【電験3種】小売電気事業、一般送配電事業、配電事業、送電事業、特定送配電事業、発電事業の違い

電験3種における電気事業法で出題される小売電気事業、一般送配電事業、送電事業、特定送配電事業、発電事業の違いについてまとめました。

【法1〜2条】目的と定義

【参考資料】

(目的)
第一条 この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによつて、電気の使用者利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによつて、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 小売供給 一般の需要に応じ電気を供給することをいう。
二 小売電気事業 小売供給を行う事業(一般送配電事業、特定送配電事業及び発電事業に該当する部分を除く。)をいう。
三 小売電気事業者 小売電気事業を営むことについて次条の登録を受けた者をいう。
四 振替供給 他の者から受電した者が、同時に、その受電した場所以外の場所において、当該他の者に、その受電した電気の量に相当する量の電気を供給することをいう。
五 接続供給 次に掲げるものをいう。
イ 小売供給を行う事業を営む他の者から受電した者が、同時に、その受電した場所以外の場所において、当該他の者に対して、当該他の者のその小売供給を行う事業の用に供するための電気の量に相当する量の電気を供給すること。

(略)

この「電気工作物」とは、発電、送電、配電等で使用される電気の使用のために設置する電気設備のことです。 次の①②については電気工作物には該当しませんので電気事業法の適用外となります(①②に該当しない電気設備が電気工作物となります).

電気工作物でない物① 人が加工したものを工作物というため、天然の川などをそのまま用いて発電している場合は電気工作物とはなりません(人工のダムなどを建築して発電していれば電気工作物です)。
電気工作物でない物② ・電車、船舶、自動車、航空機・・・他の法律で規制されるため対象外
・電圧30V未満の電気的設備(※電圧30V以上の回路と接続されている場合を除く)・・・危険性が低いため
電気工作物でない物③ 工場の製造用機械(加工機など)や、一般家庭の家電(冷蔵庫など)は「電気の使用のために設置する」ではなく「電気を使用する」物ですので、電気工作物には該当しません。一般家庭だと受電設備からコンセントまでが電気工作物となります。

ただし, ①②には例外があります. 根拠法令と併せて詳細を以下ページで紹介します.

【電気工作物とは】該当するもの, しないものについて
電気事業法で定義されている電気工作物とは?該当するもの, しないものについて例外と注意事項をまとめました。

[H26:問1]
電気事業法施行規則1条で定義があります。

(定義)
第1条 この省令において使用する用語は、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号。以下「法」という。)、電気事業法施行令(昭和四十年政令第二百六号。以下「令」という。)及び電気設備に関する技術基準を定める省令(平成九年通商産業省令第五十二号)において使用する用語の例による。
2 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 「変電所」とは、構内以外の場所から伝送される電気を変成し、これを構内以外の場所に伝送するため、又は構内以外の場所から伝送される電圧十万ボルト以上の電気を変成するために設置する変圧器その他の電気工作物の総合体をいう。
二 「送電線路」とは、発電所相互間変電所相互間又は発電所と変電所との間の電線路(専ら通信の用に供するものを除く。以下同じ。)及びこれに附属する開閉所その他の電気工作物をいう。
三 「配電線路」とは、発電所変電所若しくは送電線路需要設備との間又は需要設備相互間電線路及びこれに附属する開閉所その他の電気工作物をいう。

