄電所、需要設備又は配電線路を管理する事業場の保安管理業務のみを実施する場合にあっては第七号から第九号までに掲げる機械器具を、委託契約の相手方又は当該事業場の設置者が必要な場合に使用し得る措置を講じている場合にあっては第十号及び第十一号に掲げる機械器具をそれぞれ除くものとする。
一 絶縁抵抗計
二 電流計
三 電圧計
四 低圧検電器
五 高圧検電器
六 接地抵抗計
七 騒音計
八 振動計
九 回転計
十 継電器試験装置
十一 絶縁耐力試験装置

2 規則第五十二条の二第一号ハ及び第二号ロの機械器具のうちダム水路管理技術者及びダム水路保安法人に関するものは次の各号に掲げるものとする。
ただし、保安管理業務を実施する事業場の設置者がこれらの機械器具を当該事業場に備え付けている場合にあっては当該機械器具を、委託契約の相手方又は当該事業場の設置者が必要な場合に使用し得る措置を講じている場合にあっては第五号から第七号に掲げる機械器具をそれぞれ除くものとする。
一 巻尺
二 すきまゲージ
三 ハンマー
四 漏水計量器
五 膜厚計
六 超音波厚さ計
七 振動計

つまり、保安管理業務を実施する事業場の設置者が、当該事業場に機械器具を備え付けている場合、該当する機械器具を所有する必要はありません。
そうでない場合(大半は設置者が所有していない)は、以下のとおり必要となります(保安管理業務を行いたい方へ (METI/経済産業省 関東東北産業保安監督部)より)。

  • 必要な機械器具
    • 絶縁抵抗計
    • 電流計
    • 電圧計
    • 低圧検電器
    • 高圧検電器
    • 接地抵抗計
  • 発電所(太陽光、燃料電池を除く)の電気管理業務を受託する場合に必要
    • 騒音計
    • 振動計
    • 回転計
  • 必要な場合に使用し得る措置を講じている場合、所有する必要はないもの
    • 継電器試験装置
    • 絶縁耐力試験装置

【根拠法令等】実務経験の算定方法、実務経験として認められる範囲

実務経験の算定方法については、経済産業省の公表資料「20240325保局第3号 電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示第一条の事業用電 気工作物の工事、維持又は運用に関する実務に従事した期間の確認に係る運用について 」の1.で以下のように定められています。

(実務経験期間の算定方法)
1.実務経験期間は、実務経験期間の確認を受けようとする者(以下「申請者」という。)の役職に割り当てられた業務として、月次点検、年次点検、工事期間中における点検その他の事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。以下同じ。)の工事、維持又は運用に関する実務(以下「点検等」という。)に日常的かつ継続して従事した期間を、次に掲げる点検等の区分に応じ、それぞれ次に定める方法で算定し、それらを通算して求めることとする。

選任された電気主任技術者として実務に従事した場合又は選任された電気主任技術者の下で当該選任された事業場に常駐して実務に従事した場合
選任されていた期間又は従事した期間を算定する。

二 電気管理技術者又は保安業務従事者の補助者として実務に従事した場合
以下5.一に掲げる設備21件の点検等を1月分として期間を算定する。
なお、1月の間に21件を超える点検等を行った場合であっても、1月分と算定することとする(21件を超える点検等を実施した場合に、同月以降の件数に充当することは認められない)。

電気工事業者又は電気工事業者の従業者として実務に従事した場合等
21日間の従事を1月分(ある月において21日を超える点検等を実施した場合に、同月以降の日数に充当することは認められない。)として期間を算定する。
※ 二・三について、それぞれ1月間の従事実績が21件又は21日に満たない場合には、他の同様に従事実績が21件又は21日に満たない月に充当することができる。

実務経験として認められる範囲については、「電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示第一条の事業用電 気工作物の工事、維持又は運用に関する実務に従事した期間の確認に係る運用について」の5.に記載されています。

(実務経験として認められる業務の範囲)
5.実務経験として認められる業務は次のとおり(実際に従事した業務内容を個別に確認する)。
一 事業用電気工作物である発電設備(ダム、水路設備を除く。)、蓄電設備、変電設備、送電設備、配電設備、給電・遠隔制御等の設備(電力保安通信設備を除く。)及び需要設備に関する次のものをいう。
イ 建設・施工の工事に係る次の業務及びこれらの業務を指導監督する業務
(1) 新設、増設、改造、取り換え等の工事における電気設備、各種電気機械器具及び付帯設備の設計(基礎工事に係るもの及び施工監理を伴わないものを除く。)
(2) 機器・材料の据え付け・組立の工事(土木工事並びに製造工場の材料加工・組立及び調整を除く。)
(3) 配線工事
(4) 機器調整及び性能検査
ロ 機能を維持するための保守管理業務(巡視点検、定期点検、修理、試験、測定等)及びこれらの業務を指導監督する業務
ハ 安定的、経済的に運転するための次の業務及びこれらの業務を指導監督する業務
(1) 運転状態の監視
(2) 周波数及び電圧・電流の調整
(3) 電力需給の調整
(4) 系統の変更
(5) 事故の復旧等における運転、切り替え操作並びに給電指令及び運用(事故の原因究明、報告等)

【根拠法令等】実務経験として認められない範囲

実務経験として認められない範囲については、「電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示第一条の事業用電 気工作物の工事、維持又は運用に関する実務に従事した期間の確認に係る運用について」の6.に記載されています。

6.実務経験の対象にならない業務は次のとおり。
一 5の業務であって、設置・組立作業等の電気工作物に関する知識及び技能が要求されない業務(土木工、組立工、溶接工等)
二 5の業務であって、警備のために行う監視、記録等の業務であって、電気工作物に関する知識及び技能を必要としない業務
三 受電設備を含まない需要設備及び負荷設備のみの維持又は管理業務
四 学校、研究所の実験設備又は試験設備に係る業務(電源設備は除く。)
五 エックス線発生装置、ネオン変圧器、テレビ受像器などの二次側にのみ高電圧を発生させる機械器具に係る業務
六 電気機械器具及び計器類の製造に係る業務
七 電気鉄道用電気設備であって、電車線及びトロリー線等に係る業務
八 船舶(非自航船を除く。)、車両又は航空機内の電気設備に係る業務
九 5の業務であって、電気事業法が適用されない海外における業務

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