電験3種に出題される統括電気主任技術者と統括事業場についてまとめました。
統括電気主任技術者と統括事業場とは
統括事業場(複数の事業場を直接統括する事業場)のうち、電圧17万V未満で連携するような太陽光発電所、風力発電所、水力発電所、これらと連系する設備では、原則として統括事業場に電気主任技術者を常駐で選任する必要があります。これを「統括電気主任技術者の選任」といいます。
ただし、統括事業場や統括電気主任技術者が認められるための要件等について、以下参考資料から抜粋して整理してみました。
【参考資料】
●主任技術者制度の解釈及び運用(内規) (以下、「内規」)
●主任技術者制度に関するQ&A (以下、「Q&A」)
●電気主任技術者制度における統括行為の要件明確化に関する「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」の一部改正について
●(審議)発電所を直接統括する事業所に係る電気主任技術者の選任要件について
●電気設備の技術基準の解釈(以下、「電技解釈」)
発電所や変電所、需要設備、送電線網、配電線路を管理する事業場を直接統括する事業場のことを「統括事業場」といいます。
逆に統括される発電所や変電所、需要設備、送電線網、配電線路などの事業場のことを「被統括事業場」といいます。
内規とQ&Aより、統括事業場と被統括事業場に求められる主な要件は以下のとおりです。
– | 主な要件 |
---|---|
1 | 統括事業場のうち、電圧17万V未満で連携するような太陽光発電所、風力発電所、水力発電所、これらと連系する設備では、「原則として統括事業場に電気主任技術者を常駐で選任する |
2 | 被統括事業場は、統括事業場から2時間以内に到達できるこ場所であること |
3 | 被統括事業場のうち、発電所数は6未満(7以上の場合、経済産業省が保安管理業務の遂行上支障とならないか慎重に判断し、認められるか否か決まる) |
4 | 設置者等(自社の社員)の中から、被統括事業場の規模に応じて知識及び保安経験を有する者を、統括事業場に確保している |
5 | 被統括事業場の保安管理業務の実施計画に基づいた人員数を、統括事業場に確保している(設置者等以外の者から確保するときは、その業務内容を契約で明確化している) |
6 | 統括事業場は、被統括事業場を遠隔監視装置等により常時監視を行い、異常が生じた場合に保安組織に通報する体制を確保している。つまり、電技解釈47条、48条の遠隔常時監視方式の監視に関する部分と同等の常時監視体制を構築している必要がある(制御方式は随時巡回等でも可) |
7 | 保安組織が通報を受けた場合において、事態の緊急性により必要と認めるときは、速やかに統括事業場において統括電気主任技術者に通報できる体制を確保している。 |
8 | 異常が生じた場合において、緊急の対応が必要なときは、夜間、休日等であっても常に、統括電気主任技術者の指示の下に適切な措置を行う体制を確保している。 |
9 | 設置者は、保安管理業務の遂行体制を構築し、また、統括電気主任技術者による保安管理業務の内容の適切性及び実効性を確認するために、あらかじめ定められた間隔で、保安管理業務のレビューを行い、必要な場合には適切な改善を図ること。 |
内規とQ&Aより、統括電気主任技術者に求められる主な要件は以下のとおりです。
– | 主な要件 |
---|---|
1 | 統括電気主任技術者として選任しようとする者が次に掲げる要件の全てに該当すること。 イ 被統括事業場の種類に応じて、第1種電気主任技術者免状、第2種電気主任技術者免状又は第3種電気主任技術者免状の交付を受けていること。 ロ 保安組織において実効性のある監督及び管理ができること。 ハ 異常が生じた場合において通報を受けた場合には、現場の状況に応じた確認や保安組織へ指示を行うなど適切な措置をとることができること。 |
2 | 統括電気主任技術者の執務の状況が次に掲げる要件の全てに適合すること。 イ 原則として、統括事業場に常駐すること。 ロ 被統括事業場は、統括事業場から2時間以内に到達できるところにあること。 ハ 統括電気主任技術者があらかじめ統括電気主任技術者と同等の知識及び経験を有する代務者を指名しておくこと。 |
統括事業場と被統括事業場の設置者が異なる(別会社)場合、以下の要件を満たす必要があるようです。
– | 主な要件 |
---|---|
1 | 統括事業所が被統括事業場の親会社であること。(親会社とは、議決権総数の50%超を有している会社 等) |
2 | 資本関係に加えて保安体制等に係る覚書の締結等を結んでいる(条項については明記されていないが、保安上、少なくとも外部委託の契約書のように「イロハ要件」を盛り込む必要がありそう?)。 |
