【電験3種】日負荷曲線、変圧器の損失、水力発電所、高圧受電設備の攻略ポイント

電験三種における「電気施設管理」の日負荷曲線、変圧器の損失、水力発電所の攻略ポイントをまとめました。

高圧受電設備の単線結線図の記号、役割一覧

受変電設備の単線結線図では、以下の記号(アルファベット)を用いた略称で、各種機器を示します。
その代表例を以下に示す。

記号 機器名 役割
V 電圧計(Voltmeters)) 電圧を測定。変圧器VTを経由して測定する。
A 電流計(Ammeters)) 電流を測定。変流器CTを経由して測定する。
W 電力計(Watt Meters)) 電力を測定。VCT(電力需給用計器用変成器)を経由して測定する。
WH 電力量計(Watt-hour Meters)) 電力量を測定。電力会社が電気代を計算するための電力メータとして使われる。VCT(電力需給用計器用変成器)を経由して測定する。
PF(cosφ) 力率計(Power-Factor Meters)) 力率を測定。
F 周波数計(Frequency Meters)) 周波数を測定。
AS 電流計切替スイッチ(Ammeter Change-over Switches)) 三相の場合、このスイッチを使って表示される電圧の相をR相、S相、T相から選択するのに使う。
AS 気中開閉器(Air Switches) 電路遮断を気中で行う遮断器。 電力会社から電力を引き込む責任分界点において、その区分となる開閉器の他、バスダクトなど大電流を遮断するための開閉器や、配電盤に設けられる遮断器としても使用される。
LBS 負荷開閉器(Load Break Switches) に300kVA以下の設備の主遮断装置として用いられる高圧機器を回路から切り離すスイッチの1つ。事業場の配線電路や設備機器の故障などによる電気事故が発生した際に、電気の供給を遮断。主パワーヒューズ(PF)を組み込んで使用される物が多い。漏電(地絡)が起きた場合は、地絡継電器(GR)で電気の供給を遮断し、短絡(ショート)や過負荷(定格以上に使用)時に大電流が流れた場合、ヒューズが切れることで機器類を保護する。LBSを主遮断装置として使用する受電方式をPF/S型と呼び、他の用途では、高圧進相コンデンサや変圧器の保護用として使用される。
PAS 高圧交流負荷開閉器(Pole Air Switches) 構内に電柱を設置し高圧受電引き込みを行う地域で、電柱上部に設置する開閉器の一種。内部に零相変流器(ZCT)を組み込み、地絡継電器(GR)と組み合わせたものが主流。地絡電流を検知し、接続回路を開放することで、近隣への波及事故を防ぐ。
VCB 真空遮断器(Vacuum Circuit Breakers) 遮断装置の1つ。事業場の配線電路や設備機器の故障などによる電気事故が発生した際に、電気回路を閉じて電気の供給を遮断する。設備容量が300KVA以上の主遮断装置として設置されることが多い。LBSより大電流を遮断できる。昔は絶縁油を用いた油入遮断器(OCB:Oil Circuit Breaker)が多かったが、現在は高真空容器に電極を収め絶縁性を高めた真空遮断器(VCB:Vacuum Circuit Breaker)が主流。CBを主遮断装置として使用する受電方式をCB型という。
PCS 高圧カットアウト(Primary Cutout Switches) 高圧機器を回路から切り離すスイッチ。変圧器保護用(300kVAまで)や高圧進相コンデンサ(50kvarまで)保護用として利用する場合、内部にヒューズを入れ、ヒューズの定格電流に達することでヒューズが切れ、過負荷、短絡事故を防ぐ。開閉機能のみを使用する場合には、素通し線を入れる(素通し線は電流によって切れない)。開閉性能が低く、開閉する頻度の高い箇所には設置されない。
PF 電力ヒューズ(Power Fuses) ヒューズリンクにある一定以上の電流が所定の時間以上流れると、ヒューズエレメントがジュール熱で溶断し、電気回路を開放させる保護措置。
DS 断路器(Disconnecting Switches) 電源を回路から切り離すスイッチの一種。保守点検や修理を行う際、確実に無電圧状態にすることで、感電などの事故を防ぐ。ディスコン棒というフックの付いた棒で開閉する。高圧気中開閉器(PAS)や遮断器(CB)と異なり、電流が流れている状態で強制的に回路を切り離すとアーク(火花)が発生し、短絡事故を招く恐れがある。
ELCB 漏電遮断器(Earth Leakage Circuit Breakers) 漏電を検知した際に回路を遮断し、電気事故を防ぐための保護装置。漏電ブレーカーともいう。
MCCB 配線用遮断器(Molded-Case Circuit Breakers) 二次側(負荷側)で過負荷電流や短絡電流などの異常電流が流れたときに電路を開放し、一次側(電源側)からの電源供給を遮断する保護装置。
