【電験3種】法43条 主任技術者の選任・兼任・許可選任・外部委託制度の違いと攻略ポイント

電験3種における電気事業法で出題される主任技術者の選任・保安管理業務外部委託承認制度の違いと攻略ポイントについてまとめました。

電気主任技術者の選任(法43条規)

事業用電気工作物を設置する者は、保安の監督をさせるために、主任技術者免状の交付を受けている者の中から「主任技術者」を選任する必要があります(電気事業法 第43条より)。

(主任技術者)
第43条 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、主務省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。
2 自家用電気工作物を設置する者は、前項の規定にかかわらず、主務大臣の許可を受けて、主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる。

4 主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない。
5 事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない

電気事業法施行規則では、第三種電気主任技術者の免状をもつものが保安の監督をすることができる範囲を以下のとおり定めています。

【電気事業法施行規則】

(主任技術者の選任等)
第52条 法第43条第一項の規定による主任技術者の選任は、次の表の上欄に掲げる事業場又は設備ごとに、それぞれ同表の下欄に掲げる者のうちから行うものとする。

一 水力発電所(小型のもの又は特定の施設内に設置されるものであって別に告示するものを除く。)の設置の工事のための事業場 第一種電気主任技術者免状、第二種電気主任技術者免状又は第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者及び第一種ダム水路主任技術者免状又は第二種ダム水路主任技術者免状の交付を受けている者
二 火力発電所(小型の汽力を原動力とするものであって別に告示するもの、小型のガスタービンを原動力とするものであって別に告示するもの及び内燃力を原動力とするものを除く。)又は燃料電池発電所(改質器の最高使用圧力が九十八キロパスカル以上のものに限る。)の設置の工事のための事業場 第一種電気主任技術者免状、第二種電気主任技術者免状又は第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者及び第一種ボイラー・タービン主任技術者免状又は第二種ボイラー・タービン主任技術者免状の交付を受けている者
三 燃料電池発電所(二に規定するものを除く。)、変電所、送電線路又は需要設備の設置の工事のための事業場 第一種電気主任技術者免状、第二種電気主任技術者免状又は第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者
(略) (略)
六 発電所、変電所、需要設備又は送電線路若しくは配電線路を管理する事業場を直接統括する事業場 第一種電気主任技術者免状、第二種電気主任技術者免状又は第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者、・・・(略)

(免状の種類による監督の範囲)
第56条
法第44条第5項の経済産業省令で定める事業用電気工作物の工事、維持及び運用の範囲は、次の表の上欄に掲げる主任技術者免状の種類に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。

主任技術者免状の種類 保安の監督をすることができる範囲
(省略) (省略)
三 第三種電気主任技術者免状 電圧5万V未満の事業用電気工作物(出力5000kW以上の発電所を除く。)の工事、維持及び運用(四又は六に掲げるものを除く。)
(省略) (省略)

原則として、事業用電気工作物を設置する者は、主任技術者の免状をもつ者の中から、主任技術者を選任し、遅滞なく届出(主任技術者の選解任届出)する必要があります。
また、原則として2つ以上の設備や事業場を兼任(同時に選任)させることはできません(例外あり)。

経済産業省では、「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)(以下、「内規」)」という主任技術者制度の解釈及び運用についての文書を公開しています。ただし、冒頭で「なお、当該規定の解釈はこの内規に限定されるものではなく、法及び規則に照らして十分な保安水準の確保ができる根拠があれば、当該規定に適合するものと判断する。」と記載されているため、技術基準の解釈のように、必ずしもこの記載どおりに従わないといけないというわけではありません。

