電験三種(法規)における電技56-61条「感電、火災等の防止」の攻略ポイントをまとめました。
【電技56条】 配線の感電又は火災の防止
(配線の感電又は火災の防止)
第56条 配線は、施設場所の状況及び電圧に応じ、感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
2 移動電線を電気機械器具と接続する場合は、接続不良による感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
3 特別高圧の移動電線は、第一項及び前項の規定にかかわらず、施設してはならない。ただし、充電部分に人が触れた場合に人体に危害を及ぼすおそれがなく、移動電線と接続することが必要不可欠な電気機械器具に接続するものは、この限りでない。
電技解釈142条6号に移動電線について記載されています。
電技解釈143条では、屋内電路の対地電圧について具体的に記載されています。
【電気使用場所の施設及び小出力発電設備に係る用語の定義】(省令第1条)
第142条 この解釈において用いる電気使用場所の施設に係る用語であって、次の各号に掲げるものの定義は、当該
各号による。
六 移動電線 電気使用場所に施設する電線のうち、造営物に固定しないものをいい、電球線及び電気機械器具内の電線を除く。【電路の対地電圧の制限】(省令第15条、第56条第1項、第59条、第63条第1項、第64条)【2021年度問8】
第143条 住宅の屋内電路(電気機械器具内の電路を除く。以下この項において同じ。)の対地電圧は、150V以下であること。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 定格消費電力が2kW以上の電気機械器具及びこれに電気を供給する屋内配線を次により施設する場合
イ 屋内配線は、当該電気機械器具のみに電気を供給するものであること。
ロ 電気機械器具の使用電圧及びこれに電気を供給する屋内配線の対地電圧は、300V以下であること。
ハ 屋内配線には、簡易接触防護措置を施すこと。
ニ 電気機械器具には、簡易接触防護措置を施すこと。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
(イ) 電気機械器具のうち簡易接触防護措置を施さない部分が、絶縁性のある材料で堅ろうに作られたものである場合
(ロ) 電気機械器具を、乾燥した木製の床その他これに類する絶縁性のものの上でのみ取り扱うように施設する場合
ホ 電気機械器具は、屋内配線と直接接続して施設すること。
ヘ 電気機械器具に電気を供給する電路には、専用の開閉器及び過電流遮断器を施設すること。ただし、過電流遮断器が開閉機能を有するものである場合は、過電流遮断器のみとすることができる。
ト 電気機械器具に電気を供給する電路には、電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること。
まとめると以下のとおりです。
「住宅の屋内電路」、「住宅以外の場所の屋内に施設する家庭用電気機械器具に電気を供給する屋内電路」、「白熱電灯」の対地電圧は、いずれも基本的には150V以下にしなければいけません。
ただし、それぞれある条件を満たすことで対地電圧が300V以下まで緩和されます。
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住宅の屋内電路の対地電圧が300V以下まで緩和される条件 | ・屋内配線は、当該電気機械器具のみに電気を供給するものであること。 ・電気機械器具の使用電圧及びこれに電気を供給する屋内配線の対地電圧は、300V以下であること。 ・屋内配線には、簡易接触防護措置を施すこと。 ・電気機械器具には、簡易接触防護措置を施すこと(絶縁性のある材料で堅ろうに作られたものor絶縁性のものの上でのみ取り・扱う場合はこの条件は除外できます)。 ・電気機械器具は、屋内配線と直接接続して施設すること。 ・電気機械器具に電気を供給する電路には、専用の開閉器及び過電流遮断器を施設すること。 ・電気機械器具に電気を供給する電路には、電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること。 |
住宅以外の屋内電路の対地電圧が300V以下まで緩和される条件 | ・電気機械器具の使用電圧及びこれに電気を供給する屋内配線の対地電圧は、300V以下であること。 ・屋内配線には、簡易接触防護措置を施すこと(部外者が立ち入らない場所なら、措置不要)。 ・電気機械器具には、簡易接触防護措置を施すこと(絶縁性のある材料で堅ろうに作られたものor絶縁性のものの上でのみ取り・扱う場合or部外者が立ち入らない場所の場合、この条件は除外できます)。 ・電気機械器具は、屋内配線と直接接続して施設すること。 |
