許可電気主任技術者の要件と必要な手続きについて解説します。
許可電気主任技術者とは
許可主任技術者とは、電気主任技術者の免状を持たない者が自家用電気工作物の電気主任技術者になることです。
ただし、一定の要件を満たしたうえで産業保安監督部長の許可を受ける必要があります。
必要な要件
「電気主任技術者選任許可申請 (中部近畿産業保安監督部近畿支部)」によると、許可主任技術者に選任できる者の条件は以下のように記載されています。
最大電力500kW未満について許可される場合
原則として当該事業場に勤務する電気設備の責任者で、選任される者が次のいずれかに該当する場合
- 学校教育法(昭和22年法律第26号)による高等学校又はこれと同等以上の教育施設において、電気事業法の規定に基づく主任技術者の資格等に関する省令(昭和40年通商産業省令第52号)第7条第1項各号の科目を修めて卒業した者
- 電気工事士法(昭和35年法律第139号)第3条第1項に規定する第1種電気工事士(ハに掲げる者であって、同法第4条第3項第1号に該当する者として免状の交付を受けた者を除く。)
- 電気工事士法第6条に規定する第1種電気工事士試験に合格した者
- 旧電気工事技術者検定規則(昭和34年通商産業省告示第329号)による高圧電気工事技術者の検定に合格した者
- 公益事業局長又は通商産業局長の指定を受けた高圧試験に合格した者
- 上に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有する者
最大電力100kW未満について許可される場合(需要設備又は電圧600ボルト以下の配電線路を管理する事業場に限る)
原則として当該事業場に勤務する電気設備の責任者で、選任される者が次のいずれかに該当する場合
- 電気工事士法第3条第2項に規定する第2種電気工事士
- 学校教育法による短期大学若しくは高等専門学校又はこれらと同等以上の教育施設の電気工学科以外の工学に関する学科において一般電気工学(実験を含む。)に関する科目を修めて卒業した者
- 上に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有する者
必要な手続き
「電気主任技術者選任許可申請 (中部近畿産業保安監督部近畿支部)」によると、以下の書類提出が必要と記載されています。
- 主任技術者選任許可申請書
- 免状、卒業証明書、単位取得証明書等、資格を証明する書類の写し(第一種電気工事士免状の場合は講習履歴も必要)
- 選任を必要とする者の電気工作物の工事、維持及び運用の
- 保安に関する説明書
- 選任を必要とする理由書
- 主任技術者の所属が確認できる書類
【根拠条文等①】電気事業法第43条第2項
電気事業法第43条第2項に以下の記載があります。
(主任技術者)
第四十三条事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、主務省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。
2自家用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。)を設置する者は、前項の規定にかかわらず、主務大臣の許可を受けて、主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる。
主務大臣の許可というのは、実際の手続きでは産業保安監督部長からの許可となります。
【根拠条文等①】主任技術者制度の解釈及び運用 2.
経済産業省の公表資料「主任技術者制度の解釈及び運用の2. 」にさらに具体的な運用(要件など)が記載されています。
2.法第43条第2項の許可は、次の基準により行うものとする。
(1)電気主任技術者に係る法第43条第2項の許可は、その申請が次の①及び②の要件に適合し、かつ、自家用電気工作物の工事、維持及び運用の保安上支障がないと認められる場合に限り、行うものとする。① 電気主任技術者を選任しようとする事業場等が次のいずれかに該当すること。
イ 次に掲げる設備又は事業場の設置の工事のための事業場
(イ)出力500キロワット未満の発電所又は蓄電所((ホ)に掲げるものを除く。)
(ロ)電圧10,000ボルト未満の変電所
(ハ)最大電力500キロワット未満の需要設備((ホ)に掲げるものを除く。)
(ニ)電圧10,000ボルト未満の送電線路
(ホ)非自航船用電気設備(非自航船に設置される電気工作物の総合体をいう。以下同じ。)であって出力1,000キロワット未満の発電所若しくは蓄電所又は最大電力1,000キロワット未満の需要設備
ロ 次に掲げる設備又は事業場のみを直接統括する事業場
(イ)出力500キロワット未満の発電所又は蓄電所((ホ)に掲げるものを除く。)
(ロ)電圧10,000ボルト未満の変電所
(ハ)最大電力500キロワット未満の需要設備((ホ)に掲げるものを除く。)
(ニ)電圧10,000ボルト未満の送電線路又は配電線路を管理する事業場
(ホ)非自航船用電気設備であって出力1,000キロワット未満の発電所若しくは蓄電所又は最大電力1,000キロワット未満の需要設備② 電気主任技術者として選任しようとする者が、次のいずれかに該当すること。
