電験3種(法規分野)で出題される「みなし設置者」とは?要件は?「本来設置者」との違いは?試験対策と過去問題を解説します。
設置者とは
「設置者(せっちしゃ)」とは、電気工作物を自らの事業のために使用し、その維持・管理について直接的な責任を負う者を指します。具体的には、電気工作物の所有者(オーナー)、またはその設備一式を借り受けている占有者。となります。
みなし設置者とは
みなし設置者は、経済産業省の通達「みなし設置者に係るQ&A集」や「主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように定義されています。
Q. みなし設置者とは何でしょうか?
A. 外部選任により、本来の設置者から自家用電気工作物の保安の監督に係る業務の委託を受けている者のうち、維持・管理の主体である者であって、当該自家用電気工作物を技術基準に適合するよう維持する責任を有する者を指します。本来の設置者とは、電気事業法に関する全ての権限、義務、責任を果たす主体をいい、必ずしも所有者と一致するとは限りません。占有者がどちらに該当するかは、行使できる権限の範囲によって判断されます。
「本来設置者」と「みなし設置者」の権限、義務、責任の違い
「本来設置者」と「みなし設置者」との間で契約を結ぶ際、「本来設置者」と「みなし設置者」の業務区分を明確化しますが、「みなし設置者」に電気事業法上の責任や各種対応を丸投げできるわけではありません。経済産業省の通達「主任技術者制度に関するQ&A」で「本来設置者」と「みなし設置者」で対応可能な権限、義務、責任は以下のように記載されています。
みなし設置者の権限、義務、責任
- 法第39条第1項の維持義務(みなし設置者の責任範囲内)
- 法第42条の保安規程の届出
- 法第43条の電気主任技術者の選任
- 法第106条報告徴収
- 法第107条の立入検査
- 報告規則第3条(事故報告)(設置者又はみなし設置者)
設置者の権限、義務、責任
- 法第39条第1項の維持義務(みなし設置者の責任範囲外)
- 法第42条の保安規程の策定(みなし設置者の職務を規定)
- 法第43条のBT主任技術者ダム水路主任技術者の選任
- 法第48条工事計画届出、50条の2使用前安全管理検査
- 法第52条溶接安全管理検査
- 法第55条定期安全管理検査の実施等
- 法第106条報告徴収
- 法第107条立入検査
- 報告規則第2条(定期報告)
- 報告規則第3条(事故報告)(設置者又はみなし設置者)
- 報告規則第4条(公害防止に関する届出)
- 第5条(発電所出力変更等の報告)の報告
- 大気汚染防止法等の関係法令
みなし設置者の要件
経済産業省の通達「主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように記載されています。
Q. 「維持・管理の主体であって、当該電気工作物について法第39条第1項の義務を果たすことが明らかな場合」とは、具体的にどのような要件なのでしょうか?
A. 本来の設置者とみなし設置者の間で締結された契約において、みなし設置者が電気工作物を技術基準に適合させるために必要な措置をとる権限を与えられていることを指します。Q. みなし設置者から委託を受けている者は、みなし設置者になることができるのでしょうか(再委託は可能でしょうか)?
A. できません。維持・管理の主体であることがみなし設置者の条件であるため、みなし設置者の再委託は認められません。
また、経済産業省の通達「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)の改正に伴う外部委託承認申請手続きについて(1.(2)に係る「みなし設置者」について)」では、具体的に以下のように記載されています。
1.「みなし設置者」の判断「みなし設置者」の定義は「当該自家用電気工作物の維持・管理の主体であって、当該自家用電気工作物について法第39条第1項の義務を果たすことが明らかな場合」とされています。指定管理者等の電気保安に関する業務区分は、「設置者」が策定する保安規程や「設置者」と指定管理者等の間の契約、協定等により定められますが、その内容は以下の3つのケースが考えられます。
① 電気事業法に関する全ての権限、義務、責任を果たす場合。
②「当該自家用電気工作物の維持・管理の主体であって、当該自家用電気工作物について法第39条第1項の義務を果たすことが明らかな場合」であるが、技術基準維持のための設備の大改修等、「設置者」が判断・実施する部分があるもの。
③ 電気設備の保安の確保にほとんどかかわらず「当該自家用電気工作物の維持・管理の主体であって、当該自家用電気工作物について法第39条第1項の義務を果たすことが明らかな場合」にないもの。電気事故が予想される状況で電気設備を自らの判断において使用中止できない者などを指す。上記のそれぞれの指定管理者等は、①は「設置者」、②は「みなし設置者」となりますが、③は「設置者」又は「みなし設置者」になり得ません。
つまり、自家用電気工作物の単なる点検委託業者ではなく、自家用電気工作物の維持管理に必要な日常的な小規模改修を主体的にできる予算の執行権限や人事権(主任技術者への指揮命令権)を有していることが求められます。また、みなし設置者から委託された業者をみなし設置者にすることはできません。
みなし設置者ができる手続き
経済産業省の通達「主任技術者制度に関するQ&A」で以下のように記載されています。
Q. みなし設置者ができる手続きには何がありますか?
A. 電気主任技術者の選任及び保安規程に係る届出・申請を行うことができます。これら以外の義務や手続きについては、本来の設置者が行うことになります。Q. みなし設置者は、保安規程届出(保安規程変更届出)を行うことはできるのでしょうか?
A. 可能です。みなし設置者は技術基準適合を維持する責任を有しているため、その方策を定めた保安規程に係る届出を行うことができます。Q. みなし設置者が主任技術者選任又は解任届出書等の書類を作成する際、本来の設置者名を記載する必要はあるのでしょうか?
A. 必要です。書類の「事業場の名称及び所在地」の欄に、本来の設置者名と事業場名、所在地を記載してください。その際、みなし設置者であることが分かるように「(みなし設置者)」と併記する必要があります。Q. みなし設置者から、更に外部選任を行うことは可能でしょうか?
A. 可能です。Q. みなし設置者が変更になった場合は、どのような手続きが必要になるのでしょうか?
A. 保安の組織が変わるため、保安規程変更届出が必要になります。また、保安管理業務を外部委託している場合は改めて外部委託承認申請を、外部委託制度を用いず主任技術者を雇用・選任している場合は主任技術者選任又は解任届出等の手続きを行う必要があります。
みなし設置者に必要な手続き
経済産業省の通達「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)の改正に伴う外部委託承認申請手続きについて(1.(2)に係る「みなし設置者」について)」では、具体的に以下のように記載されています。
自家用電気工作物が新たに設置され「みなし設置者」がD法人と保安管理業務委託契約書を締結

