送電線路に関する試験問題対策についてまとめました。
送電線路と配電線路の違い
- 送電線路
- 発電所〜変電所、変電所〜変電所の間の電線路のこと。
- 配電線路
- 変電所〜需要家(会社、工場、住宅)の間の電線路のこと。
ケーブルの種類
- CVケーブル
- 架橋ポリエチレンを絶縁体として使用したケーブル。
- OFケーブルより、絶縁体の誘電率、熱抵抗率の小ささ、常時導体最高許容温度の高さに優れ、防災、メンテナンス、送電容量の面で有利であるため主流。
- CVTケーブル
- ビニルシースを施した単心CVケーブル3条をより合わせたトリプレックス形CVケーブル。
- 3心共通シース形CVケーブルと比較してケーブルの熱抵抗が小さいため電流容量を大きくでき、ケーブルの接続作業性が良い。
- OFケーブル
- 油浸紙絶縁(絶縁体が「絶縁紙」と「絶縁油」を組み合わせたもの)を用いたケーブルで「油通路が必要」。
- POFケーブル
- 油浸紙絶縁の線心3条をあらかじめ布設された防食鋼管内に引き入れ、絶縁油を高い油圧で充てんしたケーブル。
- 地盤沈下や外傷に対する強度に優れ、電磁遮蔽効果が高い
ケーブルに発生する損失
電力ケーブルの許容電流は、ケーブル導体温度がケーブル絶縁体の最高許容温度を超えない上限の電流であるため、電力ケーブル内での発生損失による発熱量、ケーブル周囲環境の熱抵抗、温度などによって決まる。
- 抵抗損
- 導体の抵抗で発生する損失(導体に流れる電流の2乗に比例。ジュール熱$RI^2$より)。
- 電力ケーブルで発生する損失のうち、最も大きい損失は抵抗損である。
- 直流電流と違って交流電流が流れるケーブル導体中の電流分布は、表皮効果や近接効果によって偏りが生じるため、抵抗損も増大する
- 抵抗損の低減対策は「導体断面積を増やす」「分割導体」「素線絶縁導体の採用」など。
- 誘電体損
- ケーブル(コンデンサを巻いたような形状)の絶縁体に流れる電流による損失。
- 絶縁体(誘電体)が劣化すると、抵抗が大きくなるため、誘電損失が増加する。
- 交流電圧を印加した電力ケーブルでは、電圧に対して同位相の電流成分がケーブル絶縁体に流れることにより誘電体損が発生する。
- (注意)電圧に対して位相が異なる電流成分はコンデンサ成分となるので、誘電体損とはならない。
- 誘電体損は、ケーブル絶縁体の誘電率と誘電正接との積に比例して大きくなり、誘電率及び誘電正接の小さい絶縁体の採用が望ましい。
- シース損
- ケーブルシース(金属)に流れる電流(循環電流、渦電流)による損失。
- シース損の種類として、ケーブルの長手方向に金属シースを流れる電流によって発生する「シース回路損」、金属シース内の渦電流によって発生する「渦電流損」がある。
- 渦電流損の対策は、「導電率の低い金属シース材の採用」など。
- シース回路損の対策は、「クロスボンド接地方式の採用」など。
- 電気抵抗率の高い金属シース材を用いると、金属シースに流れる電流による発熱の影響を低減し、許容電流を大きくできる。
- 表皮効果
- 導体内を流れる交流電流により発生した磁界により渦電流が発生し、導体内の電流分布が外側に集中する現象。
- 電線の断面積が大きいほど、渦電流も大きくなり対策が必要となる。
- コロナ損
- 送電線に高電圧が印加され、「電線表面の電界強度」がある程度以上になると、電線からコロナ放電が発生する。
- コロナ放電が発生するとコロナ損と呼ばれる電力損失が生じる。
- コロナ放電の発生を抑えるために、電線の実効的な直径を大きくするために「多導体化する」「線間距離を大きくする」などの対策がある。
- コロナ放電は、気圧が低いほど生じやすい。つまり、都市部より山間部の送電線ほど発生しやすい。
導体の素材(硬銅より線、鋼心アルミより線)
- 導体の素材は、導電率は高い、引張強さが大きい、質量及び線熱膨張率が小さい、加工性及び耐食性に優れていることなどが求められます。
- 一般的に銅やアルミニウム又はそれらの合金が導体の素材として用いられ、それらの導体の導電率は、温度や不純物成分、加工条件、熱処理条件などによって異なり、標準軟銅の導電率を100%として比較した百分率で表されます。
送電線に用いられる「硬銅より線」「鋼心アルミより線」の比較は以下表のとおり。
項目 | 硬銅より線 | 鋼心アルミより線 |
