電気事業法における電気工作物の種類とは?一般用電気工作物・自家用電気工作物・電気事業の要に供する電気工作物の違いについてまとめました。
【38条】電気工作物の種別
【参考資料】
電気事業法第38条より、冒頭に登場する電気工作物は大別して「一般用電気工作物」「事業用電気工作物」があります。
- 一般用電気工作物
- 低圧受電設備(600V以下かつ、受電のための電線路以外の電線路によって構外の電気工作物と電気的に接続されていないもの)
- ※住宅、小規模店舗の受電設備など
- 事業用電気工作物
- 一般用電気工作物以外の電気工作物。
「事業用電気工作物」はさらに「自家用電気工作物」と「電気事業の用に供する電気工作物」にわかれます。
- 電気事業の用に供する電気工作物
- ①一般送配電事業 ②送電事業 ③特定送配電事業 ④発電事業であって、その事業の用に供する発電用の電気工作物が主務省令で定める要件に該当するもの のいずれかに該当するもの。
- 具体的には、大規模な発電所、電力会社の変電所や送電線設備、電力用保安通信設備など(*1)
- 自家用電気工作物
- 「一般用電気工作物」と「電気事業の用に供する電気工作物」以外の電気工作物。
- 具体的には、中小規模の発電所、需要設備(600Vを超えるの受電設備をもつ工場やビルなど)。令和5年3月20日より新設された小規模事業用電気工作物(風力発電設備および出力10kW以上の太陽電池発電設備)も自家用電気工作物に該当する。
*1 発電設備の合計で最大電力200万kW(沖縄電力株式会社は10万kW)以下の発電事業の発電設備等は「自家用電気工作物」に該当する。
従来、電気事業法で規定されていた「小出力発電設備」は、令和5年3月20日の制度改正により「小規模発電設備」と名称が変わりました。出力20kW未満の風力発電設備および出力10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備については、新たに新設された「小規模事業用電気工作物」として扱われれます。小規模事業用電気工作物は自家用電気工作物となります(経済産業省に確認済)。制度が改正されたばかりで、「小規模事業用電気工作物」と「自家用電気工作物」は別区分のように紹介している資料やHPが多いので注意が必要です。「小規模事業用電気工作物」は「自家用電気工作物」であるため、技術基準適合維持義務の対象となり、さらに使用前自己確認および基礎情報届出が義務化されました。なお、改正以前は600V未満かつ高圧設備と電気的に接続されていない「小出力発電設備」は「一般用電気工作物」として扱われていたため、技術基準適合維持義務の対象外でした。
【参考文献】
小出力発電設備の一部が、新たな類型
【H30:問1】
第38条 この法律において「一般用電気工作物」とは、次に掲げる電気工作物をいう。ただし、小出力発電設備(経済産業省令で定める電圧以下の電気の発電用の電気工作物であつて、経済産業省令で定めるものをいう。以下この項、第百六条第七項及び第百七条第五項において同じ。)以外の発電用の電気工作物と同一の構内(これに準ずる区域内を含む。以下同じ。)に設置するもの又は爆発性若しくは引火性の物が存在するため電気工作物による事故が発生するおそれが多い場所であつて、経済産業省令で定めるものに設置するものを除く。
一 他の者から経済産業省令で定める電圧以下の電圧で受電し、その受電の場所と同一の構内においてその受電に係る電気を使用するための電気工作物(これと同一の構内に、かつ、電気的に接続して設置する小出力発電設備を含む。)であつて、その受電のための電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの
二 構内に設置する小出力発電設備(これと同一の構内に、かつ、電気的に接続して設置する電気を使用するための電気工作物を含む。)であつて、その発電に係る電気を前号の経済産業省令で定める電圧以下の電圧で他の者がその構内において受電するための電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの
三 前二号に掲げるものに準ずるものとして経済産業省令で定めるもの
2 この法律において「事業用電気工作物」とは、一般用電気工作物以外の電気工作物をいう。
3 この法律において「自家用電気工作物」とは、次に掲げる事業の用に供する電気工作物及び一般用電気工作物以外の電気工作物をいう。
一 一般送配電事業
二 送電事業
三 特定送配電事業
四 発電事業であつて、その事業の用に供する発電用の電気工作物が主務省令で定める要件に該当するもの
低圧受電でも自家用電気工作物扱いとなるもの
ただし、低圧受電設備(600V以下)のうち次の条件のいずれかを満たす場合、「自家用電気工作物(事業用電気工作物)」扱いとなります。
– | 「事業用電気工作物」扱いとなる条件 |
---|---|
1 | 構外にある電気工作物と電気的に接続される場合(受電用は除く) |
2 | 構内の発電設備が「小出力発電設備以外の発電設備」である場合(例えば、高出力60kWの太陽電池発電設備を同一構内に施設した場合、一般用電気工作物とならない) |
3 | 爆発性 or 引火性のもの(火薬類など)がある場合 ※工場やビルなどの大規模設備に多い |
※高圧受電するものは、受電電力の容量、需要場所の業種にかかわらず、すべて事業用電気工作物となります。
小出力発電設備とは、以下のものです。
種別 | 出力 |
---|---|
太陽電池発電設備 | 50kW未満 |
風力発電設備、水力発電設備 | 20kW未満 |
内燃力発電設備、燃料電池発電設備、スターリングエンジン発電設備 | 10kW未満 |
※発電電圧600V以下
※設備の合計出力が50kW以上となる場合を除く(例えば太陽電池発電設備40kW、風力発電設備が10kWが2つとも同じ構内にあった場合、合計50kW以上となるため小出力発電設備扱いとならない)
【問題】電験3種・法規 令和4年下期 電気事業の用に供する電気工作物のみが保安規程に記載すべき事項
【問題】
次の文章は,電気事業法に基づく保安規程に関する記述である。
保安規程は,電気設備規模等によって記載内容が異なり,特定発電用電気工作物の小売電気事業等用接続最大電力の合計が,(ア)万kW (沖縄電力株式会社の供給域内にあっては 10万kW )を超える大規模な事業者の場合には保安規程に記載すべき事項が多くなっている。
空欄(ア)と上記の大規模な事業者のみが保安規程に記載すべき事項の組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
選択肢 | (ア) | 保安規程に記載すべき事項 |
---|---|---|
(1) | 100 | 大規模な事業者のみが保安規程に記載すべき事項 発電所の運転を相当期間停止する場合における保全の方法に関すること。 |
(2) | 200 | 保安規程の定期的な点検及びその必要な改善に関すること。 |
(3) | 100 | 事業用電気工作物の工事,維持又は運用に関する業務を管理する者の職務及び組織に関すること。 |
(4) | 60 | 発電所の運転を相当期間停止する場合における保全の方法に関すること。 |
(5) | 200 | 事業用電気工作物の工事,維持又は運用に関する業務を管理する者の職務及び組織に関すること。 |
【解答】
(2)が正解
電気事業法第38条第4項第5号において,事業の用に供する電気工作物として主務省令で定める要件に該当するものとして「発電事業であって、その事業の用に供する発電等用電気工作物が主務省令で定める要件に該当するもの」となっており,電気事業法施行規則第48条の2第1項第1号において,「特定発電等用電気工作物の小売電気事業等用接続最大電力の合計が200万kWを超えること」となっている。
大規模な事業者のみが保安規程に記載すべき事項
電気事業法施行規則第50条第1項より、保安規程に記載すべき事項は「事業の用に供する電気工作物(第2項)」と「自家用電気工作物(第3項)」で区分されている。
第2項のみに定められているのが第14号の「保安規程の定期的な点検及びその必要な改善に関すること。」となります。
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