種別 概要
主任技術者の選任(自社選任) 事業用電気工作物の電気主任技術者を、自社(設置者の会社)の免状をもつ社員から選任することです。主任技術者を新たに選任したり、別の者に交代する場合、選解任届出や保安規程変更届出が必要になります。また、選解任届出の際は、免状の写し、社員であることを示す書類なども必要です。
主任技術者の選任(外部選任) 事業用電気工作物の電気主任技術者を、他社(設置者と異なる会社)の免状をもつ社員から選任することです。外部選任を行うためには、「内規)1.(1)イロハ」の三つの文言を含めた内容の契約書等を、設置者と外部の会社との間で直接結ぶ必要があります。また、外部選任の場合、主任技術者は事業場に必ず常駐する必要があります。そのため、外部選任で1人だけ電気主任技術者を雇って電気工作物の監督・保安をさせる」という形にはできず、外部選任した者が休暇や病気等で不在になったときの代務者も用意し、契約に盛り込む必要があります。
外部委託(主任技術者の不選任) 一定の条件を満たす自家用電気工作物の場合、電気主任技術者を選任せずに、代わりに免状をもつ「電気保安協会の社員」や「電気管理技術者(個人業)」に保安業務を委託することができる制度です。人件費のコストを安く抑えることができるため、大半の自家用電気工作物は、この制度を利用しています。選任しないため、保安上の観点から「電圧7,000V以下で電する自家用電気工作物」「受託事業所から2時間以内の距離に、主たる連絡場所があること」といった制限があります。
兼任電気主任技術者の兼任 原則として、免状をもつ1人の主任技術者が2つ以上の事業場又は設備の主任技術者を兼任することができません。ただし、事業用電気工作物の工事、維持、運用の保安上支障がないと認められる場合で、経済産業大臣(事業用電気工作物が1つの産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は、その所在地を管轄する産業保安監督部長)の承認が得られれば、兼任が可能です。兼任する者を「兼任電気主任技術者」といいます。
統括電気主任技術者の選任 統括事業場(複数の事業場を直接統括する事業場)のうち、電圧17万V未満で連携するような太陽光発電所、風力発電所、水力発電所、これらと連系する設備では、原則として統括事業場に電気主任技術者を常駐で選任する必要があります。これを「統括電気主任技術者の選任」といいます。
許可主任技術者の選任 自家用電気工作物の設置をする場合、一定の条件を満たし、かつ主務大臣の許可が得られれば免状の交付を受けていない者を主任技術者に選任できます。これを許可主任技術者といいます。

電気主任技術者の外部選任

外部選任を行う場合、設置者と委託先の間で「委託契約」を結ぶのが一般的です。内規では、設置者の会社と、外部選任しようとする者の会社との間での「委託契約」に以下イ、ロ、ハの内容(通称、イロハ要件)を盛り込む必要があると解釈しています。

1.法第43条第1項の選任については、次のとおり解釈する。
(1)① 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第2号に規定する派遣労働者であって、選任する事業場等に常時勤務する者(規則第52条第4項ただし書の承認において、この内規6.に従って兼任を承認される場合は、いずれかの事業場等に常時勤務する者。)。ただし、同法第26条に基づく労働者派遣契約において次のイからハまでに掲げる事項が全て約されている場合に限る。
設置者は、自家用電気工作物の工事、維持及び運用の保安を確保するにあたり、主任技術者として選任する者の意見を尊重すること
自家用電気工作物の工事、維持及び運用に従事する者は、主任技術者として選任する者がその保安のためにする指示に従うこと
主任技術者として選任する者は、自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行うこと

外部委託(保安管理業務外部委託承認制度)と間違いやすい「外部選任」というものがあります。
外部選任とは、電気主任技術者を自社ではなく外部の会社(管理会社等)から選任することです。
外部選任できる条件として「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」で以下のように定められています。

【条件】
● 内規1.(1)イロハの三つの文言を含めた内容の契約書等を設置者と外部の会社との間で直接結ぶ
● 外部専任される主任技術者は事業場に必ず常駐する必要がある

1.法第43条第1項の選任については、次のとおり解釈する。
(1)法第43条第1項の選任において、規則第52条第1項の規定に従って選任される主任技術者は、原則として、事業用電気工作物を設置する者(以下1.において「設置者」という。)又はその役員若しくは従業員でなければならない。ただし、自家用電気工作物については、次のいずれかの要件を満たす者から選任する場合は、この限りでない。なお、この取扱いは、自家用電気工作物の電気主任技術者に係る法第43条第2項の許可及び規則第52条第4項ただし書の承認についても、同様とする。
① 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第2号に規定する派遣労働者であって、選任する事業場等に常時勤務する者(規則第52条第4項ただし書の承認において、この内規6.に従って兼任を承認される場合は、いずれかの事業場等に常時勤務する者。)。ただし、同法第26条に基づく労働者派遣契約において次のイからハまでに掲げる事項が全て約されている場合に限る。
イ 設置者は、自家用電気工作物の工事、維持及び運用の保安を確保するにあたり、主任技術者として選任する者の意見を尊重すること。
ロ 自家用電気工作物の工事、維持及び運用に従事する者は、主任技術者として選任する者がその保安のためにする指示に従うこと。
ハ 主任技術者として選任する者は、自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行うこと。