T 変圧器(Transformars) 電圧を変換する装置。例えば、6600V以上の高圧を、変圧器で200Vや100Vの低圧に変換し、一般家庭に供給したりするのに使われます。
VT 計器用変成器(Voltage Transformars) 測定器用に電圧を小さくするる機器。高電圧回路の電圧を計器や継電器に必要な電圧(通常は110V)に変換する。
CT 変流器(Current Transformars) 大電流回路の電流を電流計や継電器に直接つなげられるよう、小電流(通常5A)に変換する機器。
【特徴】
・一次電流によって鉄心に生じる磁束によって二次電流を発生させる計器用変成器
・変流器の二次側が開放すると、巻数比に応じた二次電流を流そうとするため、二次側に過大な電圧がかかり絶縁破壊や機器損傷等が発生する危険性がある(二次側に開閉器やヒューズを設置できない)
・変流比は巻数比により変化(抵抗値は関係ない)
・やむお得ずに通電中の電流計を交換する場合、二次側端子を短絡して交換し、その後に短絡を外す
VCT VCT(電力需給用計器用変成器) 計器用変圧器(VT)と変流器(CT)を1つにしたもの。主に電力会社の需給用メーター(WH)に接続される。
ZCT 零相変流器(Zero-Phase-sequence Current Transformars) 3線に流れる電流のバランスを測定し地絡電流(漏電)を検出する機器。地絡継電器(GR)と組み合わせて使用。正常な状態では3線に流れる電流を零相変流器で計測すると、値はゼロになるが、地絡が発生すると電流のバランスに崩れが生じ、この値が変わる。地絡継電器(GR)に設定された地絡電流に達すると主遮断装置(VCB)を動作させ、電路を遮断させる。
SC 進相コンデンサ(Static Capacitor) 力率を改善する機器。電動機(モーターなど)を動かす際、内部のインダクタンス成分で無効電力が生じるため、高圧進相コンデンサにより、無効電力を減らし、力率(電力の効率)を改善します。電力会社でも使用を推奨しており、力率が改善した高圧事業所では基本料金の割引が受けられる。
SR 直列リアクトル(Series Reactor) コンデンサに直列に接続され、電力系統に存在する高調波の抑制や電力用コンデンサの開閉により、過渡的に発生する過大な電流・電圧などの特異現象による弊害を防止する機器。
OCR 過電流継電器(Overcurrent Relays) 変流器(CT)を通じて過負荷電流や短絡電流を検知したときに、VCBなどの遮断器を動作させる保護装置。
GR 地絡継電器(Ground Relays) 地絡電流(漏電)を検出する機器。零相変流器(ZCT)と組み合わせて使用。事業場でケーブルの劣化等により地絡事故が発生したとき、地絡電流を零相変流器(ZCT)で検出し、送電線に接続された遮断器(PASやLBSなど)を動作させる信号を発生する。遮断器が動作(電路を遮断)することで、地絡地点と正常な回路を電気的に切り離し、近隣への波及事故(停電等)を防ぐ。ただし、地絡地点が構内か、他の事業場のものか判別できず、他の事業場で発生した地絡も検出して動作してしまう(もらい事故)。
DGR 地絡方向継電器(Directional Ground Relays) GR(地絡継電器)の上位互換で、地絡地点が構内か、他の事業場のものか判別できるため、外部の地絡事故で動作(もらい事故)することを防ぐことができる。仕組みは、電圧要素を零相電圧検出装置(ZVT、ZPD等)で検出し、電流位相(方向)を判断している。
CH ケーブルヘッド(Cable Heads) 設備や機器とケーブルを接続する
TC 引外しコイル(Trip Coils) 遮断機に内蔵される装置で、過電流継電器が異常電流を検知した際、主接点が閉じて電流が流れることで励磁してラッチ機構を外し遮断器を動作させるための装置。
GE 発電機(Generaters) 電磁誘導を利用し機械エネルギーから電気エネルギーを得る機械装置。停電などの非常時に燃料で発電したりするものなどがある。
LA 避雷器(Lightning Arresters) 落雷から電気設備を守る機器。引き込部付近や高圧気中開閉器(PAS)に内蔵される。落雷によって非常に高い電圧(雷サージ電圧)が発生したときだけLAが低抵抗になることで、LAに大電流が流れ込んでそのまま大地に放電する。それにより受変電設備に流れ込んで故障するのを防ぐ。通常時はLAは高抵抗なので負荷電流はLAに流れ込まない。
E 接地(Earthing) 電気設備や電気機器、電路を大地と電気的に接続すること。
ET 接地端子(Earth Terminals) 電気設備や電気機器、電路を接地するための接続端子。