イ 学校教育法(昭和22年法律第26号)による高等学校又はこれと同等以上の教育4 施設において、電気事業法の規定に基づく主任技術者の資格等に関する省令(昭和40年通商産業省令第52号)第7条第1項各号の科目を修めて卒業した者
ロ 電気工事士法(昭和35年法律第139号)第3条第1項に規定する第1種電気工事士(ハに掲げる者であって、同法第4条第3項第1号に該当する者として免状の交付を受けた者を除く。)
ハ 電気工事士法第6条に規定する第1種電気工事士試験に合格した者
ニ 旧電気工事技術者検定規則(昭和34年通商産業省告示第329号)による高圧電気工事技術者の検定に合格した者
ホ 公益事業局長又は通商産業局長の指定を受けた高圧試験に合格した者
へ 最大電力100キロワット未満(非自航船用電気設備にあっては最大電力300キロワット未満)の需要設備又は電圧600ボルト以下の配電線路を管理する事業場のみを直接統括する事業場に係る場合は、イからホまでに掲げる者のほか、次のいずれかに該当する者
(イ)電気工事士法第3条第2項に規定する第2種電気工事士
(ロ)学校教育法による短期大学若しくは高等専門学校又はこれらと同等以上の教育施設の電気工学科以外の工学に関する学科において一般電気工学(実験を含む。)に関する科目を修めて卒業した者
ト イからホまでに掲げる者と同等以上の知識及び技能を有する者、又はへに規定する場合にあっては、へ(イ)若しくは(ロ)に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有する者
上記を整理したものが「電気主任技術者選任許可申請 (中部近畿産業保安監督部近畿支部)」に記載されているようです。
【補足】許可電気主任技術者の外部選任
経済産業省の公表資料「主任技術者制度の解釈及び運用の1. 」に以下の記載があり、許可電気主任技術者の外部選任も可能なようです。
1.法第43条第1項の選任については、次のとおり解釈する。
(1)法第43条第1項の選任において、規則第52条第1項の規定に従って選任される主任技術者は、原則として、事業用電気工作物を設置する者(以下1.において「設置者」という。)又はその役員若しくは従業員でなければならない。ただし、自家用電気工作物については、次のいずれかの要件を満たす者から選任する場合は、この限りでない。 なお、この取扱いは、自家用電気工作物の電気主任技術者に係る法第43条第2項の許可及び規則第52条第4項ただし書の承認についても、同様とする。
① 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第2号に規定する派遣労働者であって、選任する事業場等に常時勤務する者(規則第52条第4項ただし書の承認において、この内規6.に従って兼任を承認される場合は、いずれかの事業場等に常時勤務する者。)。ただし、同法第26条に基づく労働者派遣契約において次のイからハまでに掲げる事項が全て約されている場合に限る。
イ 設置者は、自家用電気工作物の工事、維持及び運用の保安を確保するにあたり、主任技術者として選任する者の意見を尊重すること。
ロ 自家用電気工作物の工事、維持及び運用に従事する者は、主任技術者として選任する者がその保安のためにする指示に従うこと。
ハ 主任技術者として選任する者は、自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行うこと。② 設置者から自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督に係る業務(以下「保安管理業務」という。)の委託を受けている者(以下「受託者」という。)又はその役員若しくは従業員であって、選任する事業場等に常時勤務する者(規則第52条第4項ただし書の承認において、この内規6.に従って兼任を承認される場合は、いずれかの事業場等に常時勤務する者。)。ただし、当該委託契約において、(1)①イからハまでに掲げる事項が全て約されている場合に限る
【補足】許可電気主任技術者の兼任承認申請
経済産業省の公表資料「主任技術者制度の解釈及び運用の6. 」に以下の記載があり、許可電気主任技術者の兼任承認申請は認められないようです。
6.規則第52条第4項ただし書の承認は、次の基準により行うものとする。
(1)電気主任技術者に係る規則第52条第4項ただし書の承認は、その申請が次に掲げる要件の全てに適合する場合に行うものとする。
なお、兼任させようとする事業場等の最大電力が2000kW以上(ただし、発電所については出力2000kW以上。このうち、太陽電池発電所については出力5000kW以上。)となる場合又は兼任させようとする事業場若しくは設備が6以上となる場合は、保安業務の遂行上支障となる場合が多いと考えられるので、特に慎重を期することとする。
① 略② 略
③ 兼任させようとする者が、第1種電気主任技術者免状、第2種電気主任技術者免状又は第3種電気主任技術者免状の交付を受けていること。
④ 略
⑤ 略
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