水力発電所の特徴、水路式・ダム式・ダム水路式の違い、ダムの種類【電験3種・電力】

水力発電所の特徴、水路式・ダム式・ダム水路式の違い、ダムの種類についてまとめました。

水力発電所の水車の種類・付帯設備【電験3種・電力】

水車の種類

水車の種類

出典:資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/hydroelectric/mechanism/waterwheel/

主な水車の種類は以下のとおり。

  • 衝動水車
    • 水をノズルから噴出させ、水の位置エネルギーを運動エネルギーに変換し、流水をランナに作用させ、その反動力により水車が回転。
    • 速度水頭を利用
    • (例)ペ*ルトン水車クロスフロー水車など
  • 反動水車
    • 水の位置エネルギーを圧力エネルギーに変換し、流水をランナに作用させる構造。
    • 圧力水頭を利用して発電。
    • (例)フランシス水車プロペラ水車、斜流水車など
  • ペルトン水車(衝動水車の1つ)
    • 水をノズルから噴出させ、その勢いで水車の先端についたバケットを回転させる。
    • ノズルから噴出する水の量を調節して、出力を簡単に調整できる。
    • 高落差(200m以上)流量の比較的少ない地点に用いられ、比速度は小さい
    • 水圧管路に導かれた流水が、ノズルから噴射されてランナバケットに当たり、このときの衝動力でランナが回転する水車である。
  • フランシス水車(反動水車の1つ)
    • 水を取り込むケーシング(渦形室)の中に羽根車(ランナー)を設置し、そこを流れる水の圧力により回転させる(ランナに流入した水がランナを出るときに軸方向に向きを変える)。最も一般的な水車。
    • 中高落差用(40m~500m)に使われている。
    • 同一出力のフランシス水車を比較すると、落差が高い地点に適用する水車の方が低い地点に適用するものより比速度が小さくランナの形状が扁平になる。
  • プロペラ水車
    • ランナを通過する流水が軸方向で、ランナには扇風機のような羽根がついている。流量が多く低落差の発電所で使用される。近年の地球温暖化防止策として、農業用水・上下水道・工業用水など少水量と低落差での発電が注目されており,代表的なものにクロスフロー水車がある。
  • カプラン水車
    • プロペラ水車の羽根を可動できるようにしたもの。流量の変化に応じて羽根の角度を変えて効率がよい運転ができる。