② 設置者から自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督に係る業務(以下「保安管理業務」という。)の委託を受けている者(以下「受託者」という。)又はその役員若しくは従業員であって、選任する事業場等に常時勤務する者(規則第52条第4項ただし書の承認において、この内規6.に従って兼任を承認される場合は、いずれかの事業場等に常時勤務する者。)。ただし、当該委託契約において、(1)①イからハまでに掲げる事項が全て約されている場合に限る。

(参考)「外部選任と外部委託制度の違いについて」(関東産業保安監督部)

外部委託(電気主任技術者の不選任)(施行令52条)

保安管理業務外部委託承認制度により、一定の要件を満たし、所轄産業保安監督部長の承認を受けた場合は主任技術者の選任をしないことができます。
要は、事業用電気工作物の設置者自身が電気主任技術者に選任するための社員を雇用せずに、保安協会などに外部委託できる制度です。費用が安くすむため、多くがこの制度を利用しています。

【電気事業法施行規則】

第52条
2 次の各号のいずれかに掲げる自家用電気工作物に係る当該各号に定める事業場のうち、当該自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督に係る業務(以下「保安管理業務」という。)を委託する契約(以下「委託契約」という。)が次条に規定する要件に該当する者と締結されているものであって、保安上支障がないものとして経済産業大臣(事業場が一の産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は、その所在地を管轄する産業保安監督部長。次項並びに第53条第一項、第2項及び第五項において同じ。)の承認を受けたもの並びに発電所、変電所及び送電線路以外の自家用電気工作物であって鉱山保安法が適用されるもののみに係る前項の表第三号又は第六号の事業場については、同項の規定にかかわらず、電気主任技術者を選任しないことができる。

一 出力5000kW未満の太陽電池発電所であって電圧7000V以下で連系等をするもの 前項の表第六号の事業場 ★2021年度から変わったので要注意
二 出力2000kW未満の発電所水力発電所、火力発電所、及び風力発電所に限る。)であって電圧7000V以下で連系等をするもの
三 出力1000kW未満の発電所前号に掲げるものを除く。)であって電圧7000V以下で連系等をするもの
四 電圧7000V以下で受電する需要設備
五 電圧600V以下の配電線路 当該配電線路を管理する事業場 ★配電線路だけは低圧帯(600V以下)なので要注意

委託できる事業場の要件は、電気事業法施行規則 第52条2項の一〜五のとおりです。
大半の工場やビルは、高圧受電なのでこの制度を使って、電気主任技術者を選任せずに外部委託できます。
ただし、特高受電している場合は「四 電圧7000V以下で受電する需要設備」を満たさないため、電気主任技術者を選任(自社選任もしくは外部選任)する必要があります。

兼任電気主任技術者

1人の免状をもつ主任技術者に2つ以上の事業場又は設備の主任技術者を兼任させることができません。
ただし、事業用電気工作物の工事、維持、運用の保安上支障がないと認められる場合で、経済産業大臣(事業用電気工作物が1つの産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は、その所在地を管轄する産業保安監督部長)の承認が得られれば、兼任が可能です。兼任する者を「兼任電気主任技術者」といいます。

既に選任されている事業場に加え、別の事業場の主任技術者の職務を行いたい場合、「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」より次の条件に適合する場合に限り、兼任が可能です。

