小規模太陽電池発電設備の施設パターン別の電気事業法上の取り扱いについてをまとめました。
はじめに
経済産業省HP「高圧ガス保安法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う電気事業法施行規則等の改正について」の「太陽電池発電設備の電気事業法上の取扱い(電気保安)について」という文書で、小規模太陽電池発電設備の施設パターン別の電気事業法上の取り扱いについて記載があったのでまとめました。
【施設パターン1】電気使用場所Aと電気使用場所Bは同一受電
○パターン1・・・電気使用場所Aと電気使用場所Bを同一構内とし、太陽電池発電設備Xが出力10kW未満の場合にあっては一般用電気工作物として、その出力が10kW以上50kW未満の場合にあっては小規模事業用電気工作物として扱う。
○電気使用場所A、B・・・低圧で受電する需要設備(例:一般家屋等)
○太陽電池発電設備X・・・小規模発電設備であって、電気使用場所A、Bと電気的接続をするが、電気使用場所Cとの電気的接続はない
【施設パターン2】電気使用場所Aと電気使用場所Cは別受電であり、同一敷地内。
○パターン2・・・基本的には電気使用場所Aと電気使用場所Cを別の構内とし、太陽電池発電設備Xを小規模事業用電気工作物ではない事業用電気工作物として扱う。ただし、電気使用場所Cにある電気工作物及び電気使用場所Aと電気使用場所Cにまたがる電線路(両者を併せて以下「当該電気工作物」という。)の設置者が電気使用場所Aの需要設備の設置者と同一であって、当該電気工作物にその設置者以外の者が容易に触れられないように設置されており、電気使用場所Aと当該電気工作物が設置された区域が連続している場合は、電気使用場所Aと当該電気工作物の設置区域は、「同一構内」にあるものと解釈できる。
○電気使用場所A・・・低圧で受電する需要設備(例:一般家屋等)
○電気使用場所C・・・低圧又は高圧で受電する需要設備(例:一般家屋、アパート及び小規模工場等)
○太陽電池発電設備X・・・小規模発電設備であって、電気使用場所A、Bと電気的接続をするが、電気使用場所Cとの電気的接続はない。
○施設環境・・・電気使用場所A、電気使用場所Cは、同じさく、へい等で明確に区分されている。(同一敷地内。)
【施設パターン3】電気使用場所Aと電気使用場所Cは別受電であり、隣接しているがそれぞれがさく・へいで明確に区分されている。
○パターン3・・・パターン2と同様。
【施設パターン4】電気使用場所Aと電気使用場所Cは別受電であり、建造物間には道路が施設されている。→
○パターン4・・・電気使用場所Aと電気使用場所Cを別の構内とし、小規模事業用電気工作物ではない事業用電気工作物として扱う。
○電気使用場所A・・・低圧で受電する需要設備(例:一般家屋等)
○電気使用場所C・・・低圧又は高圧で受電する需要設備(例:一般家屋、アパート及び小規模工場等)
○太陽電池発電設備X・・・小規模発電設備であって、電気使用場所A、Bと電気的接続をするが、電気使用場所Cとの電気的接続はない。
○施設環境・・・電気使用場所A、電気使用場所Cは、同じさく、へい等で明確に区分されている。(同一敷地内。)
【施設パターン5】電気使用場所Aと倉庫(太陽電池発電設備設置場所)の間に道路が施設されている。
○パターン5・・・パターン4と同様。
【施設パターン6】電気使用場所D、Eそれぞれが太陽電池発電設備Y、Zと電気的に接続している。
〇パターン6・・・電気使用場所D・太陽電池発電設備Yと、電気使用場所E・太陽電池発電設備Zがそれぞれ別の一の構内と解釈する。太陽電池発電設備YとZは別構内の設備であることから、太陽電池発電設備Y、Zがそれぞれ出力10kW未満の場合にあっては、それぞれを一般用電気工作物として、それぞれ10kW以上50kW未満の場合にあってはそれぞれを小規模事業用電気工作物として扱う。
〇電気使用場所D、E・・・低圧受電電線路で受電する集合住宅内に設置されている需要設備(例:低圧受電のマンション、アパート等)