---|---|---|
導電率 | ◎(90%台) | △(60%台) |
引張強さ | △ | ◎ |
重量 | △(重い) | ◎(軽量) |
外径(風圧荷重) | ◎ | △ |
コロナ放電 | △ | ◎ |
コスト | △ | ◎ |
- 鋼心アルミより線
- 中心に亜鉛めっき鋼より線、その周囲に硬アルミ線(※軟アルミ線でない)をより合わせた電線であり、アルミの軽量かつ高い導電性と、鋼の強い引張強さとをもつ代表的な架空送電線である。
- 純アルミニウムは、純銅と比較して導電率が2/3程度と低いですが、比重が1/3程度と軽いため、電気抵抗と長さが同じ電線の場合、アルミニウム線の質量は銅線のおよそ半分になります。
- 硬銅より線
- 地中ケーブルの銅導体には一般に軟銅が用いられ、硬銅と比べて引張強さは小さいですが、伸びや可とう性に優れ、導電率が高いです。
多導体と単導体の違い
- 多導体方式
- 3相3線式送電線で、1相あたり電線2本以上で送電する。
- 送電容量を増やすことができ、コロナ放電が発生しにくいが、サブスパン振動が発生したり、建設コストが増加する。
- 1相に複数の電線を「スペーサ」を用いて適度な間隔に配置したものを多導体と呼ぶ。
- 主に超高圧以上の送電線に用いられる。
- 多導体を用いることで、電線表面の「電位の傾きが小さく」 なるので、「コロナ開始電圧が高く」 なり、送電線のコロナ損失、雑音障害を抑制できる。
- 多導体は合計断面積が等しい単導体と比較すると、「表皮効果が小さい」。
- 送電線の「静電容量が減少」するため、送電容量が増加し系統安定度が向上する。
- 単導体方式
- 3相3線式送電線で、1相あたり電線1本で送電する。
送電鉄塔
- ねん架
- 送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために、ジャンパ線を用いて電線の位置を入れ替えることで、各相の離隔距離が異なることにより生じる、三相不均衡を防ぐ方法。
- 鉄塔
- 一般的に66kV以上の架空送電線の支持物に用いられる。
- 碍子
- 電線と支持物を絶縁するための絶縁体。絶縁性が高く耐久性にも優れた陶磁器や樹脂で作られたものがある。
- がいし表面に塩分等の導電性物質が付着した場合,漏れ電流の発生により,可聴雑音や電波障害が発生する場合がある。
- 耐塩碍子
- ひだが深い(表面距離が長い)、漏れ電流がより流れにくい碍子。撥水性物質を塗布したり、定期的な洗浄による塩分の除去なども塩害対策として行われる。
- 懸垂がいし
- 電圧階級に応じて複数個を連結して使用する
- 長幹がいし
- 棒状の絶縁物の両側に連結用金具を接着したもの。
- 埋設地線
- 鉄塔と大地を接続する接地線。鉄塔の接地抵抗を下げることで、落雷時の雷電流が大地へ流れ、逆フラッシオーバーを防止する。
- スペーサ
- 強風などによる電線相互の接近及び衝突を防止するため、電線相互の間隔を保持する器具。
- 超高圧の架空送電線でコロナ放電の抑制に用いられている。
- スペーサはギャロッピングの防止にも効果的。
- アークホーン
- がいしの両端に設けられた金属電極。
- 雷サージによるフラッシオーバの際生じるアークを電極間に生じさせ、碍子の破壊を防止する。
- アークホーンをがいしと併設し、雷撃等をきっかけに発生するアーク放電から壊しないよう保護できる。
- 架空地線
- 鉄塔の最上部に張られる接地線。
- 直撃雷、誘導雷の防止、電磁誘導障害を軽減する役割がある。
- 遮へい角が小さいほど雷撃防止の効果が大きい。
- 鉄塔又は架空地線に直撃雷があると,鉄塔から送電線へ逆フラッシオーバが起こることがある。
- 埋設地線等により鉄塔の接地抵抗を小さくすることで、逆フラッシオーバの抑制が図られている。
- 架空地線を多条化すると、架空地線と電力線間の結合率が増加し、鉄塔雷撃時に発生するアークホーン間電圧が抑制できるので、逆フラッシオーバの発生が抑制できる。
- 埋設地線
- 鉄塔の塔脚の地下に放射状に埋設された接地線、もしくはいくつかの鉄塔を地下で連結する接地線。
- 塔脚の接地抵抗を小さくし、逆フラッシオーバを抑止する目的等のため取り付ける。
- トーショナルダンパ
- 微風振動やギャロッピングを抑制するために、電線に取り付ける。