これらの条件を満たし、主任技術者兼任承認申請書を産業保安監督部へ提出し承認が得られることで兼任が可能となります。

【内規 6.抜粋】

6.規則第52条第4項ただし書の承認は、次の基準により行うものとする。
(1)電気主任技術者に係る規則第52条第4項ただし書の承認は、その申請が次に掲げる要件の全てに適合する場合に行うものとする。
なお、兼任させようとする事業場等の最大電力が2,000キロワット以上(ただし、発電所については出力2,000キロワット以上。このうち、太陽電池発電所については出力5,000キロワット以上。)となる場合又は兼任させようとする事業場若しくは設備が6以上となる場合は、保安業務の遂行上支障となる場合が多いと考えられるので、特に慎重を期することとする。
① 兼任させようとする事業場等が電圧7,000ボルト以下で連系等をするものであること。
② 兼任させようとする者が兼任する事業場(この②において「申請事業場」という。)が次のいずれかに該当すること。
イ 兼任させようとする者が常時勤務する事業場の事業用電気工作物を設置する者の事業場
ロ 兼任させようとする者が常時勤務する事業場の事業用電気工作物を設置する者の親会社又は子会社である者の事業場
ハ 兼任させようとする者が常時勤務する事業場の事業用電気工作物を設置する者と同一の親会社の子会社である者の事業場
ニ 兼任させようとする者が常時勤務する事業場又は既に兼任している事業場(このニにおいて「原事業場」という。)と同一敷地内にある事業場であって、当該申請事業場の事業用電気工作物の設置者及び当該原事業場の事業用電気工作物の設置者(このニにおいて「両設置者」という。)が次に掲げる要件の全てを満たすもの
(イ) 両設置者間において締結されている1.(1)①又は②の契約等において、規則第53条第2項第5号に規定された事項(点検頻度に関するものを除く。)に準じた事項が定められていること。
(ロ) (イ)に定める事項を、当該申請事業場及び当該原事業場に勤務する従業員その他の関係者に対し周知していること。
(ハ) 保安規程において、(イ)に定める協定を遵守する旨を定めていること。
③ 兼任させようとする者が、第1種電気主任技術者免状、第2種電気主任技術者免状又は第3種電気主任技術者免状の交付を受けていること。
④ 兼任させようとする者の執務の状況が次に適合すること。
イ 兼任させようとする事業場等は、兼任させようとする者が常時勤務する事業場又はその者の住所から2時間以内に到達できるところにあること。
ロ 点検は、規則第53条第2項第5号の頻度に準じて行うこと。
⑤ 電気主任技術者が常時勤務しない事業場の場合は、電気工作物の工事、維持及び運用
のために必要な事項を電気主任技術者に連絡する責任者が選任されていること。

また、上記内規の要件については、「(参考)電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のような補足説明がされています。

4.1 設置者の関係性について
該当箇所:内規6.(1)②ロ、(2)①ロ及び(3)①ロ
Q.「親会社又は子会社」と判断する基準は何でしょうか?
A.会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)第二条第三号に規定する会社法施行規則(平成十八年二月七日法務省令第十二号)第三条に基づき判断します。
⇒(親会社の例)議決権総数の50%超を有している会社 等

該当箇所:内規6.(1)②ハ
Q.「同一の親会社の子会社」と判断する基準は何でしょうか?
A. 前述する「親会社又は子会社」の定義に従い、親会社が同一である子会社同士(いわゆる兄弟会社)であることです。

該当箇所:内規6.(1)②、(2)①及び(3)①
Q.親会社と孫会社間の兼任について認められますか?
A.親子会社間に比べ、資本関係のうすい親孫会社間においては、保安上の指揮命令系統が不明確になることが懸念され、保安確保の観点から、兼任は認めておりません。ただし、資本関係が密接と考えらえる完全親子会社間(親―孫及び孫―孫間に限る。)に限り、兼任は認められます(下図の例とおり。)。

4.2 「敷地」の考え方について
該当箇所:内規6.(1)②ニ
Q.「敷地」とはどの範囲を指すのでしょうか?また、「同一敷地内にある」とはどのような状態を示しているのでしょうか?
A.一般には、電気工作物や電気工作物を保有する建築物を建設するために使用する土地のことを指します。ここでいう「同一敷地内にある」とは、敷地内にある一方の電気工作物で発生した事故(代表例としては、屋根に設置した太陽電池発電設備の火災事故や破損事故)がもう 一方の設備の保安に密接に影響するといえる場合を示します。したがって、同一敷地内であっても互いの設備が影響を受けない程度に離れている場合は、両方の設備に対して同等レベルの確保が困難となるため、本規定は適用されません。

4.3 みなし設置者による兼任について
該当箇所:内規1.(2)なお書き
Q.本来設置者が異なる事業場において、みなし設置者が同一(又は親子・兄弟関係)の場合、兼任は可能でしょうか?
A.本来設置者が異なる場合、従事時間や優先順位などの面においてそれぞれの設置者間で齟齬が生じ、電気主任技術者の保安の確保のための行動が制限されるおそれが生じるなど保安に係る責任の所在が不明確になりやすいため、みなし設置者が同一であったとしても兼任はできません。