上記は、Q&Aに記載されている一例で、「保安管理上支障がない体制が構築できるとするような場合にあっては、個別にその内容を審査して妥当性を判断することになります。」と記載されているので、これを満たさないからと言って必ず統括できないわけではないようです(おそらく経済産業省が個別に安全上問題ないか判断することになる?)。
統括事業場・主任技術者の要件(内規、Q&A)
内規
3.規則第52条第1項の表第6号に掲げる事業場等について行う主任技術者の選任は、次のとおり解釈する。
(1)発電所、変電所、需要設備又は送電線路若しくは配電線路を管理する事業場(以下3.において「被統括事業場」という。)を直接統括する事業場(以下3.において「統括事業場」という。)のうち、自家用電気工作物であって電圧170,000V未満で連系等する風力発電所、太陽電池発電所、水力発電所又はこれらを系統に連系するための設備への電気主任技術者の選任は、次に掲げる要件の全てに適合する場合に行うものとする。
なお、被統括事業場について、発電所の数が7以上(発電所と同一設置者が設置する送電線路及び変電所を介して電力系統に接続し、それらの電気工作物を一体として運用する事業場等は1とみなすことができる。このうち、風力発電所について複数の発電機を一体として運用する事業場等は1とみなすことができる。)となる場合は、保安管理業務の遂行上支障となる場合が多いと考えられるので、特に慎重を期することとする。① 統括事業場において、被統括事業場の保安を一体的に確保するための組織(以下3.において「保安組織」という。)が次に掲げる要件の全てに適合すること。
イ 設置者又はその役員若しくは従業員(以下3.において「設置者等」という。)の中から、被統括事業場の規模に応じた知識及び保安経験を有する者を、統括事業場に確保していること。
ロ 被統括事業場の保安管理業務の実施計画に基づいた人員数を、統括事業場に確保していること。ただし、設置者等以外の者から確保するときは、保安管理業務の遂行上支障が生じないようその業務内容を契約において明確にしなければならない。
ハ 統括事業場は、被統括事業場を遠隔監視装置等により常時監視を行い、異常が生じた場合に保安組織に通報する体制を確保していること。なお、常時監視するにあたっては、電気設備の技術基準の解釈(20130215商局第4号)第47条の2及び第48条に定める各項目に準じたものであること。
ニ 保安組織が通報を受けた場合において、事態の緊急性により必要と認めるときは、速やかに統括事業場において保安管理業務を指揮する電気主任技術者(以下3.において「統括電気主任技術者」という。)に通報できる体制を確保していること。
ホ 異常が生じた場合において、緊急の対応が必要なときは、夜間、休日等であっても常に、統括電気主任技術者の指示の下に適切な措置を行う体制を確保していること。
へ 設置者は、保安管理業務の遂行体制を構築し、また、統括電気主任技術者による保安管理業務の内容の適切性及び実効性を確認するために、あらかじめ定められた間隔で、保安管理業務のレビューを行い、必要な場合には適切な改善を図ること。② 統括電気主任技術者として選任しようとする者が次に掲げる要件の全てに該当すること。
イ 被統括事業場の種類に応じて、第1種電気主任技術者免状、第2種電気主任技術者免状又は第3種電気主任技術者免状の交付を受けていること。
ロ 保安組織において実効性のある監督及び管理ができること。
ハ 異常が生じた場合において通報を受けた場合には、現場の状況に応じた確認や保安組織へ指示を行うなど適切な措置をとることができること。③ 統括電気主任技術者の執務の状況が次に掲げる要件の全てに適合すること。
イ 原則として、統括事業場に常駐すること。
ロ 被統括事業場は、統括事業場から2時間以内に到達できるところにあること。
ハ 統括電気主任技術者がやむを得ず勤務できない場合に備え、あらかじめ統括電気主任技術者と同等の知識及び経験を有する代務者を指名しておくこと。④ ①から③までに係る事項が保安規程に適切に反映されていること。
(2)自家用電気工作物である水力発電所の統括事業場へのダム水路主任技術者の選任は、
次に掲げる要件の全てに適合する場合に行うものとする。なお、被統括事業場のうち、発電所の数が7以上となる場合は、保安管理業務の遂行上支障となる場合が多いと考えられるので、特に慎重を期することとする。
「「電気設備の技術基準の解釈」第47条の2及び第48条に定める各項目に準じたものであること」と記載されているのも重要となります。つまり、遠隔常時監視制御方式と同等の監視体制管理が必要となります。
Q&A
Q&Aでは、統括事業場について以下のとおり記載されています。
2.3 資本関係(親子、兄弟関係)による統括行為について
該当箇所:内規3.(1)①
Q.統括行為を行いたい複数設備について、設置者が異なるがその設置者間に資本関係等がある場合、統括行為は行えますか?
