変電所に関する試験問題対策【電験3種・電力】

変電所に関する試験問題対策についてまとめました。

変電所の役割

  • 変電所
    • 主に送電効率向上のための昇圧や需要家が必要とする電圧への降圧を行う。
    • 調相設備(進相コンデンサ分路リアクトルなど)や、負荷時タップ切替変圧器を用い、需要地における負荷の変化に対応するための電圧調整の役割も担っている。
    • 送変電設備の局所的な過負荷運転を避けるためなどの目的で、開閉装置により系統切り換えを行って電力潮流を調整する。
    • 送電線において、短絡又は地絡事故が生じた場合、事故回線を切り離すことで事故の波及を防ぐ系統保護の役割も担っている。
    • 変電所は,用途の面から、送電用変電所、配電用変電所などに分類されるが、東日本と西日本の間の連系に用いられる「周波数変換所」や、北海道と本州の間の連系に用いられる「交直変換所」も変電所の一種として分類されることがある。

変電所の主要機器

  • 負荷時タップ切替変圧器
    • 変圧器2次側の電圧を一定に保つために、タップの切換えで変圧比を調整する変圧器。
    • 送電中の負荷が接続された状態のままで、停電させずに変圧比を調整できる。
  • アモルファス合金
    • 変圧器の鉄心材料の1つ。
    • ケイ素鋼に比べて(利点)硬い、腐食に強い、鉄損が少ない(欠点)加工しにくい、高価という特徴をもつ。
  • 積層鉄心
    • 絶縁被覆をした薄いケイ素鋼などを積み重ねた鉄心。
    • 渦電流損(鉄損)を低減できる。
    • 渦電流損は、鉄板の厚さの2条に比例するため、絶縁被覆をした薄い材料を積み重ねることで低減できる。
  • 遮断器
    • 負荷電流が流れている状態でも動作できる開閉器(ブレーカー)。
    • 通常の負荷電流だけでなく、短絡や地絡時の事故電流も遮断できる。
  • 計器用変成器
    • 計器用変圧器変流器とに分けらる。
    • 高電圧あるいは大電流の回路から計器や保護リレーに必要な適切な電圧や電流を取り出すために設置される。
    • 変流器の二次端子には、計器に高電圧が加わらないよう常に低インピーダンスの負荷を接続しておく必要がある。
    • また,一次端子のある変流器は、その端子を被測定線路に直列に接続する。
  • 断路器(DS)
    • 構内の停電を伴う定期点検や修理の際、系統から構内の回路を切り離すのに使用する。
    • 消弧装置が無い(負荷電流や事故電流を遮断できない)ため、断路器を開く前に、まず遮断器で事故電流や負荷電流を切る必要がある。
    • 負荷電流が流れている状態で断路器を誤って開くと、接触子間にアークが発生し、焼損や短絡事故を生じることがあるため、一般に誤操作防止用にインタロック装置が設けられている。
  • 避雷器(LA)
    • 雷又は回路の開閉などに起因する過電圧の「波高値」がある値を超えた場合、放電により過電圧を抑制し、電気施設の絶縁を保護する装置。
    • 特性要素としては「ZnO(酸化亜鉛)素子」が広く用いられ、その「非線形」の抵抗特性により、過電圧に伴う電流のみを大地に放電させ、放電後は「続流(放電後に避雷器に流れようとする電流)」を遮断できる。
    • 発変電所用避雷器では、放電耐量が大きく、放電遅れのない「ギャップレス避雷器」が主に使用されている。
    • 配電用避雷器では,静電容量を小さくできる利点から「直列ギャップ付き避雷器」が主に採用される。
    • 電力系統は、変圧器をはじめ多くの機器が接続されているため、これらを異常時に保護するための絶縁強度の設計は、最も経済的かつ合理的に行うとともに、系統全体の信頼度を向上できるよう考慮する必要がある。これを「絶縁協調」という。
  • 電力用コンデンサ
    • 進相電力を吸収(電流の位相が進む)
    • 調整は段階的
    • 安価で保守が容易
  • 直列リアクトル
    • 電力用コンデンサと直列に接続(負荷には並列に設置)
    • 電力用コンデンサ回路投入時の突入電流を抑制し、高調波障害の拡大を防ぎ、電圧波形のひずみ改善
  • 分路リアクトル
    • 遅相電力を吸収(電流の位相が遅れる)
    • 調整は段階的(母線や変圧器の二次側・三次側に接続し、負荷変動に応じて投入したり切り離される)
    • 安価で保守が容易
  • 同相調相機
    • 進相電力と遅相電力の両方を吸収し、調整できる(電流の遅れから進みまで調整できる)
    • 調整は連続的
    • 高価で保守が難しい
  • 静止形無効電力補償装置(SVC)
    • 半導体素子を用いて無効電力を高速に制御して供給する調整装置。
    • 無効電力を連続的に制御でき、受動的SVCと自励式SVCと呼ばれるものがある。
    • 受動的SVC
      • サイリスタによりリアクトル電流を位相制御し、遅相無効電力を連続的に変化させ、並列に設置した電力用コンデンサ(進相コンデンサ)との合成電流で、進相から遅相まで連続的に無効電力を調整する。
    • 自励式SVC
      • インバータの出力電圧を調整して進相から遅相まで連続的に無効電力を調整する。
      • 自己消弧型素子を使った自励式インバータを補償電源とし、電源系統と接続するリアクタンス(変圧器)と、蓄電部である直流コンデンサで構成されている。
  • 限流リアクトル
    • 系統故障時の故障電流を抑制するために利用
    • 保護すべき機器と直列に接続される
  • 消弧リアクトル
    • 三相電力系統において送電線路にアーク地絡を生じた場合、進相電流を補償し、アークを消滅させて送電を継続する(三相変圧器の中性点と大地間に接続)
  • 補償リアクトル接地方式
    • 66kV〜154kVの地中送電線で対地静電容量によって発生する地絡故障時の充電電流による通信機器への影響を抑制するために用いられる。
    • 地中電線はケーブルであること等により対地静電容量が大きく進み電流が大きくなる。
    • 平常時は三相平衡であるため磁界は打ち消し合い通信線への影響はない。
    • 地絡事故時などには進み電流が三相不平衡となり、通信線に電磁誘導障害を発生してしまう可能性がある。それを防ぐために、中性点接地抵抗と並列に補償リアクトル(進み電流を補償する)が接続される。