水車の付帯設備

  • 調速機(ガバナー)
    • 水車(電動機)の回転速度(周波数)を一定に調整。
    • 調速機で周波数を一定に保つ運転を「ガバナフリー運転」といい、周波数が上昇したら水量を減らして周波数を一定に保つ(減少したら水量を増やす)。
    • 発電機が系統に並列するまでは水車の回転速度を制御し、並列後は出力を調整し、事故時には回転速度の異常な上昇を防止する。
    • 調速機は回転速度を検出し、既定値を保つようにペルトン水車はニードル弁、フランシス水車はガイドベーンの開度を調整する。
  • 自動電圧調整器
    • 水車発電機の出力電圧の大きさを一定に保持する装置。
  • ガイドベーン(案内羽根)
    • 開度でランナに流入する水の流量を変化させ、水車の出力を調整する。
  • 吸出し管
    • フランシス水車で用いられ、水車ランナと放水面までの落差を有効に利用し、水車の出力を増加する効果がある(衝動水車であるペルトン水車には吸出し管がない)。
  • 水車発電機
    • 突極形で回転界磁形の三相同期発電機が主に用いられている。落差を有効に利用するために、水車を発電機の下方に直結した立軸形にすることも多い。
  • 速度調定率(暗記不要)
    • $R=\frac{\frac{N_2-N_1}{N_n}}{\frac{P_2-P_1}{P_n}\times 100}$
    • 回転速度(変化前) $N_1[min-1]$ 、回転速度(変化後) $N_2[min-1]$、回転速度(定格) $N_n[min-1]$、出力(変化前) $P_1[kW]$、出力(変化後) $P_2[kW]$、出力(定格) $P_n[kW]$
    • 速度調定率の計算式は過去の出題では事前に提示されている(暗記不要)
  • 比速度
    • 水車の形状と運転状態(水車内の流れの状態)を相似に保って大きさを小さくし、単位落差(1m)で単位出力(1kW)を発生させるときの回転速度
    • 水車では、ランナの形状や特性を表すものとして「比速度」が指標に用いられる。
    • 水車の種類に応じた適切な比速度の範囲と、その比速度に適した有効落差が存在する。
    • 一般的に、ペルトン水車の比速度は、フランシス水車の比速度より小さい。
    • 比速度の大きな水車を大きな落差で使用し、吸出し管を用いると、放水速度が大きくなって、キャビテーションが生じやすくなる。
    • 比速度が大きいほど、発電機や水車を小型化することが可能となるが、流水とランナの相対速度が増大し、効率低下やキャビテーション発生、振動・騒音などの問題が生じる可能性がある。水車の特性を推測する指標として用いられる。
    • 水車の定格回転数 $n[min^{−1}]$、出力$P[kW]$ 、有効落差 $H[m]$ のとき、比速度 $ns[m\cdot kW]$ は以下の式で計算される。
      • $n_s = n\frac{P^{\frac{1}{2}}}{H^{\frac{5}{4}}}$
  • キャビテーション
    • 運転中の水車の流水経路中のある点で圧力が低下し、そのときの最低流速以下になると、その部分の水は蒸発して流水中に微細な気泡が発生する。その気泡が圧力の高い箇所に到達すると押し潰され消滅する現象。
    • 水車にキャビテーションが発生すると、ランナやガイドベーンの壊食、効率の低下、振動や騒音の増大など水車に有害な現象が現れる。
    • キャビテーションの防止対策としては、「吸出し管の高さを高くする」「ランナの形状を見直す」「水車の比速度を下げる」「壊食に対し、強い材料を使用する」などがある。
  • 突極機・鉄機械(水力)
    • 水車発電機の回転速度は約 $100[min^{−1}]$ ~ $1200[min^{−1}]$ とタービン発電機より低速であるため、商用周波数 $50/60[Hz]$ を発生させるために磁極を多くとれる「突極機」を用いる。
    • 大形機では据付面積が小さく、落差を有効に使用できる立軸形が用いられることが多い。
    • タービン発電機に比べ、直径が大きく軸方向の長さが短い
    • 電力系統の安定度の面及び負荷遮断時の速度変動を抑える点から、発電機の経済設計以上のはずみ車効果を要求される場合が多く、回転子直径がより大きくなり、鉄心の鉄量が多い(鉄機械となる)。
    • 体積と重量が重く高価になるが、①短絡比が大きい同期インピーダンスが小さい(電圧変動率が小さく、安定度が高)、③線路充電容量が大きい といった利点がある。
  • 円筒機・銅機械(火力)
    • 火力発電所に用いられるタービン発電機は回転速度が水車に比べ非常に高速なため、2極機や4極機が用いられ、大きな遠心力に耐えるよう、直径が小さく軸方向に長い横軸形の「円筒機」が用いられる。
    • 界磁巻線を施す場所が制約され,大きな出力を得るためには電機子巻線の導体数が多いために銅量が多い(銅機械となる)。
  • 汽力発電との比較
    • 水車発電機は、汽力発電よりも回転速度が小さく発電機の磁極数は多い
      • 極数p、系統の周波数fのとき、同期発電機の同期速度$N_s$ は、$ N_s=\frac{120f}{p} $となるので、回転速度が小さくなるほど極数が大きくなる。よって、水車発電機は汽力発電よりも回転数が小さいため、極数は大きくなる。

    揚水発電所

  • ポンプ水車式
    • 発電電動機とポンプと水車を兼用できるポンプ水車を利用したもの。
    • 国内で最も主流な方式。ポンプ水車式は
  • タンデム式
    • 発電機と電動機を共用し、同一軸に水車とポンプをそれぞれ直結した方式。

参考動画

特に圧力水車(フランシス水車など)や、衝撃水車と比べて文章だけでは仕組みがわかりにくいため、動画などを見てイメージを掴むのがおすすめです。

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