リチウムイオン電池における外部短絡試験の特徴・内容・手順などについてまとめました。
【はじめに】外部短絡試験とは
外部短絡試験(強制外部短絡試験試験)とは、IEC・JIS等で標準化されている電池の安全性を評価する試験の1つです。
その名の通り、「電池が外部短絡を起こしてしまったときにどの程度耐えられるか」を調べます。
保護デバイスを搭載した蓄電池システムの出力間を、定められた抵抗値で蓄電池および蓄電池システムの出力が短絡された場合の挙動(発煙や発火が起きないか、起きたら不合格)を確認する試験です。
昨今、安全性について騒がれているリチウムイオン電池の安全性評価によく利用されています。
【外部短絡状態とは】電池の膨張・破裂・発火
外部短絡状態になると、大きな短絡電流が流れ、電池が高温になます。
そして、電池が膨張・破裂・発火してしまうことがあります。
通常、電池には内部短絡が起きた場合に耐えられるような設計がされています。
外部短絡試験ではその評価を行います。
【概要】外部短絡試験
■回路構成
電流測定を行うために、回路中にシャント抵抗(分流器)を入れます。
そして、シャント抵抗の両端電圧をデータロガーで計測し、オームの法則により電圧から電流値を得ます。
オームの法則より、外部抵抗が小さいほど、短絡時の電流は大きくなるため、厳しい試験となります。
– | 操作内容 |
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1 | 電池を満充電(SOC100%)にします。 |
2 | スイッチをONにして外部短絡を発生させます。 |
3 | 外部短絡時の「短絡電流」「電池の電圧」「温度」等をデータロガーで観測します。 |
4 | 内部短絡時の破裂・発火・熱暴走の有無などを確認し、合否判定を行います。 |
参考 | ■【電流測定】シャント抵抗器とは?分流との関係 |
【理論値】短絡電流の計算
① オームの法則より短絡電流は以下の式で計算できます。
短絡電流(I) = 蓄電池の電圧(V) / 蓄電池の抵抗(R)
② 短絡電流の理論値は、蓄電池の「最大電圧」「抵抗直流インピーダンス」から求まります。
短絡電流の理論値(I) = 最大電圧 / 抵抗直流インピーダンス
例えば
最大電圧3.7V、抵抗直流インピーダンスが1mΩの場合、短絡電流の理論値は3,700Aとなります。
【その他】シミュレーション、関連ページ
– | 参考文献・関連ページ |
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シミュレーション | ■【LTspice】外部短絡試験のシミュレーション |
参考 | ■【電池入門】基本原理・アルゴリズム ■電気・電子回路入門 |
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