変圧器を新設・交換した際の絶縁耐力試験および常規耐圧試験

変圧器を新設・交換した際の耐電圧試験(絶縁耐力試験)および常規耐圧試験の必要性について解説します。

変圧器を新設・交換した場合に必要な試験

変圧器(正確には、「一般の変圧器の電路」)を新設したり交換した場合、「電気設備の技術基準の解釈(以下、「解釈」という)の第16条第1項1~2号」の規定により、以下のようにして絶縁耐力を確認する必要があります。

  • 変圧器がJEC、JISの規格品でない場合、現地での耐電圧試験(解釈16-1表で計算した試験電圧を10分間連続で印加後、絶縁性能に問題がないことを確認)を実施して確認する必要があります。
  • 変圧器がJEC、JISの規格品である場合、現地での常規耐圧試験常規対地電圧を10分間連続で印加後、絶縁性能に問題がないことを確認)を実施して確認する必要があります。

常規対地電圧というのは、「通常の運転状態で主回路の電路と大地との間に加わる電圧」のことです。

ここで注意したいのが、現地での試験自体は省略できないという点です。

根拠となる条文等を次に整理しました。

【根拠条文1】解釈第16条

【機械器具等の電路の絶縁性能】(省令第5条第2項、第3項)
第16条 変圧器(放電灯用変圧器、エックス線管用変圧器、吸上変圧器、試験用変圧器、計器用変成器、第191条第1項に規定する電気集じん応用装置用の変圧器、同条第2項に規定する石油精製用不純物除去装置の変圧器その他の特殊の用途に供されるものを除く。以下この章において同じ。)の電路は、次の各号のいずれかに適合する絶縁性能を有すること。
一 16-1表中欄に規定する試験電圧を、同表右欄に規定する試験方法で加えたとき、これに耐える性能を有すること。

二 民間規格評価機関として日本電気技術規格委員会が承認した規格である「電路の絶縁耐力の確認方法」の「適用」の欄に規定する方法により絶縁耐力を確認したものであること。

また、「電気設備の技術基準の解釈の解説」(以下、「解釈の解説」という)の第16条」で上記解釈について以下のとおり解説されています。

第16条【機械器具等の電路の絶縁性能】
〔解 説〕 本条は、変圧器、回転機、整流器、燃料電池、太陽電池モジュールその他これらの機器以外の諸器具並びに接続線及び母線等の電路の絶縁性能を定めた規定である。
これらの変圧器、器具等の中には、接地線に接続する抵抗器、リアクトル等の常時は電圧が加わらないものもある。これら電路でないものに絶縁耐力による絶縁性能の基準を適用することは適当とはいえず、別途、第19条第2項において接地工事の方法としての規定を設けていること、試験電圧は充電部分を念頭とした最大使用電圧によって規定してきたことから、H4基準で本条の対象は「電路」に対するものである旨を明らかにした。

第1項は、一般の変圧器の電路の絶縁性能に関する規定であり、巻線ごとに絶縁性能を示し、全体としての絶縁性能を規定している。放電灯用変圧器、エックス線管用変圧器、試験用変圧器、計器用変成器等の特殊な用途に供される変圧器については、その構造及び使用条件が一般の変圧器と異なっているので、本項から除外した(以下この章では単に変圧器という場合には、これらの特殊変圧器を除くことにした。)。これらのうち、エックス線管用変圧器については第194条が、放電灯用変圧器については第185条第4項及び電気用品安全法がそれぞれ適用される。計器用変成器は、変圧器とは考えず、その絶縁耐力は第6項に規定している。

つまり、解釈で「変圧器の電路」という書き方をしているのは、「常時電圧が印加されている一般の変圧器」という意味のようです。
また、解釈第16条第1項第1号について以下のように解説されています。

第一号は、絶縁性能として、耐電圧試験電圧を加えたときこれに耐える性能を有することを規定している。「電圧を加える」方法としては、外部電源により試験電圧を発生してこれを印加することばかりでなく、自ら誘導により被試験端子間に試験電圧を発生させるいわゆる誘導電圧試験も考えられる。
(略)
なお、本号に規定されている試験方法は、絶縁性能を確認する1つの方法であり、この試験方法により絶縁耐力試験を行うことを必ずしも要求しているものではない。

解釈第16条第1項第2号について以下のように解説されています。

第二号は、JIS、JECに基づいて製作された変圧器に対する常規対地電圧による絶縁性能の確認について述べたもので、詳細については、第15条の解説を参照されたい。R4解釈より、民間規格評価機関として日本電気技術規格委員会に承認された規格リストと関連づけられ、当該機関の公開ページにて掲載されている。

そして、「解釈の解説第15条」では以下のように解説されています。

第15条【高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能】
〔解 説〕 本条は、高圧及び特別高圧の電路の絶縁性能について定めている。電路絶縁の原則から除外した部分(→第13条)、変圧器、回転機、整流器、燃料電池、太陽電池モジュール、器具等の電路(→第16条)及び直流式電気鉄道用電車線(→第205条)の電路は適用除外としており、高圧又は特別高圧の屋内配線、移動電線、電気使用機械器具、架空電線路、地中電線路、交流電車線路などが本条の対象である。