A.保安管理上支障がない体制が構築できるとするような場合にあっては、個別にその内容を審査して妥当性を判断することになります。
(例)統括事業所が被統括事業場の親会社であり、資本関係に加えて保安体制等に係る覚書の締結等を結んでいる場合。等2.5 発電所及び変電所の監視方法等について
該当箇所:内規3.(1)①
Q.統括事業場は、被統括事業場を遠隔監視装置等により常時監視を行わなければなりませんが、電気設備の技術基準の解釈第47条の2及び第48条における随時巡回方式等は適用できないのでしょうか。
A.被統括事業場であっても、種類や規模等の形態に応じ、電気設備の技術基準の解釈第47条の2及び第48条に定める随時巡回方式等の適用は可能です。Q.「親会社又は子会社」と判断する基準は何でしょうか?
A.会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)第二条第三号に規定する会社法施行規則(平成十八年二月七日法務省令第十二号)第三条に基づき判断します。
⇒(親会社の例)議決権総数の50%超を有している会社 等
該当箇所:内規6.(1)②ハQ.「同一の親会社の子会社」と判断する基準は何でしょうか?
A. 前述する「親会社又は子会社」の定義に従い、親会社が同一である子会社同士(いわゆる兄弟会社)であることです。
該当箇所:内規6.(1)②、(2)①及び(3)①Q.親会社と孫会社間の兼任について認められますか?
A.親子会社間に比べ、資本関係のうすい親孫会社間においては、保安上の指揮命令系統が不明確になることが懸念され、保安確保の観点から、兼任は認めておりません。ただし、資本関係が密接と考えらえる完全親子会社間(親―孫及び孫―孫間に限る。)に限り、兼任は認められます(下図の例とおり。)。
【補足】統括ダム水路主任技術者
統括ダム水路主任技術者については、内規で以下のように記載されています。
① 統括事業場において、保安組織が次に掲げる要件の全てに適合すること。
イ 設置者等の中から、被統括事業場の規模に応じた知識及び保安経験を有する者を、統括事業場に確保していること。
ロ 被統括事業場の保安管理業務の実施計画に基づいた人員数を、統括事業場に確保していること。ただし、設置者等以外の者から確保するときは、保安管理業務の遂行上支障が生じないようその業務内容を契約において明確にしなければならない。
ハ 統括事業場は、被統括事業場を遠隔監視装置等により監視を行い、異常が生じた場合に保安組織に通報する体制を確保していること。
ニ 保安組織が通報を受けた場合において、事態の緊急性により必要と認めるときは、速やかに統括事業場において保安管理業務を指揮するダム水路主任技術者(以下3.において「統括ダム水路主任技術者」という。)に通報できる体制を確保していること。
ホ 異常が生じた場合において、緊急の対応が必要なときは、夜間、休日等であっても常に、統括ダム水路主任技術者の指示の下に適切な措置を行う体制を確保していること。
へ 設置者は、保安管理業務の遂行体制を構築し、また、統括ダム水路主任技術者による保安管理業務の内容の適切性及び実効性を確認するために、あらかじめ定められた間隔で、保安管理業務のレビューを行い、必要な場合には適切な改善を図ること。② 統括ダム水路主任技術者として選任しようとする者が次に掲げる要件の全てに該当すること。
イ 第1種ダム水路主任技術者免状又は第2種ダム水路主任技術者免状の交付を受けていること。
ロ 保安組織において実効性のある監督及び管理ができること。
ハ 異常が生じた場合において通報を受けた場合には、現場の状況に応じた確認や保安組織へ指示を行うなど適切な措置をとることができること。③ 統括ダム水路主任技術者の執務の状況が次に掲げる要件の全てに適合すること。
イ 原則として、統括事業場に常駐すること。
ロ 被統括事業場は、同一水系又は近傍水系であって、かつ、統括事業場から2時間以内に到達できるところにあること。
ハ 統括ダム水路主任技術者がやむを得ず勤務できない場合に備え、あらかじめ統括ダム水路主任技術者と同等の知識及び経験を有する代務者を指名しておくこと。④ ①から③までに係る事項が保安規程に適切に反映されていること。
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