工事計画(変更)届出が必要となる需要設備の工事と必要な手続きついて解説します。
工事計画(変更)届出とは
電気事業法第47条には、事業用電気工作物の設置又は変更の工事であって、公共の安全の確保上特に重要なものには経済産業大臣に認可申請をして、その工事計画の「認可」を受ける必要があること定められています。
それ以外のものは同法第48条により経済産業大臣に工事計画の「届出」をすることが定められています。
電気事業法第48条では以下のように定められています。
(工事計画)
第48条 事業用電気工作物の設置又は変更の工事(前条第一項の主務省令で定めるものを除く。)であつて、主務省令で定めるものをしようとする者は、その工事の計画を主務大臣に届け出なければならない。その工事の計画の変更(主務省令で定める軽微なものを除く。)をしようとするときも、同様とする。2 前項の規定による届出をした者は、その届出が受理された日から三十日を経過した後でなければ、その届出に係る工事を開始してはならない。
3 主務大臣は、第一項の規定による届出のあつた工事の計画が次の各号のいずれにも適合していると認めるときは、前項に規定する期間を短縮することができる。
一 前条第三項各号に掲げる要件
二 水力を原動力とする発電用の事業用電気工作物に係るものにあつては、その事業用電気工作物が発電水力の有効な利用を確保するため技術上適切なものであること。4 主務大臣は、第一項の規定による届出のあつた工事の計画が前項各号のいずれかに適合していないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出を受理した日から三十日(次項の規定により第二項に規定する期間が延長された場合にあつては、当該延長後の期間)以内に限り、その工事の計画を変更し、又は廃止すべきことを命ずることができる。
5 主務大臣は、第一項の規定による届出のあつた工事の計画が第三項各号に適合するかどうかについて審査するため相当の期間を要し、当該審査が第二項に規定する期間内に終了しないと認める相当の理由があるときは、当該期間を相当と認める期間に延長することができる。この場合において、主務大臣は、当該届出をした者に対し、遅滞なく、当該延長後の期間及び当該延長の理由を通知しなければならない。
工事計画届出の対象となる需要設備に関する設置又は変更工事は、工事の計画を主務大臣に届け出る必要があります。
そして、届出が受理された日から30日を経過しなければ工事(電気工事)を開始できません。
工事計画(変更)届出の対象となる需要設備の工事
法48条(工事計画届出)の対象となる工事は、電気事業法施行規則65条及び別表第2で定められています。
【電気事業法施行規則】
(工事計画の事前届出)
第65条 法第四十八条第一項の主務省令で定めるものは、次のとおりとする。
一 事業用電気工作物の設置又は変更の工事であって、別表第二の上欄に掲げる工事の種類に応じてそれぞれ同表の下欄に掲げるもの(事業用電気工作物が滅失し、若しくは損壊した場合又は災害その他非常の場合において、やむを得ない一時的な工事としてするものを除く。)
二 事業用電気工作物の設置又は変更の工事であって、別表第四の上欄に掲げる工事の種類に応じてそれぞれ同表の下欄に掲げるもの(別表第二の中欄若しくは下欄に掲げるもの、及び事業用電気工作物が滅失し、若しくは損壊した場合又は災害その他非常の場合において、やむを得ない一時的な工事としてするものを除く。)2 法第四十八条第一項の主務省令で定める軽微な変更は、別表第二の下欄に掲げる変更の工事又は別表第四の下欄に掲げる工事を伴う変更以外の変更とする。
需要設備の設置又は変更の工事の場合、別表第2と工事計画届出 (中部近畿産業保安監督部近畿支部)
より以下が工事計画届出の対象となります。
設置の工事
- 受電電圧1万V以上の需要設備の設置
変更の工事
- 遮断器
- 他の者が設置する電気工作物と電気的に接続するための遮断器であって、電圧1万V以上のものの設置
- 他の者が設置する電気工作物と電気的に接続するための遮断器であって、電圧1万V以上のものの改造のうち、20%以上の遮断容量の変更を伴うもの
- 他の者が設置する電気工作物と電気的に接続するための遮断器であって、電圧1万V以上のものの取替え
- 電力貯蔵装置
- 受電電圧1万V以上の需要設備に属する電力貯蔵装置であって、容量8万kWh以上のものの設置
- 受電電圧1万V以上の需要設備に属する電力貯蔵装置であって、容量8万kWh以上のものの改造のうち、20%以上の容量の変更を伴うもの
- 上記機器以外の機器(計器用変成器を除く)
- 電圧1万V以上の機器であって、容量1万kVA以上又は出力1万kW以上のものの設置