4.4 その他
該当箇所:内規6.(1)なお書き
Q.兼任させようとする事業場若しくは設備が6以上となる場合であって、兼任が承認された事例を教えて下さい。
A.過去に認めた事例を紹介します。なお、下記事例はあくまで判断の目安であり、案件毎に保安組織の体制、管理方法、設備等総合的かつ事業者毎の個別事情を勘案する必要がありますので、事前に事業場を管轄する地域の産業保安監督部宛てご相談下さい。
①ポンプ場で兼任させる数が6となった例
・全ての事業場が、農事用の負荷であり、半年稼働(残りの期間は休止)している。
・うち、1つの事業場が予備発電設備(30kVA)を有する低圧自家用である。
・中央管理所において、兼任している事業場を遠隔で常時監視し、異常の際には直ちに対応する態勢にある。
・周辺に人(常勤者含む)がおらず、事故が発生した際の影響が低い。
②1の敷地内で兼任させる数が6となった例
・全ての事業所が、同一敷地内(同一地番かつ同一の出入管理区域)に設置されている。
・全ての事業所の保安組織は一元化されている。
・全ての事業所において、1箇所あたりの最大電力が2,000キロワット未満である。

Q.「兼任させようとする事業場若しくは設備」とありますが、下記の図のように内規3.に定める統括行為を用いて複数の発電所を直接統括する事業場を1事業場として複数兼任することはできますか?
A.発電所等を直接統括する事業場を含んだ兼任は認められません。兼任と統括行為はそれぞれ独立したものであり、併用できません。

該当箇所:内規6.(1)②ニ
Q.太陽電池発電設備等と需要設備の間の設置形態に何らかの制限はありますか?
A.いわゆる屋根貸し、土地貸し等、設置形態は問いません。しかし、一方で発生した事故がもう一
方の設備の保安に密接に影響する形態であることが必要です。

Q.箇所数、設備容量の上限は見直されますか?
A.本特例を適用する場合でも、他の兼任要件は引き続き適用されます。

監督部HPをみると、主任技術者兼任承認申請の手続きに必要となる主な書類は以下のとおりです。

【申請に必要な書類(様式)】
・主任技術者兼任承認申請書
・主任技術者免状の写し
・社員であることを確認できる書類
・執務に関する説明書
・兼任を必要とする理由書

統括電気主任技術者

3.規則第52条第1項の表第6号に掲げる事業場等について行う主任技術者の選任は、次のとおり解釈する。

(1)発電所、変電所、需要設備又は送電線路若しくは配電線路を管理する事業場(以下3.において「被統括事業場」という。)を直接統括する事業場(以下3.において「統括事業場」という。)のうち、自家用電気工作物であって電圧170,000V未満で連系等する風力発電所、太陽電池発電所、水力発電所又はこれらを系統に連系するための設備への電気主任技術者の選任は、次に掲げる要件の全てに適合する場合に行うものとする。
なお、被統括事業場について、発電所の数が7以上(発電所と同一設置者が設置する送電線路及び変電所を介して電力系統に接続し、それらの電気工作物を一体として運用する事業場等は1とみなすことができる。このうち、風力発電所について複数の発電機を一体として運用する事業場等は1とみなすことができる。)となる場合は、保安管理業務の遂行上支障となる場合が多いと考えられるので、特に慎重を期することとする。

統括事業場において、被統括事業場の保安を一体的に確保するための組織(以下3.において「保安組織」という。)が次に掲げる要件の全てに適合すること。
設置者又はその役員若しくは従業員(以下3.において「設置者等」という。)の中から、被統括事業場の規模に応じた知識及び保安経験を有する者を、統括事業場に確保していること。
ロ 被統括事業場の保安管理業務の実施計画に基づいた人員数を、統括事業場に確保していること。ただし、設置者等以外の者から確保するときは、保安管理業務の遂行上支障が生じないようその業務内容を契約において明確にしなければならない
ハ 統括事業場は、被統括事業場を遠隔監視装置等により常時監視を行い、異常が生じた場合に保安組織に通報する体制を確保していること。なお、常時監視するにあたっては、電気設備の技術基準の解釈(20130215商局第4号)第47条の2及び第48条に定める各項目に準じたものであること。
ニ 保安組織が通報を受けた場合において、事態の緊急性により必要と認めるときは、速やかに統括事業場において保安管理業務を指揮する電気主任技術者(以下3.において「統括電気主任技術者」という。)に通報できる体制を確保していること。
ホ 異常が生じた場合において、緊急の対応が必要なときは、夜間、休日等であっても常に、統括電気主任技術者の指示の下に適切な措置を行う体制を確保していること。
へ 設置者は、保安管理業務の遂行体制を構築し、また、統括電気主任技術者による保安管理業務の内容の適切性及び実効性を確認するために、あらかじめ定められた間隔で、保安管理業務のレビューを行い、必要な場合には適切な改善を図ること。