制御器具番号と補助記号

シーケンス回路や、受変電設備の単線結線の保護継電器類は、日本電機工業会で定められている制御器具番号で表現します。
分電盤や配電盤の内部に収容されている遮断器や断路器には、この制御器具番号をデバイス番号としても使用されているのが一般的です。

補助記号は、制御器具番号に付与して、制御器具の用途などを示す際に利用されます。
例えば、制御器具番号52と補助記号「F1」を合わせて「52F1」と記載すると、受変電所のフィーダー1送りに設置されている交流遮断器のことを指します。

【電験3種】単線結線図の記号、制御器具番号、補助番号の意味とは?52F1って何?
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【高圧受電設備の種類】キュービクル式(CB形とPF・S形)と開放形

高圧受電設備は、キュービクル式と開放形に大別されます。
キュービクル式高圧受電設備はさらに、CB形とPF・S形に分類されます。
この2つの違いは以下のとおり主遮断装置が異なります。

種別 特徴
キュービクル式高圧受電設備(CB形) 主遮断装置に「高圧交流遮断器(CB)」を用いる。高圧側の短絡保護は「高圧交流遮断器(CB)」と「過電流継電器(OCR)」を組み合わせて行う。300kVAを超える
キュービクル式高圧受電設備(PF・S形) 主遮断装置に「高圧限流ヒューズ(PF)」を内蔵した「高圧交流負荷開閉器(LBS)」を用いる。高圧側の短絡保護は「高圧限流ヒューズ(PF)」が行う。300kVA以下の容量が小さな受電設備に用いられる。
【電験三種】法規の高圧受電設備の管理
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日負荷曲線と需要率、負荷率、不等率の計算

日負荷曲線とは、電気設備の1日の需要電力の時間変化をグラフに示したものです。
日負荷曲線から「需要率」「負荷率」「不等率」「総設備容量」「最大需要電力」「平均需要電力」などを計算し、必要な電力設備のスペックを決めます。