- 風による振動エネルギーで着雪を防止し、ギャロッピングによる電線間の短絡事故などを防止する。
- アーマロッド
- 電線の振振動疲労防止振やアークスポットによる振電線溶断防止振のため、クランプ付近の電線に同一材質の金属を巻き付けるもの。
- 送電用避雷装置
- 雷撃時に発生するアークホーン間電圧を抑制できる。
- フラッシオーバー
- 送電線に異常電圧が発生したり、碍子の絶縁劣化で送電線から鉄塔へ放電し、大地へと電流が流れる現象。
- 逆フラッシオーバー
- 架空地線又は鉄塔への落雷時に碍子が絶縁破壊し、雷電流が送電線へ流れる現象。
- フラッシオーバーとは電流の流れる方向が逆。
- 外径(風圧荷重)
- 外径が大きいほど、風を受ける面積も大きくなるため、風圧荷重が大きくなってしまう。
- コロナ放電
- 架空送電線は裸電線なので、絶縁体は空気のみである。
- 気温等により空気の絶縁性能が低下すると、裸電線の表面からがいしや金具等に対して放電が生じ、これを「コロナ放電」という。
- 電線表面電界がある値を超えると,コロナ放電が発生する。
- 多導体方式の方が、単導体方式に比べてコロナ放電を抑制できる。
- コロナ放電が発生すると,電線や取り付け金具で腐食が生じることがある。
- 硬銅より線は、コロナ放電が発生しやすい。
- コロナ放電が発生すると,電気エネルギーの一部が音,光,熱などに変換され,コロナ損という電力損失が生じる。
- コロナ放電が発生すると,架空送電線近傍で誘導障害や受信障害が生じることがある。
- ギャロッピング
- 電線に非対称な氷雪が付着し肥大化すると、微風振動と同様に電線の風下側にカルマン渦が生じ振動する現象。
- がいしの塩害対策
- がいし表面に塩分が付着すると、漏れ電流が発生し、可聴雑音、電波障害、フラッシオーバの原因となる。
- がいしの塩害対策は、塩害の少ない送電ルートの選定、がいしの絶縁性能を強化、がいしの洗浄、がいし表面への撥水性物質の塗布などがある。
- 懸垂がいしの絶縁強化を図るには,がいしを直列に連結する個数を増やしたり、がいしの表面漏れ距離を長くする方法などがある。
- 長幹がいし(棒状磁器の両端に連結用金具を取り付けた形状)は、懸垂がいしに比べて雨洗効果が高く、塩害に対し絶縁性が高い。
- 微風振動
- 電線と直角方向に毎秒数メートル程度の微風が吹くと、電線の背後に空気の渦が生じて電線が上下に振動するが発生する。
- 振動エネルギーを吸収するダンパを電線に取り付けて、この振動による電線の断線防止が図られている。
- 軽い電線、長い径間、張力が大きいほど発生しやすい。
- サブスパン振動
- 多導体の架空送電線において、風速が数~20 m/s(10m/sを超えると激しく揺れる)で発生する振動。
- 架空電線が電線と直角方向に穏やかで一様な空気の流れを受けると、電線の背後に空気の渦が生じ,電線が上下に振動を起こすことがある
- この振動を防止するためにダンパを取り付けて振動エネルギーを吸収させることが効果的である。
- この振動によって電線が断線しないようにアーマロッドが用いられている。
- スリートジャンプ
- 電線に付着した氷雪が落下したときに発生する振動。相間短絡の危険性がある。
- 相間短絡防止策としては,電線配置にオフセットを設けることなどがある。
- 不平衡絶縁方式
- 二回線送電線路で,両回線の絶縁に格差を設け,二回線にまたがる事故を抑制する。
- 架空送電線路の線路定数
- 抵抗,作用インダクタンス,作用静電容量,漏れコンダクタンスがある。
- 抵抗値は,表皮効果により交流のほうが増加する(周波数の増加に伴い電線導体内の電流分布が表面に偏る現象のため)。線間距離Dと電線半径rの比D/rが大きいほど、作用インダクタンスは大きくなり、作用静電容量は小さくなる。
- 作用静電容量を無視できない中距離送電線路では,作用静電容量によるアドミタンスを 1 か所又は 2 か所にまとめる集中定数回路が近似計算に用いられる。
- 送電端側と受電端側の 2 か所にアドミタンスをまとめる回路をπ形回路という。
- フェランチ効果
- 負荷が軽い深夜帯などに、受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象。