遮断器の種類

  • 真空遮断器(VCB)
    • ABBより開閉時の騒音が小さい(密閉構造のため)
    • ABBより小型、軽量、電極の寿命が長い、保守が容易(現在の主流)
    • GCBより低電圧(高圧受電など)の系統に用いられる。
    • 多頻度動作ができる(ガスを用いないため)
    • 開閉サージ対策として、避雷器等を用いることがある。
  • ガス遮断器(GCB)
    • 消弧能力と絶縁性に優れたSF6(六ふっ化硫黄)ガスを大気圧より高い圧力で圧縮し、アークに吹き付けて消弧する。
    • ABBよりも開閉時の音が大きい。
    • ABBよりも小型で、専有面積も小さい
    • 機器の充電部を密閉した金属容器は接地されるため感電の危険性がほとんどない。
    • 他の遮断器よりも遮断性能に優れているため、特高等の高電圧に用いられるSF6ガスは温室効果ガスに指定されているため、GCBの保守や廃棄の際、ガスの大部分は回収される。
    • 充電部を支持するスペーサにはエポキシ等の樹脂が用いられている。
    • GCBの金属容器内部に、金属異物が混入すると絶縁性能が低下することがあるため、製造時や据え付け時には金属異物が混入しないよう注意が必要
  • 空気遮断器(ABB)
    • 圧縮空気をアークに吹き付けて消弧
    • 開閉時の騒音が大きい
    • 大型で専有面積が大きい
    • 保守が容易

