電気主任技術者を兼任させるときの要件と必要な手続き

電気主任技術者を兼任させるときの要件と必要な手続きについて解説します。

電気主任技術者の兼任とは

1人の免状をもつ主任技術者に2つ以上の事業場又は設備の主任技術者を兼任させることができません。
ただし、事業用電気工作物の工事、維持、運用の保安上支障がないと認められる場合で、経済産業大臣(事業用電気工作物が1つの産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は、その所在地を管轄する産業保安監督部長)の承認が得られれば、兼任が可能です。兼任する者を「兼任電気主任技術者」といいます。

必要な手続き

電気主任技術者の兼任承認申請 (中部近畿産業保安監督部近畿支部)」によると、以下の書類提出が必要と記載されています。

・主任技術者兼任承認申請書
・主任技術者免状の写し
・社員であることを確認できる書類
・執務に関する説明書
・兼任を必要とする理由書

【根拠条文等1】施行規則第52条第4項

電気事業法施行規則第52条第4項に以下の規定があり、経済産業大臣(実際は所管エリアの産業保安監督部長)からの承認を受けることで兼任可能です。

(主任技術者の選任等)
第五十二条 法第四十三条第一項の規定による主任技術者の選任は、次の表の上欄に掲げる事業場又は設備ごとに、それぞれ同表の下欄に掲げる者のうちから行うものとする。
<略>
4 事業用電気工作物を設置する者は、主任技術者に二以上の事業場又は設備の主任技術者を兼ねさせてはならない。ただし、事業用電気工作物の工事、維持及び運用の保安上支障がないと認められる場合であって、経済産業大臣(監督に係る事業用電気工作物が一の産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は、その設置の場所を管轄する産業保安監督部長。第五十三条の二において同じ。)の承認を受けた場合は、この限りでない。

【根拠条文等2】主任技術者制度の解釈及び運用(内規)

電気事業法施行規則第52条第4項の具体的な運用については、「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)の6. 」に規定されています。

【内規 6.抜粋】

6.規則第52条第4項ただし書の承認は、次の基準により行うものとする。
(1)電気主任技術者に係る規則第52条第4項ただし書の承認は、その申請が次に掲げる要件の全てに適合する場合に行うものとする。
なお、兼任させようとする事業場等の最大電力が2000kW以上(ただし、発電所については出力2000kW以上。このうち、太陽電池発電所については出力5000kW以上。)となる場合又は兼任させようとする事業場若しくは設備が6以上となる場合は、保安業務の遂行上支障となる場合が多いと考えられるので、特に慎重を期することとする。
① 兼任させようとする事業場等が電圧7000V以下で連系等をするものであること。

② 兼任させようとする者が兼任する事業場(この②において「申請事業場」という。)が次のいずれかに該当すること。
イ 兼任させようとする者が常時勤務する事業場の事業用電気工作物を設置する者の事業場
ロ 兼任させようとする者が常時勤務する事業場の事業用電気工作物を設置する者の親会社又は子会社である者の事業場
ハ 兼任させようとする者が常時勤務する事業場の事業用電気工作物を設置する者と同一の親会社の子会社である者の事業場
ニ 兼任させようとする者が常時勤務する事業場又は既に兼任している事業場(このニにおいて「原事業場」という。)と同一敷地内にある事業場であって、当該申請事業場の事業用電気工作物の設置者及び当該原事業場の事業用電気工作物の設置者(このニにおいて「両設置者」という。)が次に掲げる要件の全てを満たすもの
(イ) 両設置者間において締結されている1.(1)①又は②の契約等において、規則第53条第2項第5号に規定された事項(点検頻度に関するものを除く。)に準じた事項が定められていること。
(ロ) (イ)に定める事項を、当該申請事業場及び当該原事業場に勤務する従業員その他の関係者に対し周知していること。
(ハ) 保安規程において、(イ)に定める協定を遵守する旨を定めていること。

③ 兼任させようとする者が、第1種電気主任技術者免状、第2種電気主任技術者免状又は第3種電気主任技術者免状の交付を受けていること。

④ 兼任させようとする者の執務の状況が次に適合すること。
イ 兼任させようとする事業場等は、兼任させようとする者が常時勤務する事業場又はその者の住所から2時間以内に到達できるところにあること。
ロ 点検は、規則第53条第2項第5号の頻度に準じて行うこと。

⑤ 電気主任技術者が常時勤務しない事業場の場合は、電気工作物の工事、維持及び運用のために必要な事項を電気主任技術者に連絡する責任者が選任されていること。

上記の条件を満たすことを証明する添付書類を付けて、主任技術者兼任承認申請書を産業保安監督部へ提出し承認が得られることで兼任が可能となります。
また、上記内規の要件については、「(参考)電気主任技術者制度に関するQ&A」で以下のような補足説明がされています。