- 短距離送電線路よりも,長距離送電線路の方が発生しやすい。
- 線路電流が著しく小さい場合に生じることが多い。
- 架空送電線路の負荷側に地中送配電線路が接続されている場合に生じる可能性が高くなる。
- フェランチ効果発生時の線路電流の位相は、電圧に対して進んでいる。
- 分路リアクトルの運転により防止している。
- 送電線路の損失
- 送電線路での有効電力の損失は電圧の2乗に反比例する(過去出題)。
- 電圧調整により、電圧を高めに運用することが損失を減らすために有効。
- 送電線路の力率調整
- 送電線路において送電端電圧と受電端電圧が一定であるとすると、負荷の力率が変化すれば受電端電力が変化する。
- 負荷が変動しても力率を調整することによって受電端電圧を一定に保つことができる。
- 線路リアクタンスが大きい送電線路では,受電端において進相コンデンサを負荷に並列することで,受電端での進み無効電流を増加させ,受電端電圧を上げることができる。
- クロスボンド接地方式
- 亘長の長い単心ケーブルで使用される接地方式。
- ケーブルのシース部を絶縁接続し、各相のリアクタンスのバランスを取り、各相に流れるシース電流のベクトル和をほぼ0にする。
- シース損を低減させる方法として効果的。
交流送電と直流送電
- 直流送電の利点
- 送電線が2本で済むため、建設コストが下がる。
- 長距離・大容量送電に有利(無効電流による損失がない、送電線リアクタンスなどによる発電機間の安定度の問題がないため)
- 同容量のケーブルで,交流に比べ$\sqrt{2}$倍までの電圧を送電可能。
- 誘電損が発生しない(静電容量による充電電流が流れないため)。
- 大地帰路電流による地中埋設物の電食や直流磁界に伴う地磁気測定への影響に注意に払う必要がある。
- 地絡事故時の電流は交流送電系統より小さく、がいしの耐アーク性能が十分な場合、がいし装置からアークホーンを省略可能。
- 直流送電の欠点
- 変圧器で電圧の変成ができない。
- 交直変換装置が必要。
- 事故電流の遮断が難しい(交流のように零点がないため)。
- 交直変換装置から高調波が発生するため、フィルタや調相設備の設置が必要
- 変圧器で電圧の変成ができない
- 大地帰路方式において、電食が発生しやすい。
誘導障害
誘導障害とは、架空送電線と通信線路とが長距離にわたって接近交差していると、通信線路に対して電圧が誘導され、通信設備やその取扱者に危害を及ぼすなどの障害が生じること。
誘導障害は大別して、「静電誘導障害」「電磁誘導障害」の2種類ある。
- 静電誘導障害
- 架空送電線路の電圧により、架空送電線路と通信線路間の静電容量(キャパシタンス)を介して通信線路に誘導電圧を発生させる。
- 電磁誘導障害
- 架空送電線路の電流により、架空送電線路と通信線路間の相互インダクタンスを介して通信線路に誘導電圧を発生させる。
- 架空送電線路が十分にねん架されていれば、平常時は架空送電線路の電圧や電流によって通信線路に現れる誘導電圧は約0Vとなる。ところが、架空送電線路で地絡事故が発生すると、電圧及び電流は不平衡になり、通信線路に誘導電圧が生じ、誘導障害が生じる場合がある。
- 一線地絡事故に伴う電磁誘導障害の場合、電源周波数をf、地絡電流の大きさをI、単位長さ当たりの架空送電線路と通信線路間の相互インダクタンスをM、架空送電線路と通信線路との並行区間長をLとしたとき、通信線路に生じる誘導電圧は2πfMLIとなる。誘導障害対策では、この誘導電圧の大きさを考慮する必要がある。
- 静電誘導障害及び電磁誘導障害の防止対策
- 送電線をねん架する。
- 送電線と通信線の離隔距離を大きくする。
- 送電線と通信線の間に遮へい線(導電率の大きい地線)を布設する。
- 通信線に遮へい層のあるケーブルを採用する。
- 通信線に光ファイバケーブルを採用する。
- 電磁誘導障害の防止対策
- 電力系統の中性点接地抵抗を高くする。
- 送電系統の保護継電方式に高速遮断方式を採用する。(故障電流を迅速に遮断)。
- 中性点接地方式に消弧リアクトル接地方式を採用する。
送電線の送電容量
- 送電端電圧$V_s$、受電端電圧$V_r$、送電線路のリアクタンスを$X$、$V_s$と$V_r$の相差角が$\delta$のとき、送電電力$P$は以下の式で計算できる(要暗記)。
