電験3種の太陽電池発電所の強度計算における「垂直積雪量の計算方法」についてをまとめました。
関係法令・資料等
分類 | 関係法令等 |
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法律 | ●電気事業法 |
政令(施行令) | ●電気事業法施行令 |
省令(施行規則) | ●発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令 |
告示・訓令・通達 | ●発電用太陽電池設備に関する技術基準の解釈、発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令及びその解釈に関する逐条解説 |
その他 | ●地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン2019年版 |
ガイドラインでの説明
2019年版(p.47)
(c)地上垂直積雪量
太陽電池アレイ面の設計用積雪量は、地上における垂直積雪量(Zs)とし、式(11)によって計算した積雪量に当該区域における局所的地形要因による影響を考慮する。ただし、特定行政庁が当該区域またはその近傍の区域の気象観察地点における地上積雪深の観測資料に基づき、統計処理を行うなどの手法によって、当該区域における50年再現期待値を求めることができる場合には、当該手法による値を用いることができる。
(1)
パラメータ | 概要 |
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区域の標準的な標高[m] | |
区域の標準的な海率(区域に応じてJIS C 8955:2017の表8に示すRの欄に掲げる半径[km]の円の面積に対する当該円内の海その他これに類するものの面積の割合) | |
区域の積雪量を表すパラメータは省略(JIS C 8955:2017の表8参照) |
垂直積雪量ZSは平成12年建設省告示第1455号の第2に基づいている。本来、同告示は特定行政庁が多雪区域や垂直積雪量を定める基準を示したものであるため、設計者が垂直積雪量を任意に定めることはない。そのため特定行政庁が規則で定める値がある場合にはその値を用いることとしている。また、同告示は1993年版の建築物荷重指針に基づいているが、建築物荷重指針は2015年に更新されており、より高い精度で垂直積雪量の50年再現期待値を求められるようになった4-1)、4-2)。垂直積雪量の算定においては、これらの値を総合的に判断する必要があり、その考え方については【技術資料B】にまとめている。
技術資料(B-1)
2. 地上垂直積雪量Zsについて 式(11)の地上垂直積雪量Zsは、平成12年建設省告示第1455号の第2(以下、告示という。)に基づいており、特定行政庁が垂直積雪量を定める根拠の一つとなっている。一方、上述本文に記載されているとおり、特定行政庁は、近傍の気象観測地点における地上積雪深の観測資料を用いて50年再現期待値を求めることによって垂直積雪量を定めることも可能である。すなわち、垂直積雪量とは、設計者が積雪荷重を評価するために定めるものではなく、特定行政庁が定める値である。
しかし、JIS C 8955:2017(以下、JISという。)によると、設計者が式(11)に基づいて垂直積雪量を算定するとともに、特定行政庁が定めた垂直積雪量と比較し、いずれか大きい値を定めることとしている。
北海道稚内市を例として、告示に基づいて垂直積雪量を算出すると約12mとなる。一方で、特定行政庁で定めた稚内市の垂直積雪量は1.3mと定められており、この値は地上積雪深の観測資料を用いて極値統計により算定した50年再現期待値と近似する。
したがって、特定行政庁では、稚内市の垂直積雪量を告示の式からではなく、地上積雪深の観測資料に基づいて定めていると推察できる。
しかし、JISによると、稚内市の垂直積雪量は約12mとしなければならない。このように、JISに基づくと、設計者が法外な垂直積雪量を定めざるを得ない場面が生じてしまう。 告示の式は、1993年版の日本建築学会建築物荷重指針・同解説(以下、指針という。)を引用している。当時としては、統計処理に耐えうる気象観測地点が少なく、地上積雪深における各年極値の数にも限りがあり、告示の式の精度に期待することはできない。垂直積雪量は多雪区域以外の区域においても定める必要があり、積雪の記録が少なく経験的にも定めることが困難な区域に対して告示の式を参考として提供していると推察される。一方、2015年に指針が改定されており、1993年版に比べて統計処理の対象にすることができる気象観測地点は圧倒的に増加しており、さらに各年極値の蓄積が進み、2000年以降の大雪の記録も考慮されていることから、垂直積雪量の推定精度が向上している。
従って、設計者においては、JISのみならず特定行政庁が定めた垂直積雪量に加えて2015年版の指針に示されている値を調査し、あるいは、地上積雪深の観測資料を用いて直接的に50年再現期待値を算定するなどして、地上垂直積雪量を適切に設定することが望まれる。
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