「みなし設置者」がD法人と保安管理業務委託契約書を締結
「みなし設置者」がD法人と保安管理業務委託契約書を締結した場合の必要な手続きは以下の通りです。

みなし設置者B:外部委託申請書一式、保安規程届出(ただし、策定は設置者Aが行う)
「みなし設置者」が保安管理業務の委託先をD法人からE個人に変更
「みなし設置者」が保安管理業務の委託先をD法人からE個人に変更した場合の必要な手続きは以下の通りです。

みなし設置者B:外部委託申請書一式、保安規程変更届出(ただし、策定は設置者Aが行う)、委託契約解除報告(みなし設置者BとD法人とのもの)
設置者が「みなし設置者」を変更(B→C)
設置者が「みなし設置者」を変更した(B→C)場合の必要な手続きは以下の通りです。
場合.jpg)
みなし設置者B:委託契約解除報告(みなし設置者Bと個人Eとのもの)
「設置者」から「みなし設置者」に変更
「設置者」から「みなし設置者」に変更する場合の必要な手続きは以下の通りです。

みなし設置者B(指定管理者等B):外部委託申請書一式(旧保安管理業務委託契約は引き続き有効)、保安規程届出(ただし、策定は設置者Aが行う)
※ただし、「ばい煙発生施設等」がある場合、「ばい煙発生施設等」の設置者は、電気関係報告規則により設置者に移る手続きを行う必要があります。
保安規程に記載する内容
経済産業省の通達「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)の改正に伴う外部委託承認申請手続きについて(1.(2)に係る「みなし設置者」について)」では、保安規程に記載すべき内容が記載されています。




契約書に記載する内容
経済産業省の通達「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)の改正に伴う外部委託承認申請手続きについて(1.(2)に係る「みなし設置者」について)」では、「本来設置者」と「みなし設置者」との間で締結する契約書に記載すべき内容が記載されています。


参考リンク
【練習問題1】みなし設置者の定義と判断基準
「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」における「みなし設置者」の定義および判断に関する記述として、誤っているものは次のうちどれか。
(1)「みなし設置者」とは、当該自家用電気工作物の維持・管理の主体であって、法第39条第1項(技術基準適合維持)の義務を果たすことが明らかな場合を指す。
(2)電気事業法に関する全ての権限、義務、責任を果たす指定管理者等は、実質的に「設置者」と判断される。
(3)技術基準維持のための設備の大改修等、本来の設置者が判断・実施する部分が一部残っている場合でも、維持・管理の主体であれば「みなし設置者」となり得る。
(4)電気工作物の保安の確保にほとんど関与せず、電気事故が予想される状況で自らの判断により使用を中止できない者であっても、契約により「みなし設置者」として選任を行うことができる。
(5)「みなし設置者」が保安管理業務を外部委託する場合、保安規程の策定(作成)は本来の「設置者」が行う必要がある。
解説
正解は(4)です。電気事故が予想される状況で自らの判断において設備の使用を中止できない者は、維持・管理の主体とは認められず、「みなし設置者」になることはできません。
【練習問題2】権限、義務、責任の区分
「本来の設置者」と「みなし設置者」の電気事業法等における権限、義務、責任の区分に関する記述として、正しいものは次のうちどれか。
(1)法第42条に基づく「保安規程の策定(作成)」は、みなし設置者の責任において行わなければならない。
(2)法第43条に基づく「電気主任技術者の選任」は、みなし設置者が行うことができる。
(3)法第48条に基づく「工事計画の届出」および法第50条の2に基づく「使用前安全管理検査」は、みなし設置者が行う義務がある。
(4)電気関係報告規則第3条に基づく「事故報告」は、本来の設置者のみが行う義務があり、みなし設置者が行うことは認められない。
(5)大気汚染防止法等の関係法令(公害防止に関する届出等)への対応は、原則としてみなし設置者の権限に属する。
解説
正解は(2)です。
(1)保安規程の「策定」は設置者の義務であり、みなし設置者はその「届出」を行う立場です。
(2)正しい記述です。みなし設置者は電気主任技術者の選任が認められています。
(3)工事計画届出や使用前安全管理検査は、設置者の義務です。
(4)事故報告は、設置者またはみなし設置者のいずれかが行います。
(5)公害防止に関する届出や関係法令への対応は、設置者の責任範囲です。
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