$P = \frac{V_sV_r}{X}sin \delta$
- つまり、送電端電圧$V_s$、受電端電圧$V_r$の差が小さい時、送電電力Pは電圧の2乗に比例する。
【例題1】三相平衡負荷を流れる電流及び送電損失
【問題】
三相3線式2回線送電線路(こう長25km、2回線運用中)に三相平衡負荷5000kW(受電端電圧22 kV、遅れ力率 0.9) が接続されているとき、以下の①②を計算せよ。
①送電線1線あたりの電流値 [A] ②送電損失を三相平衡負荷に対し 5 % 以下にするための送電線 1 線の最小断面積の値 [mm2]
※使用電線は、断面積$1[mm^2]$、長さ1m当たりの抵抗が$\frac{1}{35}$[Ω]
【①の解答】
- 2回線に流れる電流値Iは以下のとおり。
$I=\frac{P_r}{\sqrt{3}V_rcos\theta}=\frac{5000\times 10^3}{\sqrt{3}\times 22\times 10^3 \times 0.9}=145.8$
- よって、1回線に流れる電流は、この半分の72.9Aとなる。
【②の解答】
- 送電線1線の断面積を$S[mm^2]$ とすると、抵抗値R [Ω]は以下のとおり。
$R=\rho \frac{l}{S}=\frac{1}{35}\frac{25\times 10^3}{S}=\frac{714.3}{S}$
- 2回線分の送電線の損失P[kW] は以下のとおり。
$P=2\times3RI^2=6 \cdot \frac{714.3}{S}\cdot 72.9^2=\frac{22780}{S}$
- Pが受電電力の5%以下になれば良いので、そのときのSの最小値は以下で求まる。
$0.05\times 5000 =\frac{22780}{S}$
$S=91.1$[mm2]
【例題2】三相平衡負荷を流れる電流及び送電損失
【問題】
こう長 20 [km] の三相 3 線式 2 回線の送電線路がある。
受電端で 33 [kV] , 6600 [kW] ,力率 0.9 の三相負荷に供給する場合,受電端電力に対する送電損失を 5 [%] 以下にするための電線の最小断面積$[mm^2]$の値を計算せよ。
ただし,使用電線は,断面積 1$[mm^2]$,長さ 1 [m] 当たりの抵抗を 135[Ω] とし,その他の条件は無視する。
【解答】
- 題意より,受電端電圧$V_r=33 [kV] $,受電端電力$P_r=6600 [kW]$,力率$cos\theta=0.9$なので、 三相負荷を流れる電流$I_L[A]$は以下のとおり128.3[A]と求まる。
$P_r=\sqrt{3}V_rI_Lcos\theta$
$I_L=\sqrt{P_r}{\sqrt{3}V_rcos\theta}=\frac{6600\times 10^3}{\sqrt{3}\times 33\times 10^3 \times 0.9}=128.3[A]$
- 送電線1回線当たりの電流の大きさ$I_l[A]$は、$I_L[A]$の半分の64.15[A]となる。
- 送電線1線当たりの抵抗値R[Ω] は、断面積$S[mm^2]$とすると以下の通り。
$R=\frac{\ro l}{S}=\frac{\frac{1}{35}\cdot 20 times 10^3}{S}=\frac{571.4}{S}$[Ω]
- 三相3線式2回線なので、送電線の損失$P_l$[kW]は以下のとおり。
$P_l=2\times 3RI_l^2=6\times \frac{571.4}{S}\times 64.15^2=\frac{14110000}{S}[W]$
- 題意より,この値が受電電力の 5 [%] 以下になるので、Sは以下のとおり$42.8[mm^2]$と求まる。
$P_l= 0.05P_r$
$\frac{14110000}{S} = 0.05 \times 6600000$
$S = 42.8$
【例題3】送電線路での抵抗による全電力損失
【問題】
受電端電圧$V_r=20[kV]$の三相3線式の送電線路において、受電端での電力P=2000[kW]、力率が0.9(遅れ)である場合、この送電線路での抵抗による全電力損失$P_L$[kW]を求めよ。