- 電圧1万V以上の機器であって、容量1万kVA以上又は出力1万kW以上のものの改造のうち、20%以上の電圧の変更又は20%以上の容量の変更若しくは出力の変更を伴うもの
- 電圧1万V以上の機器であって、容量1万kVAア以上又は出力1万kW以上のものの取替え
- 電線路
- 電圧5万V以上の電線路の設置
- 電圧10万V以上の電線路の1km以上の延長
- 電圧10万V以上の電線路の改造であって次に掲げるもの
- 電圧の変更(昇圧に限る)を伴うもの
- 電気方式又は回線数の変更を伴うもの
- 電線の種類又は1回線当たりの条数の変更を伴うもの
- 電線の種類又は1回線当たりの条数の変更を伴うもの
- 20%以上の電線の太さの変更を伴うもの
- 支持物に係るもの
- 地中電線路の布設方式の変更を伴うもの
- 電圧10万V未満の電線路の電圧を10万V以上とする改造
- 電圧10万V以上の電線路の左右50m以上の位置変更
設置、改造、取替えの違い
- 設置
- 新設、増設、置換え
- 改造
- 構造、強度、機能等の変更
- 取替え
- 全く同じ設備(同一型式等)と取替えること
工事計画届出の分割
電気事業法施行規則第66条より、工事計画届出の分割について記載されています。
法第四十八条第一項の規定による前条第一項第一号に定める工事の計画の届出をしようとする者は、様式第四十九の工事計画(変更)届出書に次の書類を添えて提出しなければならない。ただし、その届出が変更の工事に係る場合であって、取替えの工事に係るときは第二号の書類を、廃止の工事に係るときは同号、第三号及び第四号の書類を添付することを要しない。
一 工事計画書
二 当該事業用電気工作物の属する別表第三の上欄に掲げる種類に応じて、同表の下欄に掲げる書類
三 工事工程表
四 当該事業用電気工作物が特殊電気工作物である場合は、法第四十八条の二第二項の証明書(次項第三号において単に「証明書」という。)
五 変更の工事又は工事の計画の変更に係る場合は、変更を必要とする理由を記載した書類2 法第四十八条第一項の規定による前条第一項第二号に定める工事の計画の届出をしようとする者は、様式第四十九の工事計画(変更)届出書に次の書類を添えて提出しなければならない。
一 公害の防止に関する工事計画書
二 当該事業用電気工作物の属する別表第五の上欄に掲げる種類に応じて、同表の下欄に掲げる書類
三 当該事業用電気工作物が特殊電気工作物である場合は、証明書
四 変更の工事又は工事の計画の変更に係る場合は、変更を必要とする理由を記載した書類3 届出に係る事業用電気工作物の種類に応じて、第一項第一号の工事計画書には別表第三の中欄に掲げる事項(その届出が修理の工事に係る場合は、修理の方法)を、第二項第一号の公害の防止に関する工事計画書には別表第五の中欄に掲げる事項を、記載しなければならない。この場合において、その届出が変更の工事(取替え、修理又は廃止の工事を除く。)又は工事の計画の変更に係るものであるときは、変更前と変更後とを対照しやすいように記載しなければならない。
4 別表第二の下欄又は別表第四の下欄に掲げる工事の計画を分割して法第四十八条第一項前段の規定による届出をする場合は、第一項各号又は第二項各号の書類のほか、当該届出に係る部分以外の工事の計画の概要を記載した書類を添えてその届出をしなければならない。
5 第一項及び第二項の届出書並びに第一項、第二項及び前項の添付書類の提出部数は、正本一通とする。
使用前自主検査と使用前安全管理検査
(使用前安全管理検査)
第五十一条
第四十八条第一項の規定による届出をして設置又は変更の工事をする事業用電気工作物(その工事の計画について同条第四項の規定による命令があつた場合において同条第一項の規定による届出をしていないもの及び第四十九条第一項の主務省令で定めるものを除く。)であつて、主務省令で定めるものを設置する者は、主務省令で定めるところにより、その使用の開始前に、当該事業用電気工作物について自主検査を行い、その結果を記録し、これを保存しなければならない。2 前項の自主検査(以下「使用前自主検査」という。)においては、その事業用電気工作物が次の各号のいずれにも適合していることを確認しなければならない。
一 その工事が第四十八条第一項の規定による届出をした工事の計画(同項後段の主務省令で定める軽微な変更をしたものを含む。)に従つて行われたものであること。
二 第三十九条第一項の主務省令で定める技術基準に適合するものであること。3 使用前自主検査を行う事業用電気工作物を設置する者は、使用前自主検査の実施に係る体制について、主務省令で定める時期(第七項の通知を受けている場合にあつては、当該通知に係る使用前自主検査の過去の評定の結果に応じ、主務省令で定める時期)に、事業用電気工作物(原子力を原動力とする発電用のものを除く。)であつて経済産業省令で定めるものを設置する者にあつては経済産業大臣の登録を受けた者が、その他の者にあつては主務大臣が行う審査を受けなければならない。