<略>

四号は、H10解釈で日本電気技術規格委員会規格 JESC E7001(1998)を引用し新たに定めた規定である。R4解釈より、民間規格評価機関として日本電気技術規格委員会に承認された規格リストと関連づけられ、当該機関の公開ページ
にて掲載されている。
電気機械器具、電線路などの絶縁性能については、電気学会電気規格調査会標準規格(JEC)、日本産業規格(JIS)において製品の絶縁耐力が定められており、これに耐えたものは、解釈で規定する絶縁性能を有し技術基準に適合するものと判断できるはずであるが、JEC、JISに定める耐電圧試験は法的強制力をもつものではないこと、輸送や現場組立の良否が絶縁性能に影響することもあるとの理由から、電気工作物の絶縁レベルを判定する要件として、15-1表に基づいた電圧による耐電圧試験に耐える性能を有することを規定してきた。
これに対し、送変電設備については、

・法的強制力はないが、JEC、JISに基づき工場において15-1表の試験電圧を上回るレベルでの耐電圧試験を実施していること。
・絶縁に関する設計手法(製品の輸送と現場作業箇所数の低減化、現地作業の容易さに配慮した設計など)の確立、施工管理技術の向上、絶縁材料の品質向上による設備性能低下要因の排除に伴い、送変電設備の事故率は減少の一途をたどっており、中でも現地施工不完全に起因する事故率は確実に減少していること。

により、絶縁性能は確実に確保されるようになってきている(詳細については、電気協同研究会第53巻第4号「送変電設備の現地耐電圧試験合理化」及び電気協同研究会第69巻第2号「電力用変圧器の分解輸送・現地作業品質管理基準」を参照されたい。)。
こうしたことから、絶縁性能を確認する1つの方法として、JEC、JISに基づき工場で耐電圧試験を実施したものについて、その性能が確実に確保されるように管理され維持できていることの現地据付状態における最終確認として、常規対地電圧を10分間印加することで、15-1表に基づく現地耐電圧試験と同等であると解釈することにしたものである。常規対地電圧の印加時間は、送変電設備に所要電圧が安定して印加され、絶縁性能に影響がないことを確認できる時間として、従来から実績のある10分間とした。また、「常規対地電圧」とは、通常の運転状態で主回路の電路と大地との間に加わる電圧をいう。
なお、上記最終確認において、自家用電気工作物にあっては、電路の絶縁破壊等により電気事業者の電力系統へ事故が波及することもあるので、電力系統に接続する前に行うことも1つの方法である。ケーブル及び接続箱の耐電圧試験値については、電気学会電気規格調査会標準規格 JEC-3401-1986「OFケーブルの高電圧試験法」及びJEC-3408-1997「特別高圧(11kV~275kV)架橋ポリエチレンケーブル及び接続部の高電圧試験法」に詳しく説明されているので、参照されたい。
架空電線路の絶縁耐力はがいしによって確保されるが、一般にがいしは連結して使用されることが多く、電路の所要耐電圧をその1つ1つが分担して絶縁を確保していることから、がいし1個の所要耐電圧は15-1表に掲げる試験電圧よりもかなり小さな値となる。しかし、JESC E 7001で参照しているJISにおける注水耐電圧試験値はこの値を十分に上回るものであることから、これに適合するがいしを使用する場合は、常規対地電圧を10分間印加することでもよいこととしている。また、JESC E 7001に示すJIS適合品以外のがいしであっても、これら使用実績のあるがいしに相当する注水耐電圧試験値によって、絶縁耐力を確認したものについてはJIS適合品と同等のものとして扱える。

つまり、変圧器がJEC、JISの規格品でない場合、現地での耐電圧試験を実施して確認する必要があります。JEC、JISの規格品である場合、少なくとも現地での常規耐圧試験を実施して確認する必要があります。

JESC E7001(2021)

電路の絶縁耐力の確認方法 JESC E7001(2021)では、変圧器の電路の絶縁耐力の確認方法について以下のように記載されています。

3.2 変圧器の電路の絶縁耐力の確認方法
変圧器の電路で,3-2-1表に定める規格の耐電圧試験による絶縁耐力を有していることを確認したものである場合において,常規対地電圧を電路と大地との間に連続して10分間加えて確認したときにこれに耐えること。

3-2-1表

種類 絶縁耐力関係の規格 耐電圧試験名称
変圧器 「変圧器」電気学会 電気規格調査会標準規格 JEC-2200 交流耐電圧試験
変圧器 「配電用6kV油入変圧器」日本産業規格 JIS C 4304 加圧耐電圧試験
変圧器 「配電用6kVモールド変圧器」日本産業規格 JIS C 4306 加圧耐電圧試験

つまり、発電所や需要設備の受変電設備にある大半の変圧器について、JEC-2200の規格品であれば、現地試験は「常規対地電圧を電路と大地との間に連続して10分間加える」ことでも良いということになります。

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