ただし、送電線1線当たりの抵抗値は9Ωとし、線路のインダクタンスは無視するものとする。
【解答】
三相線路の送電電力P、受電端電圧$V_r$,電流I、力率$cos\theta$の関係式は以下のとおり。
$P=\sqrt{3}VIcos\theta $
よって、題意と上式より電流Iは64.15[A]と求まる
$I=\frac{P}{\sqrt{3}Vcos\theta}=\frac{2000\times10^3}{20\times 10^3 \cdot 0.9} =64.15[A]$
題意より、送電線1線当たりの抵抗$r=9$[Ω]なので、送電線路での全電力損失$P_L$[kW]は以下のとおり111[kW]と求まる。
$ P_L = 3rI^2=3\times 9\times (64.15)^2=111111[W]=111[kW]$
【例題4】送電線の損失
【問題】
下図のような単相2線式及び三相4線式のそれぞれの低圧配電方式で、抵抗負荷に送電したところ送電電力が等しかった。
このときの三相4線式の線路損失は単相2線式の何[%]となるか求めよ。
ただし、三相4線式の結線はY結線で、電源は三相対称、負荷は三相平衡であり、それぞれの低圧配電方式の1線当たりの線路抵抗r、回路図に示す電圧Vは等しいものとする。また、線路インダクタンスは無視できるものとする。
【解答】
- 単相2線式の場合、相電圧$V_1$、電流$I_1$、線路抵抗$r_1$のとき、電力$P_1$と線路損失$p_1$は以下の式で計算できる。
$P_1=V_1I_1$
$p_1=2r_1I_1^2=\frac{2r_1P^2_1}{V^2_1}$
- 三相交流(4線式)の場合、相電圧$V_2$、電流$I_2$、線路抵抗$r_2$のとき、電力$P_3$と線路損失$p_3$は以下の式で計算できる。
$P_1=3V_2I_2$
$p_3=3r_2I_2^2=\frac{r_2P^2_2}{3V^2_2}$
- 題意より、「送電電力が等しい」ので$P_1=P_2=P$、図より$r_1=r_2=r$と$V_1=V_2=V$となるため、以下の式より16.7%と計算できる。
$\frac{p_3}{p_1}=\frac{\frac{r_2P^2_2}{3V^2_2}}{\frac{2r_1P^2_1}{V^2_1}}=0.167$
【例題5】ケーブルの誘電体損
【問題】
電圧66kV,周波数50Hz,こう長5kmの交流三相3線式地中電線路がある。ケーブルの心線1線当たりの静電容量が0.43F/km,誘電正接が0.03%であるとき,このケーブル心線3線合計の誘電体損の値[W]を求めよ。
【解答】
- 角周波数$w$,周波数$f$,静電容量$C$,誘電正接$tan\delta$のとき、誘電体損$W_d$は以下の計算式で求まる(要暗記)。
$W_d=wCV^2tan\delta=2\pi fCV^2tan\delta$
- ここで、題意より静電容量C$は以下のとおり求まる。
$C=0.43\times 10^{-6}\times 5 = 2.15 \times 10^{-6} [F]$
- 公式に代入すれば$W_d=883[W]$と求まる。
$W_d=2\pi \times 50 \times (2.15 \times 10^{-6})\times (66\times 10^3)^2 \times 0.0003 = 883[W]$
【例題6】 速度調定率と出力の関係
【問題】
定格出力 1000 MW ,速度調定率 5 % のタービン発電機と,定格出力 300 MW ,速度調定率 3 % の水車発電機が周波数調整用に電力系統に接続されており,タービン発電機は 80 % 出力,水車発電機は 60 % 出力をとって,定格周波数( 60 Hz )にてガバナフリー運転を行っている。
系統の負荷が急変したため,タービン発電機と水車発電機は速度調定率に従って出力を変化させたとき、次の①②の値を求めよ。
① 出力を変化させ,安定した後のタービン発電機の出力は 900 MW となったときの系統周波数 [Hz] 。
② 出力を変化させ,安定した後の水車発電機の出力 [MW] 。
ただし,このガバナフリー運転におけるガバナ特性は直線とし,次式で表される速度調定率に従うものとする。