日負荷曲線の例1

項目 計算方法 意味 上記の例(ある期間=24時間)
総設備容量 設備容量の合計値 問題文で与えられる(今回は需要家①②ともに100kWとする)
最大需要電力 ある期間の需要電力の最大値 ピーク時の需要電力 需要家①は20kW、需要家②は30kW
平均需要電力 ある期間の需要電力の平均値 需要家①は約13.3kW、需要家②は26.6kW
需要率 (最大需要電力÷総設備容量)×100[%] 設備容量をどれだけ利用しているかを示す。低いほど負荷に対して設備が過剰スペックであると判断する。 需要家①は20%、需要家②は30%
負荷率 (平均需要電力÷最大需要電力)×100[%] 一定期間中に、実際にどれだけの電力を使用したかを示す。使用した電力が最大容量に近いほど、負荷率は高くなり、契約電力を有効に活用していると判断できる。 需要家①は約66.5%、需要家②は約88.6%
合成最大需要電力 各需要家の日負荷曲線を合成したときの最大需要電力 50kW
合成平均需要電力 各需要家の日負荷曲線を合成したときの平均需要電力 約40kW
各需要家の最大需要電力の合計値 各需要家の最大需要電力の合計値(各需要家の全設備容量の合計×需要率でも計算可能) 20kW+30kW=50kW
不等率 (各需要家の最大需要電力の合計値÷合成最大需要電力) 各負荷が最大電力で消費する時間がどれだけ分散しているかを示す。不等率は必ず1以上となり、大きいほど各負荷に電力を供給する設備容量は小さくて済むと判断する。 (50÷50)=1
総合負荷率 複数の需要家全体の負荷率 一定期間中に、複数の需要家全体で実際にどれだけの電力を使用したかを示す。使用した電力が最大容量に近いほど、負荷率は高くなり、契約電力を有効に活用していると判断できる。 総合負荷率=(合成平均需要電力)/(合成最大需要電力) ×100[%]=40/50 × 100[%]=80%

【例題1】
総合負荷率と各需要家の需要率、不等率との関係について、正しい説明をしているのは次のうちどれか。
ただし、この期間中の各需要家の需要率はすべて等しいものと仮定する。

(1)総合負荷率は、需要率に比例し、不等率に反比例する。
(2)総合負荷率は、需要率及び不等率の両方に比例する。
(3)総合負荷率は、需要率及び不等率の両方に反比例する。
(4)総合負荷率は、需要率に比例し、不等率に比例する。

【例題1 解説】
●総合負荷率=合成平均需用電力/合成最大需用電力 × 100[%]
●不等率=(各需要家の最大需要電力の合計値÷合成最大需要電力)

総合負荷率=合成平均需用電力/(各需要家の最大需要電力の合計値/不等率)
=合成平均需用電力×不等率/各需要家の最大需要電力の合計値
=合成平均需用電力×不等率/各需要家の全設備容量の合計×需要率

よって、総合負荷率は不等率に比例し需要率に反比例するので(4)が正解

変圧器の損失(負荷損、無負荷損)

変圧器の電力損失は大別して「無負荷損」「負荷損」の2種類あります。

種別 項目
無負荷損(負荷に関係なく発生) 鉄損(ヒステリシス損、渦電流損)、巻線抵抗損(励磁電流による)、誘電損など
負荷損(負荷電流に比例して発生) 銅損(抵抗損ともいい、負荷電流の2乗に比例)、漂遊負荷損など

力率cosθ、負荷率a(負荷の皮相電力÷定格容量)で運転している変圧器の効率η[%]は以下の式で計算できます。

(1)   \begin{eqnarray*} \eta = \frac{aP_n cos \theta}{aP_ncos\theta + p_i + a^2p_c} \times 100 \end{eqnarray*}

pi:鉄損[kW]
pc:銅損[kW]
※鉄損と銅損が等しいとき、最大効率となる

また、定格容量をPn、負荷の皮相電力をS、出力をPとすると「S=P/conθ」より負荷率aは次のようになります。

(2)   \begin{eqnarray*} a = \frac{S}{P_n} = \frac{P}{P_ncos\theta} \end{eqnarray*}