4.1 設置者の関係性について
該当箇所:内規6.(1)②ロ、(2)①ロ及び(3)①ロ
Q.「親会社又は子会社」と判断する基準は何でしょうか?
A.会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)第二条第三号に規定する会社法施行規則(平成十八年二月七日法務省令第十二号)第三条に基づき判断します。
⇒(親会社の例)議決権総数の50%超を有している会社 等

該当箇所:内規6.(1)②ハ
Q.「同一の親会社の子会社」と判断する基準は何でしょうか?
A. 前述する「親会社又は子会社」の定義に従い、親会社が同一である子会社同士(いわゆる兄弟会社)であることです。

該当箇所:内規6.(1)②、(2)①及び(3)①
Q.親会社と孫会社間の兼任について認められますか?
A.親子会社間に比べ、資本関係のうすい親孫会社間においては、保安上の指揮命令系統が不明確になることが懸念され、保安確保の観点から、兼任は認めておりません。ただし、資本関係が密接と考えらえる完全親子会社間(親―孫及び孫―孫間に限る。)に限り、兼任は認められます(下図の例とおり。)。

4.2 「敷地」の考え方について
該当箇所:内規6.(1)②ニ
Q.「敷地」とはどの範囲を指すのでしょうか?また、「同一敷地内にある」とはどのような状態を示しているのでしょうか?
A.一般には、電気工作物や電気工作物を保有する建築物を建設するために使用する土地のことを指します。ここでいう「同一敷地内にある」とは、敷地内にある一方の電気工作物で発生した事故(代表例としては、屋根に設置した太陽電池発電設備の火災事故や破損事故)がもう 一方の設備の保安に密接に影響するといえる場合を示します。したがって、同一敷地内であっても互いの設備が影響を受けない程度に離れている場合は、両方の設備に対して同等レベルの確保が困難となるため、本規定は適用されません。

4.3 みなし設置者による兼任について
該当箇所:内規1.(2)なお書き
Q.本来設置者が異なる事業場において、みなし設置者が同一(又は親子・兄弟関係)の場合、兼任は可能でしょうか?
A.本来設置者が異なる場合、従事時間や優先順位などの面においてそれぞれの設置者間で齟齬が生じ、電気主任技術者の保安の確保のための行動が制限されるおそれが生じるなど保安に係る責任の所在が不明確になりやすいため、みなし設置者が同一であったとしても兼任はできません。

4.4 その他
該当箇所:内規6.(1)なお書き
Q.兼任させようとする事業場若しくは設備が6以上となる場合であって、兼任が承認された事例を教えて下さい。
A.過去に認めた事例を紹介します。なお、下記事例はあくまで判断の目安であり、案件毎に保安組織の体制、管理方法、設備等総合的かつ事業者毎の個別事情を勘案する必要がありますので、事前に事業場を管轄する地域の産業保安監督部宛てご相談下さい。
①ポンプ場で兼任させる数が6となった例
・全ての事業場が、農事用の負荷であり、半年稼働(残りの期間は休止)している。
・うち、1つの事業場が予備発電設備(30kVA)を有する低圧自家用である。
・中央管理所において、兼任している事業場を遠隔で常時監視し、異常の際には直ちに対応する態勢にある。
・周辺に人(常勤者含む)がおらず、事故が発生した際の影響が低い。
②1の敷地内で兼任させる数が6となった例
・全ての事業所が、同一敷地内(同一地番かつ同一の出入管理区域)に設置されている。
・全ての事業所の保安組織は一元化されている。
・全ての事業所において、1箇所あたりの最大電力が2,000キロワット未満である。

Q.「兼任させようとする事業場若しくは設備」とありますが、下記の図のように内規3.に定める統括行為を用いて複数の発電所を直接統括する事業場を1事業場として複数兼任することはできますか?
A.発電所等を直接統括する事業場を含んだ兼任は認められません。兼任と統括行為はそれぞれ独立したものであり、併用できません。

該当箇所:内規6.(1)②ニ
Q.太陽電池発電設備等と需要設備の間の設置形態に何らかの制限はありますか?
A.いわゆる屋根貸し、土地貸し等、設置形態は問いません。しかし、一方で発生した事故がもう一
方の設備の保安に密接に影響する形態であることが必要です。

Q.箇所数、設備容量の上限は見直されますか?
A.本特例を適用する場合でも、他の兼任要件は引き続き適用されます。

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