- 速度調定率 $\epsilon = \frac{\frac{n_2-n_1}{n_n}}{\frac{\frac{P_1-P_2}{n_n}} \times 100$ [%]
- $P_1$:初期出力$[MW]$
- $P_2$:変化後の出力$[MW]$
- $P_n$:定格出力$[MW]$
- $n_1$:出力1における回転速度 $[min−1] $
- $n_2$:変化後の出力2における回転速度$[min^{−1}]$
- $n_n$:定格回転速度$[min^{−1}]$
↑式が与えられないこともあるので、要暗記
また,この系統内で周波数調整を行っている発電機はこの2台のみとする。
【解答①】
- 題意より、タービン発電機の初期出力$P_{1a}$と水車発電機出力$P_{1b}$は以下のように求まる。
$P_{1a}=1000\times 0.8=800[MW]$
$P_{1b}=300\times 0.6=180[MW]$
- 回転数n、周波数f、極数pには以下の関係式が成立する。
$n=\frac{120f}{p}$
- よって、速度調定率 $\epsilon$ の式は以下のように変形できる。
$\epsilon = \frac{\frac{f_2-f_1}{n_n}}{\frac{P_1-P_2}{n_n}} \times 100$
- 上式に題意の各値を代入すると
$5 = \frac{\frac{f_2-60}{60}}{\frac{800-900}{1000}} \times 100$
$f_2=59.7$[Hz]
【解答②】
- 速度調定率の式に題意の各値を代入すると
$5 = \frac{\frac{59.7-60}{60}}{\frac{180-P_2}{300}} \times 100$
$P_2=230$[MW]
【例題7】電力系統の送電電力とパーセントリアクタンス
上図のように、線路インピーダンスが異なるA,B回線で構成される154kV系統(基準容量10 MV⋅A)があり、A回線側にリアクタンス5%の直列コンデンサが設置されているとき、次の①②の値を求めよ。
① 図に示す系統の合成線路インピーダンスの値[%]
② 送電端と受電端の電圧位相差$\delta$が30度のときの系統での送電電力P[MW]
※送電端電圧V_s$と受電端電圧$V_r$はそれぞれ154kVとする
【解答①】
- A回線の合成線路インピーダンス$\% Z_A$[%]は以下のとおり。
$\% Z_A=\sqrt{(\% X_L-\% X_C)^2}=\sqrt{(15-5)^2}=10[\%]$
- A回線の合成インピーダンス$\% Z_B=\% X_L=10$なので、合成インピーダンス$\% Z$は以下のとおり。
$\% Z =\frac{\% Z_A\% Z_B}{\% X_A + \% Z_B}=\frac{10\cdot 10}{10+10}=5[\%]$
【解答②】
- 基準容量$P_b$、基準電圧$V_b$、基準電流$I_b$、基準インダクタンス$Z_b$のとき、パーセントインピーダンス$\% Z$は以下のとおり計算できる。
$\% Z=\frac{Z P_b}{V_b^2}\times 100 $
- 既知の値を代入すると、$Z=118.58$[Ω]と求まる。
$\% 5=\frac{Z (10\times 10^6)}{(154\times 10^3)^2)}\times 100 $
$Z=118.58 $
- 求めたZを以下の式に代入すると、送電電力$P=100[MW]$と求まる。
$P=\frac{V_sV_r}{Z}sin\delta = \frac{(154\times 10^3)(154\times 10^3)}{118.58}sin(30) = 100[MW]$
【例題8】送電線の1線地絡事故
【問題】
上図のように、中性点をリアクトルLを介して接地している公称電圧66 kVの系統がある(Cは送電線の対地静電容量に相当する等価キャパシタ)。
図に表示されていない電気定数は無視するとき、次の①②の値を求めよ。
①送電線の線路定数を測定するために、図中のA点で変電所と送電線を切り離し、A点での送電線の3線を一括して、これと大地間に公称電圧の相電圧相当の電圧を加えて充電すると、一括した線に流れる全充電電流は115 Aであった。
このとき、この送電線の1相当たりのアドミタンスの大きさ[mS]を求めよ。