全日効率

全日効率(1日の変圧器の効率)ηd[%]は以下の式で計算できます。

(3)   \begin{eqnarray*} \eta_d = \frac{W_o}{W_o + W_i + W_c} \times 100 \end{eqnarray*}

Wo:出力電力量(24時間分)[kWh]
Wi:鉄損電力量(24時間分)[kWh]
Wc:銅損電力量(24時間分)[kWh]

水力発電所の出力計算、受電電力量と送電電力量の違い

受電電力量と送電電力量の違いは以下のとおりです。

種別 概要
受電電力量 需要電力に対して発電電力が不足した場合に、電力系統から受電する電力量
送電電力量 需要電力に対して発電電力が過剰になった場合に、電力系統に送電する電力量

水力発電所の出力は以下の式で計算できます・

(4)   \begin{eqnarray*} P = 9.8QH\eta_w \eta_G \end{eqnarray*}

出力:P[kW]
流量:Q[m3/s]
有効落差:H[m]
水車効率:ηw
発電機効率:ηG

【例題1】
有効落差50mの調整池式水力発電所(水車と発電機の総合効率\eta_g\eta_Gは70%)で、河川流量が10m3/sと一定で、1日のうち15時間は発電せずに全流量を貯水する。
残り9時間で10m3/sの流量に加えて貯水分を全量消費して発電を行うとき、出力はいくらか。

【例題1 解答】
①16時間で貯めた水の総量Vを計算する。

V=10×(3600×15)=540,000 m3

②Vを9時間で使用するので、9時間(9×3600=32,400秒)で割ると貯水分の流量vを計算できる。さらに河川の流量10m3/sを加えると発電時の流量Qとなる。

Q=v+10=(540,000/32,400)+10=26.7m3/s

③よって、発電量Pは以下のとおりとなる。

(5)   \begin{eqnarray*} P = 9.8QH\eta_w \eta_G = 9.8\times 26.7 \times 50 \times 0.7 = 9158.1 kW \end{eqnarray*}

供給予備力、ディマンドリスポンス(ネガワット取引)

用語 概要
供給予備力 電気は「発生と消費」とが同時的であるため、電気事業では常に変動する需要に対処しうる供給力を準備しなければならない。火力や原子力等の発電設備はメンテナンスや事故等が発生すると発電量が変化する。太陽光発電,風力発電などの自然エネルギー系の発電設備は天候により発電量は変化する。したがって、不断の供給を維持するためには、想定される「最大電力」に見合う供給力を保有することだけでなく、常に適量の 「供給予備力」を保持する必要があります。しなければならない。電気事業法に基づき設立された「電力広域的運営推進機関」では、毎年、各供給区域(エリア)及び全国の供給力について需給バランス評価を行い、その後の需給の状況を監視し、対策の実施状況を確認している
ディマンドリスポンス 電力需要にあわせて電力供給を調整してきた従来の方式と逆で、電力需要状況に応じて、需要家消費パターンを変化させること。電気事業者やアグリゲーター(取引仲介事業者)と需要家の間の契約に基づき,電力の需要削減の量や容量を取引する取組ネガワット取引の活用が近年進められている。

供給予備力としては以下の3種類があります。

種別 概要
待機予備力 主に火力発電所において、発電機を停止し、数時間後に立ち上げられる状態のもの。電源系統や送電系統の不具合等により計画的に停止しなければならない場合等に使用する。
運転予備力 部分負荷中の発電所(火力、水力等)が数分後に供給力を上げることができる発電設備の割合。不具合等で電源を即時停止しなければならない場合等に立使用。一般的に運転予備力は8~10% 度あることが望ましいとされている。
瞬動予備力 主に火力発電所において、ガバナフリー運転時の余力等があり、10秒以内に急速に出力を上昇させて、分負荷運転中の火力発電が出力上昇するまで系統周波数を許容範囲内に維持するための予備力。

