【マイグレーション現象とは】故障原因、イオン・エレクトロマイグレーションの違い

電子機器におけるマイグレーション現象とは?基盤故障や「イオンマイグレーション」「エレクトロマイグレーション」の違いなどについてまとめました。

【マイグレーション現象とは】基盤・半導体の故障

マイグレーション現象とは、電界の影響で金属(配線、電極など)が、絶縁物上や界面を移動する現象です。マイグレーション現象は、絶縁抵抗の劣化(抵抗値の低下)を起こすため、電極間の短絡(ショート)が発生し、電子機器の故障原因となります。

【種類①】イオンマイグレーション、エレクトロマイグレーション

マイグレーションには、大きく分けて「イオンマイグレーション」「エレクトロマイグレーション」の二種類があります。

種別 概要
エレクトロマイグレーション 電界の影響により、金属成分が電子の衝突し、非金属媒体の上や中を移動。
【温度】高温(>150℃)
【電流密度】大きい(>10^4mA/cm2)
【湿度】ほとんど乾燥
イオンマイグレーション 電解現象により、金属成分がイオン化し、非金属媒体の上や中を移動し、再び金属に還元し析出。
●銀はイオンマイグレーションが最も発生しやすい
【温度】低温(<100℃)
【電流密度】小さい(<1mA/cm2)
【湿度】高いほど顕著

【種類②】樹状、CAF、橋状、雲状、山状、山崩れ状、ひげ状

さらにイオンマイグレーションは、「発生場所」「見え方」により様々な種類があります。

種別 概要
樹状(デンドライト、Dendrite) 金属成分が絶縁物表面を負極から正極に向かって成長。
CAF(Conductive Anodic Filaments) 絶縁物中に繊維などがある場合に、その繊維に沿って正極から負極に向かって成長。
橋状(ブリッジ、bridges) デンドライトやフィラメントが対向する電極に達すると、橋状となって急激に絶縁抵抗が低下。
雲状(クラウド、clouds) 絶縁物表面を、正極から負極に向かって、雲が広がるように進行。
●吸湿しやすい基材(フェノール基板など)は、樹脂の内部に移行生成物が入り込み、層方向に雲状に成長する場合がある。
山状(hillocks) 導電塗料の導電電極は、その内部で金属が移動して一部が山の様に膨れる(山の内部は通空洞)
山崩れ状(landslides) 「山状」が更に進むと、山が負極に向かって雪崩が崩れたように導体金属が移動する。
ひげ状(whiskers) 正極付近で、ホイスカが試料表面から突き出る

【参考文献】

5.イオンマイグレーションの評価方法
プリント回路板の絶縁劣化要因としてのイオンマイグレーション―その発生メカニズムと抑制策―
プリント回路基板表面のマイグレーションに対する検討
デバイス/モジュールの信頼性評価、電気的特性測定・評価

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コメント

  1. 匿名 より:

    ## 【種類①】イオンマイグレーション、エレクトロマイグレーション
    マイグレーションには、大きく分けて「イオンマイグレーション」「エレクトロマイグレーション」の二種類があります。

    の表で、
    ①エレクトロマイグレーションと②イオンマイグレーションの【温度】【電流密度】【湿度】の項目が逆になっているように思ったのですが、ご確認いただけますでしょうか。

    <参考リンク>
    http://www1.coralnet.or.jp/fjk/migre/mg100.htm
    https://www.oeg.co.jp/semicon/ele.html