②図中のB点のa相で1線地絡事故が発生したとき、地絡点を流れる電流を零とするために必要なリアクトルLのインピーダンスの大きさ[Ω]を求めよ。ただし、送電線の電気定数は①で求めた値を用いる。
【解答①】
- 公称電圧の相電圧相当の電圧を加えた時の等価回路は以下図のようになる。
- この回路に流れる電流$I=115[A]$、合成アドミタンスの大きさが3Yなので、以下の式より$Y=0.001[S]$となる。
$\frac{V}{\sqrt{3}}=\frac{1}{3Y}I$
$\frac{66\times10^3}{\sqrt{3}}=\frac{1}{3Y}115$
$Y=0.001[S]$
【解答②】
- 1線地絡事故時に地絡点に流れる電流を0とするためには、リアクトルとコンデンサの合成インピーダンスが0となるように調整する。よって以下の式から$X_L=333$[Ω]となる。
$X_L=\frac{1}{3Y}=\frac{1}{3 \times 0.001}=333$[Ω]
【例題9】架空送電線路の力率計算
- 上図のように、特別高圧三相3線式1回線の専用架空送電線路で受電している需要家がある。
需要家の負荷は, 40 [MW] ,力率が遅れ 0.87 で,需要家の受電端電圧は 66 [kV] である。 - ただし,需要家から電源側をみた電源と専用架空送電線路を含めた百分率インピーダンスは,基準容量 10 [MV⋅A] あたり 6.0 [%] とし,抵抗はリアクタンスに比べ非常に小さいものとする。その他の定数や条件は無視する。
- 次の①②の値を求めよ。
【問題】
① 需要家が受電端において、受電端電圧は変化しないとき、力率1の受電になるために必要なコンデンサの総容量 [Mvar]
② 需要家のコンデンサが開閉動作を伴うとき,受電端の電圧変動率を 2.0 [%] 以内にするために必要なコンデンサ単機容量 [Mvar] の最大値。
【解答①】
- コンデンサの総容量$Q_c$と無効電力$Q$の大きさが等しいとき、力率が1(無効電力が0)となる。皮相電力Sとすると、以下のとおり$Q_c=22.7[Mvar]$と求まる。
$Q_c=Q=Ssin\theta=\frac{P}{cos\theta}=\frac{P}{cos\theta}\sqrt{1-cos^2\theta}=\frac{40}{0.87}\sqrt{1-0.8^2}=22.7$
【解答②】
- コンデンサ投入時の1相分等価回路は以下のとおり。
- 電圧変動率$\epsilon=2.0$[%] なので、コンデンサ投入後の電圧$V_R$、基準電圧$V_n=66 [kV]$ とすると、以下のとおり$V_R=67.32[kV]$と求まる。
$\epsilon=\frac{V_R-V_n}{V_n}\times 100$
$2.0=\frac{V_R-66}{66}\times 100$
$V_R=67.32$
- X=Zなので、以下のとおりパーセントインピーダンス法の公式からZ=X=26.14[Ω]と求まる。
$\%Z=\frac{P_nZ}{V_n^2}\times 100$
$6=\frac{10\times 10^6 Z}{(66000)^2}\times 100$
$Z=26.14$
- コンデンサ接続前後で、送電線に流れる電流が$I$から$I-I_c$に変化する。それぞれの受電電圧について方程式を立てる。
$V_n=V_s-\sqrt{3}XI$
$V_R=V_s-\sqrt{3}X(I-I_c)$
- 上2式を引き算して解くと、$I_c=29.15[A]と求まる。
$V_n-V_R=-\sqrt{3}XI_c$
$I_c=\frac{V_R-V_n}{\sqrt{3}}=\frac{(67320)-66000}{\sqrt{3}\times 26.14}=29.15$
- コンデンサ容量$Q_c$は、以下のとおり3.3 [Mvar]と求まる。
$Q_c=\sqrt{3}V_nI_c=\sqrt{3}\times 66000 \times 29.15=3300000$[var]
参考動画
初心者向け電験三種・電力・27・フェランチ効果【超簡単に学ぶ!】第三種電気主任技術者
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