変圧器の種類

  • Y-Y結線
    • 1次側、2次側とも中性点接地が可能(中性点があるため)。
    • 一次側と二次側の位相差は無い。
    • 誘導障害等の問題が多いため、Y-Yー⊿結線で用いるのが一般的。
  • ⊿-⊿結線
    • 第3高調波(ひずみ波の原因となる励磁電流)が還流し、吸収される。
    • 1台故障してもV-V結線として運転継続可能。
    • 中性点接地が必要な場合には適さない。
      • Δ結線は中性点がないため、中性点接地を行う場合、接地用変圧器が別途必要
  • V-V結線
    • 一次側と二次側の位相差は無い。
    • 出力(利用率)が小さい。
    • 中性点接地が必要な場合には適さない。
  • ⊿-Y結線
    • 2次側は中性点接地が可能(中性点があるため)。
    • 一次側と二次側の位相差がある(2次側30°($\frac{\pi}{6}$)進み)
    • 昇圧用(送電端)に用いられる(大容量発電所の主変圧器など)。
      • 2次側の線間電圧が相電圧の$\sqrt{3}$倍、線電流は相電流と同じため、変圧比を大きくすることができるため、昇圧に適する。
  • Y-⊿結線
    • 1次側は中性点接地が可能。
    • 一次側と二次側の位相差がある(2次側30°($\frac{\pi}{6}$)遅れ)。
    • 降圧用(受電端)に用いられる。
  • Y-Y-⊿
    • 第3高調波(ひずみ波の原因となる励磁電流)が還流し、吸収される。
    • 高電圧大容量変電所の主変圧器の結線としてよく用いられる。
    • Δ結線は3次回路として用いられ、調相設備の接続用や所内電源用として利用可能。
  • V結線
    • 単相変圧器2台で三相が得られる。
    • 同一の変圧器2台を使用する場合、Δ結線と比較して、出力Pは$\frac{3}{\sqrt{3}}$倍となる。
    • 同一の変圧器2台を使用して三相平衡負荷に供給している場合、変圧器の利用率は$\frac{3}{\sqrt{2}}$倍となる。
    • 電灯動力共用方式の場合、共用変圧器には電灯と動力の電流が加わって流れるため、一般に動力専用変圧器の容量と比較して共用変圧器の容量の方が大きい。
    • Δ結線と比較して、変圧器の台数が小さく、電柱への設置が簡素化できる。
  • ⊿ーY、Y-⊿結線の⊿ー⊿結線、Y-Y結線のように、一次側と二次側の結線が同じ場合、位相差が生じない。

  • 結線方法が異なる場合、30°の位相差が生じる。
  • Y結線を含む結線法は、中性点接地が可能(容易に接地可能で、地絡事故時に異常電圧の発生を防いで機器を保護する)
  • ⊿結線が含まれる結線法は、第3高調波(基本周波数の3倍の周波数をもつ高調波で、周辺機器に悪影響がある)が循環し、外部に出ないため誘導障害が生じにくい。

中性点の接地方式

一般に、三相送配電線に接続される変圧器は Δ–Y 又は Y–Δ 結線されることが多く、Y結線の中性点は接地インピーダンス$Z_n$で接地される。
この接地インピーダンス$Z_n$の大きさや種類によって種々の接地方式がある。

中性点接地の主な目的は、線地絡などの故障に起因する異常電圧(過電圧)の発生を抑制したり、地絡電流を抑制して故障の拡大や被害の軽減を図ることである。
中性点接地インピーダンスの選定には、故障点のアーク消弧作用、地絡リレーの確実な動作などを勘案する必要がある。

  • 非接地方式 ($Z_n$→∞)
    • 1線地絡時の健全相電圧上昇倍率は大きいが、地絡電流の抑制効果が大きい。
    • 日本では、一般の需要家に供給する 6.6 [kV] 配電系統においてこの方式が広く採用されている。
  • 直接接地方式 ($Z_n$→0)
    • 故障時の異常電圧(過電圧)倍率が小さいため、日本では187 [kV] 以上の超高圧系統に広く採用されている(77 [kV] 以下の下位系統では採用されていない。過去出題)。
  • 消弧リアクトル接地方式
    • 送電線の対地静電容量と並列共振するように設定されたリアクトルで接地する方式。
    • 1線地絡時の故障電流はほぼ0に抑制される。
    • 遮断器によらなくても地絡故障が自然消滅が、調整が煩雑なため、近年この方式の新たな採用は多くない。
  • 抵抗接地方式 ($Z_n$=ある適切な抵抗値R[Ω])
    • 日本では、主に154 [kV] 以下の送電系統に採用されており、中性点抵抗により地絡電流を抑制して、地絡時の通信線への誘導電圧抑制に大きな効果がある。
    • 地絡リレーの検出機能が低下するため,何らかの対応策を必要とする場合もある。

変圧器の保守

  • 油中ガス分析
    • 油入変圧器の絶縁油の油中ガスを分析し、内部異常がないか診断する。
  • 部分放電測定
    • 部分放電は絶縁破壊が生じる前ぶれである場合が多いため、異常診断技術として用いられることがある。
  • 変圧器巻線の絶縁抵抗測定、電正接測定
    • 巻線の経年劣化を調べるための測定。(鉄心材料は劣化しにくいので、鉄心材料の経年劣化を把握することが目的ではない)
  • 油面計の確認
    • ガスケットの経年劣化に伴う漏油の検出に用いられる。

中性点接地方式の種類

基本的に、電圧が大きいほど健全相の対地電圧上昇の影響が大きくなることから、電圧上昇対策を優先して最適な中性点接地を選びます。

区分 非接地 消弧リアクトル接地 抵抗接地 直接接地
電圧階級 6.6 kV 22~77 kV 22~154kV 187kV以上
健全相電位上昇
一線地絡電流 最小

参考動画

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