白熱電灯に電気を供給する電路の対地電圧が300V以下まで緩和される条件 | ・白熱電灯及びこれに附属する電線には、接触防護措置を施すこと。 ・白熱電灯は、屋内配線と直接接続して施設すること。 ・白熱電灯の電球受口は、キーその他の点滅機構のないものであること。 |
例
例えば、三相3線式200V(対地電圧150V超え)のエアコンは、以下のように施工する必要があります。
(※一般的な家庭用エアコンは単相3線式100/200Vで対地電圧150V以下ですので異なります)
・簡易接触防護措置を施す。
・電気機器(エアコン)は、屋内配線と、直接接続する(コンセントはつかえない)。
・専用の開閉器および過電流遮断器(配線用遮断器)を施設する。
・漏電遮断器を施設する。
【電技57条】 配線の使用電線
【令和5年度上期問8、平成25年度問3より出題】
(配線の使用電線)
第57条 配線の使用電線(裸電線及び特別高圧で使用する接触電線を除く。)には、感電又は火災のおそれがないよう、施設場所の状況及び電圧に応じ、使用上十分な強度及び絶縁性能を有するものでなければならない。
2 配線には、裸電線を使用してはならない。ただし、施設場所の状況及び電圧に応じ、使用上十分な強度を有し、かつ、絶縁性がないことを考慮して、配線が感電又は火災のおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
3 特別高圧の配線には、接触電線を使用してはならない。
裸電線・・・絶縁被覆を施していない導線そのままを電線としたもの。 現在では配電線は原則として絶縁被覆を施すことになっている。
接触電線・・・電線に接触してしゅう動する集電装置を介して、移動起重機、オートクリーナその他の移動して使用する電気機械器具に電気の供給を行うための電線。大きな工場にある天井門型クレーンに電気を供給するトロリー線や電車のき電線を指します。
【電技58条】 低圧の電路の絶縁性能
(低圧の電路の絶縁性能)
第58条 電気使用場所における使用電圧が低圧の電路の電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は、開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、次の表の上欄に掲げる電路の使用電圧の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値以上でなければならない。
電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 |
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300V以下で対地電圧が150V以下の場合 | 0.1MΩ(100Ω) |
300V以下で上記以外のもの | 0.2MΩ(200Ω) |
300Vを超えるもの | 0.4MΩ(400Ω) |
対地電圧・・・接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧
絶影抵抗を測定する箇所は電線相互間と電線と大地との間なので、測定時には停電作業が必要となります。
電技解釈14条1項2号では、絶縁抵抗測定が困難な場合に、停電せずに漏洩電流によって絶縁性能を判定することを認め、その基準に記載されています。
【低圧電路の絶縁性能】(省令第5条第2項、第58条)
第14条 電気使用場所における使用電圧が低圧の電路(第13条各号に掲げる部分、第16条に規定するもの、第189
条に規定する遊戯用電車内の電路及びこれに電気を供給するための接触電線、直流電車線並びに鋼索鉄道の電車
線を除く。)は、第147条から第149条までの規定により施設する開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、次の各号のいずれかに適合する絶縁性能を有すること。
(略)
二 絶縁抵抗測定が困難な場合においては、当該電路の使用電圧が加わった状態における漏えい電流が、1mA以下であること。
【電技59条】 電気使用場所に施設する電気機械器具の感電、火災等の防止
(電気使用場所に施設する電気機械器具の感電、火災等の防止)
第五十九条 電気使用場所に施設する電気機械器具は、充電部の露出がなく、かつ、人体に危害を及ぼし、又は火災が発生するおそれがある発熱がないように施設しなければならない。ただし、電気機械器具を使用するために充電部の露出又は発熱体の施設が必要不可欠である場合であって、感電その他人体に危害を及ぼし、又は火災が発生するおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
2 燃料電池発電設備が一般用電気工作物である場合には、運転状態を表示する装置を施設しなければならない。
【電技60条】 特別高圧の電気集じん応用装置等の施設の禁止
(特別高圧の電気集じん応用装置等の施設の禁止)