4 前項の審査は、事業用電気工作物の安全管理を旨として、使用前自主検査の実施に係る組織、検査の方法、工程管理その他主務省令で定める事項について行う。
5 第三項の経済産業大臣の登録を受けた者は、同項の審査を行つたときは、遅滞なく、当該審査の結果を経済産業省令で定めるところにより経済産業大臣に通知しなければならない。
6 主務大臣は、第三項の審査の結果(前項の規定により通知を受けた審査の結果を含む。)に基づき、当該事業用電気工作物を設置する者の使用前自主検査の実施に係る体制について、総合的な評定をするものとする。
7 主務大臣は、第三項の審査及び前項の評定の結果を、当該審査を受けた者に通知しなければならない。
質問 3-6
1つの大規模建築物において、エリア毎に工事計画を分割で提出した場合工事計画毎に複数回安全管理審査を実施しますか?それとも全てが完了した時点で1回で実施しますか?回答 3-6
基本的には1回で実施します。ただし、各工事で組織が変わる場合は組織毎に安全管理審査を実施する可能性があります。判断が難しい場合は、当協会から所轄の保安監督部殿に相談します。質問 3-7
1つの大規模建築物において、エリア毎に使用前自主検査を実施した場合、使用前自主検査毎に複数回安全管理審査を実施しますか?それとも全てが完了した時点で1回で実施しますか?回答 3-7
基本的には1回で実施します。
ただし、各使用前自主検査で組織が変わる場合は事前に相談願います。
状況に応じて、当協会から所轄の保安監督部殿に相談します。
工事計画届出に必要な添付書類と記載事項(需要設備)
需要設備の工事計画届出書には、電気事業法施行規則第66条および別表第3「四 需要設備」の「記載すべき事項」「添付する書類」で定められている書類を添付する日強グアあります。
需要設備の工事計画届出に必要な書類は以下のとおりです。
- 工事計画届出書(表紙) (施行規則第66条第1項第4号)
- 工事計画書 (施行規則第66条第1項第1号)
- 工事工程表 (施行規則第66条第1項第3号)
- 主要設備の配置の状況及び受電点の位置を明示した平面図及び断面図 (施行規則第66条第2項および別表第3)
- 単線結線図(※接地線は電線の種類、太さ及び接地の種類も記載) (施行規則第66条第2項および別表第3)
- 新技術の内容を十分に説明した書類(※新技術を使用する場合に添付) (施行規則第66条第2項および別表第3)
- 電磁誘導電圧計算書(※電圧10万V以上の電力系統に係る中性点接地装置の工事を含む場合に添付) (施行規則第66条第2項および別表第3)
- 三相短絡容量計算書(※受電設備の新設及び遮断器の設置等の場合、受電点について計算したものを添付) (施行規則第66条第2項および別表第3)
- 短絡強度計算書(※変圧器の設置等を行う場合に、機械的、熱的強度計算したものを添付。計算結果だけではなく、計算式等含めたもの) (施行規則第66条第2項および別表第3)
- 地中電線路の布設図(※電圧1万ボルト以上の地中電線路について、図面のみでその内容が明確に判断できるものを添付) (施行規則第66条第2項および別表第3)
- ケーブルの構造図(※電圧10万ボルト以上のものに係る場合に添付) (施行規則第66条第2項および別表第3)
- 支持物の構造図及び強度計算書(※電圧10万V以上のものに係る場合に添付) (施行規則第66条第2項および別表第3)
所轄の産業保安監督部では、必要書類や記載方法についてより詳細に公表されているため、工事計画の提出前に具体的な書き方を相談する必要があります。
例えば、近畿(関西電力送配電の供給エリア)だと「工事計画届出 (中部近畿産業保安監督部近畿支部)」という案内ページがあり、受理前の事前相談必須と記載されています。
一般的に、「主要設備の配置状況を示す平面図および断面図」や「単線結線図」は、電気設備技術基準解釈の規定に適合しているか判断できるものを要求され、再提出を求められることも少なくないようです。
記載事項は「一般記載事項」と設備別に「個別記載事項」に分かれており、その記載内容は以下のとおりです。
工事計画変更届出に必要な添付書類
工事計画変更届出に必要な添付書類は以下のとおりです。
- 工事計画変更届出書 (施行規則第66条第1項第4号)
- 工事計画書 (施行規則第66条第1項第1号)
- 工事工程表 (施行規則第66条第1項第3号)
- 変更を必要とする理由書 (施行規則第66条第1項第5号)
コメント