〇太陽電池発電設備Y、Z・・・小規模発電設備であって、共同住宅の屋根に設置されており、Y、Zはそれぞれ電気使用場所D、Eの需要設備と同一の所有者又は占有者によって管理されているもの。(例:マンションの住人が、その居住するマンションの屋上の太陽電池発電設備について、住人ごとに分かれて所有・占有)
根拠条文
一般用電気工作物の定義及び小規模事業用電気工作物の定義は、それぞれ電気事業法第38条第1項、同条第3項に定められており、いずれも条件の一つとして「構内に設置するものであること」がある。この「構内」の解釈の仕方によって、需要家の電気工作物が一般用電気工作物・
小規模事業用電気工作物・小規模事業用電気工作物ではない事業用電気工作物のいずれであるか、大きく左右される。第一に、「構内」については、「電気事業法の解説」によると「柵、塀、堀等で明確に区切られており、一般人が自由に立ち入ることがない区域」とされているが、一般家庭の敷地などを通常は「構内」と呼ばないことを勘案すると、電気事業法体系における「構内」とは、電気保安上の区域の区分名称としてとらえることができる。つまり、構内とは、保安上の観点からは、「一般人が自由に立ち入ることがないように何らかの方法で管理されている区域」を示しており、「柵、塀、堀等」というのはあくまでその例示であると考える。第三者の立ち入りによる電気工作物との不用意な接触を避ける意味で、第三者が容易に立ち入れないことが確保された場所は、保安上の意味で、「構内」として言い表しているものと考えられる。第二に、託送供給等約款(東京電力パワーグリッド株式会社)による「構内」の考え方としては、基本的に1構内をなすものは1構内を1発電場所または1需要場所とすることとされ、1構内をなすものは「へい等によって区切られ公衆が自由に出入りできない区域であって、原則として区域内の各建物が同一会計主体に属するもの」とされている。しかしながら、複数の建物であっても、それぞれが連結され、かつ各建物の所有者および使用者が同一のとき等建物としての一体性を有していると認められる場合は、1建物をなすものとみなすこととされ、また居住用の建物の場合は建物に会計主体の異なる部分がある場合でにおいて、各部分をそれぞれ1発電場所または1需要場所とすることが認められる場合がある。第三に、そもそも一般用電気工作物及び小規模事業用電気工作物の条件の一つとして「一の構内にあるものであること」を付している趣旨は、「電気工作物が一の構内以外に存在する場合は公衆に対する保安上の危険度が高くなるため」である。以上のことから、施設パターン2及び施設パターン3の場合においては、「3.」のとおり条件付きで出力に応じ、一般用電気工作物又は小規模事業用電気工作物として扱うことが妥当であると整理した。また、パターン6については、電気使用場所D・太陽電池発電設備Yと、電気使用場所E・太陽電池発電設備Zがそれぞれ別の需要場所となり、別構内として扱うことが妥当であると整理した。その他の施設パターンについても同様の考えであり、従来からの運用と変わりはない。
【参考条文等】
○電気事業法(昭和39年法律第170号)
第三十八条
この法律において「一般用電気工作物」とは、次に掲げる電気工作物であつて、構内(これに準ずる区域内を含む掲げる電気工作物をいう。ただし、小規模発電設備(低圧(経済産業省令で定める電圧以下の電圧をいう。第一号において同じ。)の電気に係る発電用の電気工作物であつて、経済産業省令で定めるものをいう。以下同じ。)以外の発電用の電気工作物と同一の構内に設置するもの又は爆発性若しくは引火性の物が存在するため電気工作物による事故が発生するおそれが多い場所として経済産業省令で定める場所に設置するものを除く。
一 電気を使用するための電気工作物であつて、低圧受電電線路(当該電気工作物を設置する場所と同一の構内において低圧の電気を他の者から受電し、又は他の者に受電させるための電線路をいう。次号ロ及び第三項第一号ロにおいて同じ。)以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの
二 小規模発電設備であつて、次のいずれにも該当するもの