事業の種別(小売電気事業、一般送配電事業、送電事業、特定送配電事業、発電事業)の違いは以下のとおり。

種別 概要 事業者の例
一般送配電事業(許可制) 発電事業者から受電した電気を小売電気事業者等へ供給(離島供給最終保証供給の義務を負う)※送配電線の整備・保守を実施 東京電力パワーグリッド株式会社、中部電力パワーグリッド株式会社、関西電力送配電株式会社など10社(2022年1月現在、エネ庁HPより)
送電事業(許可制) 一般送配電事業者に電気の振替供給(受電と同時に別の場所で同量の電力を供給すること)を行う 電源開発送変電ネットワーク株式会社、北海道北部風力送電株式会社、福島送電株式会社の3社(2022年1現在、エネ庁HPより)
配電事業(許可制) 一般送配電事業者の送配電網を活用して、新たな事業者が自ら面的な運用を行うことを可能とする制度。法では「自らが維持し、及び運用する**配電用の電気工作物**によりその供給区域において**託送供給**及び**電力量調整供給**を行う事業(一般送配電事業及び発電事業に該当する部分を除く。)であって、その事業の用に供する配電用の電気工作物が経済産業省令で定める要件に該当するもの」と記載されている。
小売電気事業(登録制) 一般の需要に応じて電気を小売(需要家への説明義務供給力確保義務を負う)。料金プランの説明や電気代徴収を行う。 東京電力エナジーパートナー株式会社、中部電力ミライズ株式会社、関西電力株式会社ほか多数(エネ庁HPより)
特定送配電事業(届出制) 特定の供給地点での需要に応じて電気を供給(鉄道会社、大規模工場の送配電部門など) 株式会社JNCパワー、東日本旅客鉄道株式会社、JFEスチール株式会社、Daigasエナジー株式会社など36社(2022年1現在、エネ庁HPより)
発電事業(届出制) 発電した電気を小売電気事業者に供給(発電所建設や燃料調達などを行う) 沖縄電力株式会社、関西電力株式会社、九州電力株式会社、東京電力パワーグリッド株式会社、電源開発株式会社など1000社以上(2022年1現在、エネ庁HPより)

※登録、許可、届出はすべて経済産業大臣に対して行うとなっています
※一般送配電事業、送電事業、特定送配電事業をまとめて送配電事業といいます
※「届出」「登録」「許可」は「役所の審査や確認の厳しさ」に違いがあります。結論からいうと、許可、登録、届出の順に手続きの過程が厳しくなります。

種別 概要
届出 必要事項を記載した書類を提出することで手続きが完了となる。
登録 必要事項を記載した書類を提出し、その内容を役所が帳簿に記録することで、手続きが完了となります。
許可 必要事項を記載した書類を提出し、その申請内容を役所が審査して認めたとき、手続きが完了となる。
【電験3種】小売電気事業、一般送配電事業、配電事業、送電事業、特定送配電事業、発電事業の違い
電験3種における電気事業法で出題される小売電気事業、一般送配電事業、送電事業、特定送配電事業、発電事業の違いについてまとめました。

※登録、許可、届出はすべて経済産業大臣に対して行う
※一般送配電事業、送電事業、特定送配電事業をまとめて送配電事業という

【小売電気事業】

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 小売供給 一般の需要に応じ電気を供給することをいう。
二 小売電気事業 小売供給を行う事業(一般送配電事業、特定送配電事業及び発電事業に該当する部分を除く。)をいう。

(供給能力の確保)
第二条の十二 小売電気事業者は、正当な理由がある場合を除き、その小売供給の相手方の電気の需要に応ずるために必要な供給能力を確保しなければならない。

小売電気事業者とは、電気事業法に定められた電気事業者の類型の一つで、小売り供給(一般の需要に応じ電気を供給)を行う事業を営むために経済産業大臣の登録を受けたものをいいます。
2016年4月1日開始の電力小売全面自由化に伴い、経済産業省において、2015年8月3日から、小売電気事業を営もうとする者の登録の申請受付が開始されました。

