【電験三種】「電路、電気機械器具の絶縁性能の必要性」の法的根拠

電験三種(法規)における「電路、電気機械器具の絶縁性能の必要性」の法的根拠をまとめました。

【電技5条、電技解釈13条】電路、電気機械器具を大地から絶縁

【参考資料】

電技5条では、以下のとおり、電路や電気機械器具を大地から絶縁する必要について記載されています。
ただし、電路については「構造上やむおえず危険の恐れがない場合や接地等の必要な措置を講じれば不要」だということが記載されています。
また同条2項と3項では、高圧または特別高圧の電線路、配線、電気機械器具の絶縁性能(絶縁耐力試験で測定)について規定されています。
注意点として、低圧電線路の絶縁性能は電技22条、低圧電路(配線)の絶縁性能は電技58条で規定されているのでこの規定の対象外です。

(電路の絶縁)
第五条 電路は、大地から絶縁しなければならない。ただし、構造上やむを得ない場合であって通常予見される使用形態を考慮し危険のおそれがない場合、又は混触による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するための接地その他の保安上必要な措置を講ずる場合は、この限りでない。
2 前項の場合にあっては、その絶縁性能は、第二十二条及び第五十八条の規定を除き、事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない。
3 変成器内の巻線と当該変成器内の他の巻線との間の絶縁性能は、事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない。

【補足】
電路は大地と絶縁している必要があります。絶縁されていないと、電路と大地間に電位差が生じ、常時大地に電流が流れることになります。
接地工事は、電気設備や電気機器の故障等で充電部と筐体間が絶縁不良になった場合などに、筐体に触れた人を感電から保護する為に実施します。

また、電技解釈で先程の絶縁不要なものについて具体的に規定されています。

【電路の絶縁】(省令第5条第1項)
第13条 電路は、次の各号に掲げる部分を除き大地から絶縁すること。
一 この解釈の規定により接地工事を施す場合の接地点
二 次に掲げるものの絶縁できないことがやむを得ない部分
イ 第173条第7項第三号ただし書の規定により施設する接触電線、第194条に規定するエックス線発生装置、試
験用変圧器、電力線搬送用結合リアクトル、電気さく用電源装置、電気防食用の陽極、単線式電気鉄道の帰
(第201条第六号に規定するものをいう。)、電極式液面リレーの電極等、電路の一部を大地から絶縁せずに電気を使用することがやむを得ないもの
電気浴器、電気炉、電気ボイラー、電解槽等、大地から絶縁することが技術上困難なもの

【電技解釈15・16条】 絶縁耐力試験(高圧又は特別高圧の電路、機械器具類)

絶縁耐力試験(耐電圧試験)とは, 電気製品(部品)の使用する電圧に対して十分な絶縁耐力があるかどうか(絶縁破壊しないか)を確認するための試験です。
電気製品は基本的に導体と絶縁で構成されており, 規定電圧を規定時間印加して絶縁破壊が起きなければ、十分な絶縁耐力を持つと判断します.
ここでいう絶縁破壊とは, 絶縁物に電圧を印加したときに急激な電流増加があるかどうかです(あれば絶縁破壊ありと判断).

【計算①】電路の絶縁耐力試験における試験電圧

高圧及び特別高圧の電路に対して行う絶縁耐力試験では、電路と大地の間に10分間連続して試験電圧を加えます。
多芯ケーブルの場合、芯線相互間と、芯線と大地との間に試験電圧を加えます。
このとき、試験電圧は以下とおり計算して決定します。

計算方法

① 使用電圧(公称電圧=その電線路を代表する線間電圧)から最大使用電圧Emを計算します。
最大使用電圧Emは使用電圧が1kV以下ならその1.15倍使用電圧が1kVを超え500kV未満ならその(1.15/1.1) 倍となります。

② 計算した最大使用電圧Emから、以下表により試験電圧を計算します。

最大使用電圧 試験電圧
7kV以下 交流電路:最大使用電圧の1.5倍の交流電圧
※直流電路:最大使用電圧の1.5倍の直流電圧、又は1倍の交流電圧
7kVを超え15kV以下(中性点接地方式) 最大使用電圧の0.92倍
7kVを超え60kV以下 最大使用電圧の1.25倍(※最低値は10500V)
60kVを超える 最大使用電圧の1.1倍(電験3種の対象外なので参考)

また、交流電路にケーブルを使用する場合、上表の交流試験電圧の2倍の直流試験電圧で絶縁耐力試験を行うことができます。例えば、交流試験電圧が10350Vであった場合、直流試験電圧20700Vでも試験が実施できます。

計算例

高圧受電設備(6.6kV)の電路の交流試験電圧を求めます。

① 電路の使用電圧(公称電圧=電路を代表する線間電圧)は6.6kVなので、最大使用電圧は「使用電圧×1.15/1.1=6.9kV」になります.
② 試験電圧は、表より 「最大使用電圧(6900V)×1.5倍=10350V」となります.

ちなみに、電線にケーブルを使用する場合、交流試験電圧の2倍の直流電圧(20700V)で絶縁耐力試験を行うこともできます。

【計算②】機械器具類の絶縁耐力試験における試験電圧

機械器具類に対して絶縁耐力試験を実施する場合、試験電圧は以下のように計算して決定します。

計算方法

① 使用電圧から最大使用電圧を計算します。
使用電圧が1kV以下ならその1.15倍、使用電圧が1kVを超え500kV未満ならその(1.15/1.1) 倍が最大使用電圧となります。

② 最大使用電圧Emから、以下表により試験電圧を計算する。

種類 最大使用電圧Em 試験電圧
変圧器、開閉器、遮断器、電力用コンデンサ、計器用変成器、母線等 7kV以下 Em×1.5(最低500V)
変圧器、開閉器、遮断器、電力用コンデンサ、計器用変成器、母線等 7kVを超え60kV以下、Emが15kV以下の中性点接地式電路に接続するもの Em×0.92
変圧器、開閉器、遮断器、電力用コンデンサ、計器用変成器、母線等 7kVを超え60kV以下、上記以外のもの Em×1.25(最低10500V)
回転変流機 直流側のEm(最低500V)
回転変流機以外の回転機 7kV以下 Em×1.5(最低500V)
回転変流機以外の回転機 7kV超え Em×1.25(最低10500kV)
整流器 60kV以下 直流側のEm(最低500V)
燃料電池・太陽電池モジュール Em × 1.5倍の直流電圧、またはEm × 1倍の交流電圧
500V未満のときは500V

計算例

(問題)
太陽電池モジュール(最大使用電圧40V)を20直列並べた太陽電池アレイに対して、絶縁耐力試験を行うときの試験電圧(直流及び交流)を計算せよ。

(解答)
試験電圧は以下のとおり。

(交流電圧の場合) 40V×20直列 = 800V
(直流電圧の場合) 40V×20直列×1.5倍 = 1200V

【補足】絶縁耐力試験の試験電圧を求める計算問題

絶縁耐力試験の試験電圧を求める計算問題は頻出です。
以下ページで様々な計算問題を解説しています。

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