イ出力が経済産業省令で定める出力未満のものであること。
ロ 低圧受電電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないものであること。
2 (略)
3 この法律において「小規模事業用電気工作物」とは、事業用電気工作物のうち、次に掲げる電気工作物であつて、構内に設置するものをいう。ただし、第一項ただし書に規定するものを除く。
一 小規模発電設備であつて、次のいずれにも該当するもの
イ 出力が第一項第二号イの経済産業省令で定める出力以上のものであること。
ロ 低圧受電電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないものである二前号に掲げるものに準ずるものとして経済産業省令で定めるもの
4 (略)
○電気事業法の解説(2020年度版)
・「構内」については定義規定はないが、柵、塀、堀等によって明確に区切られており、一般人が自由に立ち入ることがない区域をいう。(420頁30行)
・「これに準ずる区域内」とは、柵、塀、堀等によって明確に区切られていないが、土地の状況、例えばその周囲が河川、岸、山地等があって、柵、塀、堀等によって区切られている場合と同様に一般人がほとんど立ち入ることがないような区域内をいう。(421頁2行)
・①の条件(一の構内にあるものであること)は電気工作物が一の構内以外に存在する場合は公衆に対する保安上の危険度が高くなるためである。(419頁20行)
〇託送供給等約款(東京電力パワーグリッド株式会社令和4年7月1日実施)
14 発電場所および需要場所
(1) 当社は,原則として,1構内をなすものは1構内を1発電場所または1需要場所とし,これによりがたい場合には,イおよびロによります。なお,1構内をなすものとは,さく,へい等によって区切られ公衆が自由に出入りできない区域であって,原則として区域内の各建物が同一会計主体に属するものをいいます。ただし,複数の発電設備等を隣接した構内に設置する場合は,正当な理由がない限り,1構内をなすものとみなします。イ当社は,1建物をなすものは1建物を1発電場所または1需要場所とし,これによりがたい場合には,ロによります。なお,1建物をなすものとは,独立した1建物をいいます。ただし,複数の建物であっても,それぞれが地上または地下において連結され,かつ,各建物の所有者および使用者が同一のとき等建物としての一体性を有していると認められる場合は,1建物をなすものとみなします。また,看板灯,庭園灯,門灯等建物に付属した屋外電灯は,建物と同一の発電場所または需要場所といたします。ロ構内または建物の特殊な場合には,次によります。
(イ) 居住用の建物の場合1建物に会計主体の異なる部分がある場合で,次のいずれにも該当するときは,各部分をそれぞれ1発電場所または1需要場所とすることができます。この場合には,共用する部分を原則として1発電場所または1需要場所といたします。
a各部分の間が固定的な隔壁または扉で明確に区分されていること。b各部分の屋内配線設備が相互に分離して施設されていること。c各部分が世帯単位の居住に必要な機能(炊事のための設備等)を有すること。
(ロ) 居住用以外の建物の場合1建物に会計主体の異なる部分がある場合で,各部分の間が固定的な隔壁で明確に区分され,かつ,共用する部分がないときまたは各部分の所有者が異なるときは,各部分をそれぞれ1発電場所または1需要場所とすることができます。この場合には,共用する部分を原則として1発電場所または1需要場所といたします。
(ハ) 居住用部分と居住用以外の部分からなる建物の場合1建物に居住用部分と居住用以外の部分がある場合は,(ロ)に準ずるものといたします。ただし,アパートと店舗からなる建物等居住用部分と居住用以外の部分の間が固定的な隔壁で明確に区分されている建物の場合は,居住用部分に限り(イ)に準ずるものといたします。
(2)~(4)(略)
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