例題① 単相変圧器の全日効率

(問題)ある単相変圧器(定格容量10kVA、鉄損100W、全負荷銅損200W)を以下表のとおり1日運転したときの全日効率はいくらか。

時間帯 負荷 力率
0-6時 2kW 1.0
6-18時 5kW 0.9
18-24時 7kW 0.8

(計算方法)
Wo、Wi、Wcを求める。

①Woは表より、Wiは鉄損100Wを1日分(24時間分)なので以下のように計算できる。
Wo=(2・6)+(5・12)+(7・6)=114kWh
Wi=100・24=2.4kWh

②Wcは、各時間帯の負荷率aを求め、そこから各時間帯の鉄損電力量(a^2Pc)を計算して合計することで求める。

(0-6時の負荷率)

(6)   \begin{eqnarray*} a =  \frac{P}{P_ncos\theta} = \frac{2}{10\times 1}=0.2 \end{eqnarray*}

(6-18時の負荷率)

(7)   \begin{eqnarray*} a =  \frac{P}{P_ncos\theta} = \frac{5}{10\times 0.9}=0.556 \end{eqnarray*}

(18-24時の負荷率)

(8)   \begin{eqnarray*} a =  \frac{P}{P_ncos\theta} = \frac{7}{10\times 0.8}=0.875 \end{eqnarray*}

(鉄損電力量)

(9)   \begin{eqnarray*} W_c =  (200\times 0.2^2) + (200\times 0.556^2) + (200\times 0.875^2) = 1708.68W = 1.7kW \end{eqnarray*}

よって、全日効率(1日の変圧器の効率)は

(10)   \begin{eqnarray*} \eta_d = \frac{114}{114 + 2.4 + 1.7} \times 100 = 96.5% \end{eqnarray*}

例題② 進相コンデンサ設備の容量と力率改善の関係

以下のような三相3線式の高圧電路(線間電圧6600V、無効電力で電圧変動しないと仮定)に三相負荷(300kW、遅れ力率 0.5)の三相負荷が接続されている。この三相負荷と並列に進相コンデンサ設備(直列リアクトル付三相コンデンサ)を接続して力率改善を行うことを考える。
直列リアクトルSRのリアクタンスL [Ω] は、三相コンデンサSCのリアクタンスC [Ω] の5%とする。

①三相コンデンサSCの端子電圧[V]を計算せよ。

【解答】
三相コンデンサScの端子電圧Vcは、線間電圧Vと分圧の法則より以下のとおりとなる。

(11)   \begin{eqnarray*} V_C=\frac{-jX_c}{jX_L-jX_C}V \end{eqnarray*}

ここで、XLはXcの6%なので以下のとおりとなる。

(12)   \begin{eqnarray*} V_C=\frac{-jX_c}{0.06jX_C-jX_C}V\\ =\frac{-j}{0.06j-j}V\\ =\frac{-j}{-0.94j}6600\\ =1.064 \cdot 6600\\ =7022 \end{eqnarray*}

よって、答えは約7022V

②力率を遅れ0.6から遅れ0.8に改善したいとき、三相コンデンサSCに必要な容量 [kvar]を求めよ。

【②解答】

有効電力P・・・抵抗で消費される電力
無効電力Q・・・リアクタンスで消費もしくは供給される電力
皮相電力S・・・有効電力Pと無効電力Qのベクトル和
力率・・・皮相電力のうち有効電力が占める割合