第六十条 使用電圧が特別高圧の電気集じん装置、静電塗装装置、電気脱水装置、電気選別装置その他の電気集じん応用装置及びこれに特別高圧の電気を供給するための電気設備は、第五十六条及び前条の規定にかかわらず、屋側又は屋外には、施設してはならない。ただし、当該電気設備の充電部の危険性を考慮して、感電又は火災のおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
【電技61条】非常用予備電源の施設
(非常用予備電源の施設)
第六十一条 常用電源の停電時に使用する非常用予備電源(需要場所に施設するものに限る。)は、需要場所以外の場所に施設する電路であって、常用電源側のものと電気的に接続しないように施設しなければならない。
【例題】令和5年度下期 問9 ライティングダクト工事での屋内配線の施設に関する論説問題
次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく,ライティングダクト工事による低圧屋内配線の施設に関する記述として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) ダクトの支持点間の距離を 2 m 以下で施設した。
(2) 造営材を貫通してダクト相互を接続したため,貫通部の造営材には接触させず,ダクト相互及び電線相互は堅ろうに,かつ,電気的に完全に接続した。
(3) ダクトの開口部を上に向けたため,人が容易に触れるおそれのないようにし,ダクトの内部に塵埃(じんあい)が進入し難いように施設した。
(4) 5 m のダクトを人が容易に触れるおそれがある場所に施設したため,ダクトには D 種接地工事を施し,電路に地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置は施設しなかった。
(5) ダクトを固定せず使用するため,ダクトは電気用品安全法に適合した附属品でキャブタイヤケーブルに接続して,終端部は堅ろうに閉そくした。
【解答】
解釈第165条第3項第4号のとおり、(1)が正しい。
(2)は解釈第165条第3項第7号で「ダクトは、造営材を貫通しないこと」となっているため誤り。
(3)は解釈第165条第3項第6号で「横に向けて施設可能」となっているため誤り。
(4)は解釈第165条第3項第8・9号で「自動的に電路を遮断する装置を施設する必要がある」ため誤り。
(5)は解釈第165条第3項第3号で「ダクトは、造営材に堅ろうに取り付けること」となっているため誤り。
【例題】令和5年度上期 問9 住宅及び住宅以外の場所の屋内電路の対地電圧に関する論説問題
次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく住宅及び住宅以外の場所の屋内電路(電気機械器具内の電路を除く。以下同じ)の対地電圧の制限に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 住宅の屋内電路の対地電圧を 150 V 以下とすること。
(2) 住宅と店舗,事務所,工場等が同一建造物内にある場合であって,当該住宅以外の場所に電気を供給するための屋内配線を人が触れるおそれがない隠ぺい場所に金属管工事により施設し,その対地電圧を 400 V 以下とすること。
(3) 住宅に設置する太陽電池モジュールに接続する負荷側の屋内配線を次により施設し,その対地電圧を直流 450 V 以下とすること。
・電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設する。
・ケーブル工事により施設し,電線に接触防護措置を施す。(4) 住宅に常用電源として用いる蓄電池に接続する負荷側の屋内配線を次により施設し,その対地電圧を直流 450 V 以下とすること。
・直流電路に接続される個々の蓄電池の出力がそれぞれ 10 kW 未満である。
・電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設する。
・人が触れるおそれのない隠ぺい場所に合成樹脂管工事により施設する。(5) 住宅以外の場所の屋内に施設する家庭用電気機械器具に電気を供給する屋内電路の対地電圧を,家庭用電気機械器具並びにこれに電気を供給する屋内配線及びこれに施設する配線器具に簡易接触防護措置を施す場合(取扱者以外の者が立ち入らない場所を除く。), 300 V 以下とすること。
【解答】
(2)が誤り。電圧の基準値は「150V,300V, 450V, 600V」が多いです。(2)だけ400Vなので、そこから誤りだと判断するのが良いでしょう。
(1)は解釈第143条第1項第2号のとおりで正しい。
(2)は解釈第165条第3項第2号より「400Vではなく300V以下にする必要がある」ため誤り。
(3)は解釈第143条第1項第3号のとおりで正しい。
(4)は解釈第143条第1項第4号のとおりで正しい。
(5)は解釈第143条第1項第2号のとおりで正しい。
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