【一般送配電事業】

第二条第1項
八 一般送配電事業 自らが維持し、及び運用する送電用及び配電用の電気工作物によりその供給区域において託送供給及び電力量調整供給を行う事業(発電事業に該当する部分を除く。)をいい、当該送電用及び配電用の電気工作物により次に掲げる小売供給を行う事業(発電事業に該当する部分を除く。)を含むものとする。
イ その供給区域(離島(その区域内において自らが維持し、及び運用する電線路が自らが維持し、及び運用する主要な電線路と電気的に接続されていない離島として経済産業省令で定めるものに限る。ロ及び第二十一条第三項第一号において単に「離島」という。)を除く。)における一般の需要(小売電気事業者又は登録特定送配電事業者(第二十七条の十九第一項に規定する登録特定送配電事業者をいう。)から小売供給を受けているものを除く。ロにおいて同じ。)に応ずる電気の供給を保障するための電気の供給(以下「最終保障供給」という。)
ロ その供給区域内に離島がある場合において、当該離島における一般の需要に応ずる電気の供給を保障するための電気の供給(以下「離島供給」という。)

四 振替供給 他の者から受電した者が、同時に、その受電した場所以外の場所において、当該他の者に、その受電した電気の量に相当する量の電気を供給することをいう。
五 接続供給 次に掲げるものをいう。
イ 小売供給を行う事業を営む他の者から受電した者が、同時に、その受電した場所以外の場所において、当該他の者に対して、当該他の者のその小売供給を行う事業の用に供するための電気の量に相当する量の電気を供給すること。
ロ 電気事業の用に供する発電用の電気工作物以外の発電用の電気工作物(以下このロにおいて「非電気事業用電気工作物」という。)を維持し、及び運用する他の者から当該非電気事業用電気工作物(当該他の者と経済産業省令で定める密接な関係を有する者が維持し、及び運用する非電気事業用電気工作物を含む。)の発電に係る電気を受電した者が、同時に、その受電した場所以外の場所において、当該他の者に対して、当該他の者があらかじめ申し出た量の電気を供給すること(当該他の者又は当該他の者と経済産業省令で定める密接な関係を有する者の需要に応ずるものに限る。)。
六 託送供給 振替供給及び接続供給をいう。
七 電力量調整供給 次のイ又はロに掲げる者に該当する他の者から、当該イ又はロに定める電気を受電した者が、同時に、その受電した場所において、当該他の者に対して、当該他の者があらかじめ申し出た量の電気を供給することをいう。
イ 発電用の電気工作物を維持し、及び運用する者 当該発電用の電気工作物の発電に係る電気
ロ 特定卸供給(小売供給を行う事業を営む者に対する当該小売供給を行う事業の用に供するための電気の供給であつて、電気事業の効率的な運営を確保するため特に必要なものとして経済産業省令で定める要件に該当するものをいう。以下このロにおいて同じ。)を行う事業を営む者 特定卸供給に係る電気(イに掲げる者にあつては、イに定める電気を除く。

(事業の許可)
第三条 一般送配電事業を営もうとする者は、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

一般送配電事業とは、自らの送配電設備を用いて、その供給区域で託送供給及び電力量調整供給を行う事業。
その供給区域における最終保証供給及び離島の需要家への離島供給を含む。

【送電事業】

第二条1項
十 送電事業 自らが維持し、及び運用する送電用の電気工作物により一般送配電事業者に振替供給を行う事業(一般送配電事業に該当する部分を除く。)であつて、その事業の用に供する送電用の電気工作物が経済産業省令で定める要件に該当するものをいう。

(事業の許可)
第27条の4 送電事業を営もうとする者は、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

配電事業

2022年4月から、新たに配電事業という事業種別が追加されました。

第2条 11の2
配電事業 自らが維持し、及び運用する配電用の電気工作物によりその供給区域において託送供給及び電力量調整供給を行う事業(一般送配電事業及び発電事業に該当する部分を除く。)であつて、その事業の用に供する配電用の電気工作物が経済産業省令で定める要件に該当するものをいう。
11の3 配電事業者 配電事業を営むことについて第二十七条の十二の二の許可を受けた者をいう。

(事業の許可)
第27条の12の2 配電事業を営もうとする者は、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

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