【関係式】

(13)   \begin{eqnarray*} S=\sqrt{P^2+Q^2}\\ cos\theta=\frac{P}{S}\end{eqnarray*}

関係式より、無効電力Qを有効電力(負荷で消費される電力)と力率から求められるよう展開していく。

(14)   \begin{eqnarray*} S^2 = P^2 + Q^2\\ Q^2 = S^2 - P^2 \end{eqnarray*}

よって、

(15)   \begin{eqnarray*} Q = \sqrt{S^2-P^2}\\ =\sqrt{S^2-S^2cos\theta^2}\\ =\sqrt{S^2(1-cos\theta^2)}\\ =S\sqrt{1-cos\theta^2}\\ =\frac{P}{cos\theta}\sqrt{1-cos\theta^2} \end{eqnarray*}

上式より進相コンデンサ設備の接続前の無効電力をQ1、接続後の無効電力をQ2は以下のとおり。

(16)   \begin{eqnarray*} Q_1=\frac{300}{0.6}\sqrt{1-0.6^2}=400[kvar]\\ Q_2=\frac{300}{0.8}\sqrt{1-0.8^2}=225[kvar] \end{eqnarray*}

よって、進相コンデンサによる無効電力の供給容量Qcは以下のとおり。

(17)   \begin{eqnarray*} Qc=Q_1-Q_2=175[kvar]\end{eqnarray*}

ここで進相コンデンサ設備には6%のリアクタンスXLがあるため、三相コンデンサSCの容量Qscは以下のとおり。

(18)   \begin{eqnarray*} Q_{sc}=\frac{-jX_C}{jX_L-jX_C}Q_C\\ =\frac{-j}{0.06j-j}Q_C\\ =1.064 \cdot Q_C=186[kvar] \end{eqnarray*}

例題③ 三相3線式配電線路の電圧降下と線路長の関係

電源側S点から負荷点Aを経由して負荷点Bに至る線路長[km]の三相3線式配電線路がある。
A点とB点で図に示す負荷電流が流れているとする。
S点の線間電圧が6600V、配電線路の1線当たりの抵抗が0.32Ω/km、リアクタンスが0.2Ω/kmとする。
S点、A点、B点における電圧の位相差が十分小さいと仮定したとき以下の値を求めよ。

①A–B間の線間電圧降下をS点線間電圧の1%としたい。このときのA–B間の線路長L_{AB}の値[km]はいくらにするか。

②A–B間の線間電圧降下をS点線間電圧の1%、B点線間電圧をS点線間電圧の96%としたとき、線路長Lの値[km]はいくらにするか。

【①解答】
題意より点A・B間の電圧降下\epsiron_{AB}はS点線間電圧(6600V)の1%なので66Vとなる。
力率85%なのでcos\theta=0.85なのでsin\theta=\sqrt{1-cos\theta ^2}=0.527

よって、公式よりL_{AB}を求める。

(19)   \begin{eqnarray*} \epsilon_{AB} &=& \sqrt{3}I_{AB}(Rcos\theta + Xsin\theta)\\ 66&=&\sqrt{3}\cdot 150(0.32\cdot L_{AB}\cdot 0.85+0.20\cdot L_{AB}\cdot 0.527)\\ L_{AB}&=&0.67[km] \end{eqnarray*}

【②解答】
題意より点S・A間の電圧降下\epsiron_{SA}はS点線間電圧(6600V)の3%なので198Vとなる。
(B点線間電圧がS点線間電圧の96%分、A-B間の電圧降下がS点線間電圧の1%分なのでS-A間の電圧降下は100-1-96で3%となる)となる。

よって、公式より点SA間の線路長L_{SA}を求める。

(20)   \begin{eqnarray*} \epsilon_{SA} &=& \sqrt{3}I_{SA}(Rcos\theta + Xsin\theta)\\ 198&=&\sqrt{3}(50+150)(0.32\cdot L_{SA}0.85+0.20\cdot L_{SA}\cdot 0.527)\\ L_{AB}&=&1.51[km] \end{eqnarray*}

よって、線路長Lは

(21)   \begin{eqnarray*} L=L_{SA}+L_{AB}=2.19[km] \end{eqnarray*}

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