② 統括電気主任技術者として選任しようとする者が次に掲げる要件の全てに該当すること。
被統括事業場の種類に応じて、第1種電気主任技術者免状、第2種電気主任技術者免状又は第3種電気主任技術者免状の交付を受けていること。
ロ 保安組織において実効性のある監督及び管理ができること。
ハ 異常が生じた場合において通報を受けた場合には、現場の状況に応じた確認や保安組織へ指示を行うなど適切な措置をとることができること。

③ 統括電気主任技術者の執務の状況が次に掲げる要件の全てに適合すること。
原則として、統括事業場に常駐すること。
被統括事業場は、統括事業場から2時間以内に到達できるところにあること。
ハ 統括電気主任技術者がやむを得ず勤務できない場合に備え、あらかじめ統括電気主任技術者と同等の知識及び経験を有する代務者を指名しておくこと。

④ ①から③までに係る事項が保安規程に適切に反映されていること。

(2)自家用電気工作物である水力発電所の統括事業場へのダム水路主任技術者の選任は、
次に掲げる要件の全てに適合する場合に行うものとする。なお、被統括事業場のうち、発電所の数が7以上となる場合は、保安管理業務の遂行上支障となる場合が多いと考えられるので、特に慎重を期することとする。

「「電気設備の技術基準の解釈」第47条の2及び第48条に定める各項目に準じたものであること」と記載されているのも重要となります。つまり、遠隔常時監視制御方式と同等の監視体制管理が必要となります。

ダムについては以下のように記載されています。

① 統括事業場において、保安組織が次に掲げる要件の全てに適合すること。
イ 設置者等の中から、被統括事業場の規模に応じた知識及び保安経験を有する者を、統括事業場に確保していること。
ロ 被統括事業場の保安管理業務の実施計画に基づいた人員数を、統括事業場に確保していること。ただし、設置者等以外の者から確保するときは、保安管理業務の遂行上支障が生じないようその業務内容を契約において明確にしなければならない。
ハ 統括事業場は、被統括事業場を遠隔監視装置等により監視を行い、異常が生じた場合に保安組織に通報する体制を確保していること。
ニ 保安組織が通報を受けた場合において、事態の緊急性により必要と認めるときは、速やかに統括事業場において保安管理業務を指揮するダム水路主任技術者(以下3.において「統括ダム水路主任技術者」という。)に通報できる体制を確保していること。
ホ 異常が生じた場合において、緊急の対応が必要なときは、夜間、休日等であっても常に、統括ダム水路主任技術者の指示の下に適切な措置を行う体制を確保していること。
へ 設置者は、保安管理業務の遂行体制を構築し、また、統括ダム水路主任技術者による保安管理業務の内容の適切性及び実効性を確認するために、あらかじめ定められた間隔で、保安管理業務のレビューを行い、必要な場合には適切な改善を図ること。

② 統括ダム水路主任技術者として選任しようとする者が次に掲げる要件の全てに該当すること。
イ 第1種ダム水路主任技術者免状又は第2種ダム水路主任技術者免状の交付を受けていること。
ロ 保安組織において実効性のある監督及び管理ができること。
ハ 異常が生じた場合において通報を受けた場合には、現場の状況に応じた確認や保安組織へ指示を行うなど適切な措置をとることができること。

③ 統括ダム水路主任技術者の執務の状況が次に掲げる要件の全てに適合すること。
イ 原則として、統括事業場に常駐すること。
ロ 被統括事業場は、同一水系又は近傍水系であって、かつ、統括事業場から2時間以内に到達できるところにあること。
ハ 統括ダム水路主任技術者がやむを得ず勤務できない場合に備え、あらかじめ統括ダム水路主任技術者と同等の知識及び経験を有する代務者を指名しておくこと。

④ ①から③までに係る事項が保安規程に適切に反映されていること。

許可電気主任技術者の選任(法43条2項)

【電気事業法43条】

(主任技術者)
第四十三条 
2 自家用電気工作物を設置する者は、前項の規定にかかわらず、主務大臣の許可を受けて、主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる。
3 事業用電気工作物を設置する者は、主任技術者を選任したとき(前項の許可を受けて選任した場合を除く。)は、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。

経済産業省が無償公開している「電気事業法の解説(2020年度版)」のp.465では以下のように具体的に解説されています。

二 主任技術者免状のない者の選任許可【第2項】
 第2項は、自家用電気工作物設置者は、主務大臣の許可を受けて、主任技術者免状の交付を受けていない者から主任技術者を選任し得る旨の特例を定めている。自家用電気工作物の場合は、その種類が極めて多種であり、それだけに、主任技術者免状の交付は受けていないが、その設備については極めて経験豊富で精通している者がいる場合など一律に免状の交付を受けている者から選任すべきことを義務づけるのが適当でない場合が考えられるので本項が設けられた。ただし、本項の許可により選任された主任技術者は、その許可を受けた自家用電気工作物を設置する者の当該自家用電気工作物についてのみの保安の監督をするにとどまる。
 本項の適用を受ける場合としては、電気工事士法の規定に基づく第一種又は第二種電気工事士の免状を有する者を選任する場合等がある。

(主任技術者の選任等)
第五十二条 法第四十三条第一項の規定による主任技術者の選任は、次の表の上欄に掲げる事業場又は設備ごとに、それぞれ同表の下欄に掲げる者のうちから行うものとする。

自家用電気工作物の設置をする場合、一定の条件を満たし、かつ主務大臣の許可が得られれば免状の交付を受けていない者を主任技術者に選任できます。これを許可主任技術者といいます。
免状をもたない者を選任できる場合の条件は以下のとおりです。

【設備・事業場の規模】
以下の設備又は事業場のみを直接統括する事業場
(1)出力500kW未満の発電所
(2)電圧10,000V未満の変電所
(3)最大電力500kW未満の需要設備

【電気主任技術者として選任しようとする者】
(1)第一種電気工事士
(2)一定条件を満たした電気関係の高校や教育施設を卒業した者

例題① 保安管理業務外部委託承認制度の利用が可能、不可能

(問)以下の各事業場で、保安管理業務外部委託承認制度の利用が可能かどうか答えよ。

①電圧 22000Vで送電線路と連系をする出力 2000kWの内燃力発電所
→不可「電圧 7000ボルト以下で連系する出力 1000キロワット未満の水力発電所、火力発電所、太陽電池発電所及び風力発電所以外の発電所」に該当しないため

②電圧 6600Vで送電する出力 3000kWの水力発電所
→不可・・・「電圧 7000ボルト以下で連系する出力2000キロワット未満の水力発電所、火力発電所、風力発電所」に該当しないため

③電圧 6600Vで配電線路と連系をする出力 4500kWの太陽電池発電所
→可能・・・「電圧 7000ボルト以下で連系する出力5000キロワット未満の太陽電池発電所」に該当するため
2021年度より、2000kW未満から5000kW未満に緩和されているので、古い資料を見ている人は要注意

④電圧 6600Vで受電する需要設備
→可能・・・「電圧 7000ボルト以下で受電する需要設備」に該当するため

電験3種の試験対策・問題解説集
電験3種の試験対策・問題集についてをまとめました。

【問題】電験3種・法規・令和5年上期 問1

【問題】
次のa)~c)の文章は,主任技術者に関する記述である。

その記述内容として,「電気事業法」に基づき,適切なものと不適切なものの組合せについて,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
a) 事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。以下同じ。)を設置する者は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安の監督をさせるため,主務省令で定めるところにより,主任技術者免状の交付を受けている者のうちから,主任技術者を選任しなければならない。
b) 主任技術者は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない。
c) 事業用電気工作物の工事,維持又は運用に従事する者は,主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。

選択肢 (1) (2) (3) (4) (5)
a)  不適切 不適切 適切 適切 適切
b)  適切 不適切 不適切 適切 適切
c)  適切 適切 不適切 適切 不適切

【解答】
(4)が正解。

a)→電気事業法第43条第1項にある通りで適切
b)→電気事業法第43条第1項にある通りで適切
c)→電気事業法第43条第5項にある通りで適切

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